『マリアさまはとらいあんぐる 〜2nd〜』



第14話 「ナイツ・オブ・ナイト」






「さて、それじゃあ、早速だけれど聞いても良いかしら」

開口一番、蓉子はそう口にし、周りを見渡す。
ここ、小笠原邸の応接間にいる者たちは、全員が事情を知っていると判断した上での台詞だった。
特に反論も出ないので、蓉子は率直に思った事を口にする。

「恭也がまた来られていて、しかも視察と偽ってうちに転入しているという事は、また何かが起こったのよね」

それに対し、祥子は一つ頷くと、恭也へと視線を投げる。
それを受け、恭也は一枚の紙を取り出して蓉子へと渡す。
その紙は、数日前に送られてきた脅迫状だった。
それにざっと目を通し、読み進めていくうちに、蓉子の表情が強張っていく。
全てを読み終える頃には、心なしか幾分張りつめた雰囲気で、その紙を聖たちにも渡す。
それを受け取った聖と江利子は、同じように読み進めていくうちに身を強張らせる。

「そういう事なの。今回は祥子だけではなく、山百合会全員なのね」

鎮痛な面持ちで眉間に指を当てて、そこを揉み解すようにしながら蓉子は呟く。

「ああ。だから、今回は最初から美由希を呼んだんだ」

「流石に六人を一人では辛いものね」

「ああ。だが、絶対に守ってみせる」

恭也の決意の篭った言葉に、蓉子は頷く。

「ええ、お願い。私に出来ることなら、それこそ何だってするわ。妹たちの危機なんですもの。
 それこそ、泣き叫べば何とかなるというのなら、恥も外聞もなくそうするわ。
 だけれど、こればかりはどうしようもないわ。
 勝手なお願いで、またあなたたちが傷付く事になるかもしれないけれど、それでもお願いするわ。
 祥子たちを守ってあげて」

「ああ、分かっている」

恭也の短いながらもはっきりとした返答に、蓉子は笑みを見せ、

「ありがとう」

そう一言だけ告げる。
その蓉子の横から、聖と江利子も声を掛ける。

「蓉子〜。私たちだって心配してるんだからね〜」

「そうよ。そのすぐに自分で何でもしようとするのは、いい加減にしておかないと、いらぬ苦労を増やすわよ」

「それは、あの三年間で嫌というほど思い知ってるわよ」

「へいへい。蓉子様には大変感謝しております」

先程よりも幾分軽くなった空気の中、祥子が恭也の一冊の紙束を渡す。
綺麗に折られ、右端をキチンと止められたソレを恭也は受け取る。

「これは?」

「今度の劇の台本よ。色々とあるけれど、とりあえずは劇を成功させないといけないでしょう。
 祐巳たちの分もあるから」

そう言って令と二人で祐巳たちにも配る。

「これを読んで、大体の話の流れを覚えて頂戴」

「ああ、分かった」

祥子の言葉に頷くと、恭也は早速台本を捲る。

「ナイツ・オブ・ナイト……」







とある国に一人の王がいた。
この王の名前はレミング。
レミング王はある日、自分の後継者を誰にするのか悩む。
順当に行けば、一の姫であるアナーシャ(由乃)となるのだが、
アナーシャは武術に長けており、自らも剣を握っては戦場に出ていた。
その為、下級の騎士や兵士たちの信頼は厚いのだが、いかせん、気が強い。
アナーシャの性格を表すのならば、過激にして傲慢といった所だった。
それではと、次の二の姫(祐巳)を考えてみる。
二の姫クリスティーは、姉のように武に長けてはいないが、その代わりに文に秀でており、外交手腕もかなりのものであった。
彼女ならば、女王としてもやっていけるかもしれない。
しかし、最近は隣国も攻めて来る事がなくなったとはいえ、気を許せる状況でもないのは確か。
その時、クリスティーでは少し不安が残る。
ならば、末の姫シルフィーヌ(志摩子)はというと。
彼女はそもそも姉を押し退けて何かをしようとしない。
常に自分は遠慮する性格で、何よりも争い事や人が傷付く事を嫌がる。
そんな性格では王は務まらない。
誰か良い者がいれば、婿に娶らせるものをと頭を悩ませる王。
その時、王の脳裏に一つの考えが浮びました。
王はそれを天啓と、その旨を姫たちに伝えたのです。
それは…。
三人の姫には、それぞれに仕えている騎士がいました。

