『涼宮ハルヒの挑戦、高町恭也の消失』






プロローグU 涼宮ハルヒ





それは春麗らかな昼下がりというには、まだ少々寒さを感じずにはいられないという、
非常に曖昧な昼下がりであった。
それでも、入学以来ずっと同じ席である窓側後ろから二番という好位置にいる俺にとっては、
差し込む日の暖かさもあり、さほど寒さを感じずに済むというありがたい話である。
とは言え、余りにも心地良い日差しに、上と下の瞼がくっ付きそうになるんだが、
これは如何ともしがたいと思うんだが、どうだろうか。
正直、授業をろくすっぽ聞いていないような後ろの席の奴よりも成績が悪い身としては、
ここは根性を出して聞くべきなのだろうが、俺の根性をこんな所で使ってしまうと、これまたいざという時に困る。
などと、受験にはまだ余裕があり、試験もないからこそ言い訳じみた事を述べている訳だが、
早い話、もう睡魔が限界まで押し寄せて、このまま目を閉じてしまいたいってことだ。
だが、根性云々は兎も角、下手に体力を消耗するのが問題だというのは間違いないだろう。
ここ最近は少し大人しいが、いつまた何をやりだすか分からんからな、こいつは。

「何よ、キョン。授業中に後ろなんか見て。
 まあ、どうしてもって言うのなら、この私がUMA辺りについて話してあげても良いけど?
 あ、それとも新しい数式の説明の方が良い?」

どっちもいらん。
俺がそう言ってさっさと前を向いてしまうと、ハルヒの奴は面白くもなさそうにいい加減な相槌を返し、
相も変わらず聞いているんだか聞いてないんだかわからない態度で授業へと戻って行く。
本当に不思議だ。
何故、こんなのであんなに成績が良いんだこいつ。
いや、まあ、俺は俺でその事で人様にとやかく言えるような成績ではないが。
まあ、幾ら成績が良くても内申はボロボロだろうからな、こいつの場合。
なにせこいつときたら、昨年の四月に飛んでもない自己紹介を行ってからというもの、
五月に学校不認可の非合法団体を立ち上げ、退屈という理由で練習もなく草野球の試合に臨んでみたり、
しかも、勝てそうもないからと世界的危機を勃発させそうになるわ、
朝比奈さんにチアガールの格好をさせる、いや、これは良かったな。
唯一、あの草野球において心が休まる時であった。
と、話を戻すが、他にも夏休みをメビウスの輪の中に放り込んでみたり、
映画撮影と称して、学校のアイドル朝比奈さんの目からよくわからない謎の不可視光線連続発射させてみたり、
たかがバレンタインチョコを渡すのに二回に渡り私有地の山を穴ぼこにしてみたり、と様々な迷惑行動を起こし、
挙句の果てに、現実しか見つめていなかった俺の前に、非現実な出来事をわんさかと体現させるという迷惑振りだ。
おかげで、俺はそれまで培ってきた現実主義という価値観を百八十度転換せざるを得ない事になった訳だ。
ここ最近の出来事で言えば、
笑みを湛えてもっともらしい顔で延々と訳の分からない事を話す奴を黒幕に持つ生徒会長との一戦か。
全く、ご苦労なこった。
とまあ、かくも滅茶苦茶な日々をこの一年近く過ごしてきたんだが。
一年前の俺が、この一年の出来事を聞けば、すごく苦労ばかりでマジで泣いてしまうかもしれないが、
悔しいかな、認めるまで時間はかかったものの、あいつらと一緒に走り回るのは楽しい。
そう思ってしまうんだな。
まあ、命のやり取りなんて危険な目にもあったが、出来ればそれだけはこれからも勘弁して欲しいんだが。
ともあれ、こいつと一緒の一年は悪くなかった。
黒板から窓の外、よく晴れ渡った空へと視線を移し、その暖かい日差しに俺は大きく欠伸をした。



