『祐一のハーレム伝説(in 美坂家)』






 第3話 アイス少女はバニラがお好き?







俺の話を聞いた栞は笑みを浮かべ、

「と言う事は、当分祐一さんはうちにいるんですね」

「ああ、悪いがそういう事になる」

「いえいえ。全然、気にしないで下さい」

そう言って、栞はニッコリと笑う。
その後、ごくごく普通に朝食を食べ終える。
……ふ、普通ってこんなにも素晴らしいものだったんだ。
いや、この場合は平穏と言うべきか。
心の中で感涙に咽っていると、栞がニコニコしながら俺に何かを手渡してくる。
俺は反射的に、それをろくに確認もせずに受け取る。

「ん?これは……」

「はい、デザートです♪」

そう言う栞から受け取ったのは、やはりと言うか当然と言うか、バニラアイスだった。
まあ、今は夏だし問題ないだろう。
そう思い、それをありがたく頂く事にする。
やっぱりアイスは夏だな。冬に、それも寒空の下で食べるとは奇特な奴……。

「祐一さん、今何かとても失礼な事を考えてませんか?」

「そんな事はないぞ」

「………」

無言で睨みつけてくるのは止めてくれ。

「まあ、あれだ。これだけ乳製品を取っている割には……」

そう言って栞の胸を見る。
栞も、その視線と言葉で俺の言いたいことが分かったのか、顔を赤くして照れる。

「祐一さん!何てこと言うんですか!」

……訂正しよう。
照れているんじゃなく、怒っているだ。
しかし、誤魔化そうとして言った言葉の方で怒らせるとは、流石俺。

「祐一さ〜ん、何を考えてるんですか」

恐ろしい声を出しながら、迫ってくる栞。
その気迫は凄まじく、間違いなく香里の妹だと思わせる。

「相沢君、あなた今、良からぬ事思ってない?」

「姉妹揃って、エスパーか!?」

そんな事はないぞ!

「相沢君、思っていることと、口に出している言葉が逆よ」

「分かっている。わざとだ」

香里に向って胸を張り、踏ん反り返って言う俺に対し、香里は冷たい一瞥をくれると、席を立つ。

「じゃあ、私はまだ洗濯とか色々残ってるから」

そう言うと香里はリビングから出て行く。
それを見送りながら、俺は胸中に押し寄せる虚しさと闘うのだった。

「祐一さん!私の事を忘れないで下さい!」

「おお!そう言えば」

「む〜」

無視される形をなった栞は、かなりご立腹の様子だった。

「何をそんなに怒っているんだ?」

「ご自分の胸に手を当てて考えてください!」

言われたとおり、胸に手を当てるが……。

「ふむ。ああ、胸の事か!」

「本当にしないで下さい。いえ、それよりも、そうはっきりと言わないで下さい!」

「我が侭だな栞は。やれと言ったり、やるなと言ったり。まあ、一応難しい年頃だしな」

「私じゃなくて、祐一さんが変なんです!」

だ、断言されてしまった。
しかも、栞は益々ヒートアップしているようだった。
ちょーっとまずいかも……。

「大体、胸の大きさが全てではないはずです!それを、皆して胸、胸って。
 いつもいつも、お姉ちゃんと比べられて。
 そりゃあ、確かにお姉ちゃんと比べたら、少し、そう、ほんの少しだけですけど、ち、小さいかな……とは、思いますけど」

「少し?」

俺がポツリと呟いた言葉を聞くや、般若のような形相をみせる栞。
その背後から、不動明王のようなオーラーが……。

「ゆ〜う〜い〜ち〜さ〜ん。何か言いましたか?」

「ナ、ナニモイッテナイデス」

しかし、俺の言葉は栞には届かなかったようで、

「祐一さん、いい機会です。そこに座ってください」

「いや、もう座ってる……、御免なさい」

すぐさま睨みつけてくる栞に素直に謝る。
俺の本能が告げていた。今の栞に逆らっては駄目だと…。

「いいですか。そもそも、私の胸が小さいんじゃなくて、周りにいる人たちが、たまたま大きい人たちばかりで…」

うぅ〜。どうでもいい事を延々と語り始める栞。
それを聞き流そうとすれば、途端に無言のプレッシャーが……。
これだけは使いたくなかったが、こうなったら仕方がない。

「栞」

「何ですか!まだ、話の途中で」

栞の反論を封じるように、栞の肩に手を置く。

「落ち着け。俺は栞の胸も嫌いじゃないぞ」

「な、ななななな何を言って…」

よし、パニックになったな。ここで、正常な思考に戻らせずに、一気に畳み掛ける。

「別に胸の大きい小さいが全てじゃないだろ。栞は今のままでも充分魅力的さ。だから…」

「祐一さん…」

先程までの猛々しい気配ではなくなり、ほっと胸を撫で下ろす。
遠い地にいるであろう親父に感謝だ。
実はこの技は、親父が母さんに使っていたのをたまたま見て、覚えた言わば相伝の技。
ふっ!父さん、俺、やったよ!
と、浸っている場合じゃなかった、栞がトリップしている間にこの場は逃げよう。
そう思い、立ち去ろうとした時、リビングの入り口から何かが落ちる音がする。
そちらを見ると、香里が驚いた顔をして見ていた。
その顔がゆっくりと、怒りの顔に変わっていく。
うわ〜、生で大○神が、見れるなんて。
ってそんな場合じゃない!