アナーシャには、碧緑(へきりょく)騎士団副団長のバーシス(乃梨子)が。
彼は剣術よりも策略を好むタイプの騎士であったが、それでもその剣腕は目を見張る物があった。
何より、碧緑騎士団団長でもある姫に対して、唯一といって言い進言が出来る者だった。
武のアナーシャ、文のバーシスとしてこの二人が組めば、敵なしとまで言わしめるほどに息もぴったりと合っている。

クリスティーには、蒼風騎士団団長ペルスヴォード(美由希)が。
温和で誰に対しても優しく接する彼には、貴族の娘たちからの求愛も多くありました。
しかし、そんな外見とは裏腹に、彼はこの国で唯一、クラヴィスという騎士と互角に渡り合える騎士でした。

そして、末の姫に仕える騎士クラヴィス(恭也)
黒帝騎士団団長の彼は、こと剣術においては右に出る者なしとまで言われる程の騎士で、実直な性格をしていました。
この騎士の強さは、単純に剣腕だけでなく、その心にもありました。
彼は、何よりも姫を第一とし、その為には自らが傷付くことを厭いませんでした。

彼らは皆、自ら仕える姫に第一の忠義を置いていました。
王は、彼らの中から、最も優れた騎士を選び出し、その騎士の仕えている姫に王位を譲る事にしたのでした。







「…成る程な。で、この辺りの物語の導入部分は祥子が演じる吟遊詩人が詠う訳か」

「ええ、そうよ。私の出番はそこだけね」

「……ひょっとして、もう台詞も覚えてしまったとか」

「勿論よ。恭也さんには、これからしっかりと覚えてもらいますからね」

恭也は何とも言えない顔をすると、曖昧に頷き台本に再び目を通す。
そんな様子を苦笑しつつも、祥子は何も言わずに恭也が読み進めていくのを待つのだった。







王の発言を受け、国は三つの勢力へと分かれて争う事となる。
やる気を見せる上の姫たちと違い、末の姫シルフィーヌは戦う事を拒否する。
その為、彼女に付くものは小数となり、
黒帝騎士団と紅炎(ぐえん)騎士団、更に少数の騎士たちのみが、彼女の元に留まったのであった。
自らの宮殿に引き篭もったシルフィーヌを見て、アナーシャとクリスティーは残る敵は一人と判断する。
アナーシャは、本来なら自分が手に入れるはずだった王位を、このような形で競うこととなり、
生来の勝気な性格も手伝い、必要以上に王位に固執することになる。
一方のクリスティーは、少し複雑な事情が発生し、これまた王位を手にしようとするのだった。
こうして、二人の姫はお互いに譲ることの出来ない戦いへと向かっていくのだった。
兵士の数はアナーシャ側の方が多く、アナーシャ自身が騎士団長を務める碧緑(へきりょく)騎士団は、
実戦経験においては他の騎士団よりも多くこなしてきており、
その上、アナーシャ陣には国の守りを任されている森黄(しんおう)騎士団も付いていた。
特に、この騎士団の副団長二人は、守りの牢壁と呼び称されるほどにこと守りに関しては右に出るものがいない程であった。
何度か戦うも、クリスティー陣はアナーシャ陣に勝つことが出来ずにいた。
しかし、アナーシャもまた、簡単にクリスティーを打ち破ることが出来ずにいた。
それは、クリスティーに仕えるペルスヴォード率いる蒼風騎士団の存在があったからである。
更に、数に勝るアナーシャだったが、アナーシャ自身がそうそう戦場に赴く訳にもいかず、
碧緑騎士団が前線へと送られることがなかった。
こうして、数度刃を交えるも戦況は一進一退を極め、決着が付かずにいた。



クリスティーの事情とは、一体何なのか。
それは、クリスティーは本当は王の子ではないという事だった。
それだけではなく、すりかえられた王の本当の子がクリスティーの前に現れたのだった。
その子の名はシオンと言い、正当な跡継ぎである王子だった。
クリスティーは王子と似ていたため、当時の宰相の手によって生まれてすぐにすりかえられた偽の子だったのである。
クリスティーの本当の親は、その宰相であったが、この事実が発覚し処刑された。
王子は既に亡くなったと思った王妃は王に頼み、そのままクリスティーを自分の子として育てたのだった。
しかし、実際は王子は生きており、現在の宰相の息子であるファディオスの手によって保護されていたのだった。
クリスティーはその話を聞かされ、シオンに王位の座を渡すことこそ、これまで育ててもらった恩返しだと思い込んだのだった。
いや、思い込まされたのだった。
事実は少し違っていて、本当は二人は双子だった。
しかし、この国では双子は不吉な存在と言われており、もしも生まれた場合は後から生まれた方を殺すしきたりがあったのである。
これにより、シオンは王に命じられた騎士の手にかかって死んだのである。表面上は。
命じられた騎士は、幼子を殺すことが出来ず、自分の子供として育てていたのであった。
それをどうしてか知ったファディオスは、言葉巧みにシオンを操り、そして、クリスティーまでも操ってみせたのである。
全ては自らが権力を握るその為に。
そうとは知らず、クリスティーとシオンは次第に惹かれていくのだった。



