『マリアさまはとらいあんぐる 〜2nd〜』



第15話 「前薔薇さまとつぼみたち」






恭也が台本に目を通している頃、そこから少し離れた場所では、久し振りの対面が行われていた。
と、言っても当人たちはあっさりとしたもので、傍から見ていた祐巳が逆に拍子抜けするような感じだった。

「元気だった、志摩子は?」

「はい。お姉さまもお変わりがないようで」

「まあね。で、そっちにいるのが…」

「はい。紹介しますね。私の妹で乃梨子と言います」

聖の視線の先、志摩子の横に腰掛けていた乃梨子は立ち上がると、頭を下げる。

「二条乃梨子と言います」

「あー、一応、前白薔薇さまで、志摩子の姉をやってた佐藤聖。
 ふーん、乃梨子ちゃんね」

「な、何ですか」

じろじろと眺められ、乃梨子は思わず後退る。
そんな乃梨子を面白そうに眺めつつ、聖は軽く手を振る。

「いやいや、何でもないよ」

ちらちらとこちらの様子を伺っている祐巳の方を見遣り、聖は笑みを浮かべて手を振る。
それに慌てたように祐巳は持っていた台本へと視線を移すが、その程度の事で聖が大人しく引き下がるはずもなく…。
祐巳は逃げるように蓉子の元へと行くのだった。

「どうかしたの、祐巳ちゃん」

「あ、いえ、別に何でもないんですが。
 えっと、そのお久し振りです」

我ながら、何を今さらながらにこんな事を言っているのだろうかと落ち込みつつも、とりあえずは挨拶した手前頭を下げる。
そんな変わらない祐巳の様子に蓉子は頬を緩ませつつ、

「そうね。久し振りね。祐巳ちゃんも相変わらずみたいで、少し安心したわ」

「はい。元気だけが取り柄ですから!」

祐巳の答えに蓉子ははっきりと笑みを浮かべると、祐巳と話し始める。
それを見て、聖はちぇっ、と小さく呟いて志摩子と話し始めるのだった。

「お姉さま、大学の方はどうですか?」

「うーん、どうだろうね。あんまり高校の時と変わらないような気もするし。
 まあ、それでも、やっぱり多少は違うって気もするしね。
 そうそう。祐巳ちゃんには言ったことがあったかもしれないけれど、苗字で呼ばれてるんだけど…。
 これが結構、新鮮で面白いかな」

「そうなんですか」

「うん。親しい人には名前で呼んでもらう方が良いって言う気持ちが少し分かると言うか。
 まあ、志摩子は今まで通りに呼んでくれて良いからね」

「はい、分かっています。お姉さまは、いつまで経っても私のお姉さまですから」

「おやおや、嬉しい事を…」

向こうの方で令を挟んで何かを言い合っている由乃と江利子をぼんやりと眺めつつ、
乃梨子は隣に座る志摩子の横顔をちらりと盗み見る。
自分と話すときとは違った表情で、聖と話をする志摩子を見て、新鮮さと少しの妬みを抱く。
そんな乃梨子には気付かず、志摩子はしきりに聖と話をする。
確かに久し振りにあったのだから、積る話もあるのだろうが、自分が隣に居るのに前白薔薇さまとばかりはなさなくても。
そんな気持ちを抱きつつ、乃梨子はそれでも嬉しそうな志摩子の横顔から目が話せないでいた。
そんな乃梨子に気付いた聖が、乃梨子の方を見て、二人は視線がぶつかる。

「どうかした、乃梨子ちゃん?」

「い、いえ、何でもありません」

そう答えつつも、何故か全てを見透かされているような気になり、思わず目を逸らしてしまう。
本能的に一筋縄ではいかない強敵だと悟ったようである。

(考えてみれば、あの薔薇さま方のお姉さまたちなのだから、それも当たり前よね)

