『DUEL TRIANGLE』






第三十二章 千年前の救世主戦争





ゼロの遺跡と呼ばれる遺跡。
そこで今、一つの甲高い音が空に吸い込まれていく。

「いい加減に諦めたらどう、ルビナス!」

言って黒い服に黒いマントと全身を黒で包み込んだ女性が、それだけは唯一目を見張るような真紅の剣を振るう。
それを光る長剣で受け止めた長い銀髪の美しい女性、ルビナスは手首を返して逆に斬りかかる。
切っ先を後方へと跳んでやり過ごした女に、ルビナスが鋭い眼差しを向ける。

「ロベリア、貴女こそ正気に戻って。お願い」

「失礼ね。私は充分過ぎるほどに正気よ」

「だったら、どうして!」

悲しみに瞳の色を染めて叫ぶルビナスへ、ロベリアはきつい眼差しを飛ばす。

「貴女なんかには、絶対に分からないわよ!
 常に光を浴びている貴女なんかには!」

「何を言っているの、ロベリア」

「…貴女やアルストロメリアたちは常に白や紫の似合う御一行様。
 でも、私だけが真っ黒な服をまとう暗黒騎士。
 いつだって、私だけが救世主候補ご一行様の汚点。薄汚れた妖術戦士。
 貴女たちが人々の羨望を浴びる中、私だけが侮蔑の混じった視線で見られる」

言いながらロベリアは切っ先をルビナスへと振り下ろす。
それを自身の召還器で弾くと、そこへロベリアの魔法が身体を焼かんと迫る。
しかし、左手を前に突き出した途端、その炎はあっさりと霧散する。
互いの剣を間に挟み睨み合う二人の耳に、遠くの方から爆音が響く。

「今のはどっちの魔法かしらね。
 アルストロメリアたちか、破滅のモンスターたちか。
 どっちにしろ、貴女もアルストロメリアたちもここで終わりよ!
 馬鹿な奴らだわ。貴女に味方したばかりに」

言って剣へと力を込めてルビナスを押す。
それに押されるように膝を曲げるが、すぐに押し返しながら、未だに力の衰えない瞳で見据える。

「アルストロメリアたちが私に味方した理由が本当に分からないの!?」

「分かっているわよ! どうせ、私なんかの味方をしたくなかったんでしょう!
 あの人たちも仲間と口では言っておきながら、私の事をただ便利な道具として見ていたのよ!」

「ロベリア! 貴女、本当に彼女たちがそんな事を考えていると思っているの!」

「知るもんか! 知りたいとも思わない! 私の故郷は破滅によって滅ぼされたの!
 その時、私は悟ったわ。破滅は力。
 ならば、破滅から身を守るには、その破滅さえも支配する力を手にすれば良いとね!」

「だから、白の主になったって言うの!」

「貴女が…。貴女が赤の主になったからでしょう!
 貴女は赤の書に、オルタラに選ばれていい気になって私を見下ろしていた。
 でも、私だって白の書に選ばれたのよ。これで、私と貴女は同じよ。
 もう、貴女に見下ろされる事もない」

「ロベリア…。私は貴女をそんな目で見た事は一度もないわ」

剣を間に口論していた二人は、同時に後ろへと跳躍し距離を取ると静かに己の武器を構える。

「うるさいのよ! 私はここで貴女を倒し、救世主になる!
 仲良しクラブのようなおままごとはもうお終いよ!」

「…ロベリア。だから、貴女はオルタラに選ばれなかった」

ロベリアの台詞を悲しげに聞いたルビナスは、手に持つ剣を強く握り締める。
一方のロベリアも、ルビナスの台詞に声を荒げる。

「ルビナスーー!!」

二人の剣が何度とぶつかり合う。
ルビナスは諦める事無くロベリアへと声を掛けるが、それを煩そうに振り払う。
もう説得は無理と悟ったのか、ルビナスの瞳が今までで一番深き悲しみに染まる。
しかし、そっと瞳を閉じて次に開いたその時には、その瞳には何かを決意し、力を秘めていた。
その顔付きも、ロベリアの身を案じていた友人のソレから、戦士の顔付きに変わる。
雰囲気の一変したルビナスに、ロベリアは笑みを浮かべる。

