『マリアさまはとらいあんぐる 〜2nd〜』



第66話 「最終決戦の始まり」






美沙斗と美由希がそれぞれリノアと悠花へと向う横を、恭也は駆け抜けて行く。
リノアたちも元からそのつもりだったのか、恭也へは何も仕掛けず、ただ目の前の相手へと己の武器を振るう。
美沙斗とリノアの刃がぶつかり、両者は鍔競り合いを演じながら至近距離からお互いを睨み合う。

「良いのか、死神。悠花は私よりも強いぞ。お前が相手をしなくて」

「だったら、この組み合わせで正解だよ。あの子は私よりも強いからね」

言うと同時、後ろへと飛び退る美沙斗に合わせたように、リノアもまた後ろへと跳躍する。
美沙斗は後ろへと飛び退りながら飛針をリノアへと投げ付け、着地と同時に地を蹴り、再びリノアへと迫る。
リノアは着地しながら飛針を全て長刀で打ち落とし、迫り来る美沙斗を待ち構える。
両者の獲物が再びぶつかり合い、小さな火花を散らす。

先程までとは別人のような雰囲気を纏う悠花に戸惑いつつも、美由希はすぐさま思考を切り替える。
目の前の人物相手に油断は出来ないと、肌から伝わってくる悠花の剣気が物語っている。
美由希は悠花との距離を詰めながら、鋼糸を伸ばす。
それを悠花は斬り捨て、軽く地を蹴る。
軽く見えた動作に反し、悠花はあっと言う間に美由希との距離を詰めて来る。
ただし、その姿は力強くと言うよりも、風に乗るかのように軽く、美由希は一瞬だけ間を外される。
しかし、すぐに距離感を掴むと、迫り来る悠花へと小太刀を振るう。
上から振り下ろした美由希の小太刀と斬り上げる悠花の刀がぶつかり、高い音を奏でる。
美由希はすぐさま悠花の横へと回り込むように身体を動かし、悠花の頭の後方、死角となっている左の小太刀を振るう。
しかし、悠花はそれが見えていたのか、分かっていたのか、その攻撃を一瞥する事無く悠花は右手の刀で受け止めると、
そのまま美由希へと身体を正面に向けるようにその場で右へと回転し、その勢いのまま残る左の刀を美由希の胴へ。
それを右の小太刀で受け止めると、美由希は蹴りを繰り出す。
その蹴りを受け流し、悠花は一旦距離を開ける。
その動きはやはり軽やかで、美由希は思わずその動きに見惚れそうになるほどだった。



リノアと悠花を美由希と美沙斗に任せた恭也は、そのまま建物内へと侵入する。
そのあまりにも静かな中の様子に、恭也はこれが罠かと警戒心を抱きながらもゆっくりと歩を進める。
そんな恭也の内心を知ってか、暫らく進むと何処からともなく宗司の声が聞こえてくる。

「よく来たな、士郎の倅。この時が来るのを、どれほど待ちわびたか。
 本来なら、わしと海透でお主と士郎を招きたかったが、まあ、致し方あるまい。
 本当に、わしの手で殺してやりたかった。尤も、間抜けなあ奴らしい最後じゃったがな。
 何でも、小さな子供を助けて身代わりになったとか。ふっふふっはっははぁはははは。
 本当に愉快じゃな。そして、本当に愚かしい。人を助けたとて、己が死んでは意味もあるまいに。
 まったく愚かな男…」