心境としては、新人がベテランに勝負を挑むようなものだった。
それでも、今の志摩子の妹は自分で、自分こそが志摩子の事を理解しているという自負の元、再度聖と視線を合わせる。
聖は、そんな乃梨子の心境そのものを理解しているのか、その上で口元に余裕の笑みを浮かべる。
それが乃梨子には癪に障ったのか、何か言いかけるが、志摩子が尊敬している姉であり、
今、ここで自分が聖と喧嘩をすれば、間違いなく間に立つ志摩子が悲しむだろうと想像が容易に出来たため、
結局、乃梨子は口を閉ざし、顔を俯ける。
その為、それを少し残念そうに眺める聖の表情には気付かなかった。





江利子と由乃に挟まれて座っている令は困惑していた。
姉に久し振りに会えた事を嬉しく思うものの、それを前面に押し出すと、妹が拗ねるからである。
ただ拗ねるだけでなく、常に令の視界に入る位置にいて、こちらが声を掛けても聞こえない振りをする。
そちらを向けば、あからさまに顔を背けて全身で怒っていますと表すのである。
かと言って、由乃ばかりに構っていると、今度は江利子が色々とちょっかいを仕掛けてくる。
この姉は、自分の妹の事であろうと、面白そうならば何でもやりかねないのである。
結果、令は二人の間に座り、何かと気を使う事となる。

「もうすぐ文化祭よねー。当然、令は入場チケット、私にくれるんでしょう」

「それは、勿論です」

「うんうん。令は相変わらずいい子だわ」

そう言って令の頭を撫でる江利子を、反対側に座った由乃が睨む。

「江利子さまはもう、リリアンを卒業なされたんですから、いい加減、妹離れなさった方が宜しいんではないでしょうか?」

「あら、リリアンを卒業したと言っても、私はずっと令の姉よ。
 姉として、妹を可愛がるのは当然じゃない。ねえ、令」

「え、ええ、そうですね。ご卒業なされてもお姉さまはお姉さまですから」

由乃の方を気にしつつも、令はそう答える。
その答えに満足した江利子は、笑みを浮かべつつ由乃を眺める。
令も由乃の方を窺うと、案の定、由乃は頬を膨らませて拗ねていた。

「くすくす。由乃ちゃんは本当に可愛いわね〜。からかい甲斐があるわ〜」

「むー。可愛くなくても結構ですから、どうぞ構わないでくださいな」

「そう?それじゃあ、仕方がないわね。由乃ちゃんの代わりに、令を可愛がる事にするわ」

「令ちゃんにも構わないで下さい!」

「あら、令は妹なんだから、良いじゃない」

令を間に挟んで、由乃と江利子は睨み合う。
と言っても、実際に鋭い眼差しで睨みつけているの由乃だけで、江利子はそれを涼しげな表情で流している。
それが益々気に食わないのか、由乃はさらに視線を鋭くする。

(あーあ、由乃。それじゃあ、逆効果だよ)

口には出さず、令は心の内でそっと呟く。
当然、由乃に聞こえるはずもなく、由乃はじっと江利子を睨みつけたままだ。
尤も、言った所で聞かないと分かっているからこそ、令も口には出さないのだが。
結局の所、姉妹揃って江利子に言い様にされている訳である。

「うぅ〜、いい加減に、令ちゃんの頭から手を除けてもらえませんか?」

「あら、別に由乃ちゃんの頭じゃないでしょう」

「令ちゃんが嫌がっているじゃないですか」

由乃の言葉に江利子は令を見ると、

「令、私にこうやって撫でられるのは嫌?」

「いえ、そんな事はありません」

と、答えつつも、横から突き刺さる視線に何とも言えない表情となる。

(令ちゃん、何で嫌と言わないのよ!)

由乃の目がはっきりとそう語っている。
そんな由乃に、江利子が更に言葉を放つ。
それを令は、オロオロしつつも、ただ黙って眺めていた。

(お姉さま、お願いですから、これ以上由乃を刺激するような事だけは…)

