『祐一のハーレム伝説(in 水瀬家)』






 第3話 眠り姫は赤いのがお好き







う〜んそうだよな〜。真琴とのやり取りも問題はなかったはずだ。
だとすると、やっぱりその後か?

あの後は………、確か名雪が……………。





「うにゅ〜、おはよ〜ございまふ〜」

寝惚けた状態で名雪が起きてくる。

「名雪、どうしたんだ。今日から夏休みで、学校は休みだぞ」

「知ってるよ〜」

「じゃあ、何でこんな時間に起きたんだ?」

「私、イチゴならいくらでも食べれるよ〜」

「誰もそんな事、聞いてない」

「駄目だよ〜、ケロピーは食べ物じゃないんだから……」

「ねえ、祐一くん。名雪さん、もしかして……」

「ああ、まだ寝てるんだろうな」

「そんな事ないよ〜、ちゃんと起きてる……く〜」

「寝るな!」

「ぇてまふぇんよ〜」

「いや、既に寝てるって」

「ふぇてないぃぃぃ」

「寝てるじゃないか」

「ゆ〜いちは、意地悪だよ〜」

「そうだ、そうだ。祐一は意地悪だ!」

「だまれ、この馬鹿」

「あう〜、真琴は馬鹿じゃないもん!」

「うるさい。暫く黙ってろ。名雪も寝るなら自分の部屋に行け」

「ゆ〜いち、極悪だよ〜」

「何で、そうなる!」

「イチゴ〜♪」

「頼むから、会話してくれ」

名雪はまた夢の世界へと行ってしまったようで、テーブルに突っ伏して寝息を立て始める。

「ねえ、祐一くん。名雪さん、このままにしておいて良いの?」

「別に問題ないだろうから、大丈夫だ」

「そ、そう。何か良く分からないけど、祐一くんがそこまで言い切るんだったら、良いかな」

「おうっ!根拠のない自信と、意味もなく言い切る事に関しては任せろ」

「全然、任せられないよ。それに、意味もなくって何!じゃあ、さっき言い切ったのも意味ないの」

「さっきって何のことだ?ちなみに、すぐに忘れる事も任せろ!」

「何を任せるんだよ!それに、そんなの威張れる事じゃないよ。ただの物忘れが酷い人だよ」

「冗談だ」

「じゃあ、さっき言い切った事は意味があったんだね?」

「………何を言ってるんだ?意味なんてある訳ないだろう」

「うぐぅ〜」

「まあ、敢えて意味を挙げるなら、名雪を起こすのが面倒臭い。
 いつもいつも、遅刻ギリギリの時間まで寝てる寝坊助を起こす俺の身にもなってみろ。
 休みの日ぐらい、そんな事はしたくない」

俺があゆに説明をしていると、糸目のまま名雪が顔を上げ、

「祐一、やっぱり酷い〜」

それだけを言うと、パタリとまた顔を突っ伏す。

「本当に寝てるのか?」

「さ、さあ?」

真琴は一人、黙々とご飯を食べている。
俺も考えるのをやめ、ご飯を食べる事にする。
と、しばらくして名雪から寝息が聞こえてきた。
どうやら完全に寝たらしいな。

「ZZZ………。むにゃうにゃ〜。祐一、駄目だよ、それは食べる物じゃ……」

「何の夢を見てるんだ!そして、俺に何を食べさせてる!」

「あっ!」

「あって、あって何だ、おい!」

「私はイチゴを食べるよ。イチゴ〜イチゴ〜」

「………………制裁決定!
 俺には何か分からないものを食べさせておいて、自分は好物を食べるなんて許せん!」

「ゆ、祐一くん、夢の話だよ」

「夢でもゆるせん」

止めようとするあゆを無視し、俺は名雪に拳骨を喰らわせる。

ゴンッ!

