『DUEL TRIANGLE』






第十一章 救世主選定試験





「皆、よく集まってくれましたね」

学園長室にリコとリリィを除く全員が集まったのを見て、学園長はそう切り出す。
ソレに対し、ダウニーがこの場に居ない者に関して説明する。

「リリィさんは体調不良の為、欠席だそうです」

ダウニーの言葉に怪訝そうな顔を見せた学園長へと、恭也が口を挟む。

「さっき、軽い貧血で」

「…そう」

恭也のその言葉だけで大よその所を理解したのか、学園長は僅かに眉をひそめただけで納得し、改めてここに居るメンバーを見回す。

「リコ・リスは?」

ここに居ないもう一人のメンバーに関して尋ねる学園長に、またしてもダウニーが答える。

「彼女は、実は行方が分からないのです。今、ダリア先生が探しておられますが…」

その言葉に、学園長は多少厳しい顔付きになると、その口を開く。

「どういうことですか。生徒は全員、自宅なり寮にて待機するように申し送りしたはずですよ」

「はい。それが、どうも事件直後から寮にも帰っていないらしく…」

「そうですか。…勝手な行動をした事への注意は必要ですが、今はこちらの方を優先します。
 見つかり次第、ここへ寄越して下さい」

学園長の言葉にダウニーが静かに頷いたのを見ると、学園長はその視線を恭也たちへと向ける。

「さて、皆さん。今回、皆さんを呼び立てた理由は、お願いがあるからです」

「願い?」

学園長の言葉に怪訝な顔を見せる救世主候補たちの中で、恭也が代表するような形でそう聞き返す。
それに頷きながら、学園長は話を続ける。

「皆さんに、あるものを取って来てもらいたいのです。
 壊れた召喚陣を元に戻す為の魔導書を…」

その言葉に、ベリオが真っ先に不思議そうに尋ねる・

「召喚陣を元に戻すと言われても、そんなのリコがいれば、何度でも書けるのではないんですか?」

「確かに、召喚陣そのものはリコさんがいれば、何度でも作る事は可能ですし、更に言うのならば、学園長にも召喚陣は描けます。
 ただし、その召喚陣が繋ぐ場所が問題で、あなた達のいた場所であるとは限らないんですよ」

「「ええー?!」」

ダウニーの言葉に、未亜と美由希が真っ先に声を揃えて叫ぶ。
それを見ながら、恭也が学園長へと質問する。

「つまり、俺達はこのままでは二度と元の世界へと戻れないという事ですか?」

「いえ、そういう訳ではありません。ただ、とても困難な問題があるのです」

学園長の言葉に全員が怪訝そうな顔になる中、ダウニーが講釈するように話し始める。

「召喚陣が世界と世界を繋ぐ、言うならば次元の架け橋といった所の者である事は、理解してますね。
 実は、この橋は基点となる召喚陣が存在する間は、一端繋がれた世界との間に常に存在して、お互いの位置を把握してます。
 だから、普通は一度異世界に召喚された者も、元の世界へと戻る事ができるのです。
 しかし、今回のように召喚陣が壊されてしまうと、間にあった橋が消えてしまい、
 元いた世界の座標やら時間軸などが分からなくなってしまうのです」

ダウニーの言葉に続けるように学園長が口を開く。

「その分からなくなってしまった世界を見つけ出す為の方法が記されている魔導書が一冊だけ存在するのです」

「つまり、その魔導書を取って来ると」

「ええ、そうです。その魔導書こそ、召喚士の始祖、ラディアータ・スプレンゲリの書いたと言われる、“導きの書”です」

学園長から告げられた書の説明に、カエデが感心したような声を上げる。

「ほう、召喚士の祖が書かれた本でござるか。
 なかなか凄そうな肩書きでござるな」

「ああ、本当にな。つまり、その導きの書ってのがあれば、元通りに召喚陣が直せるんですね」

「ええ、そうです」

恭也が確認するように問い掛けると、学園長はゆっくりとだが、しっかりと頷く。
その答えを受け、恭也とカエデは何となく顔を見合わせてほっとした安堵の表情を覗かせる。
しかし、美由希とベリオは驚愕したような顔を浮かべており、恭也とカエデは不思議そうに見遣る。