懇願にも近い思いで祈るが、江利子はそれに気付かず、いや、もしかしたら気付いたのかもしれないが、
あっさりと無視すると、爆弾を投げつける。

「まあ、妹のいない由乃ちゃんには、妹の可愛さは分からないか」

その言葉に、由乃のこめかみがピクピクと引き攣るのを、令ははっきりと見た。
背筋に嫌な汗を流しつつ、令はただ黙って事態を眺める事しか出来ない。

「そろそろ時期的にも、つぼみに妹がいないとしんどいのよねー」

しみじみと語る江利子に、由乃が詰め寄る。

「そんな事、江利子さまには関係ないじゃないですか!」

「あら、全くないって事もないわよ。その所為で、可愛い妹の令の苦労が増えるんですもの」

妹をやけに強調して言う江利子に、由乃は今にも掴み掛からんばかりに睨み付ける。

「私だけでなく、祐巳さんも妹はいませんけど?」

「あら?じゃあ、祐巳ちゃんが妹を作ったら、由乃ちゃんも作るの?
 聞いた所によると、祐巳ちゃんには妹候補らしき子がいるんですって?
 って事は、由乃ちゃんにもいるのかな?」

この人は分かっていて言っていると頭で理解しつつも、一度スイッチの入った由乃の感情は理性など遥か彼方へと追いやる。

「そこまで仰るのなら、近いうちに妹を……」

勢いに任せて何かを言おうとした由乃の口を、流石に令が塞いで止める。

「むぐむぐ。ふぇいふぁん、ふぁにすんふぉ(令ちゃん、何するの)」

「由乃、落ち着いて。流石にそれは勢いに任せて言っては駄目だよ。
 由乃自身のためにも、そして妹となる子に対しても」

「むぐむぐ……」

令の言葉に少し冷静になった由乃は、令の手を退けると、

「うん、確かにそうね。ありがとう、令ちゃん。助かったわ」

「どう致しまして。それと、お姉さま。幾ら何でもやり過ぎですよ」

「はいはい。反省してるわよ」

本当に反省しているのかどうか怪しい態度で、江利子は令に返事をするのだった。





そんなやり取りにも目もくれず、志摩子は聖と話をしていた。
そして、聖とばかり話をする志摩子に対し、その横で乃梨子はつまらなさそうな顔をして拗ねていた。
話が一区切り着いた頃を見計らい、聖が乃梨子に話し掛ける。

「乃梨子ちゃんって、人見知りする方?」

「い、いえ、そんな事はありませんけれど…」

突然、話し掛けられた事に驚きつつも、聖の問い掛けに答える。

「そうなんだ。さっきから話さないから、てっきり人見知りするのかと思った。
 もしかして、私、嫌われてる?」

聖の言葉に驚いたのは、他でもない志摩子だった。
そんな慌てた志摩子を見遣りつつ、乃梨子はそれにも首を振る。

「いいえ、お姉さまのお姉さまだった方なのですから、そんな事はないです」

その言葉に志摩子はほっと胸を撫で下ろし、聖は楽しそうに笑う。

「はははは。それは嬉しい事を言ってくれるね。
 私には在学中には孫が出来なかったからね。
 やっと孫が出来たのに、嫌われているのかと思ったよ」

「そんな事はないです」

聖の言葉に、乃梨子はもう一度否定の言葉を紡ぐ。
そんな乃梨子を満足そうに眺めた後、

「そうか、結構しっかりした妹みたいで、私も安心だな。
 こう見えても、志摩子は肝心な所がどこか抜けているというか、普段からフワフワと言うか、ポワポワしてるからさ、
 妹が出来たら大変かなと思ってたけれど、乃梨子ちゃんなら大丈夫だね」

「お、お姉さま、何を言うんですか、私、そんなにポワポワなんかしてませんよ」

聖の言葉に志摩子は抗議の声を上げるが、それに対しての反論は意外な所から出る。

「いえ、聖さまの仰る通りだと思いますけど。流石は、お姉さまのお姉さまだと思います。
 お姉さまは確かにしっかりしているんですけれど、そのポワポワと言いますか、確かにそういった所もあるのは確かです。
 えっと、ポワポワと言うか、世間から少しずれていると言うか」

「の、乃梨子まで」

赤くなる志摩子を余所に、その言葉に聖は笑い声を上げる。

「あはははは。それは言えてる。確かに、志摩子は少しずれた所があるからね」

「お姉さままで」

「まあまあ、そこが志摩子の良い所でもあるんだから」

「そうですよ、お姉さま」

「……あまり嬉しくないです」

少し俯く志摩子を横に、二人はすっかり意気投合し、お互いの知っている志摩子の話を繰り広げる。
お互いに知らなかった志摩子の話を聞きつつ、時にはそれを笑ったりする。
そんな二人の間で、志摩子は恥ずかしげに俯きながらも、仲良く話をする二人を見てそっと微笑むのだった。
と、そこへ祥子が声を掛ける。

