『とらいあんぐるがみてる』



第11話 「祥子とお約束」






朝の騒動を一応、リスティへと伝えた美影は携帯電話を仕舞うと校門前で待っていた祥子の元へと合流する。

「電話の方はもう良いの?」

「ええ。始めからそんなに大した用でもなかったもの。
 ただ、さっき急に思い出したからね」

「それで妹さんに電話を? あ、それともお兄さんの方かしら」

「えっと、兄の方です」

美影の答えを聞き、祥子は笑みを見せる。

「本当に美影はお兄さんっこなのね」

「そ、そんな事は…」

「別に照れなくても良いのに」

「別に照れてません」

美影はこれ以上この話はなしというように頬を膨らませて見せると、そっぽを向いて歩く。
因みに、この仕草は末の妹が恭也に対して行った事のある行為で、
それをされた時に恭也がすぐに折れたという経緯を持っていたりするのだった。
と、そんな仕草を見せる美影の横で、祥子は拗ねているのだろうが、
可愛らしい仕草に思わず笑いそうになるのを堪えながら謝罪を口にする。
微かに笑っているようなニュアンスを受けつつも、謝罪された事で美影は祥子を許す。
まあ、元々そんなに怒っていた訳ではないのだが。
マリアさまに手を合わせ、上履きに履き替えて階段を上っていきながら、祥子はふと思いついたことを口にする。

「そう言えば、美影の服って黒が多いわね」

「ええ、黒が好きなの。可笑しい?」

「そんな事はないけれど、もう少し可愛い服とか着てみないの?」

「そんなの私には似合わないわよ」

「そんな事ないって。流石にフリフリとかヒラヒラは私も遠慮したいけれど、それでも可愛いのはあるでしょう」

美影の家での服装を思い出す限り、パンツに長袖シャツという出で立ちで、その色も黒かそれに近い紺や茶。
もう少し違った服装も見てみたいと思った祥子は、珍しく引き下がらずに続ける。

「ひょっとして、黒ばっかりなのって、お兄さまが黒が好きだからとか?」

「確かに兄は黒が好きですけれど、それとこれとは関係ありません。
 私自身も黒が好きなだけなんです」

「ふーん。まあ、そういう事にしておいてあげるわ」

「だから、本当なんですって」

「はいはい。黒以外の服を着た所を見た事がないんだもの、それを信用しろって言う方が無理よ」

上手く美影が喰らいついてきた事に内心で笑みを見せつつ、顔には分かってるわよ、そんなに照れなくても良いのに、
といった感じの表情を浮かべる。

「だから、本当に兄とは関係…」

「だったら、偶には違う服装の美影を見てみたいわね」

「そんな事を言われても…」

「まさか、ああいった服しかないの?」

聞いてくる祥子に対し、美影は小さく一つ頷く。
それを見て祥子は一つの決意を決める。

「だったら、明日は土曜日でお休みだから、買い物に行きましょう」

「そ、そんなの良いわよ」

「良いから、行くわよ。美影にプレゼントしてあげる」

「プレゼントって、本当に良いわよ」

「良いから気にしないで。その代わり、私に服を選ばせてね」

「いや、本当良いんだってば」

そう言うものの、祥子はすっかり行くことを決めてしまっており、美影の言葉には耳を貸さない。

「どんなのが良いかしら。美影は何か好みとかある?」

「えっと、出来れば動きやすい方が…。
 って、そうじゃなくて、まだ行くなんて一言も」

しかし、祥子は美影の返答を聞き、既に自分の思考へと入ってしまう。

「動きやすい服ね。どうしようかしら…。
 ふふふ。でも、人の服を選ぶのがこんなに楽しいなんてね。
 普段、私にドレスとかを着せようとする者たちの気持ちが少しだけ分かったわ」

楽しそうな笑みを口元に浮かべ歩く祥子の後ろを、困り果てた顔の美影が付いて行くという光景が、
朝の階段で繰り広げられていたが、生憎、美影にとっては幸いかもしれないが、目撃者は居なかった。
尤も、そんな事に今の美影が気付いているのかどうかも不明な上、
その事に感謝するような気持ちにはなれないだろうが。
何はともあれ、なし崩し的にと言うか、無理やりと言うか、美影の明日の予定は埋まったのであった。





つづく




<あとがき>

はい、ごめんなさい!
かなり久しぶりの更新です!
美姫 「おまけに短い〜」
あ、アハハハ〜。
にしても、11話か〜。
美姫 「本当よね〜。
    当初はマリとらのパロで冗談としてすぐに終わるはずだったのに、いつの間にやら独立してるわね」
確かにな。こうなったら恭也には本当に女の子になってもらうか…。
美姫 「って、どうやってよ」
例えば、エリザ辺りに、夜の一族の秘宝とか何かを貰って…。
その秘宝である腕輪なり、ペンダントで性別を自由に変えれるってのはどうだ?
美姫 「私に聞かれても…」
むむっ、それもそうか。うーん、どうしようかな〜。
と、まあ、その辺はまた今度にして、次はお買い物編だ〜。
美姫 「早い更新を期待してるわ」
ぐぅぅ。







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