「どうしたんだ、美由希? 折角、召喚陣を直す方法が分かったというのに、そんな顔をして」

「どうしたじゃなくて、恭ちゃん、導きの書だよ、導きの書!」

「そうですよ、恭也くんにカエデさん。何でそんなに落ち着いてるんですか!?」

「何でと言われてもな」

「全くでござる。確かに、凄い魔導書なのでござろうが、拙者や師匠は剣士と忍者。
 そのような魔導書があって、何が書かれているのかは分からぬが、魔法とは無縁でござるゆえ」

「そうじゃなくて、導きの書だよ!」

「美由希、それがどれぐらい貴重な書物なのかは分からんが、とりあえずは落ち着けって。
 全く、この世界に来ても、お前の読書好きは変わらないな。既に、そんな貴重な魔導書にまで目を付けていたとは。
 まあ、いい機会じゃないか。貴重な魔導書を拝むチャンスだぞ」

「そうじゃなくてですね、恭也くん」

ベリオが多少疲れたような声で恭也へと話し掛ける。

「昨日のダウニー先生の授業で…」

「…………ん? …………あ、ああ」

「……お、おおう、でござる!?」

ようやく美由希とベリオが驚いていた理由に気付いた二人だったが、今更大げさに驚く事も出来ず、
二人のいや、ダウニーも含めた三人の呆れた視線を誤魔化すように、何かを問うような視線を学園長へと向けて誤魔化す。
そんな恭也の視線を受けて学園長が口を開くよりも先に、ダウニーが軽く頭を振って気を取り直すと口を開く。

「私も、事がこうなって初めて学園長から聞いて驚いてますが、“導きの書”はこの学園の中にあるらしいのです。
 これは、私がずっと長い間、救世主と破滅の研究をしてきて発見した事なのですが、王都が建てられるずっと前。
 この場所には救世主を目指す者が必ず訪れると言われる神殿があったんです。
 昨日、私が授業で言った事を覚えてますか?」

ダウニーは視線を恭也とカエデへと向けた後、すぐに横へとずらし、ベリオと美由希で止める。
それを受けつつ、美由希が口を開く。

「導きの書には、破滅が生まれた訳、救世主が生まれた訳、
 そして、どうすれば世界を死の滅びから救えるかが書かれている、という話ですか」

美由希の横でほう、とか、おお、とか感心したような声を洩らす二人を意図的に視界から外しつつ、ダウニーは満足そうに頷く。

「その通りです。その為に、救世主を目指す者たちは最後にはこの神殿へと辿り着き、書の信託を受けたと言われています」

「そんなに大事な神殿の上に、何故この学園が?」

ダウニーの説明にベリオが素朴な疑問を上げるが、それに答えたのはダウニーではなく、学園長だった。

「残念ながら、それらに関する資料は残っていません。
 いえ、残っているのかもしれませんが、王家の特別禁書扱いを受けて、図書館の地下にある特別禁書庫に眠っているはずです」

「特別禁書庫? 確か、前にリコが言っていたな。
 学園長だけが入る事を許されているって」

「いえ、正確には学園の管理者である私と、王家の古代魔道機のマスターだけですが。
 それでも、閲覧が可能なのは、地下数回までの浅い場所だけです。
 千年前に王都が遷都された本当の理由、学園がここに建てられた訳、
 それら全ての資料が禁書庫の更に深くに封印されていると思われます」