 § §



六限終了のチャイムが鳴り終わると共に自席を立ち上がり、俺たちの活動拠点となっている文芸部室、
ハルヒの言う所のSOS団の部室へと足を向ける。
この辺り既に日課となっており、特に考えるでもなくって感じだがな。
だが、それでも良いのさ。
何せ、部室に行けばSOS団のマスコットにして、癒しの天使、朝比奈みくるさんがいらっしゃるのだから。
俺の後ろに座るハルヒは、部室に行く前にやる事があるとかで既に教室を飛び出していった。
今度は何を考えているんだか。まあ、良いさ。
今はゆっくりと部室で今日一日の疲れを癒されるとしよう。
部室の前で立ち止まり、軽くノックをする。
いきなり開けてしまうと、着替え中の朝比奈さんとご対面なんて言う嬉し恥ずかしいハプニングがあるからな。
勿論、健全たる男子としてそのシチュが外せないのは分かる。
分かるが、これによるハルヒの不機嫌な八つ当たりに始まり、
俺の学校内での社会的立場の危機などのマイナス面を考えるに、そうそう軽はずみなことはできまい。
程なくして、中から声だけで可憐だと分かる朝比奈さんのお声が返ってくる。

「はい、どうぞ。キョン君こんにちは」

言いながら扉を開けてくれた朝比奈さんへと返事を返し、俺は鞄を適当に置くと椅子に座る。
改めてお茶の用意をしてくれる朝比奈さんを見つめる。
一年年上とは思えない幼い顔立ちに似合わない見事な体を、
ハルヒがどこからともなく入手してきたメイド服で包みながら、SOS団専属メイドとしてガスコンロに火をかけた。
じっと見つめているのも悪いと思い、俺は視線を朝比奈さんから、さっきからずっと動かない、
既にそこが定位置と化したもう一人の少女へと移す。
相変わらず分厚くて、何を言いたいのか理解できず、また理解しようとも思わないハードSFを読みふける、
傍から見る限りに置いて、元々のこの部室に似つかわしい文学少女、長門有希の姿が。
十ヶ月前までつけていた眼鏡は、今も復活を見せず裸眼のまま毎日部室の端っこで本を読んでいる。
個人的には眼鏡属性のない俺にとっては、今の長門のが見慣れているし可愛いと思うのだから、
まったく問題はない。
そんな事を考えていると、目の前に朝比奈さんが淹れたてのお茶をそっと出してくれる。
礼を言って湯飲みを手に取ると、ゆっくりとそれに口をつける。
うん、美味しいですよ。

「本当ですか。ちょっとブレンドしてみたんですけれど、そう言ってもらえると何だか自信ついちゃいます」

いえいえ、大いに自信をお持ちください。
そもそも、そんな芸の細かい事などしなくとも、貴女の御手が生み出す代物なら全てが最上級品ですとも。
本を読み耽る長門にもお茶を差し出すと、朝比奈さんは俺の斜め対面に腰を下ろす。
それからは他愛もない話を幾つか交わし、もうすぐ春休みですねと朝比奈さんが仰った所で扉がノックされる。
朝比奈さんが返事を返して立ち上がるが、その頃には既に扉は開けられている。
まあ、ここにやってくる客などなく、我らが団長様はそもそもノックなどしない。
となれば、残るは自然とこいつになる訳だが。

「すいません、少し遅れてしまいました。ホームルームが長引いたもので。
 おや? 涼宮さんはまだですか?」

SOS団で俺以外のもう一人の男の団員で、
二枚目で頭もいいという嫌味を具現化させたらこんなになるだろうなと思える好青年。
SOS団の副団長にして、ハルヒのイエスマンと化しつつある、いや、既に化しているか?
兎も角、古泉一樹は相変わらずの微笑フェイスを張り付かせながら部室へ入ってきた。
俺の対面に座る古泉にも、朝比奈さんはお茶を淹れて差し出す。
ともあれ、これで団長である涼宮ハルヒを除く団員が全員揃ったな。
とは言え、揃ったからと言って特別何かする訳でもない。
そもそも、この団にはこれといった活動方針がない。
いや、あるにはあるのか。宇宙人に未来人、超能力者に異世界人を探し出して一緒に遊ぶという目的が。
その為の活動内容は、団長が考えるといえば聞こえは良いが、
ようは団長の思いつきや気分次第でころころと変わるとも言える。
まあ、休みの日に定期的に行われる市内探索だけは予め活動予定として分かっているか。
しっかし、この連中が実は一癖も二癖もある連中だとはハルヒの奴は知らないからな。
俺は、すぐに知ったと言うか、向こうの方から白状してきたからな。
無意識に集めてきたはずのメンバーだと言うのに、こうも曲者揃いなのは団長が団長だからだろうか。
そんな考えを振り払い、俺は古泉が出してきたリバーシの相手をする。



