『DUEL TRIANGLE』






第二十六章 苦い敗北感





左右のルインを振るい、ロベリアの攻撃を弾き、反撃を繰り出す。
互いに引く事なく振るわれる剣による乱舞に、二人の腕には細かな傷が浮かぶ。
それを気にする事無く続くかと思われた乱舞は、ロベリアの後方への跳躍により唐突に終わりを告げる。
後方へと飛び退きながら、ロベリアは左手に握った剣を頭上へと掲げる。
切っ先に赤く蠢く球体が集まり、着地と共に剣を右から左へと斜めに振り下ろす。
切っ先から放たれた赤い球体は、真っ直ぐに恭也へと向かう。
地面から数センチ上を地面を削りながら飛んでくる球体へ、恭也はルインから放った黒い斬撃をぶつける。
しかし、全く効いていないのか、表面にぶつかると黒い斬撃の方が消し飛ぶ。
それならばと、ニ刀を頭上で交差させるように掲げ、同時に振り下ろす。
交差するように振り下ろされたルインから、それぞれ黒い斬撃が飛ぶ。
二つの斬撃はクロスに重なり、赤い球体にぶつかる。
一瞬、二つの力が拮抗するように共に動きを止め、次いで双方ともに砕け散る。
その衝撃で土埃や砕けた地面の破片が上がる中、二人は同時に前に出る。
高速で振るわれるロベリアの斬撃に対し、恭也はルインを鞘へと納めており、それを抜き放つ。
ロベリアの剣に二度衝撃が伝わり、三撃目が浅く腕を斬り、四撃目が横腹を薙ぐ。

「ぐっ」

短く息を洩らし、斬られた脇腹を押さえつつ、ロベリアは距離を開ける。
それをさせまいと距離を詰めようとした恭也の耳に、空気を振るわせる轟音が突き刺さる。
見れば、離れた個所で黒煙がもくもくと立ち昇っていた。



距離を詰めてくるリコを冷ややかに見ながら、イムニティはリコとの距離を取り続ける。
その間も詠唱は続けながら、時折来るリコの魔法を避け続ける。
ロベリアと恭也の戦っているであろう場所から、小さな爆発音が届き、
リコの注意が一瞬だけだが逸れる。
その隙に更に距離を開けつつ、詠唱を終えた呪文を解き放つ。
イムニティの力ある言葉の解放と共に、眼前の空間が歪む。
まるで渦を巻くかのように歪んだ空間は、ある程度進むとはや戻しをしたかのように戻り出し、
そこに縦に長い楕円形の亀裂を作り上げる。
その亀裂から外へと膨大な熱量が溢れだし、ゆっくりと大きな岩のようなものが姿を見せる。
ただし、単なる岩などでないのは、その周りを取り巻くオレンジがかった黄色にも見える炎が現していた。
空間の裂け目より現れたイムニティの身長ほどの岩は、イムニティが腕を振り降ろすと、
それを合図として爆発し、無数の欠片となって辺りに降り注ぐ。
一欠けらが拳大ほどの大きさの岩は、爆発の威力で加速して鎧を突き破り、騎士の身体に突き刺さる。
また、その欠片も炎に包まれており、触れるだけでもその身を焦がす。
表面温度は軽く数百度といった、言わば小さな隕石による襲撃に、周辺にいた王国軍は壊滅される。
リコは咄嗟にシールドを張り、何とか防いでいるものの、その衝撃は重く、
また連続して降り注ぐ攻撃に、体力と魔力の両方を削り取られていく。
辺りは、地面へと降り注いだ岩により、土埃が立ち込めて視界も悪くなっていく。

「もらったわ」

不意に背後から聞こえた声に振り向くよりも早く、リコの肩に手が置かれ、そこから雷撃が走る。
身体に痺れが走り、リコは身体を仰け反らせると地面へと倒れる。
痺れる体に力を込め、顔を上げてイムニティを睨む。
そんなリコにイムニティは勝ち誇った笑みを浮かべつつ、右掌をリコへと向ける。