「どうして、その数回よりも下の場所は駄目なんでしょうか」

ベリオが学園長へと尋ね、学園長はそれに答える。

「それより下は、導きの書の為の試しの場となっているからです。
 書は自らを託す相手を試し、それに合格した者のためだけに開くと言われています」

「まさか、その試される者って、救世主ですか?」

美由希の言葉に学園長は頷くと、再び口を開く。

「ええ、そうです。だから、私にはそこへと行く資格はないのです。
 だからこそ貴方たちを呼んだんです」

学園長の言葉に、美由希とベリオはこれがどういう事か分かり、少し驚いた顔になる。
そこへ、ここには居ない人物の声が聞こえてくる。

「つまり、これは実質的な救世主選定試験ですね、お義母さま」

そう言いながら姿を現したのは、さっき倒れて医務室で休んでいるはずのリリィだった。
入って来たリリィを見て、恭也が心配そうに尋ねる。

「体の方はもう大丈夫なのか?」

「あんなの、ただの貧血よ。とうとう救世主になれる時が来たと言うのに、呑気に寝ていられる訳がないじゃない」

「本当に大丈夫なの、リリィ? 顔色がまだよくないわよ」

ベリオも心配そうに尋ねるが、リリィは頷くと、

「平気よ。こんな事ぐらいで寝ていたら、何の為にここに来たのか分からなくなっちゃうもの」

「…いいのね、リリィ」

学園長としてではなく、母親としての顔を覗かせて聞いてくるミュリエルにリリィは短く返事を返す。
それを聞くと、ミュリエルは表情を引き締めて恭也たちを一通り見た後、確認するように尋ねる。

「あなた達も。
 この試験は今までとは違うのよ? 何があっても私達は一切、手助けが出来ないわ。
 それでも、行く?」

その言葉に、それそれに少しだけ考え、それぞれの結論を出す。
最初に口を開いたのはベリオだった。

「苦しむ人々のために、身を捨ててでもその盾となることが、神の示した私の道ですから」

「私は…、ただ自分の大事な人たちを守りたいだけ。
 それに、このままだと元の世界にも戻れないし」

ベリオに続き美由希がそう口にすると、リリィがいつもの不遜な笑みを見せつつ言う。

「さっきも言ったけれど、私も当然行くわよ。それに、あのバカに任せていたら、見つけられないでしょうしね」

「バカって、俺の事か?」

「他に誰か居て? 昨日、授業で聞いた話を忘れていた高町恭也くん?」

「ぐ」

痛いところを付かれて黙り込む恭也の服の袖をカエデがクイクイと引っ張り、不思議そうに尋ねる。

「どうして、リリィ殿はそれを知っているんでござるか?
 リリィ殿が来たのは、もう少し後だったのでは?」

カエデの言葉を聞き、恭也はリリィへと疑わしげな目を向ける。
その恭也の視線に僅かにたじろぎつつも、リリィは何とか虚勢を張るように腕を組んで睨んでくる。

「な、何よ?!」

「リリィ、お前、ドアの前で立ち聞きしていたな」

「なっ! そ、そんな訳ないでしょう」

「しかも、入るに入れなくて外に居ながら中の話を聞いていて、救世主の話が出たから中へと入って来たと」

「くっ……。べ、別に良いでしょうが!」

「別に悪いとは言ってないだろう。なあ、盗み聞きしていたリリィ・シアフィールドくん」

「くっ、こいつ、絶対にいつかしめる!」

「おいおい、そういう事は、本人に聞こえないように言ってくれ」

物騒なリリィの物言いに、恭也はつっと冷や汗を垂らすのだった。
そんな中、ミュリエルが未亜へと視線を向け、

「未亜さん、あなたはどうします。
 あなたの場合、いきなり過ぎる話でしょうけれど」

ミュリエルの言葉に、未亜は俯いたまま小さく答える。

「その…。まだ、よく分からないです。その救世主とか破滅の事は聞いたけれど…」

「そうね」

未亜の言葉にミュリエルが困ったような顔を見せる。

「何の訓練も受けていないあなたにいきなりですからね」

何かを続けようとした学園長を遮るように、未亜は弱々しいけれども言う。

「それでも、今のままでは元の世界へと戻れないという事だけは分かりました。
 だから、行きます。怖いですけど…」

そんな未亜を励ますように、美由希がその肩に手を置く。

「大丈夫だよ、未亜ちゃん。もしもの時は、私が守るから」

「うん、ありがとう」

そんな二人を見て、何かを言いたそうにしていたリリィだったが、ぐっと堪えるように押し黙る。
否応なしに緊張感が漂い始めた部屋の中、ミュリエルは残る二人がどうするのか聞こうと視線を向けると、
そこにはまるで内緒話でもするかのように顔を近づけて話している二人の姿があった。
それを見て、美由希たちが顔を顰めるが、それに気付かず、二人は話を進めている。