 § §



「うーん、さてさて、どうしましょうかね」

「どうしようも何も、そこ以外に置く場所などないだろう。さっさと置け。
 そして、負けろ」

「いやはや、その通りなんですがね」

言ってようやく諦めたのか、残る二マスの一つへと白を置く古泉。
で、残る一マスに俺が黒を置くと、あっという間に誰が見ても黒が圧制でゲーム終了となる。
もう一回しようかと手を伸ばしたその時、何の前触れも躊躇もなしに扉が力強く開け放たれ、

「みんな揃ってる? 勿論、団長の私が来ているんだから揃っているわよね。
 揃ってない奴が居たら、そいつは…って揃ってるわね。
 うんうん。皆の熱意をひしひしと感じるわ。
 その熱意に敬意を示す意味でも、明後日の予定は空けておく事を勧めるわ。
 いえ、寧ろ空けてなさい。
 抗議や苦情、実は予定が入ってましたなんて寝言は、来週の月曜日以降に聞いてあげるわ」

とまあ、いきなりノックもなしに部室に入ってくるなり、歩みを止める事なく捲くし立てるのは、
言わずもがな、さっきも説明した全校生徒に変人としてその名を轟かせるSOS団団長涼宮ハルヒその人である。
ハルヒの奴は入ってくるなり団長席へと真っ直ぐ向かい、朝比奈さんにお茶の注文をすると、
さっきの続きとばかりに話し続ける。

「という訳で恒例にして皆も楽しみにしている市内探索を行うわよ」

楽しみにしているのはお前だけだろうと思いつつも、勿論、そんな事を口にするつもりは毛頭ない。
沈黙を肯定と自分の都合の良い方に受け取ると、ハルヒは何かを思いついたのか、
輝んばかりの笑みを見せる。
正直、その満面の笑顔には思わず見惚れてしまうかもしれんが、それはあくまでもこいつの性格を知っていなければ、
という前提条件が必要であろう。まあ、知っていても思わず見惚れそうにはなるんだが。
だが、俺の今までの経験が告げていたね。
こいつのこんな笑顔が出た時は、ろくな事が起こらないと。
まあ、いざとなったら頼むぜ長門。

「こら、キョン! 団長の私が話をしているというのに、なに有希に見惚れているのよ!」

誰も見惚れてなんかいないだろう。それよりも、いつものように探索をするんだろう。
そう話を元に戻すと、ハルヒはまるでそれを待っていたとばかりに首を横へと振り、

「今回の探索は新しい場所へ乗り込むわ!
 同じ場所も相手がこちらの油断を見て出てくる事も考えられるけど、
 やっぱり未知の世界へ乗り出していくのが人間としての本質よね!
 だから明日は――駅ね。いい? 遅刻は厳禁だからね!」

まあ、どこに行こうが結果は変わらない。
しいて上げれば、遠くへと出掛けるほど俺の気苦労が増えるって事か。
だが、天気が良いようなら遠出も悪くないかもな。
何といっても我が心のマイエンジェルにして、SOS団のマスコット朝比奈さんの私服姿が拝めるんだし。
そんな甘い考えが悪かったのか、まさかこの時点での俺は、
その探索がとんでもない事になるなんて思いもしなかった。
ま、まあ、今回に関してはハルヒの奴だけじゃなく、俺にも責任の一旦はあるんだが…。



