『マリアさまはとらいあんぐる』



エピローグ 「またいつか」






恭也と美由希はここまでで良いと言うと、祥子たちと最後の挨拶をする。
その時、美由希が小声で恭也へと尋ねる。

「恭ちゃん、そう言えば切符は?」

「ああ、昨夜リスティさんから貰った」

「いつの間に?」

美由希の疑問に恭也は簡単に答える。



昨夜、寝ている恭也の部屋の前にリスティが現われ、恭也の部屋をノックした。
扉の前の主は無言で経ち尽くした後、ゆっくりと扉を開けて中へと入ってくる。
リスティは小声で恭也の名前を呼ぶと、静かに近づく。
ただ、暗かった所為か、躓き転ぶ。
運が良かったのか悪かったのか、倒れた先には丁度、恭也がいた。
急に倒れてきたリスティを図らずも受け止める形となった恭也は、襲ってきた微かな痛みに顔を顰める。
リスティはゆっくりと恭也の胸から顔を離し、顔だけを上げて恭也を見上げる。

「恭也、渡すのを忘れていたよ」

そう言ってポケットから2枚の切符を取り出すと、恭也から離れるのだった。



「寝ている時にリスティさんが来てな。切符を置いていった」

「ふーん」

恭也の言葉に美由希は納得する。
そんな中、皆寂しさを感じさせつつも、笑顔で恭也たちを見送る。
そんな祥子たちに一度だけ手を上げると、恭也は振り向かずに駅の中へと消えて行った。
祥子たちはその後ろ姿を最後まで見送ると、誰ともなくその場を離れて行く。

「最後まで一度も振り返らないのは、恭也くんらしいね」

「確かにね。でも、少しぐらいは振り向いてくれても良いとは思うけどね」

聖の言葉に蓉子が苦笑しつつ答える。
二人の会話に江利子も加わる。

「意外ね。蓉子がそんなに感傷的とは」

「悪かったわね。
 ……一度、あなた達とはじっくり話し合う必要があるかもね」

「まあ、怖い」

江利子がおどけて言うと、祥子たちからも笑いが起こる。
祥子たちは一度だけ駅へと顔を向けるが、すぐに前を向いて歩き出す。

「また会える」

恭也の残したその一言をそれぞれの胸に秘めながら。





おわり




<あとがき>

ここはALLエンドとも言うべきエンドです。
美姫 「当初は予定していなかったエンディングよね」
まあな。まあ、ちょっと色々とあって、急遽出来上がったエンドです。
美姫 「では、他のエンドへとどうぞ〜」
ここのキーワードは、『最』です。





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