「師匠、つまり話を要約すると、この学園にある導きの書を取って来ればいいのでござろう」

「ああ、その通りだ」

「ならば、何故、あの様な講釈めいた会話が必要だったんでござろうか?」

「さあな、俺にもさっぱり分からん。まあ、多分、教師というのはそう言った人種なんだろう」

「成る程。納得でござるよ」

「まあ、全員が全員という訳ではないだろうがな」

「奥が深いでござるな」

「そうか?」

「とりあえず、試練という危険が待ち受ける所から、導きの書を取って来るという任務でござるな」

「まあ、簡単に言えば、そうだな。とりあえず、俺達は難しい事を考えるよりも、行動する方が楽だと感じるからな。
 それで良いか」

「これで良いでござるよ」

ひそひそと話しているつもりなのだろうが、狭いという事はないが、それでもそんなに広くない室内で、
ましてや、結構、近い距離で会話をしているので、二人の内緒話は周りにはっきりと聞こえていた。
それを聞き、眉を顰めるもの、こめかみを振るわせる者、ただ苦笑を受けべる者に、呆れて声も出せない者、
と様々な反応がそこにはあった。

「こ、こんのぉぉぉバカ恭也!」

「……バカと呼ばないで名前を呼ぶ所は進歩したかと思えば、その前にバカを付けるな!」

「アンタなんか、バカ恭也で充分よ。あのね、これは救世主を決める大事な選定試験なのよ。
 それを、折角の緊張感を…」

「何、訳の分からん事を。これが大事な事は分かっている。
 それに、過度の緊張はかえって良くないんだぞ」

「そんな事は知ってるわよ!」

「だったら、何をそんなに怒っているんだ?」

さっきの会話を聞かれていないと思っている恭也は不思議そうに尋ねる。
尤も、聞かれていると分かったとしても、同じ反応をするだろう事は、美由希と未亜にはよく分かっていたが。
そんな恭也に怒鳴るのも疲れたのか、リリィは一つ息を吐き出すと、またいつもの様に不遜な態度を見せ、唇と釣り上げると、

「ふふん。まあ、良いわ。どうせ救世主に選ばれるのは、この私なんだから」

「確かに、リリィ殿は強敵でござるが、こればかりは負けるわけにはいかぬでござる」

「そうよ。私だって、この役目を他に譲る訳にはいかないわ。
 例え、リリィが相手でもね」

リリィの言葉に、カエデとベリオが反応する中、恭也と美由希は顔を見合わせてただ肩を竦めるだけだった。
そんな二人を見ながら、ミュリエルは未亜はまだよく分かっていないのかもしれないから、この反応は当然として、
恭也と美由希の反応が少しだけ気になったのか、思わず二人へと声を掛ける。

「二人は何も言わないのかしら?」

「まあ、別に救世主にそんなに固執してないですから」

「さっきも言ったように、守りたい者を守れれば。
 ただ、その為に救世主にならないといけないと言うから、私達はここに居るだけです」

「だから、他の者が救世主となったとしても、結果が同じなら問題ないです。
 それに、救世主になれなくても、その手伝いは出来ますし」

「そう。あなた達の考えは分かったわ」

納得するミュリエルとは違い、リリィはまるで睨むように二人を見詰めた後、その口を開く。

「神聖な救世主を選ぶこのクラスに、あんたたちみたいないい加減な人たちが居るなんて…」

「勘違いするなよ、リリィ。別に、救世主にならないとは言ってない。
 それで破滅を滅ぼす力が手に入るのだから、当然、なるつもりはある。
 救世主となった誰かが傷付くよりも、自分が傷付く方が楽だからな。
 ただ、それは目的ではなく、手段と言っただけだ。
 救世主になれなかったとしても、目的を果たす為の方法を考えているだけだ」

