『DUEL TRIANGLE』






第二十二章 ゼロの遺跡に潜む罠





偶に王宮からの要請という形で地方へと向かう恭也たちは破滅の接近を肌で感じていたが、
王宮付近では、僅かに嫌な予感を感じる者たちもいるものの、概ね表面上はまだ落ち着いていた。
ナナシも他の救世主候補たちと打ち解けてきた頃、学園長よりまたしても王宮からの要請の話がくる。
今度はゼロの遺跡と呼ばれる場所でモンスターの集団が跋扈しているとの事だった。
こうして救世主一行はゼロの遺跡へとやって来たのだった。
そして、救世主候補たちを引率しているのは…。

「はぁ〜い、皆さん、ここがゼロの遺跡ですよ〜。
 前回の救世主戦争の影響で今は遷都してしまいましたが、昔、王都があった場所よ〜。
 こうして目を閉じると、歴史の重みが〜。……まあ、それは置いておいて、長旅ご苦労様〜。
 ようやくの到着ですよ〜。本当に疲れたわね〜。」

ダリアだった。
ダリアはここが戦場のど真ん中になるかもしれないのにも関わらず、
相変わらずのおっとりとした口調で一気に喋る。
その手には、例の救世主候補ご一行様と書かれた三角の小さな旗をしっかりと持っているあたり、
意外と気に入っているのかもしれない。
そんなダリアに何も言わず、恭也たちはこれからの行動を決めるべく話し合いを始める。

「さて、どうしたもんか」

「話によると、モンスターたちはこの村を占拠した後、遺跡を掘り返しているみたいですが」

ベリオの言葉に恭也は向こうに微かに見える遺跡らしきものを眺める。

「この辺りからだと、それらしき影も見えないな」

「それに、この村には気配がないでござるよ師匠」

「ああ。これは、手分けして探し出すことからやるしかないな」

「恭也の意見に賛成ね。倒すにしても、標的がいない事には始まらないわ」

リリィがそう言ったのを皮切りに、他の者たちも頷く。
特に他の意見もないようだったので、ベリオが纏めるように口を開く。

「それでは、未亜さんとナナちゃんはここにいて皆からの連絡を取り次いで…」

「いや〜ですの〜。ナナシはダーリンと一緒が良いですの〜」

ベリオの言葉を遮って言うナナシに、ベリオは静かに顔を向ける。

「ナナシさん。あなたは救世主クラスの生徒で、私たちのクラスメイトですよね」

「そうですの〜。皆、お友達ですの」

「ええ、そうですね。そして、それはつまり、チームメイトという事でもあります。
 だったら、チームワークを乱すような行為は皆に迷惑を掛ける事になるという事を知ってください」

「…ダーリンが迷惑するんですの?」

「はい。恭也くんだけでなく、私たちもです」

「……分かったですの。ここで大人しく待つですの〜」

ナナシが納得したのを見て、ベリオは話の続きを話し出す。

「それで、恭也くんは西から、リリィは北を。
 カエデさんは東、美由希さんは南をお願いします。
 リコは私と一緒にこの周辺を…。
 それで良いですか?」

ベリオの言葉に誰も異論を唱えず頷く。
それを確認すると、最後に締めるように言葉を繋げる。

「敵を発見した場合は、それぞれの判断で行動するという事で。
 ただし、絶対に無理をせず、その場合は未亜さんたちへと連絡をするように」

最後の言葉にこれまた全員が頷くと、
後ろの方で誰からも相手にされずに拗ねているダリアを残し、恭也たちは行動に移るのだった。







辺りの様子を窺いながら慎重に歩を進めて行く。
と、前方の開けた空間、元は立派な建物があったのだろうと思わせる壁が続く中、
壁同様に既に崩れて長い年月が経っているであろう事を思わせる幾本もの柱の間に動く影を見つける。
恭也は気配を殺し、そっと近づく。
モンスターたちは恭也には気付かず、回りの建物跡を何かを探すようにきょろきょろと見渡す。
また何匹かのモンスターは、地面へと鋭い爪を突き立てて土を掘り返していた。

(……一体何を探しているんだ)