「五月蝿い、黙れ。それ以上、その口で父さんの事を喋るな」

強い口調で宗司の言葉を強引に遮る恭也に、宗司の馬鹿にしたような笑い声が返る。

「ふぉっふぉっふぉ。父親を愚弄されて怒ったか?
 思ったよりも気の短い」

「…黙れと言ったんだ。貴様の御託など、どうでも良い。
 わざわざ俺をここにすんなりと入れたのには意味があるんだろう。
 だったら、もったいぶらずにさっさとしろ」

「そう焦らずとも良い。なに、すぐにあの世への片道切符を渡してやるわい。
 その奥に上へと上がる階段がある。そこを登るが良い。そこが、お主の墓場じゃ」

宗司の言葉に恭也は何も返さず、ただ無言で奥へと歩を進める。
行き止まりかと思われた通路の奥に、確かに上へと続く階段があり、恭也は慎重に登っていく。
元が工場だった所為か、普通の民家などよりも一つのフロアの高さがあり、その分長くなっている階段を、恭也はただ静かに登る。
やがて、階段が途切れて一つのフロアへと出る。
ざっと見渡してもかなりの大きさのフロアで、何も物がない空間がそこには広がっていた。
このフロアにあるのは、四方の壁のうち三方に板か何かで完全に塞がれた窓が、残る一面には扉が付いており、
こちらは何も塞がれていない事から、他へと通じているのだろう。しかし、他には本当に何もない。
いや、煌々と無数の明りが頭上から照らし出す中、フロアのほぼ中央にたった一つの影が。
影は身に纏っていたコートらしきものを脱ぎ捨てると、静かに腰にぶら下げていた二つのモノのうち一つを手に取る。
静かに抜き放たれた刃に無数の光を反射させ、男は何も告げず、姿を現した恭也へと目掛けて走り出す。
交わす挨拶も、己が名を名乗る事もせず、ただここにやって来た者は全て敵で、ただ倒すのみとばかりに。
しかし、行き成りの奇襲に近い襲撃にも恭也は慌てる素振りも見せず、このフロアで影の存在に気付いた時には、
既に抜き放っていた愛刀の八景で男の斬撃を受け止める。
受け止めると同時に恭也はもう一刀を抜き放ち、男へと斬り掛かる。
それを男も残るもう一刀で受け止めると、一旦距離を開け、どちらともなく刀を納める。
人工の光に照らされる中、因縁を持つ二人の弟子にして子供たちが向き合う。
これが恭也と海透の対面だった。
暫らく無言のまま向き合っていた二人の邪魔をするように、宗司の声がまたしても聞こえてくる。
それにうんざりしながらも、恭也の意識はただ目の前の海透を見詰める。
それに構う事無く、宗司は己の満足を満たす為に語り出す。

「お主の目の前にいるのが、わしの息子にして最高の作品、天羽海透じゃ。
 士郎の倅よ、お主にソレが倒せるか? もし、万が一にでも倒せたら、その時はわし自らが相手してやろう」

「自分の息子をモノ扱いか。とことん性根の腐った奴だな」

「何とでも言うが良い。さあ、海透、お主は今日この日のために居たんじゃ。
 その力を存分に振るうが良い」

「…はい」

「くっくっく。天性の才を持った海透を倒せるかな、士郎の倅!」

宗司の最後の言葉を合図とし、二人は互いの刃を振るい再びぶつかり合う。
お互いに一刀は腰に差したまま、一刀のみで斬り結ぶ。
数合の打ち合いの後、両者は全く同じタイミングで離れ、最初と同じ位置で向かい合う。
たがいに右手に刃を握り、特に構えるでもなくそのまま降ろした状態で、海透がまず口を開く。

「…もう一刀は抜かないのか?」

「必要があれば、抜く」

「小太刀ニ刀流なのに、一刀か。それとも、負けた時の言い訳か。
 残念だが、お前が負ける時は、命はないぞ。つまり、言い訳は出来ん」

「別に、言い訳をするつもりなんてないさ。
 二刀流というのは、常に刀を二本使うから二刀流なのではない。
 単に刀を二本使うと言うのなら、それは単に二刀使いだ。
 一刀、必要に応じてニ刀を自在に使いこなすから二刀流と言うんだ」

「……ほざけ。ならば、その二刀流とやらを見せてもらおうか」

「ああ、言われるまでもない。それよりも、そっちこそ、もう一刀抜かなくても良いのか」

「双剣流とは、元来、一刀のみで闘う流派だからだ。ニ刀使うようになったのは、かなり後になってからだ。
 つまり、あいつは出来そこないで、こっちが本来の天羽双剣流…」

「出来そこないというのは、悠花さんの事か」

「ん? ああ、そんな感じの名前だったんじゃないか。
 一々、出来そこないの名前なんか覚えてられるか。
 まあ、出来そこないは出来そこないの割に、そこそこ役に立つがな」