こうして、アナーシャとクリスティーは幾度と刃を交し合う。
幾度目かの後、二人の姫はこのままではお互いに消耗してしまうと悟る。
そして、クリスティーは、アナーシャを毒殺しようと企むがこれに失敗する。
それをファディオスは、シルフィーヌが謀ったかのように見せかける。
ここに来て、シルフィーヌが漁夫の利を得ようとしているのではないかと疑い始めるアナーシャはシルフィーヌへと攻撃を開始する。
こうして、アナーシャの軍を二つに分断する事に成功したファディオスは、
その隙に守りの牢壁と名高い双子の騎士の片方を打ち破るための策を練る。
自らの親衛隊の中から、忠実なガルバディーンを呼び出し、彼に二人を仲違いにするように告げる。
同時に、ファディオスは最も信頼する男、アドルフを呼び出す。
彼は、その可愛らしい外見からファディオスの敵となる者に近づき、寝床でその寝首を掻いてきた少年であった。
彼は、己の親愛するファディオスのためならば、何でも実行し、
また、幼少より暗殺者として育てられてきた彼には、それをするだけの技術も持っていた。
ファディオスはアドルフに一つの使命を与える。
それは、レミング王の毒殺だった。
これが見事に成功し、その毒がアナーシャ毒殺に使われた物と同一である事や、
他の様々な要因からシルフィーヌが犯人とされる。
これにより、王殺し、同時に父殺しの汚名を着せられたシルフィーヌの元から、更に複数の騎士が離反していった。
残ったのは、シルフィーヌを信じている者たちと、彼女に仕える騎士クラヴィスを信じている者たちだけとなった。



そして、少なくなった兵力でアナーシャ軍との戦いが切って落とされる事となる。
シルフィーヌの元に残った騎士団は僅か二つだけだったが、その二つ、黒帝騎士団と紅炎騎士団は、精鋭揃いであった。
その為、数で圧倒的に勝るアナーシャ軍であったが、決着を着けることが出来なかった。
その頃、アナーシャの留守を守る森黄騎士団の一人、バーツへとガルバディーンが近づく事に成功する。
度々会っては話をしていくガルバディーンは、バーツの信頼を掴むまでになる。
しかし、ガルバディーンに何かきな臭いものを感じたダニッシュは会わないように警告をするが、それが聞き遂げる事はなく、
度々、ガルバディーンと会っては、酒を飲みながら様々な話をするという日々を送る。
バーツと親友となったガルバディーンは、ある日、ダニッシュがバーツの悪口をあちこちで言っていると吹き込む。
それを信じたバーツはダニッシュと口論となり、遂にバーツとダニッシュは互いに刃を交える事となる。
長期戦闘の準備をしていなかったアナーシャは、仕方がなく一旦軍を引き上げる。
そして、自らの城に辿り着いたアナーシャが見たものは、互いの剣で相手を貫いて絶命しているバーツとダニッシュだった。
これにより、アナーシャ軍は最高の守り手を失う。
この隙を付き、シルフィーヌ軍との戦闘の疲れも取れないアナーシャ軍にクリスティー軍が襲い掛かる。
当初は拮抗していた戦いも、度重なる戦闘で疲労していたアナーシャ軍が徐々に押され始める。
しかし、アナーシャとバーシスの二人が獅子奮迅の働きを見せ、持ちこたえていた。
中々終らない戦いに苛立ちを覚えたファディオスは、二人を孤立させる事にする。
あらゆる策を用い、アナーシャとバーシスの二人を他の騎士たちと孤立させる事に成功したファディオスは、
戦力の半分をこの二人へと差し向けた。
さしもの二人も、これ以上は無駄と悟り、森の奥へと逃げ込むと、そこで二人は自らの剣をお互いに突き刺して自害するのだった。
この知らせを聞いたシルフィーヌは嘆き悲しむが、その隙にもファディオスは戦の準備を整えていく。
ソレに対し、シルフィーヌはあくまでも戦いを良しとはしなかった。
王位を放棄すると言っても、その証としてシルフィーヌの首を要求するファディオスに、
シルフィーヌに従う騎士たちは怒りを隠せないでいた。
そして、遂にクリスティーとシルフィーとの戦いが始まるのだった。







