『祐一のハーレム伝説(in 水瀬家)』






 第4話 最強の主婦動く







そう言えば、そうだった。
あの辺りから、段々と雲行きが怪しくなって来たんだ。
で、何か決定的な事が起こったんだよな。
たしか、あの後…………。





「あら、祐一さん。大人気ですね」

笑顔で秋子さんがキッチンから現われる。

「そう見えますか?」

俺は疲れきった顔をして、秋子さんへと尋ねる。
秋子さんはそんな俺を見ながら、いつもと変わらない笑顔で、

「ええ。私も若ければ参加したんですけどね」

と、そんな上段を口にする。
俺もそれに付き合うように、笑いながら口を開く。
今、思えば、これが失敗だったのかもしれない。

「そんな事ないですよ。秋子さんなら、今でも充分合格ですよ」

「合格ですか?」

「ええ、もう合格です」

「だったら、本当に参戦しようかしら。うふふふふふ」

「ええ、どうぞどうぞ。あはははははは」

俺と秋子さんは面白おかしく笑い声を上げる。
それを見ていた名雪たちも、楽しそうに話を合わせてくる。

「ふふふふ、お母さんが相手でも手加減はしないからね」

「うぅ、秋子さんが参加するなんて、凄く強敵だよ」

「誰が相手でも真琴は負けないもんね」

秋子さんのお陰で、先程までの嫌な空気がなくなり、俺は内心ほっと胸を撫で下ろした。
恐らく、秋子さんの事だから、今までのやり取りが聞こえていたんだろう。
そして、この場の雰囲気を和らげる為に、あんな冗談を口にしたんだな。
流石は秋子さんだな。名雪の母親とは思えない。
俺がひとしきり感心していると、とんでもない爆弾が予期せぬ所から投げられた。

「あら、祐一さん。ほっぺたにご飯粒がついてますよ」

秋子さんの言葉に俺は手を伸ばすが、何もない。
すると、秋子さんは柔らかく微笑み、

「そっちじゃないですよ、逆です。取ってあげますから、動かないで下さいね」

秋子さんはそう言うと、俺の返事も待たずに両手を俺の頬へと持ってくる。
そして、両手で俺の顔を固定すると、頬についていた米粒をそのまま唇で取る。

「はい、取れましたよ」

そう言って、頬を朱に染め、少し照れながらも無邪気な笑顔を見せる秋子さんは、とても可愛かった。
こんな状況でなければ、思わず見惚れ、理性の箍が外れていたかも……。
そう、殺気を放つ名雪たちに囲まれていなかったら………。
俺は慌てて席を立つと、その場から立ち去ろうとする。
が、当然、それを名雪たちが見逃すはずもなく、

「祐一、まだリビングでゆっくりと休みなよ」

「はい………」

名雪の声に俺は素直に頷くしかできなかった。
何故、こんな事になったんだろうか………。
俺はリビングのソファーに腰掛けながら、天井を見上げる。
流石、秋子さんと言うべきなのだろうか、天井にも染み一つないとは。
少なくとも、天井の染みを数えて現実逃避……もとい、時間を潰す事はできないな。
俺は大きな溜め息を吐きながら、って、そうだったよな。
それで、現在に至るんだよな〜。
今までの回想を終え、ちらりと名雪たちを窺うと、
名雪たちは揃って怒りで顔を赤くし、秋子さんに食って掛かっていた。

「お母さん、何をするの!」

そんな名雪の言葉を涼しい顔で聞き流し、秋子さんは口を開く。

「さっき、言ったじゃない。私も参戦するって」

そう言うと、俺の腕を取り自分の腕と絡めると、俺の肩に軽い重みが掛かる。
秋子さんが、しな垂れかかってくる。
うぅ〜、腕に柔らくも弾力のある気持ちの良いものが……って、秋子さん、いつの間に俺の横に!