「さようなら、オルタラ。いいえ、リコ・リス」

言って魔力を集中させて放とうしたイムニティへ、土煙を斬り裂くように黒い斬撃が飛んでくる。

「ちっ! 赤の主!」

リコへと放つ魔力弾で斬撃を吹き飛ばすと、イムニティは後ろへと飛ぶ。
イムニティが居た場所へと突き刺さるルイン。
後少し遅ければ、ルインによって何らかの怪我をしていたかもしれない。
煙が晴れた向こうに立つ恭也を忌々しげに睨みつつ、イムニティはふと視線を背後へと向ける。
恭也の背後では、片手で脇腹を押さえながらも、ロベリアが立ち上がっていた。
僅かに震える声でロベリアがイムニティへと声を掛ける。

「イムニティ、今日はこのぐらいにしておくわよ」

「…仕方ないわね。まあ、こっちの目的は大体済んだから良いわ」

言ってイムニティの姿が掻き消えたかと思えば、ロベリアの隣に現れていた。
リコを背に庇うようにして、ルインを二人へと構えながら恭也は口を開く。

「逃げるのか」

「挑発には乗らないわ、赤の主」

「恭也、次はこうはいかないわよ」

言って立ち去ろうとする二人へと飛び掛ろうとするも、その間にモンスターたちが立ち塞がる。
立ち塞がったモンスターを全て斬る捨てる頃には、既に二人の姿はなかった。
二人の破滅の将の撤退に合わせ、モンスターたちも撤退していくのを見て、
恭也は肩を竦めると、リコの傍にしゃがみ込む。

「大丈夫か、リコ」

「…ええ、もう大丈夫です。すいません、マスター」

「気にするな。にしても、やけにあっさりと引き下がったな」

リコの手を引いてその身を起こしながら言った言葉に、リコも同意する。

「…はい。それに、ロベリアも本気を出していませんでした」

「だろうな。何が狙いだったのかは分からないが、撤退したのなら俺たちも戻ろう」

「はい」

大きな被害を受けながらも、表面上は破滅軍を撃退した王国軍だが、
恭也とリコはその足取りも重く、王宮へと引き返すのだった。





  ◇ ◇ ◇





時間は少し戻って、リリィたちの戦闘はまだ続いている。
巨大な剣に魔力が集まり、今まさにリリィへと目掛けて放たんとするメイ。
そこに、一つの声が届く。

「待つですの〜」

背後より聞こえた声に、メイが思わず振り返ると、そこには右手を腰に、左手を空へと掲げ、
両足を肩幅に開いたポーズを取っているナナシの姿があった。
そのあまりにもな登場に、メイを始め、リリィたちでさえも思わず呆然となる。
そんな事などお構いなく、ある意味マイペースにナナシは口上を続ける。

「点呼ぶ〜」

「いいえ、私たちの目がすでに点なんですけれど…」

「智が呼ぶ〜」

「智って、あんたの何処に脳みそがあるのよ!」

「愛しいダーリンが呼んでいる〜」

「恭也さんは、ここには居ないんだけれど…」

ナナシのあまりと言えばあまりな登場に、思わずベリオたちは反応してしまう。
と、ふとベリオが今更ながらの疑問を口にする。

「そういえば、ナナシさんは今まで何処に?」

その呟きに応えるように、ナナシは左右の腕のポーズを入れ替えると、声も高らかに告げる。

「ナナシは、突撃という声を聞いた後、バラバラにされた身体を集めていたんですの〜」

「…つまり、味方の行軍に巻き込まれてバラバラになっていたと…」

呆れて呟くリリィに、未亜たちも状況を忘れて溜め息を吐く。
一方、攻撃の手を休めていたメイは、今まで、ゾンビなので破滅側だと思っていたが、
会話の内容からナナシが敵であると認識するや否や、リリィへと放つつもりだった攻撃をナナシへと放つ。
空気さえも震わせるように、強大な魔力をその刀身に満たした巨大な剣は、真っ直ぐにナナシへと向かって行く。

