『DUEL TRIANGLE』






第三十六章 天裂く鉄槌





生い茂る木々を抜け、小高い丘へと出る。
その向こう側から微かな明かりと共に、呪文の詠唱が時々風に乗って聞こえてくる。
恭也たち三人は顔を見合わせると、丘を上り始める。
この辺りに敵は配置されていないのか、何の妨害もなく三人はあっさりと丘の上までやって来ると、
そこから眼下を見下ろす。
小高い丘に四方を囲まれた広場めいた所には、煌々とかがり火が輝き、
中央部には大きな魔法陣が描かれている。
それ以外には何もない、本当に草一本も生えていない殺風景な場所に、魔法陣を囲むようにして、
数人のフード姿の者が見える。
恐らく、それが召喚士なのだろう、彼らは魔法陣に向かって一様に呪文を唱えている。

「あれが、無限召喚陣…」

「恐らく間違いないかと」

「禍々しい気の流れでござるな」

三者三様に言葉を交わすと、どう攻めるのかを考える。

「とりあえず、周りにいる召喚士たちを何とかした方が良いんじゃないかな」

「パピヨンか」

「よく分かったわね」

「何となくな」

突然の二人の会話に首を傾げるカエデに苦笑しつつ、恭也は小声で話し掛ける。

「にしても、どういう風の吹き回しだ?」

「ひょっとして迷惑だった?」

「いや、そうじゃないが」

「まあ、少しだけアンタを信じてみようって思ったのよ。
 その為には、まずはここから無事に帰らないとね。ああ、安心して。
 当分、アタシは表に出てこないから」

「それで良いのか」

「良いも悪いもないでしょう。アタシはベリオだし、ベリオはアタシなんだから」

そう言って笑ってみせると、その顔付きが変わる。

「ベリオか」

「…はい。きっと、さっきの恭也くんの言葉。
 あれをあの子も分かってくれたんだと思います。
 だから、少しでも恩返しをしようとしてるんじゃないかと」

「そうか。で、実際に召喚士から先に倒した方が良さそうなのは確かだな」

「はい」

恭也たちが見ている先で、新たなモンスターが数体、召喚陣より出てくる。
それを見詰めながら、カエデが落ち込んだような声を上げる。

「師匠もベリオ殿も内緒話は止めて欲しいでござるよ。
 そんなに拙者は役に立たないでござるか」

「すまん、そういう訳じゃないんだ。勿論、カエデは充分過ぎるぐらい役に立っているから。
 それよりも、先に召喚士を倒すぞ」

「了解でござる。周囲には他の気配は見当たらんでござるから、一気に行くでござる」

「ああ。ベリオ、援護を」

「はい」

言って三人は丘を駆け下りていく。





 § §





「皆さん、学園長からです」

リコの言葉に全員が反応を示すも、手は決して止めない。
ミュリエルも分かっているのか、それぞれからの返答を待つ事無く話し始める。

「住民の避難が済みました。結界を張る準備もです。
 そろそろ、合図と共に王国軍が撤退を始めるわ。皆さんも、同じように撤退を」

「待ってください! まだ、恭也たちが」

リリィの言葉にしかし、ミュリエルは顔を曇らせるもきっぱりと首を横へと振る。

「悪いけれど、彼らを待つ事は出来ないわ。
 彼らを待っていて敵の侵入を許せば、全ての計画が水泡と化してしまうの」

「でもっ!」

未亜が悲痛の声を上げるも、ミュリエルは考えを変えない。

「分かって頂戴。彼らも、こうなることの覚悟はしていたはずよ」

「学園長は、本当に恭ちゃんたちの心配をしているんですか」

いつになく厳しい口調で尋ねる美由希に、ミュリエルがやや視線を鋭くして尋ねる。

「それはどういう意味かしら」

「だって、そうじゃないですか。今までの任務も、考えてみたら無茶なことばかり。
 まるで、恭ちゃんを殺そうとしているようで」

「私は別に恭也くんだけを指名した覚えはないわ」

「でも、恭ちゃんの性格を考えれば、こうなる事は分かりますよね。
 なのに、全員で行ってはいけないとか。そのくせ、数人は一緒に付いて行くのは良かったり。
 何がしたいんですか、学園長は」