「祐一さんが考え事をしている間にですよ」

「俺、口に出してましたか?」

「いいえ。でも、祐一さんの事なら、何でも分かりますから(ハート)」

その秋子さんの一連の行動と台詞に、名雪たちが更に怒りを倍増させる。
………。何故、皆で俺を睨むんだ。
俺は被害者だ!………いや、確かに悪い気は全然しないが。

「祐一さん(ハート)」

秋子さんは俺の耳元に甘い声で囁き、更にそのまま、首筋に鼻先を擦りかけてくる。
うぅぅぅ、これは堪らん。
そして、名雪たちの方を見ると、

「負けませんよ。いえ、むしろ一歩リードですね♪」

そんな様子を見せられ、尚且つ、そんな事を言われた名雪たちが上げた叫び声は、家中に響き渡った。

「だお〜〜!」

「うぐぅ〜!」

「あう〜〜!」

……近所迷惑な奴らだ。
それよりも、根本的な所で、もっと普通の叫び声を上げられないのか。
近所の人たちが、何を飼っているのかと思うだろうが。
名雪たちの叫び声を聞きながら、そんな事を考え現実逃避する俺だった。





つづく〜




<あとがき>

いや〜、これで水瀬家編の全員が出揃いましたね〜。
シオン「で、この後は?」
それは、ちょこちょこあって、XXはXXXをXXXXに決まってるだろ。
で、その後、XXXにXXX、そこでXXXXと……。
ゆうひ「全然分からへんわ!」
がぁっ!い、痛い……(泣)
シオン「いや、痛いって、首がありえない方向に曲がってるんだけど……」
あ、本当だ。道理で痛いと思った。よっ。
(ベキボキバキ………)
これで良し。
ゆうひ「い、いや、良しって……。首の所から、何か煙が出てるし」
シューシュー
ちょっとの間だけ、固定して。
はい、完了!完治!
シオン&ゆうひ「……本当に人間?」
失礼な。ちょっと回復するのが早いだけだろ。
シオン「いや、ちょっとの領域を越えてるんだけど……」
ゆうひ「ま、まあ、浩やしね。消滅させても復活する事を考えれば……」
何を言う。今日は調子が良いから、すぐに治っただけだぞ!
シオン「調子が良いからって、数秒で治るものじゃないと思うけど。
まあ、浩も遊び人と同じで、人間じゃないって事で納得するしかないわね」
酷いっ。こんなにか弱い普通の人間のに。シクシクシク。
ゆうひ「弱いのは確かだけど、人間とは、ねえ」
シオン「ええ、ちょっと認めたくないかも」
そんな事を言うなら……。
シオン「何よ、やるっての?」
ふっふっふ。遊び人さん直伝のこの呪文を聞いてもまだ、そんな強がりを言ってられるかな?
ゆうひ「ま、まさかっ。呪文を書いたメモは、美姫ちゃんが処分してくれたはず」
ふっふっふ。忘れたのか?
シオン「ま、まさか本当にメモを復活させたの?」
それに答える義務はない。さぁ、泣け、喚け、叫べ。そして、許しを………がっ!
ゆうひ「ふっ。すぐに呪文を唱えないから、こういう事になるのよ」
シオン「本当に馬鹿よね。宝の持ち腐れってやつよね」
ゆうひ「ネコに小判とも言うな」
ふが、ふが、ふが。(じゅ、呪文が言えないよ〜)
ふぁふぉふぃんふぁん、ふぉんふぁふぉきふぁ、ふぉうふぃふぁら……。
(遊び人さん、こんな時は、どうしたら……)
シオン「さて、浩。これからどうなるか分かってるわよね?」
コクコク。
ゆうひ「うふふ。泣け、喚け、叫べ。そして、許しを乞えだったかしら?」
サァァァーーー(血の気が引く音)
シオン&ゆうひ「この恐怖に引き攣った顔を見るのって、か・い・か・ん〜〜〜〜〜♪」
フルフルフル。
シオン「秘奥義……遮光断絶覇!!」
ゆうひ「獄焔撃滅弾!!」
がぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーー!!あ、あ、あ、ぁぁ…………。
シオン「断末魔って最高のBGM♪」
ゆうひ「ほんま、それが浩や遊び人のやったら、言う事なしやな」
シオン&ゆうひ「じゃあ、またね〜♪」
二人が去った後には、一陣の風が舞っていた。





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