「いや〜、ですの〜。こないでください〜」

叫びつつ、ナナシは両手に巻かれた包帯をするすると解くと、手近に居たモンスターに絡ませ、
迫り来る剣へと次から次へと投げつける。
数体のモンスターの身体を切り裂き飛ぶ剣も、十数体ものモンスターを連続して投げられてはその勢いも衰え、
ナナシの元へ届く前に、トカゲの姿をしたモンスターの背中に刺さって止まる。
メイはそれをただじっと見詰めている事はなく、ナナシへと剣を放った後は、
すぐさまリリィへと向かって次の剣を放っていた。
しかし、その頃にはリリィも迎撃の準備は出来ており、魔法でそれを打ち落とす。
その隙に未亜がジャスティによる一撃を放つも、これを難なく躱し、
そこへ向かってきたナナシの攻撃を、剣で受け止める。
接近戦も手馴れている様子で、ナナシの攻撃を剣で受け流しながら、常に未亜かリリィの直線状にはナナシを置き、
残った一方とベリオへと牽制で、弓から剣を放つ。

「くっ。もの凄く戦い慣れしているじゃない」

「ええ。しかも、一対一だけじゃなくて、対多数戦にも」

リリィの傍で防壁を張ってメイの一撃を防ぎながら、ベリオも同意の声を上げる。

「これが、破滅の将って訳ね。確かに、雑魚たちとは格が違うわね。
 でもね、負けられないのよ私は、私たちは! ベリオ、いつまでも防御に徹していても仕方ないわ」

「分かっていますけれど…」

リリィは離れた所に居る未亜を見る。
遠くからでも未亜が頷いたのを見て、リリィはベリオに二、三言何かを言うと走り出す。
丁度、メイを挟んで未亜と反対側の位置へと。
そんなリリィへとメイからの一撃が襲い掛かる。
それを躱しながら、リリィはメイへと雷を飛ばす。
ナナシの攻撃をいなしながら雷を躱すメイの頭上から、放物線を描くように白い輝きが降りてくる。
メイの手前で落ちたソレは、地面へと接触するなり爆発し、辺りを白く染め上げる。
爆風と光によって僅かに目を細めるが、爆発地点から離れている事と、ナナシの後方で爆発した事もあり、
ダメージは全くと言って良いほどない。
逆に、ナナシの方が吹き飛ばされている。
一瞬だけ除いた視界の隅で、恐らくこの術を放ったであろうベリオが力なく腕を垂らしている事から見て、
怪我によって術の制御を誤ったのだろうと検討をつける。
それよりも先当たっては、と、自分の左右に展開している未亜とリリィへと視線を向ける。
盾とするナナシが居なくても何とかなるだろうと、まずはリリィへと牽制の一撃を放とうとして、
その腕が止まる。
見れば、両腕に白い包帯が巻きつき、それが地面へと伸びている。
その元を辿れば、地面に腕が転がっており、それが手にした包帯だった。
腕だけでなく、足にも包帯が巻きつくに至り、メイは改めて自分の周囲を見る。
見れば、先ほどの爆発で吹き飛んだと思われたナナシの腕や足がバラバラにメイの周囲に散らばり、
そこから包帯が幾重にも伸びてメイの自由を奪っていた。
メイから遠く離れたナナシの頭をベリオが抱き上げる。

「ご苦労様です、ナナシさん」

「うわぁ〜ん、遺体ですの〜」

「えっと、まあ、確かに遺体とも言えなくもないのかも…」

「あ、違ったですの。痛いですの〜。
 リリィちゃんも、酷い作戦を思いつくですの〜。
 でもでも、これだけ頑張れば、きっとダーリンに褒めてもらえるんですの〜」

本当に痛いのかどうか疑わしげにナナシを見下ろしつつ、ベリオは視線をメイへと向ける。
メイは手足の拘束と解こうとしているが、それよりも早く、リリィの魔法と未亜の矢が襲い掛かる。
頭上からは無数に降り注ぐ矢の雨。
横からは、メイの胸辺りまであろうかという火炎弾。
手足は拘束され、避ける事は出来ない。
二人の攻撃が、メイへとぶつかる。