「どうやら、貴女もやる気になったみたいね」

再び距離を開けていた二人の下に、良く似た二人の少女がそれぞれの傍に現れる。

「オルタラ、無事だったのね」

「…はい」

傷付いてはいるものの、無事だったオルタラにほっと胸を撫で下ろす。
対峙するロベリアの傍に現れた、同じく傷付いた少女へとロベリアが声を掛ける。

「ったく、何をやっていたのよイムニティ。まだ、赤の書が生きているじゃない」

「ごめんなさい。思ったよりも、抵抗が激しくて」

「仕方ないわね」

言って真紅の剣を構えるロベリアの横で、イムニティが魔法を唱え出す。
イムニティの相手は自分がと同じく魔法を唱えるオルタラに一つ頷くと、ルビナスは一歩前へと出る。

隣で始まった激しい魔法による攻防を余所に、ルビナスとロベリアは再び向かい合う。
今度も先に動いたのはロベリアだった。
しかし、今度の攻撃は今までの攻撃に比べると大雑把にも見える攻撃だった。
頭上へと剣を振り上げたまま、ルビナスへと向かう。
無謀にも見える大振りの攻撃を身を捻って躱しながら、ルビナスは剣を横に倒してがら空きとなった胴を薙ぐ。
胴への攻撃を喰らって、しかしロベリアは笑みを見せる。
傷を意とも介さずに大振りした剣を後ろへと振るう。
その一撃は無防備だったルビナスの背中を深く傷付ける。

「忘れていたようね。私の能力、ネクロマテックのことを。
 この程度の傷なら…」

言っているうちに、先程ルビナスに傷つけられた傷が塞がっていく。
一方のルビナスは、傷が思ったよりも深かったのか、剣で身体を支えるようにして立つ。
それを余裕の笑みで見下しながら、ロベリアは静かに剣を構える。
ルビナスは剣を地面に突き刺したまま、ただ静かな眼差しでロベリアを見詰める。
その態度が気に入らなかったのか、ロベリアは怒りを隠そうともせずに喚く。

「もうすぐ死ぬんだから、もっとむごったらしく泣き喚きなさいよ!」

「……」

しかし、ルビナスはただ無言で応えるだけで、ロベリアの言葉に取り合わない。
それが益々ロベリアを苛立たせる。

「もう良いわ。これで終わりにしてあげる!」

叫ぶと同時にルビナスを囲むように炎の帯が渦巻く。
高温の炎が身体の周囲を周り、触れていないのに肌がチリチリと焦げる。
完全に逃げ場を無くしたルビナスへと、ロベリアが襲い掛かる。
周囲を周る炎に触れた途端に全身を炎が襲うことを知ってか、ルビナスは腕を動かすことも出来ない。
そこへ、ロベリアの剣が真っ直ぐに突き出され、腹深くに突き刺さる。
口から血を流し、ゆっくりと倒れて行くルビナスの耳に、悲壮な声音でルビナスの名を呼ぶオルタラの声が届く。
オルタラへと心配しないでと言わんばかりに笑みを見せると、倒れ行く中、足を前へと踏み出す。
勝利を確信していたロベリアへと、長剣の切っ先を向け、全体重を掛ける。
完全に油断していたのか、ロベリアは左胸にそれを受けてしまう。
ロベリアの口からも血が流れ落ちる。
しかし、その口元を乱雑に拭うと、不適な笑みを見せる。
心臓を貫かれた瞬間、ネクロマテックによる治癒を開始し、ルビナスを突き放す。
既に殆ど力が入らず、簡単に押されるがままに後ろへと倒れるルビナス。
そのルビナス目掛け、ロベリアは剣をその両手、両足と何度も突き刺すように振り下ろす。
必死で悲鳴を堪えるルビナスだったが、僅かな呻き声が漏れる。
それを聞き、愉悦に顔を歪ませながらも、執拗なまでにルビナスの手足を血で赤く染めていく。
オルタラが涙の混じった声で名を呼びながら近づこうとするも、全てイムニティによって防がれる。
オルタラにも一つ笑顔を見せると、殊更ゆっくりと、見せつけるように剣を振りかぶり、
ルビナスの傷付いた腹、その同じ個所へと剣を突き刺す。
そのまま引き抜かず、傷口を広げるようにかき回す。
苦悶に呻くルビナスの顔を見下ろし、ロベリアはこれ以上はないという幸福感を覚えていた。
出血が酷く、意識が朦朧としてきだしたルビナスへと、ロベリアは更に楽しそうに言葉を投げる。