「か、香里誤解だ!」

「言いたいことはそれだけ?よくも、大事な妹に手を出したわね」

っく、流石栞の姉。栞以上のプレッシャーだ。
ああ、お父さん、お母さん、先立つ不幸をお許しください。
天に向って祈り始める俺と、拳に炎を纏わりつかせた香里の間に栞が割って入る。
おお、正気に戻ったか。
そうだ、早く香里の誤解を解いてくれ!
切実に俺は願う。
栞が今ばかりは、天使の様に見えるぞ!

「お姉ちゃん。私たちは愛し合っているんです。ですから、そんな野暮な事は止めてください!」

そう言って、俺に抱きついてくる栞。
それを聞いた香里の全身から、それはもう修羅のようなオーラーが立ち登る。
栞、お前が悪魔に見えるよ……。
心の中で涙を流す俺に見向きもせず、栞と香里が睨み合う。

「栞、あなた何を言ってるの!」

「何って、真実です。第一、何でそんなに怒るんですか?」

「そ、それは、あなたが大事な妹だから…」

「では、私は別に祐一さんなら構わないんで、良いでしょ」

「だ、駄目よ。相沢君は駄目!」

「何でですか!」

「何でもよ!」

俺を放っておいて、二人が言い合う。
その隙にそっと距離を取る。
だって、な。この二人の姉妹喧嘩に巻き込まれたら……。
おぉ〜、怖っ!

「ま、まさかお姉ちゃん!」

「ち、違うわ。何、誤解してるのよ。私は別相沢君の事なんて…」

「……私、まだ何も言ってないんだけど」

「だ、騙したわね!」

「お姉ちゃんが勝手に墓穴を掘ったんじゃないですか!
 でも、これではっきりしました。お姉ちゃんはライバルです!」

栞は香里にビシッと指差してそう宣言する。
それを受け、香里は不敵とも言える笑みを浮かべると、髪をかき上げる。

「ふっ。ライバル、ね」

そう言って栞の胸を見る。

「む、胸は関係ありません!祐一さんもそう言ってました!」

「あら、それは同情じゃない?第一、例えそうでも、幾ら何でも栞みたいじゃあね。せめて、もう少しは…」

どこか憐れむような眼差しでそう告げる香里。

「い、幾らお姉ちゃんでも、その発言は許せません!
 こうなったら、徹底抗戦です。完膚なきまでに倒してあげます!」

「あら、あなたに出来るのかしら?」

「ぬぬぬ。そんな事言うお姉ちゃんなんか、大嫌いです!」

「あら、私には胸のない妹なんていないわ」

両者の間に見えない火花が散る。
見えないはずなのに、俺にはそれがはっきりと見えていた。
俺はそっと、リビングの出入り口に近づくと、二人に声を掛ける。

「じゃ、じゃあ俺はちょっと休むから」

そう言って、客室としてあてがわれた部屋へと逃げ込む。
笑いたければ笑うが良い。何と言われようとも、俺の本能が告げる。
これ以上、あそこにいては駄目だと。俺は、それに素直に従っただけだ!
俺が去ったリビングから、物凄い闘気が溢れ出ている気がするが、きっと疲れているからに違いない。
そう思い込みながら、俺は客室の扉を閉めるのだった。





つづく〜




<あとがき>

終った!
シオン&ゆうひ「「遅いわ!」」
ドカドカドカドカッ!
ドゲシドゲシドゲシ!!
ザクザクザクザク!!
(あまりにも酷すぎる為、音に出来ません……)
ピクピク……。
シオン「本当に長かったわね」
ゆうひ「ホンマに。これぐらいじゃ、まだお仕置きが足りないぐらいや」
グリグリ
ふ、踏まないで……。
シオン「あ、まだ意識がある」
ゆうひ「反省の色がないって事やな」
な、なして。もう、手足も動かないんだけど……。
シオン「喋る元気があるんだから、大丈夫よ」
ゆうひ「まあ、これでも大丈夫かは分からんけどな」
な、何をする気ですか?
シオン「異次元空間に飛ばして…」
ゆうひ「灼熱とブリザード地獄」
シオン「そして、絶え間なく流れる雷撃♪」
ゆうひ「後は、微塵に斬り裂く風の刃♪」
………や、やめて〜〜。
シオン&ゆうひ「四大絶叫空間封絶!!」
みょ〜〜〜!
シオン「ふー。無事に戻って来れるかな?」
ゆうひ「流石に無理なんじゃない?」
シオン「……証拠はないわよね」
ゆうひ「当たり前やんか。うちら、ごくごく普通の美女やで」
シオン「そうよね。そんな事出来る訳ないない」
ゆうひ「そうそう。じゃあ、帰ろうか」
シオン「そうね」
シオン&ゆうひ「バイバイ〜」





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