う〜ん、実にいい音だ。

「う、うにゅ〜」

名雪はのろのろと顔を上げ、少し涙目で周りを見渡す。

「うにゅ〜?」

まだ状況が理解できていない名雪に俺は爽やかな笑みを浮かべ、片手を上げて挨拶してみせる。

「よ、おはよう名雪」

「おはよ〜祐一。何か頭が痛い気が………」

「気のせいだろう」

「でも……」

「だったら、寝てるときにぶつけたんじゃないのか?」

「そうなのかな?」

「そうに決まってるだろ」

そう言い切る俺の横で、あゆは溜め息を吐く。
と、それまで黙っていた真琴が屈託なく笑いながら、

「祐一が殴ってたんだから、痛くても当たり前よ」

「祐一〜」

名雪がじと目で睨んでくるのを無視して、俺は真琴に詰め寄る。

「真琴ー!お前、俺に何か恨みが………」

コイツの場合、ありまくるな。

「もう良い」

そう言って、立ち去ろうとするが、笑顔の名雪がそれを許さなかった。

「祐一、どこに行くの?まだ、食べている途中だよ」

「あ、ああ、そうだったな」

「で、何で私は叩かれたのかな?」

「………だー!お前が俺に変な物食わせたからだろうが!」

「変な物……?」

名雪は暫く考えていたが、思いついたのか急に憐れんだ目で俺を見る。
な、何だ。

「私は止めたんだよ……」

名雪はどこか哀しげに言う。
夢の中で、俺は一体何を食べたんだ?
凄く気になる。気になるけど、聞くのが怖い……。
って、そうじゃねー。

「だから、殴ったんだ」

「わっ、祐一、それは開き直り?」

「違う!れっきとした復讐だ」

「祐一、横暴だよ。だって、夢の中まで私、知らないよ」

確かにな。だが、ここで妥協する訳にはいかん!
そう思い、俺が口を開こうとすると、

「酷いよ、最悪だよ、最低だよ、極悪だよ。第一、私は止めたんだよ。なのに祐一が勝手に食べたのに……」

何か滅茶苦茶言われてるな、俺。

「イチゴサンデーで許してあげるよ」

「はぁ〜。何でそうなる?」

「だって、寝てる女の子の頭を叩いたんだよ」

「それとこれとは話が別だろうが」

「一緒だよ」

「ぐぐぅ」

「真琴は肉まんが良い」

「僕はタイヤキ」

「今は夏だ!その前に、何でお前らにまで奢らなきゃいけないんだ」

「じゃあ、私はOKなんだね」

「違う!誰もそんな事言ってない。誰にも奢らん」

「「「え〜」」」

三人が一斉にブーイングを上げる。
が、俺はそれを無視して朝食を再開する。

「あー、うるさい、うるさい」

やがて疲れたのか、三人は静かになる。
ふぅー、これで落ち着いて飯にできるな。
そう思ったのも束の間。
名雪が俺に話し掛けてくる。

「祐一、じゃあさ今度どこかに遊びに行こうよ。折角の夏休みなんだし」

「………奢らんと言ってるだろうが」

「そんなつもりで言ったんじゃないよ。ただ、祐一と遊びに行きたいだけだよ。それで許してあげるよ」

「まじか?」

「うん」

「奢らないからな」

「うん」

まあ、何も許してもらう様な事なんてないのだが、ここでごねて後で復讐されるよりは良いか。
よし!

「なら、良いぞ」

「本当!」

「ああ」

「じゃ、じゃあ、いつにする。後、どこに行こうか」

名雪は嬉しそうに色々と聞いてくる。

「とりあえず落ち着け。休みは、まだ始まったばかりなんだから」

「あ、そうだね」

舌を出しながら可愛く笑う名雪に溜め息を吐く。
と、あゆと真琴の様子が少し可笑しいな。

「どうしたんだ、二人とも?」

「ゆ、祐一くん、僕とも一緒に遊びに行こうよ」

「ま、真琴も!」

何だ、そんな事か。
俺は二人に笑いかけながら、

「勿論、良いに決まってるだろ。何を遠慮してるんだ。皆一緒に行けば良いじゃないか」

この言葉に三人が動きを止める。
………何かまずい事でも言ったのか。

「祐一は私と一緒に旅行に行くんだよね」

いつの間に遊びに行くから旅行になったんだ?

「祐一くんは僕と一緒に出掛けるんだもん」

だから、皆一緒で良いじゃないか。

「駄目、駄目よ。祐一は真琴と一緒に遊ぶんだから」

お前は毎日遊んでいるだろうが。

「「「ふふふふふ」」」

三人は顔を見合わせると不気味な笑い声を上げる。

「だから、皆一緒に行けば……」

「「「祐一(くん)は黙ってて」」」

「はい」

何故、俺に関する事で俺が黙らないといけないんだ!
そう言えれば、こんな苦労はしていないだろうな……。
少し哀愁を感じながら、流れてもいない涙をそっと拭う振りをする。
勿論、誰も突っ込んでくれないけど……。
三人は俺を放っておいて、俺とどう過ごすかを言い合っている。

「祐一は私と一緒に……」

「違うもん。僕だもん」

「あゆあゆは黙ってなさいよ。真琴が一緒に……」

「あゆあゆじゃないもん」

「二人とも、私の方が先に誘ったんだからね」

「そんなの関係ないわよ」

「真琴の言う通りだよ」

「駄目だよ。祐一は私と二人っきりで………。そして、夕暮れに誰もいない海辺を歩きながら………。
 あ、駄目だよ、祐一………。そんな……。誰も見ていないからって、こんな所で………。
 でも、祐一だったら……………」

「祐一くん………。僕、まだ心の準備が……。あ、でも、嫌とかじゃなくて、祐一くんになら……って、何を言わせるんだよ。
 駄目だよ。謝ったって許してあげないもん。え、これで許してくれって?え、あ、んん…………」