頭上からのセレナの一撃を何とか躱したカエデは、反撃を諦めて更に距離を開ける。
その判断は正解で、地面を一撃で陥没させたセレナの剣が、すぐさま上へと向かって振り上げられる。
背後から美由希が迫り、セレナの背中目掛けてセリティを振り下ろす。
それを背中に目でも付いているのか、全く振り返る事無く宙に跳んで躱す。
躱すだけでなく、そのまま頭上から美由希へと襲い掛かる。
美由希は前へと転がり、その一撃をやり過ごすと、カエデの横に並ぶ。
それを見届け、セレナはゆっくりと剣を口に咥えて、両手を地面へと着ける。
まるで、獣が今にも飛び掛らんとしているかのごとく、喉を鳴らし、飛び掛るタイミングを計るセレナ。
美由希とカエデは構えながら、思わず生唾を飲み込む。
騒がしい戦場に置いて、この周囲だけが別世界のように静まり返る。
そして、溜めた力をバネに、セレナが飛び掛ろうとして、不意に後方を眺める。
何があったのかは分からないが、これを逃せば後がない絶好のチャンスと二人は同時に飛び出す。
しかし、そんな二人の事など視界に入っていないのか、セレナは無造作に剣を地面に突き刺してそのまま振り抜く。
たったされだけの事で、剣の突き刺さった周辺の地面が、下から何かが噴き出したかの如く盛り上がり、
噴火したかのように大量の土砂を巻き上げる。
それだけでなく、振るわれた剣の切っ先から、紅い衝撃波のようなものが、
まるで地面から生えてきているかのように二人へと飛んで行く。
受ける事は無理と判断し、二人は同時に飛び退いて躱す。
その間も降り注ぐ岩塊や、礫などを避ける。
ようやく、二人の視界が戻ったときには、セレナの姿はなかった。

「一体、何処に!?」

「…美由希殿! あそこでござる!」

カエデが指差す先では、動きを封じられたメイ目掛けて、リリィと未亜の同時攻撃が放たれた所だった。
大量に降り注ぐ矢の雨を意にも返さず飛び込んだセレナは、そのままメイの手足を縛る包帯を一刀の元に斬り千切る。
次いで、両手に構えた剣を身体ごと一回転させ、上へと振り上げる。
それにより生じた暴風が渦を巻き、竜巻の如く立ち上り、頭上より迫る全ての矢を叩き落す。
セレナはそのまま動きを止めず、振り上げた剣をそのままリリィの放った火炎弾目掛けて振り下ろし、
すぐさま横へと薙ぐように振る。
一撃目の振り下ろしでまたしても風が巻き起こり、二撃目の斬撃で紅い衝撃波が生じる。
二つの衝撃により火炎弾が爆発し、周囲に熱波を撒き散らす中、セレナは腕にメイを抱き、
それからメイを庇う。
自身の事はどうでも良いらしく、全く躊躇というものがなく流れるような動きだった。
爆煙が晴れると、そこには無傷のメイと少し火傷した程度のセレナが何事もなかったかのように立っていた。
歯がぎりりと鳴るぐらいに力強く噛み締めながら、リリィは眼差しも鋭く二人を睨む。
そこへ美由希たちが合流する。

「何なのよ、あいつは。力任せに、未亜の矢を弾いて、私の魔法まで打ち消すなんて」

「今は、そんな事を言っている場合ではござらん」

「一人一人でも強力なのに、二人同時だもんね。
 おまけに、あの二人はしっかりと連携しているみたいだし」

「連携した時の強さは、拙者たち自身が一番、よく分かっている事でござろう、リリィ殿」

「分かってるわよ。大丈夫よ。別に、怒りで我を忘れている訳じゃないわ。
 寧ろ、逆に冷静になっている感じね。さて、これからどうする?」

「出切れば、未亜殿やベリオ殿と合流できれば一番でござるが…」

「敵がそれを黙って見てるとは思えないしね」

カエデの言葉に美由希が二人を見据えたまま応える。
こうしている間にも、王国軍とモンスターたちの戦いは続いており、
美由希たちも何とか目の前の二人を倒す方法がないか模索する。