そう疑問に思いはしたものの、すぐに頭を振って全体の数を眺める。
ざっと見渡したところ十四匹が目に付き、辺りには他のモノの影は見えない。
恭也は相手の力量を見極め、これなら問題ないと判断すると、静かに柱から柱へと身を隠すようにして移動する。
その間もモンスターたちは個々の作業に掛かりきりになっており、全くと言って良いほど警戒していなかった。
恭也はもっとも手近にいたモンスターの背後へと忍び寄ると、そっと柱の影へと連れ込んで胸を一突きする。
断末魔の悲鳴を上げることすらなく絶命して消えるモンスターを一瞥すると、次の標的を捉える。
崩れているものの、1メートル半という高さを未だに保っている壁の近くに居るモンスターへと狙いを定めると、
恭也は音もなく壁の後ろへと移動する。
周りの状況を見て、こちらへと注意しているモノがいない瞬間を狙い、モンスターの喉元を掻き切る。
噴き出した鮮血にようやく数対が恭也の存在に気付くが、その時には恭也は既に物陰から飛び出して飛針を投げている。
こちらに気付いた三体のうち二体のモンスターの目を飛針が貫き、声を上げさせる。
その間に残る一体も斬り伏せられる。
ようやく襲撃者に気付いたモンスターたちが恭也へと向かってくる頃には、
目を貫かれたモンスター二体へと恭也の刃から斬撃が飛び、この二体も倒れていた。
残るモンスターの群れの中へと飛び込むと、恭也はルインをニ刀振るう。
それから程なくして、その場にいたモンスターは全て倒されていた。
恭也は他にモンスターが居ない事を再度確認すると、再びゆっくりと歩き出す。



どれぐらい歩いただろうか、ふと前方に影を見つけ、近くの物陰に隠れる。
用心深く前方を見た恭也は驚いた表情で思わず物陰から飛び出す。
その物音に驚いたのか、その前方の影は恭也の方へと驚いたように顔を向ける。
そして恭也の姿を見ると、目を驚きに見開き、口もぽかんと開けたまま恭也を見る。
恭也の方も同様に驚いた顔を見せていた。
恭也が見詰める先、瓦礫混じりの中に長く綺麗な髪を風になびかせている一人の女性が居た。
逃げ遅れた住人なのだろうが、恭也をモンスターの仲間かと疑っているのか、女性は一言も発さない。
恭也は落ち着かせるように両手を広げてゆっくりと女性に近づく。

「俺は別にモンスターではないですよ。
 学園の方から派遣された者です」

恭也がそう言葉を発すると女性は安心したのか、小さな笑みを見せる。
それから徐に口を開く。

「…学園?」

「ええ、そうです。所で、こんな所でどうしたんですか?」

「ええ、ちょっとね」

そう答えながら、女性は小さく寂しそうに目を伏せる。
それに気付かぬまま、恭也は女性へと話し掛ける。

「この辺はモンスターがいて危ないですから、俺の仲間の所まで連れて行きましょう」

「いえ、それには及ばないわ。
 すぐにでもここから立ち去るから」

「ですが…」

「お気遣いありがとう。でも、本当に大丈夫だから。
 それじゃあ、私はそろそろ行くわ」

「そうですか。分かりました。でしたら、あちらならモンスターは居ませんから」

これ以上は引き止めても無駄だと悟った恭也は、自分が今しがた来た方向を指差す。
女性は小さく頷くと、恭也とすれ違うようにしてそちらへと歩いて行く。

「…そう、まだなのね」

「何か、言いましたか?」

すれ違いざまに聞こえた小さな呟きに恭也が振り返って尋ねるが、女性は小さく首を振る。

「いいえ、何も。それじゃあ、またね」

そう言うと、女性は振り返りもせずにこの場を立ち去る。
その背中を何となしに見送った後、モンスターの探索に戻ろうとした恭也の耳に爆発音が響く。
そちらへと視線を向けると、薄っすらと煙が立ち昇っていた。

「あっちは北……。リリィか」

恭也は呟くなり煙の上がる場所へと駆け出す。
小さくリリィの姿が認識できるほどに近づいた恭也の目に、モンスター相手に魔法を放つリリィの姿が映る。
数体のモンスターに接近され、苦戦を強いられている。
それでも、体捌きでモンスターの攻撃を躱しながらリリィは詠唱を続ける。
最も近くにいるモンスターへと、近すぎて放てないため、少し離れたモンスターへと炎の玉が飛び弾ける。
爪を身体を捻って躱し、がら空きとなったボディへと回し蹴りを叩き込むと、リリィは距離を開ける。
しかし、リリィを囲むように広がっていたモンスターたちが輪を縮め、またしても接近を許す。
忌々しそうに顔を顰めつつ、詠唱に入るリリィへと一体のモンスターが爪を振り下ろす。
完全な死角からの一撃に気付いたときには既に遅く、眼前まで爪を迫っていた。
思わず詠唱を止めて目を閉じたリリィの耳に、金属的な音が届く。