「美由希、言いすぎよ!」

「良いのよ、リリィ。確かに、そう取られても仕方ないのかもしれないわ。
 でもね、今あなたたちが撤退しないと、結界は張れないわ。
 いいえ、張る訳にはいかないの。破滅を倒せるのは救世主だけなのだから。
 それに、別に恭也くんたちを見捨てると言っている訳じゃないのよ」

リリィの言葉に、美由希はただ無言のまま。
ミュリエルはそれを気にするでもなく続ける。

「彼らなら、きっと上手くやってくれると信じているの。
 確かに、美由希さんの言う通りなのかもしれない。
 でも、これだけは信じて。僅か数人とはいえ、一人で任務にあたらせるような事はしていない。
 本当に、それだけギリギリな状況なのよ」

真剣な眼差しでじっと見詰めてくるミュリエルの画像を見詰め返しながら、美由希は小さく謝る。
それに同じように小さく答えながら、ミュリエルは改めて撤退を告げる。
全員が頷いたのを確認すると、通話が切れる。

「撤退するにしても、ある程度は粘らないとね」

言って氷柱を生み出してモンスターの足を止める。

「確かに、王国軍が撤退を始めるまでは、少しでも食い止めないと」

言いながら足の止まったモンスターへと未亜の矢が降り注ぐ。
美由希たちもそれぞれ近くのモンスターの相手をしながら、撤退の合図を待つのだった。





 § §





召喚士と、新たに呼ばれた数体のモンスター全てを倒した三人は、警戒するように辺りを窺う。
が、本当に他には何も潜んでいる様子もなく、ようやく落ち着いて目の前の召喚陣へと視線を向ける。

「で、どうやってこれを壊すかだが」

「拙者の火薬で地面ごと吹き飛ばすでござるか」

「全部吹き飛ばさなくても、一部だけ壊せば良いだろうから、それで良いか。
 まあ、問題はその音で敵がこちらに来るかもしれんって事だが」

幾ら周囲に敵がいないからといって、ぐずぐずしている暇はないとすぐに準備に取り掛かろうとする二人に、
ベリオが慌てたように声を上げる。

「待ってください、二人とも。ここは私とユーフォニアに任せてください」

「魔法の事は分からないから、ベリオに任せるとしよう」

ベリオの言葉に恭也とカエデがすんなりと後ろへと下がると、ベリオが魔法陣の傍まで進み出る。
ユーフォニアを静かに構えて目を閉じると、呪文を唱え始める。
すると、ベリオの呪文に応えるように魔法陣が輝きだす。
暫くすると、地響きが起こり、地面に亀裂が走る。
ほぼ同時に、魔法陣が赤い光を放ち、全体的にまるで陽炎のように揺れて消えていく。

「やったのか」

恭也の言葉を裏付けるように、地面を揺らしながら召喚陣が崩壊していく。

「恭也くん、このままここに居るのは危険です」

「よし。カエデ、ベリオ、引き返すぞ」

恭也の言葉を合図に、三人は元来た道を逆に走り出す。
その背後では、地響きを立てながら召喚陣が壊れていく。



どのぐらい走り続けたか。
三人は無限召喚陣の破壊後、追って来るモンスターを時には倒し、時には隠れ、時には振り切って走り続ける。
体力的に二人に劣るベリオは、途中で恭也とカエデが交代して負ぶっていた。
そして、ようやく森を抜けて平原へと戻った恭也たちだったが、そこに王国軍の姿はなかった。

「これは一体…」

「まさか…」

最悪の事態を思い描く二人に、恭也は首を振って否定する。

「いや、恐らくは撤退準備が整ったという所だろう。
 全滅したにしては、綺麗過ぎる」

恭也の視線の先には、倒れた兵士やモンスターの姿が見受けられるが、確かにその数では足りない。
それに、と付け加えながら、恭也は王都の方へと指を向ける。

「まだ、向こうの方では小競り合いが続いているみたいだしな。
 恐らく、撤退命令が出たんだろう」

「それなら、早く私たちも王都に戻らないと」

ベリオの言葉に頷くと、恭也とカエデは走り出す。





 § §





王都へと後退する王国軍の中、常に最前線に立って美由希たちは迫るモンスターを薙ぎ払う。
今しもモンスターの一団を倒した一行の目に、天へと向かって伸びる一筋の光が確認される。
その方角から、微かな地響き音が響いてくる。