そう言って海透はその口元を愉悦に歪めると、

「お前、あいつが気に入ったのか?」

淡々と語る海透の言葉に、宗司が楽しそうに加わる。

「じゃったら、面白い事を教えてやろう。
 あ奴は、出来そこないじゃがそれなりに腕は立ちよる。故に、面倒な仕事は全部、あ奴にやらせてきた。
 そのお陰で、あ奴もちょっとした有名人になった訳じゃが。少しは感謝して欲しいものじゃな。
 出来そこないのあ奴が、わしのお陰で裏ではツインエッジという名で有名になったんじゃからな。
 くっくっく。しかも、傑作なのは、あ奴は剣を握る時に自分に暗示をかけるんじゃよ。
 人を傷付けるのが嫌な自分を殺し、人を殺す為だけのマシーンとなるためのな」

宗司の言葉を聞きながら、恭也は先程の悠花の変貌を思い出す。
小太刀を握る手に知らず力が入り、その眼光が鋭くなる。
そんな恭也の視線を気持ち良さそうに受け止めながら、海透は表情を全く変えずに立ち、
宗司は楽しくて仕方がないとばかりに饒舌に語る。

「幾ら暗示とは言え、ああも簡単に人を殺せるようになるなんて、中々面白いと思わぬか?
 それは即ち、元からあ奴の中にそういう願望があるって事よ」

恭也はその宗司の言葉に小さく否定の声を上げるが、宗司には聞こえていないのか、更に続ける。

「しかし、本当に面白いのは、あ奴は記憶をしっかりと持っておるって所じゃな」

「なっ」

「くっくっく。自分で殺めておいて、こっそり一人でその事に悩んで泣いておる。
 わしたちに心配を掛けまいと、わしたちの前では平気そうに振舞っておるがな。
 本当にばれていないとでも思っているのはろうが、バレバレはというのにな」

愉快、愉快と語る宗司の言葉に、恭也は更にきつく小太刀を握り込むが、宗司はまだ止める気はないのか、すぐに話し始める。

「あまりにも楽しいから、それに騙された振りをしてやって、たまにその辺りを突っついてやると、
 泣きそうな顔をしながら、無理に笑みを浮かべようとしおる。くっくっく。
 多分、自分では上手く笑っておるつもりなんじゃろうな。あっはっはっははは。思い出しても愉快な事じゃ。
 出来そこないは出来そこないで楽しませてくれる。
 海透を完成させる為の試作用として、ほんの気紛れで拾うたが、中々のもんじゃったな」

「……いい加減に黙れ」

恭也はこれ以上は宗司の話を聞きたくないと静かに語るが、宗司は意に介す事無く続ける。

「もし、剣術を覚えれんかったとしても、女ならそれだけで使い道もあろうというもの。
 それも、中々気立ての良い娘に育ったからの。うむ、ちと惜しい事をしたかもしれんの。
 まあ、あ奴にとっては、幸運じゃったな。
 剣術面での才能が見えなければ、わしや他の者たちの慰みものになる所じゃったからの。
 まあ、逆にそれはそれで人を殺める事に苦しむ姿を見れて、中々楽しませてもらったがな。
 そうじゃな、全てが終わった後に、改めて慰みものにするのも一興やもしれぬな。
 はてさて、どんな顔を見せてくれるか楽しみじゃな。
 わしを父と慕い、恩を返さんと必死になって人まで殺したあ奴が、そのわしに襲われてどんな絶望を見せてくれるか。
 いや、あ奴の事じゃ、それすらすんなりと受け止めるかもしれんな。やはり、ここは他の者にやらせるか。
 ……おお、そうじゃ、お主とやらせるというのも一興よな。
 どうも、あ奴は自分がただの作品だという事も忘れ、主に気を寄せている様子じゃしな。
 くっくっく、動けなくしたお主の上に無理矢理あ奴を乗せるとするか。
 なに、無理矢理とは言え、あ奴も主が相手と知れば、嬉しかろう。その後、その辺の男にでもくれてやろう。
 くっくっくっくっくくくく。また楽しみにが一つ増えたな。じゃが、それもお主が生き残れればの話じゃがな。
 お主が死んだ場合は、適当な奴にやらせるまでじゃからな。
 という訳で海透、決しては手加減はするなよ」

「…はい」

「くっくっく。出来そこないじゃが、大層、楽しませてくれるわ。こんな事なら、もう一つか二つ、同じようなのを作っておけば…」

「俺は、黙れと言ったんだ!」

宗司の話の途中で恭也は走り出し、声のした方向へと向う。
すぐさま音の発生源と思しきスピーカーを見つけ、恭也はそれを叩き壊す。
ようやく静かになったフロアで、恭也は壊れたスピーカーを静かに見下ろし、小さく呟く。

