『祐一のハーレム伝説(in 美坂家)』
第2話 クールビューティーはお熱いのがお好き?
「ここよ」
香里は俺の方を向き、そう言うと扉を開けて中へと入って行く。
「どうぞ、相沢君」
「おう」
その後に続くように、俺は香里の家へとお邪魔する。
「お邪魔しまーす」
足音を立てないように慎重に玄関先に滑り込むと、静かに靴を脱ぎ、香里の後を抜き足、差し足、忍び足と歩いて行く。
と、突然香里が振り返り、怪訝な顔で見詰めてくる。
「何してるの?」
「いや、つい」
「つい、で泥棒みたいに歩かないでよ」
「ははは冗談だ」
「はぁー。何か疲れたわ」
「大丈夫か、香里?疲れた時は無理せずに休んだ方が良いぞ」
「一体、誰のせいで疲れたと思ってるのよ?」
「…………誰の所為だ?」
本気で首を傾げる俺に、香里は大げさに溜め息を吐くと肩を竦める。
「相沢君って、そういう人よね」
「よく分からないんだが」
「良いのよ、気にしないで」
「分かった。気にしない」
「……少しはしなさいよね」
「たった今、香里がするなって言ったんじゃないか」
「あ、あんたは……」
さっきよりも疲れた顔を見せる香里。
「香里、本当に疲れているみたいだな。風邪でも引いたか?」
「あのねー」
「どれどれ、熱は」
「ちょ、ちょっと」
そう言って伸ばした俺の手を香里は顔を背けて避ける。
「おい、こっちを向かないと計れないだろ」
「だ、大丈夫よ、何ともないわ」
そう言いながらも、香里の顔は少し赤い。
少し強引に右手で顔を固定すると、左手をおでこに伸ばす。
「うーん、少し熱いような気もするが…」
「だ、大丈夫よ」
そう言う香里の目を覗き込む。
「な、何」
さっきよりも少し赤くなった気もするが、別に無理をしている様子もないし。
これなら、大丈夫そうだな。
「本当に大丈夫みたいだな」
「だから、そう言ったじゃない」
「まあまあ。そんなに怒るな。折角の綺麗な顔が台無しだぞ」
「な、ななな」
酷く慌てたように何かを言おうとするのだが、如何せん何が言いたいのかがさっぱりだ。
「ほら、落ち着いて」
「お、おお落ち着いてるわよ」
「どーどー」
「私は馬じゃないわよ」
「ふむ、どうやらいつもの香里に戻ったようだな」
「あのねー」
「ははは。怒るな、怒るな」
「もう」
「しかし、香里があそこまで慌てるなんて珍しいな」
「誰の所為だと思ってるのよ?」
「何か言ったか?悪い、よく聞こえなかった」
そう言って、香里の顔に耳を近づけようとする。
「何も言ってな…」
「お姉ちゃん、どうしたんですか?」
香里の言葉が終る前に、栞が多分、リビングかなんかだろう部屋から廊下へと顔を出す。
結構、前から騒いでいたのに今まで気付かなかったとは、流石だ栞。
そんな俺の感心を余所に、栞は俺たちを交互に指差しながら、
「な、なななななな。ゆ、祐一さん、お姉ちゃんも何をやってるんですか!」
酷く慌てたように、それでいて怒ったように言う。
「何と言われても……」
ふむ。
栞に言われて、改めて自分達の状態を確認する。
俺の右手は香里の肩に。これはさっき慌てた香里を落ち着かせようと置いたままだったな。
で、左手は、おお!いつの間に頬に。
多分、熱を計った後、香里が少し暴れたのでずれ落ちたんだな。気付かなかった。
で、顔が結構近い位置にあるな。さっき、耳を寄せている途中だったからな。
しかし、うーん、近くで見ても綺麗な顔立ちをしているな。
流石は本人は知らないだろうが、学年を問わずに人気のある香里だ。
ちなみに、下級生の女子の人気も高いらしい。これは名雪に聞いた話だが。
で、問題はこれを見て栞が慌てていると……。
うーん。
………………………
…………………
……………
……おお!
この態勢は一歩間違えれば、非常に危ないな。
なるほど、なるほど。それで栞も慌てているのか。
等と、俺が冷静に状況を把握しようとしていると、
「ま、まさか、お姉ちゃんまでライバルになるなんて。迂闊でした。
まさに灯台下暗しです」
「し、栞、何を言ってるのよ。誤解よ」
「そんな状態でそんな事を言われても信用できません」
栞の言葉にうんうんと頷く俺を香里は冷ややかな目で見る。
「あのね、相沢君。あなたも当事者でしょうが」
「お、おお。誤解だぞ栞」
香里の言葉にポンと手を叩き、栞へと向き合う。
「じゃあ、何でそんな状態に…」
「うむ、話せば長くなるんだが…」
「構いませんから、話してください」
「よし。香里の具合が悪そうだったんで、熱を計ったんだ。丁度、それを終えた所で栞が現われたんだ」
「全然、長くないわよ」
「そうか?」
「ええ。とりあえず、栞。そういう事だから、睨むのをやめなさい」
「……分かりました♪」
栞は納得したのか、笑顔に変わる。
そして、人差し指を口元へと運ぶと、首を小さく傾け、
「そう言えば、何で祐一さんがここに?」
当然の疑問を口にする。
それに対し、俺が何かを言う前に腹が盛大な音を立てる。
「…………とりあえず、朝ご飯を食べながらで良いか?」
「はい」
「じゃあ、すぐに用意するわ」
香里と栞の後に続き、部屋の中へと入る。
そして、香里が朝食の用意をしている間に、栞にも昨日の出来事を簡単に説明するのだった。
つづく〜
<あとがき>
完成ぃぃぃぃぃぃ!
シオン「では、早速頂き!」
ガツッ!
ぬおっ!
ゆうひ「う〜ん、いい音〜」
な、なななな何するかな〜。
痛いじゃないか。
シオン「相変わらず頑丈ね」
いや、今更拳骨の一発ぐらいで…。
ゆうひ「でも、今のシオンの拳骨、壁を破壊してんけど」
壁を見るから、物凄い威力に見えてしまうんだよ。
ただの拳骨と思えば。
シオン「滅茶苦茶な理論ね」
ゆうひ「でも、実際にそれでぴんぴんしてるし…」
シオン「浩特有の理論って事ね」
ゆうひ「ホンマやね〜。あ、でも、遊び人なら可能かも」
シオン「ありえるわ」
ははは。それは兎も角、これを遊び人さんに届けてね。
シオン「任せて♪」
ゆうひ「頼まれたで!」
シオン&ゆうひ「じゃあね♪」
おう、またな。
……………。
帰ったな。
………、ぶ、無事だな。珍しい事もあるもんだ。じ〜ん(感動)
って、この箱は?
『お土産です。ゆっくりと味わってね。Byシオン&ゆうひ』
おお、手土産か〜。どれどれ。
カパッ
スラッシュ「おれっちの攻撃!」
ぐあぁぁぁぁ〜〜〜。は、計ったな……。
スラッシュ「やっといて何だが、少しは怪しいとか思わなかったのか?
まあ、しょせん浩だしな。じゃあな」
ピクピク。
後には血塗れで痙攣する物体だけが残されていた。