『Moon Heart』








  19/秋葉の休息





恭也と約束を交わした日の夜、月村家のリビングで秋葉が寛いでいると、その家の主人、月村忍が話し掛けてきた。

「秋葉、何かいい事でもあったの?」

「いえ、特にはないけど、どうして忍?」

ここ数日で、名前を呼び捨てにする程にすっかり仲良くなった二人は、こうやってゆっくりと時間を過ごす事が多い。
そんな中、忍は秋葉の様子がいつもと少し違う気がしたのだった。
だが、秋葉の口から出た言葉に、勘違いだったのかなと思う。
そこへ琥珀が頷きながら、忍に同意するような事を言う。

「確かに、忍さんの言う通りですね。秋葉様、今日はどこか機嫌がよろしいかと。
 ひょっとして、昼間に何かありましたか?」

「べ、別に何にもなかったわよ」

少し照れたようにどもった秋葉を、忍は見逃さなかった。

「ふふーん。ひょっとして、気になる人でもいたとか?」

「な、な、何を言ってるのよ。そんな訳ないでしょう」

予想外の秋葉の態度に、忍が驚いたような顔を見せるが、すぐに笑みを浮かべると、

「あら、図星?ふふふ、秋葉程の女の子の気を引く事が出来るなんて、どんな人なのかしらね?
 良かったら、一度連れてきてよ」

「で、ですから、そうじゃなくてですね。忍」

「秋葉様も隅におけませんね〜」

「琥珀まで」

忍と琥珀は面白そうに、秋葉へと攻撃をする。
そこに翡翠、ノエルが救いの手を差し伸べる。

「姉さん、その辺にしておいた方が」

「そうですよ、忍お嬢さまも」

「ちぇ〜」

二人に窘められ、渋々といった感じではあるが引き下がる。
そんな忍と琥珀を見て、ほっと胸を撫で下ろすと、秋葉は翡翠、ノエルにそっと目で礼を言う。

「そう言えば、あなたもたまに外へ行っているみたいだけど、何でかしら?」

「そ、それは、ほら、お買い物ですよ。ねえ、翡翠ちゃん」

「は、はい、そうです」

「ふーん、買い物ねー。一日に2回も3回も?それに、翡翠までが外に出るなんてね。
 そう言えば、ここに来た最初の頃、やけに機嫌が良かったわよね二人とも。
 私のことをとやかく言う前に、二人の方こそ、何かあったんじゃないの?」

「べ、別に何もありません」

翡翠はいつものポーカーフェイスで、少し顔を赤くしていたが答え、琥珀はいつもの笑みを浮かべる。

「そ、そうですよ。それに、あれ以来会えませんし」

「姉さん」

「あ、ち、違うんです、秋葉様」

珍しく慌てる琥珀を面白そうに眺めた後、秋葉は紅茶を一口飲むと、

「落ち着きなさい、琥珀。別に駄目とは言ってないでしょう?」

「あ、あうう」

そんな三人を見詰めながら、忍は微笑む。

「いやー、三人ともやるわねー。見知らぬ土地で、気になる人を見つけるなんて。
 もし、今度あったら、是非連れてきてよ」

忍の無邪気な笑みに、三人は曖昧に頷く。
これから起こるであろう激しい戦いに思いを巡らせつつ、秋葉はその前の一時の安らぎを堪能していた。





<to be continued.>




<あとがき>

久し振りだよ〜!
迫り来る戦いの予感に身を振るわせつつ、一時の安らぎを楽しむ秋葉でしたとさ。
美姫 「しっかし、久し振りよね」
うんうん。でも、最後の方は出来てるんだよね。
美姫 「また?」
ははっは。後は、そこへ向って書いていくんだけど、先は長い。
美姫 「しっかりしてよ」
分かってるって。次回も頑張るぞ〜!
美姫 「頑張って〜。じゃあ、そういう訳で、また次回ね」
フィンさん、50万Hitリクエストありがとう!
ではでは。








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