「志摩子、少し良いかしら。一応、恭也さんが台本を読み終えたみたいだから、少しだけ本読みしてくれる」

「あ、はい。お姉さま、乃梨子、少し席を外しますね」

「ああ、行っておいで」

「行ってらっしゃい、お姉さま」

祥子に返事を返し、二人に断わってから志摩子は恭也たちの元へと行く。
その背中を眺めつつ、聖は小声で乃梨子に話し掛ける。

「とりあえず、ありがとうね」

何故、突然感謝の言葉を言われたのか分からない乃梨子に、聖は続ける。

「あの子は、何かあればいつでも去って行くことが出来るように、なるべく身軽でいようとしていたんだ。
 だから、周りから常に一歩離れた所にいるような印象があったんだけど…」

「でも、私が出会った時は、確かに儚い印象はありましたけれど、そういった感じではなかったかと」

「まあね。その辺りは、恭也くんのお陰なんだけれどね。
 でも、それでも、私が卒業する時には恭也くんもいなかたしね」

そう言って、聖は真っ直ぐに乃梨子の目を見詰める。

「乃梨子ちゃんが妹になってくれたお陰で、志摩子も成長出来たと思う。
 私たちはお互いに似ているからね。相手の事を良く理解できても、ただそれだけ。
 私は志摩子の手を繋ぐ事は出来ても、そこからもう一歩を踏み出させる事はできなかった。
 ただ、一緒に歩いて、あの子を守ってあげる事しか出来なかった。
 それも、私が卒業するまでの間だけね。
 私がいなくなっても、祐巳ちゃんたちがいるから、いつかは一人でも歩けるとは思っていたけれど。
 それでも、やっぱりその事だけは心配だったから。
 だから、それを代わってやってくれた乃梨子ちゃんには感謝してるよ。
 乃梨子ちゃんのお陰で、志摩子は早い段階で一人で歩き出す事が出来たみたいだから。
 そして、今こうして笑っていられる。
 だから、ありがとうなの」

そう言って笑う聖を見ながら、改めて乃梨子は聖が志摩子の姉であるのだと実感し、同時に尊敬の念を抱く。
しかし、それはすぐに掻き消えてしまうのだが。
どこか感心したように聖を見詰める乃梨子の背後に素早く回りこむと、そのまま乃梨子に抱き付く。

「の〜りこっちゃん!」

長々と話をしている間に、用事を済ませた志摩子が、恭也の横に座りながら、
こちらを見ているのに気付いた聖は、志摩子に軽く手を振る。

「なっ!……な、何をなさるんですか、聖さま」

驚いて声をあげる乃梨子と抱き付きながた手を振る聖を見て、志摩子はただ微笑ましそうに眺めつつ、小さく手を振り返す。

「うーん抱き心地は良いんだけれど、こう張り合いがないと言うか。
 こう、変わった叫び声が上がって、こわ〜い姑が……、というのがないと言うか……」

「な、何を言ってるんですか。そ、それよりも離れてください。
 と言うか、お姉さまも手を振り返していないで、助けてください〜」

暫らく抱き心地を堪能した聖は乃梨子を離し、素早く蓉子と話していてこちらに気付いていない祐巳の背後へと忍び寄る。
こちらに気付いた蓉子に、唇に人差し指を当てて合図を送ると、一気に残る距離を詰めて抱き付く。

「ぎゅおわぁぁぁ!」

「あ、あはははは〜。これ、これ。この可笑しな叫び声に、この抱き心地。
 やっぱり祐巳ちゃんが一番だよ〜」

「や、止めてください聖さまっ!」

聖に抱きつかれ、じたばたと暴れる祐巳。
そこへ、祥子が声を上げる。

「聖さま!いい加減にしてください。前から仰っているように、そう言う事はご自分の妹でなさってください。
 それに、今回は孫もお出来になったのですから、そちらで楽しまれては如何ですか。
 それに祐巳、じたばたと暴れるから、面白がってやられるのですよ」