「これで、貴女もお終いね。でも、安心して。
 貴女のその身体、私が有効に使わせてもらうから」

言って複雑な印を両手で組み、光り出した指で中空に複雑な紋様を描き出す。
口からも低く、呪文の詠唱が流れる。

「ふ、ふふふ。残念だったわね、ルビナス。
 最後に笑うのは、私よ」

その呟きを最後に、二人の身体が光に包み込まれる。
同時に、ロベリアは自身の胸深くに剣を突き立てる。
明らかに致命傷となるソレに対し、ロベリアは治癒を発動させず、小さく最後の一言を呟く。
光が完全に消え去った時、地面にはルビナスだけでなく、ロベリアも倒れていた。
何が起こったのか分からなかったオルタラだったが、自身が契約した主との繋がりが断たれている事に気付き、
その意味を悟って呆然となる。
つまり、ルビナスの死。
しかし、それにしてはロベリアまでが倒れていることに疑問を感じる。
が、その答えはすぐに出た。
倒れていたルビナスの身体が、自然治癒では考えられない速度で再生していくのだ。

「どうして…」

愕然とルビナスを見詰めていたオルタラだったが、すぐにその視線をイムニティへと移す。

「そうよ、正解よオルタラ。今、あのルビナスの身体にはロベリアの魂が入っているの。
 つまり、身体を入れ替えたのよ。
 そして、貴女のマスターであるルビナスが、あそこで倒れているロベリアの中って事よ」

「まさか…。確かに、貴女と契約したロベリアなら、そのような高度の魔法が使えても可笑しくはないけれど…。
 それにしても、ルビナスがそんなに簡単に奪われるなんて…」

「でも、事実は見てのとおりよ。そして、赤の主は死んだわ。
 これで、ロベリアが救世主として……、ちょ、な、何よ、これは!」

それまで余裕の笑みを浮かべて気分良く話していたイムニティが、急に戸惑った声を上げる。
見ると、ルビナス…いや、ルビナスの身体をしたロベリアも当惑気味に自身の身体を見詰める。
そんな二人に向け、ゆっくりと顔を上げるロベリアの身体のルビナス。
苦しげながらも、はっきりとした口調で言う。

「た、多分、そうくるんじゃないかと思っていたわ。
 だから、自分の身体にちょっと仕掛けさせてもらったわ。
 ……ロ、ロベリア。貴女はもう、その身体から抜け出すことは不可能よ。
 ……治癒能力も、……か、かなり…制限されるわ。そして、イムニティ……」

苦しげに荒く呼吸をしながらイムニティへと視線を向ける。
オルタラは話す事を止めさせたかったが、もう何をしても助からないことは明白だった。
だから、オルタラは悲しみに目を細めながらも、ただ静かに見ていた。
そんなオルタラの気持ちに気付いてか、小さく笑いかけるも、すぐさまイムニティへと視線を戻す。

「……はぁー、かはっ! はぁー。……わ、私の命を……代償に、あ、…貴女を封じるわ。
 す、少なくとも、……せ、千年は解けな…………」

最後まで言う気力もなかったのか、ルビナスは力尽きたように顔を伏せる。
涙を流しながらそれを見ていたオルタラの横で、イムニティの姿が光に包まれて消える。
ロベリアも治癒の速度が明らかに遅くなり、自身で傷つけた手足の傷の多さに立つのもやっとの状態だった。
忌々しげにルビナスを見詰めると、その身体を蹴り飛ばす。
元は自分の身体だったというのに、そこには憎悪以外の感情はなく、一切の躊躇もなかった。