「祐一、真琴……………。あ、そんな急に………。ち、違うわよ!祐一だから………。
 許して欲しかったら、もっと優しく………。祐一ぃぃ……」

頬をほんのりと上気させ、三人は訳のわからないうわ言を言い始める。
朝の爽やかな朝食の席だったはずが、急に異様な雰囲気に包まれていく。
誰か助けてくれ〜。
それから少しして、俺が食べ終える頃には三人ともこちらの世界へと帰って来た。
正直、このまま戻ってこないのではと危惧したが。
と、三人は俺の周りに集まると両腕と首に思いっきりしがみ付いてくる。
って、首!首はまずいって。こ、呼吸が……。
誰だ、って真琴か!この期に俺を亡き者にするつもりか。
まさか、名雪たちまで一緒になって、俺を亡き者にしようとするとは……。
って、冗談言ってる場合じゃない。ま、マジで死ぬ。苦しい。

「ま、ま……こと。は、……離れろ」

「いや!」

「し、死ぬぅぅ」

「わ、祐一顔が真っ赤」

「あ、だんだん青くなっていくね」

「真琴、首絞めてるよ。離さないと」

「え、ごめん祐一」

名雪が気付き、真琴に注意してくれたお陰で、何とか助かった。
俺は必死で呼吸を整えると、

「殺す気か!」

「あ、あうぅぅぅ。ごめんなさい」

「全く。で、何をそんなに喧嘩するんだ」

「「「……………」」」

俺の問いかけに三人は押し黙る。
一体、何だってんだ。皆で遊びに行けば良いだろうに。
俺は疲れきった溜め息を吐き、

「じゃあ、順番で良いだろ」

そう言う。俺もまだまだ甘いな。
途端、顔を喜びに満たし、三人ははしゃぎ出す。

「じゃあ、私が一番!」

「僕、僕が一番」

「真琴よ、真琴が先よ」

…………譲り合う事を知らんのかこいつらは。

「はぁ〜、やっぱり全員一緒に行くぞ」

途端に上がる非難の声。
それに対し、俺は、

「嫌なら出かけない」

これには全員が黙り、渋々といった感じで頷く。
ふぅー、助かった。

(仕方がないから、これ以上は諦めよう。でも、夏休みはまだまだ長いんだから、まだチャンスはあるよね)

三人は何かを考えながら、お互いに顔を見合し、微笑み合う。
それを見た俺の背筋に何やら冷たいものが滑り落ちていったのは、気のせいだと思いたい。
が、目の前の光景を見る限り、決して気のせいではないんだろうな………。





つづく〜




<あとがき>

祐一ハーレムもやっと第三弾ですな。
シオン「本当、やっとよね」
ゆうひ「もっと早く書け!って感じやな」
お、お前らな………。
シオン「何よ、何か文句あるの?」
ゆうひ「やる言ーんか?」
い、いえ、とんでもございません。
シオン「よわっ」
何とでも言え。
ゆうひ「ば〜か、ば〜か。このへっぽこ〜」
御免なさい。勘弁してください。
シオン「だらしないわね」
よし!今年こそは……。
シオン「何、やけに強気ね」
今年こそは……、避ける練習をするぞ!
ゆうひ「志が高いのか低いのか」
シオン「低いんじゃないの?」
ゆうひ「でも、浩やで。あの回避率0の。それに、避けたらうちらの攻撃が更にきつくなるのに」
シオン「それもそうね。浩にしては高い目標ね」
………………。
やっぱり、打たれ強くなろう。
シオン「それは良いわね。今まで以上に攻撃が出来るわ」
……………死に真似を上手くなろう。
ゆうひ「段々、情けなくなってるな。でも、死に真似なんかすぐに見破るで〜」
見破られないぐらいに上手な死に真似を。
シオン「無駄よ、無駄。だって、跡形もなくなるぐらい攻撃するんだもん。死に真似なんか関係ないわ」
ゆうひ「それもそうやな」
…………・………。
無駄口を減らそう。
シオン&ゆうひ「何も言わなくても攻撃するわよ♪」
う、うぅぅぅぅぅぅぅぅ。うわ〜ん。
逃げ足を上達させてやる〜。
シオン「無理だって。はいっ!」
がっ!(足を掛けられ転ぶ)
ゆうひ「よいしょっと」
ドカッ!(転んだ所を追い討ちをかけるように踏まれ、そのままマウントポジションを取られる)
ガシッ!(更にシオンによって両腕を固定)
は、ははははは。
シオン&ゆうひ「最後に言う事は?」
今年は去年以上の回復力を身につけます。
シオン&ゆうひ「じゃあ、早速頑張ってね♪」
ガッガガガガガガガガガ!
にょにょにょにょにょ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!
ゆうひ「燃えろぉぉ!」
ごぉぉぉぉぉ!
シオン「灰になれ!」
ザザザザザザァァァァ
ゆうひ「どれぐらいで復活するかな?」
シオン「まあ、一日と経たずに復活するでしょうよ」
ゆうひ「そうやな。じゃあ……」
シオン「ばいばい♪」




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