「…………」

恭也は台本を読みつつ、少しだけ目頭を押す。
恭也の横でずっと恭也と一緒に台本を読んでいた祥子は、顔を上げて恭也を見る。

「もしかして、泣いてるの?」

「いや、そんな事はないんだが、少しだけ」

恭也はそう言うと、誤魔化すように再び台本へと目を走らせる。
それに何も言わず、祥子も同じように台本へと目を落とすのだった。







すぐに決着が付くと思っていたファディオスだったが、その読みは見事に外れた。
シルフィーヌに従う騎士たちの中に、腕の立つものが多くいたためである。
その筆頭は、言わずともシルフィーヌに仕える騎士クラヴィス。
国一番の剣腕を持つ彼の前に、何人もの騎士たちが倒れていく。
そして、その彼の背中を守るように立つ二人の騎士の存在だった。
一人はクラヴィス率いる黒帝騎士団の副団長も務めるアレックス。
もう一人は、女性でありながら紅炎騎士団の団長を務め上げるヴィラーネだった。
この三人に向った者で、無事に戻ってきたものはいない程の活躍振りであった。
このままでは埒があかないを悟ったファディオスは、軍を一時撤退させる。
そして、再び策を巡らす。
この策により、アレックスが反旗を翻す事となる。
内部からの反乱による混乱に乗じ、クラヴィスは危機に陥る。
この窮地をヴィラーネによって救われるが、これによってヴィラーネは戦死してしまう。
何とか傷だらけになりながらも、シルフィーヌの元へと駆けつけるクラヴィスだったが、時既に遅く姫を攫われてしまうのだった。
本来なら、シルフィーヌを殺せばそれで終わりなのだが、クラヴィスを恐れたファディオスはクラヴィスを殺す事を決めていた。
その為、唯一クラヴィスと互角に渡り合えるベルスヴォードに、それを命じる。
姫の命令ではないので聞けないと言うベルスヴォードに対し、ファディオスは褒美としてシルフィーヌを与える約束をする。
シルフィーヌに想いを寄せていたベルスヴォードは、その結果として、
自らが仕えるクリスティーのためにもなると判断し、その条件を飲む。
そんなベルスヴォードを余所に、ファディオスは一人ほくそ笑むのだった。
彼は、クラヴィスが倒れた後、シルフィーヌとベルスヴォードも亡き者とする計画を立てていたのだった。
その頃、クリスティーは全てがファディオスの計画だったと知り、落ち込む。
しかし、最早止める手立てもなく、また、自分が愛したシオンが実の弟と知って苦悩するのだった。
結局、クリスティーとシオンの二人は許されぬ愛を嘆きながら、共に毒を飲んで共にこの世を去る。
クラヴィスとベルスヴォードの一騎打ちは、クラヴィスの勝利で終る。
クラヴィスはシルフィーヌを助け出した後、シルフィーヌの言葉に従い、姫を連れて国を出て行くのだった。
王位候補者がいなくなった事で、ファディオスは自らが王位に着くのだった。
こうして王位に着いたファディオスだったが、この争いから数日後、周辺諸国が弱体している今を逃す訳もなく、
一斉に攻めてくる。先の戦いでまともに闘える状態ではなかった国は、あっさりと滅びるのだった。
この際、ファディオスもまた討ち取られたという風の噂を、遠く離れた山村でシルフィーヌとクラヴィスは耳にする。
しかし、国と剣を捨てた二人には、最早そんな事は関係なかった。
二人は静かにひっそりと、その村で幸せに暮らすのだった。







恭也は読み終えた台本を閉じると、ほっと詰めていた息を吐き出す。
それを眺めながら、祥子は口を開く。

「読んでもらったら分かるかと思いますけれど、
 最後のクラヴィスとペルスヴォードの対決のシーンは、特にこうして欲しいとかはありませんから。
 恭也さんと美由希さんにお任せします」