「なに、あれ」

呆然と呟く美由希に、リコが僅かに安堵と喜びを混ぜた声で教える。

「あれは、無限召喚陣が破壊された証です」

その言葉に嬉しそうな笑みを見せる美由希たちの前で、モンスターの軍団に混乱が見え始める。
中には撤退するものも出始め、統制が取れていないのは明らかだった。
これを好機とみたのか、王国軍は一気に下がる部隊と前へと出る部隊に分かれる。
まだ完全に撤退が出来ていないため、美由希たちも前へと出た部隊に合わせて前へと出る。
混乱の最中にあっても襲い掛かってくるモンスターを倒しながら、美由希たちもゆっくりと下がっていく。
モンスターの襲撃が途切れた瞬間、美由希たちも一気に下がろうとするが、
不意にナナシが立ち止まり、まるで放心したかのように空を見上げる。

「……だめ。それを使っちゃ、いけないですの……」

ナナシの様子に皆が怪訝な表情を浮かべる中、リコが不意に空の彼方を見詰めて驚きの声を上げる。

「…この反応は、まさか!?」

二人の様子に他の者も何故か嫌な予感を覚え、何か口にしようとした瞬間、
二人が見詰めていた空の先が光に包まれる。

「な、何、あれ!?」

「怖い。何だか分からないけれど、もの凄く怖い感じがする」

「未亜、美由希、しっかりしなさい!」

驚く未亜と、体を振るわせる美由希に発破をかけつつも、リリィも嫌なものを感じて光を見詰める。
と、すぐに光は帯のように地平線から走り、美由希たちのはるか横を駆け抜けていく。
視界を真っ白に染め上げ、光の帯は付近の地面を溶かし、木々を消し飛ばし、
敵味方関係なくその身を飲み込んでいく。





 § §





同じような光景を恭也とカエデ、ベリオも目にする。
ただ、美由希たちと違うのは、その光の帯がかなり近かった事。
そして、その光の帯がゆっくりと恭也たちの向かって来ている事だった。

視界が白で埋め尽くされつつある中、恭也たちは遠ざかろうと足を動かす。
が、光は飲み込まんと迫る。

「師匠!」

「恭也くん!」

光に包まれた視界の中、二人の叫び声を聞きながら、恭也は無駄だと悟りつつも、
二人を庇うように恭也は抱き寄せる。
腰に差したルインの存在を感じながら、恭也は遠ざかる意識の中で二人を抱き締める。

「師匠! くっ、せめて師匠だけでも! 師匠が守ってくださるように、今度は拙者が師匠を!
 拙者が、拙者が師匠を絶対に守る!」

意識を失った恭也の身体を抱き返しながら、カエデは身体の位置を逆にする。
既に意識を失っているベリオを恭也の下にし、自分の身体を二人の前に置く。
ただ恭也を守ることだけを思い、光に包まれていく中、カエデも遂には意識を手放すのだった。





 § §





暗闇の中で恭也は目を覚ます。
いや、覚ましてはいないのだろう。
何故なら、身体は指一本動かすことが出来ず、どこか浮いているような浮遊感を覚えている。
これは夢だと頭の隅で思う恭也の考えを裏付けるように、目の前に一人の女性の顔が浮かび上がる。

「ルビナスさん」

「知ってたの? 嬉しいわね」

「ええ、リコから」

「リコ…。オルタラの今の名ね」

恭也の言葉に柔らかな笑みを見せるルビナス。
その顔を見詰めたまま、恭也は首を傾げる。
いや、傾げようとする。
身体が未だに動かないのだ。しかし、特に焦った様子もなく、恭也はルビナスを見る。