「ぎりぎり間に合ったな」

「恭也!?」

「話は後だ。先にこいつらを」

「分かったわ」

恭也の言葉に頷くと、リリィは再び詠唱に入る。
それを阻止しようと向かって来るモンスターには恭也の刃が襲い掛かり、
モンスターたちはリリィに近づくことが出来なくなる。
その隙にリリィの詠唱が止み、一際大きな魔法が群れの中心へと炸裂する。
土砂を巻き込むように爆発を起こす中、恭也は手近にいたモンスターを斬り伏せる。
囲の一角が崩れたのを見て、モンスターたちの輪が僅かに乱れる。
その隙に恭也が走りこみ、その後ろをリリィの魔法が援護する。
さっきまでとは立場が完全に逆転し、今度はモンスターたちが追い詰められていく。
こうしてモンスターたちが全滅するのに、大した時間は掛からなかった。
全てのモンスターを倒し終えた後、リリィが何処か怒ったような顔で視線を逸らしつつ、ぶっきらぼうに声を掛ける。

「ごめん。助かったわ」

「いや、別に大したことはしてないさ。助け合うのは当たり前だからな。
 それよりも、リリィは魔法使いなんだから正面きって闘うのは…」

「分かってるわよ! でも仕方ないでしょう!
 待ち伏せされていたんだから!」

「待ち伏せ?」

「ええ。私がここに来た時、突然周りを囲まれて…」

リリィの言葉に恭也は少し考え込むと、前回の一件を思い出す。
村長に化けていたモンスターの事を。

「ここにいる奴らも知恵が回るという事か」

「かもね。それに…」

「ああ。俺たちの動きが漏れていたかもしれないな」

「確証はないけれどね」

二人は顔を見合わせて気難しい表情で次の行動をどうするか考える。
先に案を出したのは恭也だった。

「とりあえず、未亜たちの所へと戻った方が良いかもな」

「そう……いいえ、それは止めた方が良いかもね」

賛成しかけたリリィだったが、すぐにその案に反対を示す。
撤退が嫌なのかと思って口を開こうとした恭也だったが、リリィの言わんとする所を悟ると一つ頷く。

「確かに、ここから南の方向は止めておいた方が良いみたいだな」

「でしょう。私、耳には結構、自信があるのよ」

リリィの言葉が終わるか否か、二人の耳に低い獣の唸り声が聞こえて来る。
ぐるる、ぐるるる、と獲物を狙うような声を聞きながら、二人は顔を見合わせると同時に頷く。

「東よ!」

「異議なしだ」

二人は声のした方を迂回するように東を目指して走る。
その後ろから、数匹のモンスターが姿を見せる。

「あれぐらいなら何とかなりそうだが、その間に増援が来そうだな」

「ええ。それに、現状が分からない以上、下手に手を出さない方が良いわ」

「だな。とりあえず、このまま東へと出てカエデと合流しよう」

「ええ」

二人はモンスターを振り切るように速度を上げると、東目指して走る。
と、向こうからも走ってくる影が二つ。

「師匠〜」

「恭ちゃん!」

「カエデ、美由希。無事だったんだな」

走ってくる人物を見て恭也はほっと胸を撫で下ろす。
その恭也の後ろから、リリィの鋭い声が飛ぶ。

「再会を喜んでいる場合じゃないわよ!
 二人とも、敵まで連れて来てどうするのよ!」

「そうは言われても、不可抗力でござるよ」

「そう言うリリィさんたちも連れて来てるじゃない」

「こっちも不可抗力よ!」

「喧嘩している場合か」

再会した四人は、同時に前後をモンスターに囲まれる。

「とりあえず、ここにいる奴らは倒すしかないな」

「でござるな」

恭也の言葉に全員が頷くと、それまで逃げていたのを一転し、戦闘態勢へと入る。
本気になった四人の前に、モンスターたちは反撃らしい反撃もできず、
恭也の刃に、カエデの貫き手に、美由希の小太刀の前に倒れて行く。
三人がモンスターを引きつけている隙に、リリィが威力が大きい代わりに詠唱に時間の掛かる大きな魔法を完成させ、
それでモンスターの大半を吹き飛ばす。
リリィの魔法を脅威と悟ったのか、リリィを狙い出すモンスターたちだったが、
