『昼下がりの午後』
長かった冬が終わり、ようやく暖かな日差しが射すようになった日曜日の昼下がり。
これはそんな日に起こった小さな事件・・・
水瀬家へと続く道を美坂香里と北川潤は歩いていた。
「しかし、いい天気だ。
まさにデート日和だな、美坂」
「あら、北川君これからデートなの。
がんばってね。私はこれから名雪のところに行くから。
じゃあね」
「ま、まてよ美坂。冗談だ。
俺も水瀬の家に行くんだってば」
「ふーん、冗談ねぇ。冗談言える余裕があるなら、北川君は今日来なくてもいいんじゃない?
大体、あなた達が今度の試験の勉強をやるから教えて欲しいって言ってきたのよ」
「わかってるって。それより速く行こうぜ」
「ちょっと、待ちなさいよ」
コンコン、カチャ
「おじゃまします」
「はい。あら、香里ちゃん。いらっしゃい」
そう言って2人を出迎えたのは名雪の母、秋子であった。
「秋子さん、今日は留守にされてるんじゃ」
「ええ、今から出かけるところなのよ。
名雪たちは上にいるからどうぞ、上がってください。
今、お茶を入れますね」
「え、そんないいですよ。
今から出かけるところだったんですから」
「いいのよ、それぐらいの余裕はありますから。
遠慮なさらずに。どうぞ、2階へ上がってて下さい」
「そうですか、ではお言葉に甘えさせて頂きます」
そうして、香里たちが祐一の部屋の前まで来てドアを開けようとドアノブに手を伸ばした時、
「いや、祐一、くすぐったいよ」
「こら暴れるなっ」
「だって、くすぐったいんだもん」
「なんだ名雪は痛いほうがいいのか?
なら、乱暴にしてやろう」
「わっ。ダメだよ。痛いのはいやに決まってるよ。
同じするなら気持ちいいほうがいいよ〜」
「だったら暴れるなよ。入れずらいだろ」
「う〜。でもくすぐったい」
「我慢しろ」
「できないよ」
「じゃ、あきらめろ」
「祐一、意地悪だよ。
ここは繊細な場所なんだから、もっと優しくしてくれないとイヤだよ」
「名雪、そんな目をするのはずるいぞ。
・・・はぁっ、わかったよ。できる限り優しくするから。
ほら、早く横になれ」
「うんっ。お願いね」
「・・・・・」
「・・・・・」
「はっ!美坂、おい、美坂ってば」
「あ、な、なに北川君」
「どうする?さすがに今、入るのはのはまずい気がする」
「そうね、どうしようかしら。とりあえず下で時間をつぶさせてもらいましょう」
「そうだな」
「あら、二人ともどうなさったんですか? そんな所で」
「秋子さん!いや、ちょっと事情がありまして」
「遠慮せずに部屋に入られたらどうですか?」
そう言って、部屋のドアを開けようとした秋子の動きが止まる。
「入れるぞ、名雪」
「うん。きて祐一」
「どうだ?痛くないか?」
「うん、大丈夫だよ。だから、動いて」
「わかった。動かすから痛かったら言えよ」
「うっん。気持ちいいよ祐一。
あ、そこ、いい」
「ここか?名雪」
「うん、そこがいいの」
「そうか。しかし、初めてのときはあんなに痛がってたのにな。
もう、大分なれたって事かな?」
「そうかもしれないね。結構、してもらってるし」
「了承」
「って秋子さん。どこに行かれるんですか?」
「香里ちゃん。お茶の用意は下にしておきますから、頃合を見て持っててくださいね。
私は用があるので、もう出掛けますから」
「あ、はい。ありがとうございます。って良いんですか?
名雪と相沢君の・・・ってもういないわ。
はぁ〜」
「すごいな。さすが水瀬の母親。全く動じてないな」
「本当よ。あの親にしてこの子ありね。
とりあえず、下に行きましょう」
「おう、そうだな」
その時、祐一の部屋のドアが開き祐一と名雪が姿を出した。
廊下に立つ香里と北川を見て、少し不信な顔をしながら口を開く。
「おう、北川に香里。来てたのか」
「本当だ。あのね、あんまり遅いから連絡しようと思ったんだよ」
「そんな所にいないで入って来ればいいだろう?」
「あのねっ、入りたくても入れない様なことしてて何言ってんのよ」
「そうだぞ。俺らは気を使って」
「???」
「何を言ってるんだ二人とも?」
「何って。そういう事を言う訳。
あのね相沢君、さっきまで名雪と何してたのよ?
いくら二人が付き合ってるからって、私たちが来る日にあんな事をしなくても良いでしょ?」
「げっ。おまえら、居たのか?」
「そうよ。でも、悪いのはそっちだからね」
「みろよ、名雪。だから今日はやめようって言ったんだ」
「でもでも、約束してたもん。
それに祐一も来るまでなら大丈夫って言ったよ」
「うっ、そんな事言ったか様な気がするような、ないような・・・。
ええい、大体どうして気付かなかったんだ名雪。
陸上部の部長なら階段を上ってくる音ぐらい聞こえるだろう」
「無理だよ。耳掃除してもらってたんだよ。
小さな音なんか聞き逃すよ。それに陸上部は関係ないよ」
「階段を上ってくる音は小さいのか?」
「うっ。でも、だったら祐一の方が気付くはずだよね」
「俺は、階段を上ってくる音は聞こえない体質なんだ」
「そんな体質聞いたことないよ」
「俺もないな」
「う〜。祐一、私のことからかってる?」
「おお、正解だ。よくわかったな名雪」
「う〜」
「ちょっと待ちなさいよ、二人とも。
耳掃除?今、耳掃除って言ったわね」
「?。ああ、耳掃除だぞ。それがどうかしたのか?」
「耳掃除をしてたの?」
「そうだよ。祐一にやってもらうとね、気持ち良いんだよ。
すごく上手なの」
「まあ、最初はなれなくて上手くできなかったけどな」
「本当、最初の頃は痛かったよ。って香里どうしたの?
そんな所に座って」
「な、なんでもないわ。ね、北川君」
「お、おう。さ、早く勉強しようぜ」
「???」
「はっは〜。おまえ等もしかして・・・」
「何、祐一?」
「な、なんでもないのよ。ね、相沢君」
「まあ、そういうことにしておいてやろう。
さっさと勉強しようぜ」
「そうだな」
「うん」
(でも、秋子さんは本当のことを知らないはずだから、勘違いしたままってことよね。)
「そうしたの?香里」
「ううん、何でもないわよ。さっさと始めましょう」
こうして、約1名を除いて誤解は解け、何もなかったかのように日は落ちていった。
約1名、誤解の解かれていない人物が水瀬家に帰宅し、夕食の席でまた一波乱起こるのだがそれはまた、別の話である。
<Fin.>
<あとがき>
どうも、はじめまして。
氷瀬 浩(ヒノセ ヒロ)です。
かなりへっぽこなSSで、すいません。
ほとんど、初心者です。
よければ、これからもよろしくお願いします。
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