「いつもありがとうね、恭也くん」

「何がですか?」

「ううん、今は分からなくても良いの。それよりも、ナナシにロザリオは渡してくれたのね」

「ええ。ですが、何も起きませんでしたよ」

「そうでしょうね。まだ、時期じゃないのよ。
 でも、そうも言ってられないみたいね」

独り言のように呟くルビナスを、恭也はただ黙って見ている。
それに気付いたのか、少しだけばつの悪そうな顔を見せると、ルビナスは恭也へと話し掛ける。

「もうすぐしたら、あなたが渡したロザリオに意味があるって分かると思うわ。
 それまで、ナナシをお願い。きっとあなたの力が必要になるから」

「勿論、ナナシは大切な仲間ですから。
 それより、必要と言われても、何をすれば」

「ああ、別に何もしなくても良いのよ。
 ただ、恭也くんが恭也くんらしくいてくれれば」

「俺らしく、ですか?」

「そうよ。だから、無理に何かをお願いしたりとかはしないわ。
 ただ、あなたらしく居てくれれば、きっと大丈夫。私はそう信じているから。
 それに、目覚めたら、ここでの事は殆ど忘れているはずだしね」

「そうですか。よく分かりませんけれど、変に身構えずにって事ですね」

恭也は自分なりに解釈を済ませる。
そんな恭也にルビナスは微笑みかけると、小さく手を振る。

「そろそろ、目を覚ます頃みたいね。
 それじゃあ、ここで会うのは本当にこれで最後になると思うけれど…。
 頑張ってね。負けちゃ駄目よ」

「はい」

果たして、その短い返事が口に出せたのかどうか。
恭也の意識は急速に薄れていき、代わりに遠くから何かが聞こえてくる。

「…ょう。…しょう、師匠!」

恭也が目を開けると、心配そうに覗き込んでいるカエデの顔が映る。
暫くぼうっと見ていた恭也だったが、すぐに意識を失う前の出来事を思い出す。

「さっきのは、破滅の攻撃か」

「考えたくはないでござるが、恐らく」

「あいつらがあっさりと引いたのは、これが理由か」

恭也が目を覚ましたことで安心したのか、カエデの顔には安堵が覗いている。
しかし、先ほどの攻撃もあってか、その顔はやや緊張気味ではあるが。
恭也はすぐに一人足りないのに気付き、カエデに問い掛ける。

「ベリオは!?」

「ベリオ殿なら無事でござるよ。
 未だ意識は戻ってござらんが、何処も怪我はないでござる」

「そうか。しかし、どうして助かったんだ」

「分からないでござるよ。師匠とベリオ殿が意識を失った後、拙者が二人を庇うように前へ出たでござる」

カエデの言葉に恭也は悔やむような顔を見せるが、カエデは笑みを浮かべてそんな恭也を見下ろす。

「師匠、拙者を守ってくれようとするのは嬉しいでござるよ。
 ですが、拙者も同じように師匠を守りたいと思ったでござる」

「…そうか。そうだな。仲間なんだから、助け合うのが当たり前だな。
 なのに、俺は助けてもらうという事を忘れていたな」

「師匠」

「すまん、話の腰を折ったな。で、どうなったんだ?」

「それが、拙者もその後意識を失ったでござる。
 ただ、師匠とベリオ殿をしっかりと掴んでいて、今さっき目を覚ましたでござるよ」

カエデの言葉に納得すると、恭也は改めて周囲を見渡す。
そして、言葉をなくす。
平原だったはずの場所は、何もない荒野へと変わり果て、見渡す限り、さっきまでと同じ場所とは思えない。
あちこちにひび割れ、陥没した荒野は、大よそ生物が生きているとは思えないほどで、
まだ先ほどの光の帯の余韻か、残り火から煙が立ち昇っている。
噴煙を眺めながら、恭也は上体を起こそうとして顔を歪める。