「お前はっ! そうやって最後まで私を見下して楽しかったか!」

言って突き刺さったままだった自分の剣を抜くと、それを既に息絶えたルビナスへと振るおうとする。
それを止めようとオルタラが動くよりも早く、ロベリアの瞳がこちらへと向かって来る二人の少女を捉える。

「くっ! 所詮、モンスター共では奴らの足止め程度が関の山かっ!
 今は分が悪すぎる。今回はこれで引くが、次会った時は…」

そう言っている間に、ルビナスの肉体がまるで消えるようになくなる。
それを見て、オルタラは更なる仕掛けに気付き、ロベリアへと顔を向ける。

「無駄です。
 イムニティが封印され、貴女の身体が死滅した事によって、貴女は白の主としての権利を剥奪されました」

「馬鹿な! 私はこうして生きている!」

「ええ、確かに。ですが、ルビナスが貴女に身体を乗っ取られるときに、魔術を仕掛けていたみたいです。
 その結果が、その消滅した貴女の元身体。
 どういう仕掛けかは分かりませんが、貴女は死滅した事として世界が認識しました。
 つまり、それは書の精霊である私とイムニティもです。
 これにより、今回の救世主戦争は、救世主の誕生はなし。破滅は全滅という結果を持って終結しました」

「……っっ! 何処まで! どこまで私の邪魔をするんだ!
 私をこけにするんだ、ルビナス! 覚えていろ! きっと、いつか絶対に後悔させてやる!」

叫ぶと同時にその姿が掻き消える。
誰もいなくなったその場所で、オルタラはただ静かに立ち尽くす。
後から来る二人の仲間へと説明をしなければならない。
けれど、その二人がここに来るまでの短い間だけは、彼女と二人だけで。
既に消えて何もない地面をじっと見据えたまま、オルタラはただ無表情のまま立ち尽くしていた。





 § §





「…これが、千年前の救世主戦争の真実です」

「つまり、あそこに眠っているのは赤の主のルビナスさんというわけか」

「はい。ですが、その中には何もありません」

「身体は今現在、破滅の将の一人、ロベリアが、か」

「…はい。この後、元々この世界の住人だったアルストロメリアは、
 千年後に再び現れる破滅に対抗すべく、フローリア学園を設立しました。
 そして、そのまま王位についてこのアヴァターを治めることに」

「ちょっと待てくれ。すると、そのアルストロメリアというのは、クレアの」

「はい。王女は彼女の子孫です」

「なるほどな」

「そして、もう一人はそのまま学園長となるはずでしたが、
 学園が設立した時、彼女の姿はどこにもなかったんです」

無言で頷く恭也に、リコは更に続ける。

「もうお分かりでしょうが、その当時オルタラと呼ばれていたのが…」

「リコ」

「はい」

「しかし、そこまでして救世主になりたかったのかロベリアは。
 俺には、そんな風には見えなかったが…」

考え込む恭也に、リコは戸惑いがちに尋ねる。

「マスター。イムニティに抵抗するためとはいえ、私とエンゲージしてしまった事を後悔していませんか。
 もし、マスターが望むのなら、イムニティと二人だけで決着をつけますから…」

「リコ!」

きつい口調でリコの言葉を遮ると、恭也は真っ直ぐにリコを見詰める。

「確かに、あの時はああしなければ死んでいたかもしれない。
 けれど、リコと契約する事を選んだのは、別に強制されたからでも何でもない。
 俺が、俺の意思で、自分で選んだ事だから」

「マスター」

「だから、もう二度とそんな事は言うな。良いな」

「…はい」

涙声で返事すると、リコはこの際だからと救世主に関しても少しだけ話をすると言い出す。
それに黙って頷いて聞く態勢を取る恭也。

「そもそも、救世主とは皆が考えているような存在ではないんです。
 救世主の道は破滅の道と表裏一体。
 千年前の救世主戦争で、誰も救世主になれなかったのは、むしろ幸いな結果だったと言えるかもしれません。
 いえ、むしろ彼女はそれを知った上で、あのような判断をしたんだと思います」