 § §



で、その探索当日がやって来たわけだが。
まあ、細かい事はこの際省くとして、大まかに簡単に説明をするとだ。
その事件の始まりは午後の探索から始まった。
まあ、厳密にはこれが原因ではないんだがな。だが、ここが起点だったと思うね。
いつもの如くくじ引きによる班分けで、俺は朝比奈さんと一緒になり、目新しい町並みを子供の頃、
見知らぬ隣町まで自転車で漕いで広がった景色を胸高鳴らせて眺めている気分を思い出しながら散策している時、
彼女が誤って転んでしまったのだ。
俺は何とか後ろから支える事ができたんだが、その時だった。
支える事には成功したんだが、俺も慌てていたんだろうな。
差し出したその手が問題だった。
いや、俺的は全然問題ないどころか、むしろ…いやいや、これは決して俺だけじゃないはずだ。
思春期の男子であれば間違いなく誰でも俺と同じ事を思うはずだと断言するね。
ましてや、相手はあの朝比奈さんだぞ。
これでそんな事を思わない奴がいるのなら、そいつはきっと女に興味がないに違いない。
とまあ、言い訳がましく色々と述べたが、要は朝比奈さんを支えようとして差し出した俺の手が、
女性の中でも格段の柔らかさを持つ箇所を力いっぱい握ってしまった訳だ。
つまり、朝比奈さんの胸を俺の手は掴んでしまった訳だな。
うーん、普段から目にする機会もそれなりにあり、服越しとはいえその大きさは知っていたが。
やはり、見るのと触るのとではまた違うもので…。
とまあ、ちょっとばかしそんな事を考えている俺へと、朝比奈さんは顔を真っ赤にしながら御礼を言ってくる。
いえいえ、こちらこそ大変素晴らしいものを。

「ふぇっ! あ、あわわわ。そ、そんな、こ、こちらこそ、こんな粗末な…」

いえいえ、何を仰いますか。
あなたのソレが粗末なんて言ってしまったら、世の大半の女性たちの立場は。
今思えば、俺も朝比奈さんもかなり動揺していたんだろうな。
そんな、お互いに訳の分からない事を述べつつ、お互いにこの事は忘れようと約束をした。
だが、そうそう簡単に忘れれるような事でもなく、掌に残った感触をほんの少し反芻してしまうのは、
同じ年齢の男子諸君であれば絶対に理解して頂けるだろう。
しかし、タイミングが悪かった。そう、あまりにも悪かった。
駅前に戻り、全員から探索結果を聞いているハルヒの前でフィードバックしてしまったのだ。
だが、間違いなく緩んでいるであろう口元をこれでも急いで隠したはずだ。
なのに、この団長さんは聡いというか、何というか。
多分、一瞬だったはずのそんな俺の様子を、きっちりはっきりばっちりと目撃しやがった、コノヤロー。

「キョン! 何ニヤニヤ気持ち悪く笑ってるのよ!
 探索中に何かみくるちゃんにエッチな事でもしたんじゃないでしょうね!」

と鼻っ柱にすらりとした指を突きつけて怒鳴った。
正直、もう少し場所を考えろと言いたい。家に帰ってからでもいいだろう?
だけどその場に目が合った瞬間に顔を真っ赤にしながら俯いて、
体の前で組んだ指をモジモジさせている朝比奈さんがいてみろ。
そんな思考なんてあっさりと雲の彼方に消えてしまうぞ。
さりとて本当の事を言うなんて自殺行為はできず、長門の無感情な瞳と、知っているのかいないのか、
古泉の楽しげな微笑スマイル、そしてハルヒのご機嫌斜め、
まあこいつの場合は斜めじゃない時のが珍しいかもしれんが、
ともあれ、そんな顔でまるで肉を貫いたフォークのように俺を串刺しにしてくる。
どうやら、朝比奈さんは問い詰め免除らしく俺に的を絞ったハルヒの目が怪しく光る。
沈黙する俺と、口を開きかけるが恥ずかしそうに再び口を閉じるという可愛らしい仕草を繰り返し、
時折ちらりとこちらを見ては、慌てて目を伏せるといった朝比奈さんを交互に見遣り、
ハルヒは更に口を笑みの形に強引に曲げる。
あくまでも笑みの形であって、決して笑っていない事は決して短くない付き合いから良く分かる。
まるで浮気を見つかった夫とその愛人といったような図に、その例えに自分自身に突っ込みを入れておく。
と、その無言をどう受け取ったのか、俺を指していた指を更に進め、遂にはハルヒの指が鼻にめり込む。
いかん、本気で怒ってきている。
さっきも言ったが、いい加減長い付き合いだ。
この一年弱という時間の中で長門、古泉、朝比奈さん、そしてハルヒウォッチャーとなっていた俺は、
その表情が導火線に火がついたばかりだという事実に気付いた。
いかん。このままだと濡れ衣を十二単以上に着せられてヘタをしたら学校でまで大声で責め立てられてしまう。
結果は本人非公認朝比奈ファンクラブの学校男子生徒全員からの拳のプレゼントだ。
近い将来に起こりえかけている未来予想図に、背筋がそら寒くなる。
だから――俺は――。