「師匠、まさか何処か怪我を!」

起こすことばかりに夢中になっていたのか、カエデは恭也が怪我をしていることを気付かなかったらしく、
慌てたように恭也の身体を支える。

「ああ。さっきから、横腹に鈍い痛みを感じていたんだが…」

「何処がでござるか。すぐに手当てを」

カエデに支えられて上体を起こし、岩に背中をもたれさせる。
言ってカエデは懐より布を取り出すと、それを包帯代わりにしようと手に持ち、
すぐさま恭也の服を捲り上げ、そこで顔を青くさせる。
黒い服の上に防刃用の分厚いこれまた黒の上着を着ていた所為で分からなかったが、
恭也の左横腹にかなり深い傷があり、そこから血が流れ出している。
爆風の際に巻き上がった岩の破片が刺さったのか、それとも違う何かなのか。
原因は分からないが、かなりの重症だというのは分かる。
血を見て気を失いそうになるのを堪えると、カエデはベリオを呼ぶ。
しかし、ベリオは一向に目を覚ます様子もなく、カエデは困ったように恭也を見る。
恭也は苦笑すると、自分で止血しようとするが、その手が震えて上手くいかない。
おまけに、かなり血を流したのか、やや目が霞み始める。

「このままでは師匠が。やはり、ここは拙者が!」

「待て、カエデ。血が」

「うっ! ち、ちちち…。あわあうあう。うぅぅ」

血を見て蒼白くなった顔をおろおろと左右に振るが、恭也の苦しそうな表情を見て、カエデはぎゅっと目を瞑る。
2、3秒ほどしてから目を見開くと、カエデは自分の頬を両手で力いっぱい叩く。

「今、手当てできるのは拙者だけでござる。今、すぐに止血をしないと、師匠が。
 うぅぅ。これぐらい、何ともないでござるよ」

顔を更に青くしつつ、カエデは振るえる手で布を近づける。
今にも倒れそうなカエデを見て、恭也が震える手でカエデの握った布を取る。

「じ、自分で…」

「無理でござるよ! せ、拙者なら大丈夫でござるから」

全然大丈夫に見えない顔で告げるカエデに、恭也は再三止めるように言おうとするが、苦痛に顔を歪める。
それを見てカエデは慌てて手当てをしようとして、まともに血を見てしまう。

「う……く……」

焦点を失いそうになる瞳に力を込めると、カエデは恭也の血を手に取る。
手に着いた血をじっと見詰めると、小さく呟く。

「これが、師匠の…。師匠の血…。
 師匠の匂い、師匠の温もり。師匠の一部。
 だったら、怖くはない…」

カエデは恭也の血をじっと見詰めて一つ深呼吸する。
その目にはしっかりとした力が宿り、顔色も戻りつつあった。
それから、カエデは手際良く恭也の手当てをしていく。
止血をし、包帯代わりの布を巻き終える。

「師匠、どうでござるか」

「ああ、かなり楽になった。ありがとう、カエデ」

恭也に褒められて、カエデは嬉しそうにはにかむ。
何とか落ち着いた二人は改めて周囲を見渡し、その惨状に顔を顰める。

「王都は、学園は無事なのでござろうか」

さっきとは違い、いつもの口調に戻ったカエデに恭也は分からないとだけ返す。
とりあえず、ベリオが目を覚ましてから、行動に移ることにした二人は暫くそのままで身体を休める。
ベリオが目覚め、恭也に治癒魔法を掛けると、三人はゆっくりと王都目指して歩いて行く。
歩きながら、全く代わり映えのしない風景に薄ら寒いものを感じ、口数も少なく歩く。
日も完全に沈み、三人はようやく王都の見える位置まで戻って来る。
だが、展開されるはずだった結界らしきものは見当たらず、町は静まり返っていた。

「もしかして、モンスターに…」

「いや、さっきの攻撃は敵も味方も関係なく打ち払っていた。
 という事は破滅側にも被害が出たはずだ」

「ですが、師匠。その事を見越していたのなら」

「確かにな。だが、それにしては静か過ぎる。
 まあ、ここで幾ら予測を言っていても仕方がないからな。
 とりあえず、行ってみよう」

三人は顔を見合わせて頷くと、疲れた身体に鞭をうち、残る距離を歩き出す。





つづく




<あとがき>

無限召喚陣の破壊には成功。
美姫 「だけど、王国側にもかなりの被害が」
さてさて、恭也たちが王都で目にするものは!?
美姫 「そして、美由希たちは無事なの?」
緊迫した状態で、次回〜。
美姫 「それじゃあ、また次回でね〜」
ではでは。




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