「彼女っていうのはルビナスさんの事だな」

恭也の問いかけに頷くと、リコは続ける。

「救世主になると、選択が与えられると言われています」

「選択?」

「はい。詳しくは私も知りませんが、世界の運命を決める選択です。
 ただ、その際に神より多くの情報を与えられます。その情報に耐え切れず、自我を崩壊させる者、
 救世主しか知る事の出来ない秘密を知って自殺する者などが殆どです。
 今までも、神の絶対的な力に耐えられず命を落とすか、
 その使命に耐え切れずに自ら命を絶つ救世主たちが沢山いました」

「リコは、今までそういった者たちをずっと見てきたんだな」

「はい。でも、これまでのマスターたちが繰り返してきた結末をもう見たくない。
 だから、誰も選ばないように…」

「そうだったのか。なのに、俺の所為で」

「いいえ、違います! マスターの所為ではありません。
 さっき、マスターも言っていたではないですか。あれと同じです。
 私も、自分でマスターを、恭也さんだから、マスターとして選んだんです」

「そうだったな。悪かったな。もう言わないよ」

「はい。今までもたくさんの人たちを見てきました。
 でも、マスターだけは、マスターだけは…。あんな目には合わせたくないんです!」

感情を爆発させるように、リコは涙と嗚咽をただ繰り返す。

「マスター! 私、マスターとは離れたくありません。
 今までも同じような気持ちを抱いた事はあるけれど、マスターのは今までと何か違うんです。
 だから、お願いだから、救世主にならないでください!」

全てを話したリコは息を少し乱しながらも、頬を涙で濡らす
また新たに流れ出る一筋の涙を恭也は優しく指で拭い取る。

「そうか。今まで、辛かったんだな」

「う、うああぁぁぁぁぁ。マスター! マスター! 私は…、私は…。
 ほ、本当は誰も選びたくなかった。誰も今まで、神の試練に耐えれた人は居ないから。
 もう、あんな目に誰も合わせたくなかったのに。なのに、また私はマスターを選んでいる…」

「リコ…」


もう言わないと言った事を再び口にするリコを咎めるでもなく、恭也はその名を優しく口にする。
普段の無表情が嘘のように、いや、ひょっとしたらこっちの方が本来のリコで、
普段は魔力の消費を押さえるために、話す事はおろか、感情も押し殺しているのだとしたら…。
そんな風に考え、恭也はリコの小さな身体を抱きしめると、安心させるようにその背中を、頭を何度も優しく撫でる。
嗚咽は中々鳴り止まないが、徐々に小さくなっていく。
リコは恭也と離れるのを怖がるように、強く恭也の胸元を握る。
恭也の胸がリコの涙でびしょ濡れになり、襟元が伸びきっているが、それを気にも止めず、
恭也はただ今はこの小さな少女に、自分が傍に居る事を教えるように、いつまでも抱きしめていた。
じっと涙で濡れた目で見詰めてくるリコに、恭也は優しさを湛えた瞳で見詰め返す。
それでも安心できないのか、リコは首筋に鼻を擦りつけるように抱きつくと、
居なくならないでと、ただただ繰り返す。
その頭を背中を何度も、何度も恭也は優しく、リコが落ち着くまでずっとそうしていると言わんばかりに撫でる。
ベッドに腰掛けた恭也の上に乗るようにして、腕の中でただ脅える少女を恭也は守るように。



その夜、何があったのかは二人しか知らない。
ただ、やけにすっきりして何かを吹っ切ったようなリコの顔は、いつものように無表情ながらも、
何処かいつもとは違って見えた。





つづく




<あとがき>

千年前と救世主に関して、ちょっと触れたお話〜。
美姫 「いよいよ次回は破滅の襲来ね」
おうともさ!
いよいよ、中盤も中盤。事態が動くぞ〜。
美姫 「一体、何が待っているのか!?」
それは次回のお楽しみ。
美姫 「という訳で、また次回でね〜」
ではでは。




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