祥子の言葉に祐巳は抵抗を止めて大人しくする。
そんな祐巳を更に強く抱き締めつつ、

「あー、乃梨子ちゃんはさっきやったから、今度は祐巳ちゃんの番。
 祐巳ちゃん、久し振りだからね〜。う〜〜ん、やっぱり祐巳ちゃんの抱き心地が一番落ち着く〜」

聖は、祐巳が抵抗しないのをいい事に、調子に乗って頬擦りする。
それでも祐巳は我慢してじっとしている。

「聖さま、いい加減にしてください!それと、祐巳!
 何を大人しくされるがままになっているんです!
 あなたが抵抗しないから、聖さまが調子に乗るんでしょう!」

「そ、そんな〜」

祥子の言い分に、祐巳は情けない声を上げるが、祥子の言葉は絶対なのか、再びエンジンが掛かったかのように暴れ出す。

「ふっふっふ。幾ら暴れた所で、無駄よ、無駄。伊達に何度も祐巳ちゃんに抱きついていないもの。
 その程度じゃ、離さないわよ〜」

「ふぇ〜〜」

困った祐巳は祥子を見るが、明らかに不機嫌な顔で睨みつけられる。

(わ、私が悪い訳じゃないのに〜)

兎も角、これ以上祥子の機嫌が悪くならないうちに、何とか聖を振りほどこうとするのだが、
本人が口にした通り、中々引き離す事が出来ないでいた。
困り果てた祐巳は、妹である志摩子に視線を向けるが、志摩子はまあまあといった感じで、微笑んでいるだけだった。
それならと、孫に当たる乃梨子に視線を転じるが、こちらは明らかに視線を逸らす。
だが、多少の罪悪感はあるのか、すいませんとだけ口に乗せる。

(そう思うのなら助けてよ、乃梨子ちゃ〜ん)

祐巳は背中に祥子の機嫌が悪くなっていくのを感じつつ、きょろきょろと周りを見る。
そして、すぐ横の人物に目を留めると期待に満ちた視線を送る。

「蓉子さま〜、お願いします〜」

「そうね〜。イチゴミルクコーヒーって知ってる祐巳ちゃん」

「……えっと、名前ぐらいは」

「それのホットってどんな味なのかしら?」

にっこりと微笑む蓉子に対し、祐巳は肩を落とす。
祥子の機嫌と、得体の知れない飲物。
両方を秤に掛け、どちらに傾くのか。

「うぅぅ〜。試させて頂きます」

予想通りというか、秤は祥子機嫌に傾いたらしい。

「ありがとう」

祐巳の答えを満足そうに聞くと、蓉子は聖に話し掛ける。

「そう言う事だから、聖、祐巳ちゃんを離してあげなさい」

「え〜。もうちょっと堪能してたいのに〜」

「聖」

「分かったわよ、仕方ないな〜」

蓉子に再度言われ、聖は祐巳を解放する。
解放された祐巳はほっと安堵するものの、ホットイチゴミルクコーヒーがどんなものやら想像するに嫌な感じになるのだった。
そんな一連の騒動を眺めつつ、乃梨子は掴み所のない人たちだと呆れつつ思うのだった。





つづく




<あとがき>

さて、今回はほのぼのといった感じで。
美姫 「ほのぼの?ドタバタ?」
まあ、両方といった所か?
いや、そんなにドタバタはしてないか。
美姫 「とりあえず、聖と乃梨子の関係は良好といった所かしら」
うんうん。さて、次回は……。
美姫 「ふんふん、次回は?」
それでは皆さん、さ〜よ〜〜な〜〜…。
美姫 「何よ、それは!」
ぐげろぼにょぉぉぉ!べ、弁解の暇すらないのか……。ガクッ!
美姫 「そんなものある訳ないでしょう!ぶっ飛べ〜〜〜!!」
……………(既に意識が無くなっている為、いつもの奇声はありません。あしからず)
美姫 「ふ〜。これで良し!それじゃあ、また次回でね〜」





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