「私と未亜の同時攻撃は防がれたけれど、全員の同時攻撃ならどうかしらね」

「それはいい考えかも。後はタイミングと…」

美由希はベリオと未亜へと視線を一瞬だけ移す。
同じようにカエデも二人へと視線を飛ばしながら、美由希の後に続ける。

「リリィ殿やベリオ殿が唱え終えるまでの時間でござるな」

言って美由希とカエデは顔を見合わせて頷く。

「頼むわよ」

リリィの短い言葉を背に、二人は駆け出す。
こちらへと向かって来る美由希とカエデに対し、セレナが前へと出て待ち構える。
その構えはやはり手を地に着け、獣そのものだった。
その後ろにメイが弓を構えながら、自分たちの三方を囲む未亜たちにも注意を払う。
後少しでぶつかり合うといった瞬間、メイがふと遠くを見る。
次いで、手を耳に当てて何やら呟く。
美由希とカエデは呪文と思ったのか、走る速度を更に上げようとする。
そこへ、メイの弓から剣が放たれる。
思わず足を止めた二人、いや、全員へとメイが静かに語る。

「折角ですが、今日はここまでです。
 撤退の命令がでましたので。それでは、またお会いしましょう。
 セレナ、行こう」

メイの言葉にセレナは大人しく頷くと、身体を起こして二本足で立つ。
そのままメイを肩の上に担ぎ上げる。
多少はセレナの方がメイよりも身長があるとはいえ、殆ど体格の変わらないメイを軽々と担ぐセレナに、
リリィが眦を上げる。

「何、馬鹿な事を言ってるのよ! そう簡単に逃がすわけないでしょうが!」

呪文を中断させて叫ぶと、怒りに任せて雷を迸らせる。
しかし、それはセレナにあっさりと弾かれる。
セレナに担がれながら、メイは至って平静に言葉を紡ぐ。

「ごめんなさい。でも、別に逃げるわけではありません。
 ただ、撤退命令が出たものですから。それでは、また」

まるで散歩の途中で会ったかのようにあっさりと言うと、メイは弓を頭上へと向けて弦を引く。
弓より放たれた八つの剣が天からメイたちの周囲に突き刺さり、同時に眩い光を放つ。
思わず閉じた目を次に開いた時、そこにはメイとセレナの姿はもうなかった。

「くっ」

悔しさからか歯噛みするリリィだったが、すぐに周りの状況を確認するべく、美由希たちと合流する。
今はそんな時ではないと言い聞かせて。
改めて全員と合流したリリィたちは、破滅軍が撤退している事を知る。

「一体、どうしてでしょうか」

破滅軍が全て去り、王国軍と一緒に引き返す最中、ベリオが当然のように疑問を口にする。

「もしかしたら、師匠たちの方で何かしたのでは」

「そっか。恭也さんたちが破滅の将を倒したからとか」

未亜の言った言葉に、リリィが拳を強く握り締め、
まるで睨むように、恭也たちが居るであろう方向を見詰める。
最後尾を歩いているリリィの様子に誰も気付かないまま、美由希が口を開く。

「でも、それぐらいで優勢だったのに一気に撤退するかな」

「どっちにしても、ナナシは早くダーリンに会いたいですの〜」

それぞれの胸のうちに重いモノを抱きつつ、それを誤魔化すようにナナシの言葉に誰ともなく苦笑を浮かべる。
それでも、何とか気持ちを切り替えようとしながら、全ては恭也たちと合流してからだと思うのだった。





つづく




<あとがき>

美姫 「タイトルに敗北ってあったけれど、別に負けてないんじゃ?」
でも、勝ってもいないと。
美姫 「まあ、確かにそうなんだけれどね」
ともあれ、破滅の軍団は撤退〜。
美姫 「何故、急に撤退したの?」
三時のおやつのじか……ぐえっ!
美姫 「因みに、本当にそんな理由じゃないでしょうね」
んな馬鹿な理由があるか。
美姫 「よね〜。幾らアンタでも、それはしないわよね」
当たり前だろう。アハハハハハ…。
美姫 「何で、そんなに乾いた笑みなのよ」
冗談だ、冗談。ともあれ、また次回で!
美姫 「何か誤魔化されたような…」




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