「本当に五月蝿い奴だ」

そんな恭也の背中へと、海透は刃を構えて静かに駆ける。
それに気付き、恭也は海透へと振り返ると、こちらへと駆けて来る海透をただ静かに見据える。



美沙斗の小太刀をしゃがんで躱したリノアは、そのまま身体を持ち上げつつ長刀を斬り上げる。
それを美沙斗はもう一刀の小太刀で受け止めるが、その勢いを殺しきれずに浮きそうになる身体を自ら地を蹴って浮かせると、
リノアの長刀受け止めていた小太刀へと片足を乗せ、それを踏み台にし、更にはリノアの力さえも利用して距離を開ける。
吹き飛ばされるような感じで空中へと身を投げ出した美沙斗は、空中で体勢を整え、一刀を納刀して足から着地する。
そのまま身体を前傾に倒し、右手を後ろへと引き絞る。
美沙斗の射抜に対し、リノアは抜刀の構えで迎え撃つ。
リノアへと迫る美沙斗の腕が前へと伸び、射抜がリノアへと向う。
それをリノアは抜刀からの一撃目で弾き、横凪の二撃目を美沙斗へと目掛けて向わせる。
リノアの二撃目を美沙斗は射抜から派生した斬撃で弾く。
弾かれたリノアはそのまま三撃目と移行しており、上からの振り下ろしが美沙斗の肩へと振り下ろされる。
それに対し、美沙斗は腰の一刀を抜き放ち、その三撃目へと左右の連撃を加える。
美沙斗の花菱を受け、数歩後ろへと下がるリノアへ、美沙斗から飛針が飛び、その後を追うように鋼糸が迫る。
リノアは飛針を長刀で弾き、鋼糸は身を翻して躱す。
そこへ、美沙斗の抜刀術、虎切が襲い掛かる。
リノアはそれを鞘で受け止めると、長刀を美沙斗へと突き出す。
それを寸前の所で躱した美沙斗へ、鞘が上から振り下ろされ、美沙斗は地面を転がりこれを躱す。
転がりながら、こちらへと迫りつつあったリノアへと飛針を顔、腕、胸、太腿、足と五本同時に別々の場所へと投げ放ち、
リノアの追撃を止めるとすぐさま起き上がり、リノアへと向う。
美沙斗の攻撃に不敵な笑みを浮かべてリノアは長刀を両手で握り締めると、下から上へと斬り上げる。
唸り音をさせて振り上げられる長刀を躱し、美沙斗はリノアの胴を凪ぐように小太刀を振るう。
それをリノアは長刀から片手を離して掴んだ鞘で弾き、そこへ長刀の一撃を振り下ろす。
それを受け流し、美沙斗はリノアの懐へと飛び込む。
そうはさせまいとリノアの蹴りが繰り出されるが、美沙斗はその足を掴まえる。
そのまま小太刀を突きたてようとする美沙斗の背中へと長刀が迫り、美沙斗は小さく舌打ち一つ残して離れる。
お互いに無言のまま次の手を考え、同時に相手の手を読もうと考えを巡らせる。
開始からずっと動き回っていた二人が動きを止め、静かに対峙するものの、決して休める訳でもなく、
目に見えない形で戦いを繰り広げ、今度は体力ではなく精神をすり減らしていく。