「お前、入学した時の自己紹介で未来人と宇宙人と超能力者と異世界人とか行ってたけど、
 異世界人ってどんなのを希望しているんだ?」

なんて口走ってしまったんだ。
もう瞬間的に。
条件反射で。
自己防衛本能と言い換えてもいい。
聴いた瞬間に長門が数ミリ単位で目を見開き、古泉が笑顔を固まらせ、
朝比奈さんが恥ずかしさを忘れてあんぐりと口を大きく開きっぱなしにした。
その様子を視界に入れて、俺はようやく何を口走ったのかを悟った。
だけど俺の口はそんな失態にひっぱられて次の言葉を吐き出していた。

「一口に異世界人と言っても、異世界な訳だからな。やっぱり俺たちと同じような人型なのか。
 俺としては、どうせだったら朝比奈さんクラスの美人な異世界人を期待しないでもないがな。
 とまあ、そんな事を話していただけだ」

ここまできたらとやや強引にそう話を締め括り、俺と朝比奈さんの間で交わされた会話をでっちあげる。
正直、この時に戻れるというのなら、自分の頭を殴り倒してでも止めたね。
だけど、この時の俺は呑気にも後で長門に何か変な事でもおきてやしないか確認しようという程度だった。
まあ、ともあれそんな俺の言葉に、ハルヒはしかめっ面を修復もせずに腕を組むと、
冬眠前の熊が威嚇するようなうなり声を上げた。

「そうね。まぁちゃんと話ができればそれ以上望まないわ。一緒に遊ぶのに容姿は関係ないもの。
 あ、でもコミュニケートしやすいから、一応人型希望よね。
 ったく、そんなスケベな妄想するんだったら不思議の一つでも発見しなさいよね!」

いやいや、お前の周囲にいる三人はそんな不思議の塊だぞ。
とは口にもできず、自らの迂闊さと、朝比奈バストによって妄想していた頭を軽く小突いた。



でだ、問題はここからだ。
探索が終わった後、すっかりSOS団不思議三人組と待ち合わせをする定番となった、
長門の高級マンションの近くで再び待ち合わせした時に、それは起こった。
最初は何か変化がないか長門に聞こうとしたんだが、その時、古泉が開口一番言いやがった。

「幾ら話を誤魔化すためとはいえ、もう少し上手くできませんでしたか」

「悪かったな。咄嗟に思いつく訳ないだろう。それよりも…」

長門へと顔を向け、今度こそ何か変な事になってないのか尋ねようとした時、またしても俺の台詞は遮られる。
それも、その長門本人から。
とても短い言葉で。

「…来る」

その言葉が示す通り、俺たちの見ている中、目の前の空間がぐにゃぐにゃと歪みやがった。
しかも、そこから全身黒ずくめで大きめな、
中に何が入っているのかは知らないが重そうなバックを持った精悍な美青年が現れた。
それを見たとき、俺は何処か達観したような顔で、ああ、やっぱりか。
何て事を呟いていた。





つづく




<あとがき>

もう一つの始まり。
美姫 「こっちはSOS団側ね」
おう。こうして、本来なら会わないはずの存在が出会ってしまった。
美姫 「果たして、物語はどう進むのか」
次回をお待ちください。




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