「ちょ、それは…」

「別に本気を出してくださいとまでは言いませんから。お願いします。
 このシーンで、お二人の剣戟が入れば、かなりいい劇になるんです」

「……分かった。どうせ、もう断われないのだろうしな」

「ありがとうございます」

恭也の言葉に、祥子は嬉しそうに礼を言う。

「まあ、手伝うと言った手前な」

そう言いながら、照れたように手に持った台本をペラペラと捲る。

「えっと、それでこの宰相の息子ファディオスが瞳子さんで、女騎士ヴィラーネが可南子さんだたな」

「ええ、そうよ」

「なら、他の役は?」

「それは、花寺の生徒会の方々にやって頂きます」

そう言って、祥子は毎年両校の文化祭は互いの生徒会が協力しているという事と説明する。

「なるほど。それで、弟さんのいらっしゃる祐巳さんがニの姫になった訳ですか」

「ええ、そうよ。後、本当に双子の方がいらっしゃるから、そのお二人にはバーツとダニッシュをお願いして、
 アドルフにはこう言ってはアレなんだけれど、ぴったりの男の子がいるのよ。アリスという名前なんだけれどね」

「つまり、その彼にはアドルフ役をやってもらうということか」

恭也の問い掛けに祥子は、ええと答え頷く。

「後、黒帝騎士団副団長アレックスには小林さん、ガルバディーンは高田さんにお願いします」

「で、レミング王が令さんと」

「そういう事です」

そこまで話して、恭也はふと気付いたように言う。

「俺と美由希が来なかったら、二人ばかり役が空くような気がするんだが…。
 もし、この件がなかったら、どうなっていたんだ?」

「さあ、それは秘密ですわ。恭也さんたちがいらっしゃるからこそ、この配役になったとだけ申しておきます」

「まさかとは思うが、この為に俺たちを呼ぶなんて事は…」

恐る恐る尋ねる恭也に対し、祥子は笑みを浮かべて首を傾げ、口元に人差し指を立てる。

「さあ、どうでしょう」

背筋に冷たいものを感じつつ、恭也は何か言おうとするが、それよりも先に祥子が言う。

「冗談ですよ。そんな事するはずないじゃないですか。
 まあ、文化祭のチケットは送ろうかとは思ってましたけれど。
 お二人が来られていなかった場合は、私と令で二役する予定だったんですよ。
 でも、そうならずに済んで、ほっとしてますわ。
 その件だけでも、充分に恭也さんにはお礼を申し上げませんとね」

祥子の言葉に、恭也はただ苦笑するしかなかった。
そんな恭也に向かい、祥子が言う。

「色々と大変でしょうけれど、劇の方も頑張って下さいね」

ニッコリと微笑みながら告げられたその言葉に、恭也はただ苦笑して頷くしか出来なかった。





つづく




<あとがき>

今回はナイツ・オブ・ナイトの簡単な説明〜。
美姫 「でも、これって主人公のクラヴィスって名前意外は、キャラもストーリーもオリジナルよね」
はははは。だって、前から言ってるように、とらハ本編で出てくるナイツ・オブ・ナイトに関して分かっている事って、
クラヴィスという名前の主人公がいて、そのクラヴィスを中心とした戦友たちによる、
戦争や裏切り、恋愛関係やちょっとした同性愛シーンがある、というぐらいしか書かれてないんだぞ。
言うならば、ナイツ・オブ・ナイトという名前とクラヴィスという名前だけを借りたオリジナルだな。
美姫 「ナイツ・オブ・ナイト浩ヴァージョン?」
うむ、そんな感じだ。
美姫 「それで良いのかしら」
まあまあ。これを山百合会は文化祭でやる訳だ。
今回は走り書きみたいな感じで大まかな話の流れだけだったが…。
美姫 「その言い方からすると、文化祭編ではきっちり書くの!?」
……空が青いな〜。
美姫 「書かないの!ここまで細かく設定しておいて」
確かに、設定が勿体無いから書こうとは思ってるぞ。
しかし、しかし、時間とい大敵が…。
そして、果たしてそんな細かい内容を見たがる人がいるのかという…。
美姫 「それは確かにね〜」
まあ、中には見たいと言ってくれた人もいるんだがな。
とりあえず、本編ではやろうかな〜と考えてる。
しかし、ひょっとすると番外編になったりするかもしれんし、希望者のみに配信とかになるかもしれない。
こればっかりはね。
美姫 「とりあえず、今のところは本編に入ってくるって事で良いの?」
うん。そのつもりだぞ。でなければ、ここまで細かく作らん。
美姫 「それもそうよね。これを考えてた所為で、他のSSが全然出来てないなんて事になっておきながら、
    本編には出しません、って事はないわよね」
……何気に怒ってる?
美姫 「ううん、ちっとも。ただ、後でちょ〜〜〜っと話があるかな〜?」
あ、あはははは。……分かりました。
美姫 「さて、それじゃあ、また次回でね〜」
しめじを松茸と教えられつづけてきた少女の必殺パンチで飛ばされながら、次回を待て!
美姫 「最近、このパターンでの終り方が多いわね」





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