スピードは本当に紙一重で僅かに自分の方が早いと見てとった美由希は、一気に悠花との距離を縮めると、虎乱を放つ。
一刀による執拗な程の乱撃に相手の注意を向け、頃合を見て不意に相手の後ろへと回り込むように動く。
同時にもう一刀の小太刀を抜き放ち、回り込みながら斬り付ける。
しかし悠花は、その攻撃をトンと地面を軽く蹴り、横へと跳んで躱す。
着地と同時、美由希へとまた跳ぶように近づき、その刀を振るう。
美由希はその攻撃を受け止めるものの、悠花は受け止められるや否や、すぐに刀を引き、別の方向から刀を繰り出す。
鍔競り合いをする気がないのは分かったが、それにしても軽い悠花の攻撃に若干戸惑いつつ、美由希は迫り来る刃を打ち払う。
横凪ぎに突き、振り下ろしに斬り上げ。様々な方向から迫ってくる刃を躱し、弾きしながら美由希は徐々に後退していく。
と、美由希は後退を止め、悠花の横薙ぎの攻撃が来た瞬間に素早くしゃがみ込むながら、悠花の足元へと蹴りを放つ。
地面擦れ擦れの低さから繰り出された回し蹴りを悠花は軽い跳躍で躱すと、そのまま少し後退する。
その開いた距離を詰めるように美由希は走り寄りながら、射抜の体勢を取っていた。
美由希が放つ射抜を悠花は後方へと受け流し、派生した斬撃も同様に受け流す。
そこへ、同時にもう一刀から射抜が放たれる。派生した斬撃ともう一刀による射抜。
この両方を悠花はニ刀を使って、美由希の左の攻撃は自身の右の刀で右側へと、右の攻撃は左側へと同時に受け流し、
両手を開いた形となった美由希の正面懐へと難なく入り込む。
受け流しに刀を使っているため、悠花は地を蹴り身体を浮かせると、そのまま膝を美由希の腹へと突き上げる。
短く空気を吐き出しながらも小太刀を引き戻した美由希は、倒れそうになる足に力を込めて天目掛けて射抜を放つ。
美由希が放った射抜・翔を後ろへと下がり躱す悠花に対し、美由希はここまでは読み通りと内心で頷く。
高く飛び上がった上空で身体を捻り、地上にいるであろう悠花へと射抜・突を放つべく構えを取る。
と、その眼前を黒い影が上へと駆け上る。
驚く間もなく、既に地上には悠花の姿は見えず、美由希は背後、つまり自分の上、天を背中越しに見上げる。
そこには、三日月をバックにして、重力という束縛から解き放たれたかのように宙に舞う悠花の姿があった。

「私よりも高い!?」

驚きながらも再度、身体を捻って天を見上げる。
そこへ、ようやく重力という存在を知ったとばかりに落下してくる悠花。
その手に握る銀刃を美由希へと振り下ろす。
それを受け止める美由希だったが、位置的にも美由希は不利だった。
そのまま重力に引かれて美由希を下にしたまま地面が迫る。
このままでは激突すると思った美由希は、悠花の刀を受け止めながら、もう一刀で射抜の構えを見せる。
それに悠花は微かに眉を顰め、美由希の背後、つまりは地面までの距離を測る。
美由希の左腕が動き、空中という不安定な体勢ながらも射抜・近を放つ。
悠花は地面への到達時間よりも美由希の攻撃の方が先だと悟ると同時に攻撃の手を緩め、美由希の身体を蹴って離れる。
直後、美由希の射抜・近によって繰り出された小太刀が左腕を微かに掠るが、それは薄っすらと一条の線を付けた程度で、
本当に掠り傷程度で、悠花はそのまま静かに地面に着地する。
一方、蹴飛ばされた美由希はそのまま背中から地面へと落ちるかと思われたが、何とか足から着地する。
悠花のように綺麗な着地とは言えず、両足を踏ん張るようにして膝が地面に着くまでギリギリまで下がったが、
着地による被害はない。ただ、先程蹴られた個所を僅かに片手で押さえる。
奇しくもそこは、最初に悠花から膝を喰らった個所と全く同じ場所だった。
何とか痛みを堪えつつ、美由希はしっかりと立つと、悠花へと視線を向ける。
悠花もまた、普段のおどおどした態度はなく、凛と美由希の視線を受け止めて、静かに立つ。
それぞれの場所で三者三様の始まったばかりの戦いは、ただただ静かに繰り広げられていく。





つづく




<あとがき>

さて、遂に始まった戦闘。
美姫 「果たして、勝者は誰か!?」
いよいよマリとら2ndも残すところは後○話。
美姫 「って、何話よ」
いや、大体しか分かってない上に、多分、伸びるかな〜。
美姫 「まあ、無計画だもんね、アンタ」
あ、あははは〜。と、とりあえず、ラスト目指して頑張れ、恭也たち!
美姫 「その為には、アンタがさっさと書かないとね♪」
わ、分かってるよ〜。
美姫 「じゃあ、さっさと続き書こうね〜」
…了解っス。
美姫 「それじゃあ、また次回までごきげんよう」





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