三人の戦士の前に近づくことも出来ぬまま絶命するモンスターが続出する。
そこへ止めとばかりにリリィの魔法がまたしても炸裂し、程なくしてモンスターたちを全滅させる。
ようやく一息吐ける状態になり、恭也はまず美由希たちから話を聞く。

「拙者たちも待ち伏せされていたでござるよ」

「うん。気が付いたら敵に周りを囲まそうになっていて。
 北からは敵がたくさん来たから、とりあえずカエデさんと合流しようと思って」

「美由希殿と合流したまでは良かったでござるが、良く先々で待ち伏せされていたでござるよ」

「どうやら、また背後に…」

「前回のように知恵袋がいるって事ね」

恭也の言葉を取るようにリリィが放った言葉に、全員が嫌な気分に陥る。
それを振り払うように恭也が声を上げる。

「まあ、ここで考えていても仕方ない。
 とりあえず、未亜たちが気掛かりだ」

「そうね。行くしかないわね」

頷く一同の行く手に新手のモンスターたちが姿を見せる。
それを見据えたまま、恭也たちは無言で視線を合わせると一斉に走り出すのだった。





 § §





「はぁー、はぁー」

「未亜さん、大丈夫ですか」

「は、はい、何とか。ベリオさんこそ」

「私も大丈夫です。リコは」

「…大丈夫」

「ナナシは少し疲れたですの〜」

「もう少し耐えてください。恐らく、恭也くんたちが来てくれるはずですから」

ベリオの言葉に全員が頷く。
未亜は弓に矢を番えると、最も密集している個所へと放つ。
未亜の手から放たれた弓は光を纏い、突き抜けるように真っ直ぐに突き進む。
すぐさま次の矢を番え、更に放つ。
一本だったはずの矢が放たれると同時に無数の矢となり、敵の頭上へと雨のように降り注ぐ。
ベリオが掲げた杖から一際大きな光の輪が生まれ、モンスターの身体を切り裂きながら進む。
輪から逃れたモンスターへと、リコの雷が降り注ぎモンスターを打ち倒していく。
そんな三人の攻撃を何とか掻い潜って近づいてきたモンスターへ、ナナシの手から包帯が伸びてその身体を包み込む。
ナナシがそこへ注ぎ込むように魔力を込めると、包帯に包まれたモンスターは光を放って消える。
かろうじてモンスターたちの攻撃を凌ぐベリオたちだったが、ナナシの死角から二体の敵がベリオたちへと押し寄せる。
気付いたナナシが一体へと包帯を飛ばして倒したものの、もう一体の剣が未亜へと迫る。
と、モンスターと未亜の間に薄い光の壁が出現し、剣を受け止める。
その間にそのモンスターへとナナシが迫り、その身体を包帯で絡め取る。

「ごめんなさいですの〜」

「ううん、大丈夫だったから」

「そうですよ。ナナちゃんはよくやってくれてます」

「…チームワーク」

「ありがとうですの〜。それじゃあ、もっともっと頑張ってダーリンにも褒めてもらうですの♪」

嬉しそうに言いながらまたしても近づいてきた敵を包帯で絡めとり投げ飛ばす。
打ち所が悪かったのか、空中高くから地面へと激突したモンスターはそこで動きを止める。
そんなナナシに苦笑を漏らしつつ、未亜たちも攻撃の手を休める事無く繰り出す。
それでも、圧倒的な数を前に徐々に押され始める。
未亜たちを囲む輪が徐々に縮まり始め、未亜たちの顔にも疲労が出始める。
その中にいて一人だけ元気なナナシが奮闘して接近する敵を倒していくが、それでも徐々に打ち漏らしが出始め、
未亜たちが討ち取るといった場面が出てくる。
そして、遂に敵の数体が未亜たちへと踏み込んでくる。
他へと対応をしていた未亜たちに迎え撃つすべはなく、凶刃が振り下ろされるのを待つだけだった。
が、いつまで経ってもそれは振り下ろされることなく、逆にその身体がゆっくりと後ろへと倒れて行く。
そのモンスターだけでなく、未亜たちに近づいていたモンスター全てが倒れており、
その向こう側にはルインから斬撃を飛ばした恭也と、掌をこちらへと向けているリリィ、
そんな二人を守るように両脇に立つ美由希とカエデの姿があった。
リリィはベリオの姿を見つけると、不適な笑みを見せる。