恭也の言葉にリリィが言葉に詰まる。
そのタイミングを見逃す事無く、ミュリエルが口を挟む。

「リリィ、そこまでにしておきなさい。
 人の誠とは、その人によって違うものです。
 二人の言葉には誠があります。その価値観を自分の物差しで判断し、批判してはいけないわ」

「それでは、お義母さまは救世主なんかどうでもいいと…」

「そうは言ってません。ですが、ある意味では、そうですね。
 恭也くんの言う通り、我々の目的は破滅を滅ぼす事です。
 その為に、救世主という存在が必要なのです。
 ですが、彼が言ったように、救世主だけではなく、それを支える者たちも必要なのも確か。
 どちらにせよ、今の段階では書を取りに行かなければならないという事は変わりません。
 ならば、それから判断してもいい事でしょう。
 書に辿り着き、真実を知ってどうするか。それこそが、救世主の誠」

ミュリエルはそう締め括ると、もう一度全員を見渡す。
リリィも落ち着いたのか、静かにその視線を受け止める。
それを見届け、ミュリエルは話を終えようと口を開きかけるが、そこで地響きが起こる。

「これは?」

未亜が不安そうに声を上げるのを聞きながら、ミュリエルは安心させるように言う。

「ダリアだわ。リコ・リスさんが見つかったのかしら?」

その言葉の正しさを証明するように、いきなりドアを開けてダリアが部屋に飛び込んでくると、挨拶もなしに切り出す。

「た、大変ですぅー!」

「どうしました、ダリア」

「リ、リコちゃんが、一人で地下禁書庫に!」

ダリアの言葉に驚く一同の中、リリィは一人冷静に考える。

「きっと、あの子のことだから、召喚陣が爆破されたのを自分の責任だと思って、一人で書を取りに行ったんだわ」

「しかし、あれはリコのせいじゃないだろう」

「それはそうだけれど、リコはそう思ってなかったって事でしょう。
 必ず私達が帰れるようにするって言ってたじゃない」

恭也とリリィがいつもの喧嘩へと発展するよりも早く、ミュリエルがダリアへと確認するように尋ねる。

「何故、リコが禁書庫に入ったと?」

「リコちゃんを探して図書館へと行ったら、禁書庫の扉に召喚陣が描かれていたんですぅ」

「…即席の召喚陣で、扉の向こうへと自分を逆召喚したのね」

ダリアの言葉を聞き、リリィがそう結論を出すと、恭也は聞き慣れない言葉にリリィへと聞き返す。

「逆召喚?」

「招くのではなく、送る事よ。元の世界へと送り返す時にするのと同じ」

「つまり、扉の向こうへと自分自身を送った訳か」

恭也たちの会話を聞きながら、ミュリエルは怪訝そうに眉を顰める。

「しかし、あの扉の向こうには結界があるはずよ。
 召喚は出来ないはずなのに…」

「学園長、そんな事は後で考えれば良いんではないですか。
 それよりも、早くリコを!」

ミュリエルの呟きに恭也が真っ先にそう言うと、隣でリリィも頷く。

「その通りね。バカ恭也もたまには良い事言うじゃない」

「バカは余計だ」

そんな二人のやり取りを眺めつつ、ミュリエルは一つ頷くと結論を出す。

「そうですね、分かりました。これが禁書庫の扉の鍵です。
 中に入れば後は下へと降りていくだけです。
 後、何度も言いますが、中は危険に満ちています。
 無理だと思ったら、無理をしないで戻ってらっしゃい」

『はい』

ミュリエルの言葉に返事を返すと、恭也たちは図書館へと急いで向かう。

「待ってろよ、リコ。今すぐに行くから、無理はするなよ」

恭也の呟きは誰に聞かれる事もなく、ただ静かな廊下へと消えていった。





つづく




<あとがき>

さて、いよいよ次回は導きの書の元へ。
美姫 「果たして、そこで待っているものとは」
さて、それは何でしょう。
美姫 「それじゃあ、また次回でね〜」
ではでは。





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