「流石ね。よく持ちこたえたじゃない」

「ええ。攻撃ではリリィに劣りますけれど、防御と癒しに関してはリリィ以上って自負してますから」

お互いに笑みを交し合う二人の間に、恭也が遠慮がちに割って入る。

「感動の対面の所を悪いが、出来れば後にしてくれると助かる」

「確かにそうね。こうも周りがうるさくちゃね」

「同感です。それじゃあ、続きはこのモンスターたちを倒してからという事で」

「遠慮なくいかせて貰うわよ!」

リリィが走り出し再び詠唱に入ると同時、周りにいたモンスターたちが殺到する。
それを美由希とカエデが斬り伏せる中、恭也もまたベリオたちと合流すべく突き進む。
援護するように未亜の矢やリコの魔法が飛び、ベリオは自分たちの周囲に防御壁を作り出す。
あっという間に合流を果たした恭也たちは、一気に攻勢へと移る。
前衛の恭也たち四人がそれぞれ四方へと飛び出し、その後ろから後衛のベリオたち三人が援護する。
その隙にリリィが大きな魔法を唱えて解き放つ。
かなり数のいたモンスターたちがどんどんその数を減らしていく。
しかし、流石に数が多すぎたのか、徐々に疲れが出始める。
それから少しして、ようやく全ての敵を打ち倒したときには、全員が流石に疲れた表情でいた。

「何とか終わったか…」

「う、うぅぅ、流石に疲れた〜」

恭也の言葉に美由希も本当に疲れたような声を出す。
それを皮切りに、全員がその場に腰を降ろす。

「本当に疲れたでござるよ」

「はぁー、はぁー、はぁー」

「未亜ちゃん、大丈夫ですの〜?」

それぞれに疲れつつも無事を喜び合った後、重い身体を何とか動かす。

「それじゃあ、村の入り口に戻るか」

恭也の言葉に反論などなく、美由希たちは一刻も早く帰りたいと歩き出す。
ようやく辿り着いた村の入り口で待っている馬車を見て、知らず早足になる。
しかし、そこにいるべき筈の人物が居ない事に気付き、全員に緊張が走る。

「ダリア先生!」

誰ともなく駆け出して場所へと近づく。
そこで全員の動きが止まる。
恭也たちが見たのは、馬車の中で横に倒れているダリアだった。
全員がじっと見守る中、幸せそうな顔をしたダリアの口から、これまた幸せそうな寝言が漏れる。

「ん〜。もう飲めない〜。でも勿体無いから、飲む〜♪」

これには流石の恭也たちも優しく起こすという選択など取りようもなく、
全員の怒声が目覚まし代わりとなって辺りに響く。

『ダリア先生!!』

「えっ!? わっ! きゃぁっ!」

突然の怒鳴り声に慌てて飛び起きたまでは良かったが、そのまま馬車から落ちてしまうという失態に、
誰ともなく笑い声が上がる。
そんな中、事情を知らないダリアはふてくされた顔で恭也たちを見上げていた。
こうして、どうにか任務を終えて騒々しい日常へと戻ってきた救世主一向の第一声は、
しかし、ダリアには大層不満だったそうである。。

その帰りの馬車で、学園に着くまで馬車の中で眠りこけていたダリアに全員のきつい視線が飛んだのは、
まあ、仕方のない事だろう。





つづく




<あとがき>

さてさて、ナナシも加わって戦略もパワーアップ?
美姫 「とりあえず、次回からはどうなるのかしら」
ふふふふ。それはまだ秘密だ♪
とりあえず、次回をお楽しみに。
美姫 「はいはい。楽しみにしてるから、さっさと書いてね」
ぐぅっ。が、頑張る……。
美姫 「はいはい、頑張ってね〜」
それじゃあ、また次回で。
美姫 「まったね〜」




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