『Present for Kyouya』






  〜Prologue〜



授業が午前で終わり、やっと開放された生徒たちであふれ返っている校門から、一人の少女──高町 美由希──が出てくる。
その表情は何かを考えているようにも取れる。

(うーん。恭ちゃんへのプレゼント何にしようかな・・・。みんな、色々考えてプレゼント用意してるみたいだし。
 皆もやっぱり、恭ちゃんの事・・・。はぁ〜、恭ちゃんに好意を寄せている女の子って、たくさんいるからな〜。
 しかも、みんな可愛い人や綺麗な人ばっかりだし。私なんかじゃ敵わないよね。本当に、このままじゃ・・・)

「ダメダメ。こんなに弱気になっちゃ。ここは一つ、どーんと何か印象に残る物でもプレゼントして・・・・・・。
 はぁー、何をあげたらいいんだろう。そもそも、恭ちゃんってば物欲が無さすぎるよ〜」

ブツブツとぼやきながら、家へと向かって歩いていく。
その姿は傍から見るとただの危ない人だったりもするのだが、本人は全く気付かずに、そのまま家まで帰っていった。



   ◇◇◇



「はぁー、どうしよう・・・」

「どうしたの?美由希。さっきからため息ばかりついて」

先程からキッチンで何やら作業をしている桃子が美由希に訊ねる。

「えっ!か、かーさん、いつからそこにいたの?」

恭也が居たら修行が足りない、と言われそうな事を言う美由希に桃子は苦笑しつつ答える。

「そうね、30分ぐらい前からかしら」

「えっ、そんな前からいたの!っていうより、お店はどうしたの?」

「今日はお昼から夕方までお休みよ。その間は松ちゃんとバイトの子達に頑張ってもらってるの。まあ何かあれば電話があるはずだから」

話しながらも手だけは休むことなく、忙しそうに動いている。

「ふーん、そうなんだ。でも、お店休んで何してるの?」

「それはもっちろん、恭也へのプレゼントよ♪あの子、甘い物苦手でしょ。だから、桃子さん特性、甘さ控えめケーキを作ってるの」

「そうか、かーさんから恭ちゃんへのプレゼントは手作りケーキか。はぁー、私は何にしよう」

「何?美由希、恭也へのプレゼントで悩んでたの?」

「うん・・・・・・何をあげたら喜んでくれるかな〜って」

「大丈夫よ。あの子の事だから、何をあげても喜ぶわよ」

「それは判ってるけど。やっぱり・・・・・・その・・・一番喜んでもらいたいし(///)」

最後の方の言葉は、ほとんど呟きになっており、桃子には聞こえなかったが、
顔を赤くして、指をモジモジさせている美由希を見て、おおよその検討はついたらしく、笑みを浮かべながら美由希に助言をする。

「だったら、恭也の趣味関係の物で何かあげたらどう?」

「恭ちゃんの趣味?・・・盆栽に釣り、後は寝る事。それらに関係する物って・・・・・・盆栽、釣り竿、枕?」

「「・・・・・・」」

「あ、あははははは、な、なんか父の日とか敬老の日のプレゼントみたいね(汗)」

「うぅぅぅ、やっぱり難しいよぉ〜〜〜」

「そうだ。美由希、他の子たちは何をあげるつもりなのか聞いてみて、それから、もう一度考えてみたら?
 大丈夫よ、美由希。あんたが一番、恭也との付き合いは長いんだから、ね」

「うん、・・・・・・そうだね、そうしてみる。ありがとう、かーさん」

「どういたしましてー」

外へと飛び出して行く美由希を見守りながら、桃子は誰ともなく呟く。

「はぁー、あれだけ色んな子から好かれているってのに、当の本人は全く気がついてないなんて。
 鈍いにも程があるわよ、恭也・・・。おまけに自分の気持ちにも気付かないなんてねぇ。はぁ〜〜」
そもそも美由希が悩むことになった原因は、今からほんの数時間前に遡る。



  〜〜晶・レンの場合〜〜



商店街のはずれで晶とレンを見つけた美由希は早速、二人が恭也に何をプレゼントするのかを聞いてみる。

「「えっ、師匠(お師匠)へのプレゼント?」」

「うん、二人は何にしたの?」

「美由希ちゃん、そないな事、聞くやなんてどないかしたん?」

「べ、別にどうもしないよ。ただ、まだ決めてないから、みんなは何にしたのかなって。同じ物になっても困るしね」

「なるほど。でも、俺のは絶対、同じ物にならないと思うけど」

「ほほぉーう。奇遇やな、おさる。うちも他の人と同じ物にならん自信があるねんけどな」

「へぇー、面白ぇー。勝負だ、このカメ!」

「よっしゃー、望む所や」

「「俺(うち)のプレゼントは手作りの料理だ(や)!」」

「「・・・・・・」」

「真似するんじゃねぇー、このミドリガメが」

「その言葉、そっくりそのまま返したる。この猿真似小僧」

「んだとぉー」

「やるっちゅうんか」

「ちょ、ちょっと二人とも。こんな所で喧嘩しないで」

幾ら商店街のはずれとはいえ、通行人が少なからずおり、何事かと遠巻きに見てくる。
その事に気付いたのか、二人とも途端に大人しくなる。美由希はこの気を逃さず、畳み掛けるように言葉を放つ。

「ほら、二人とも手料理でも同じ物を作るわけじゃないんでしょ。だったら、ね」

「そうだな。美由希ちゃんの言うとおりだ。このカメと同じ考えだったのは気に入らないけど。俺の料理の方が美味しいからな」

「そうやな。美由希ちゃんのいうとおりや。このオサルと同じ考えやったちゅうんは気に入らへんけど、うちの方が美味いしな」

「「・・・・・・っふ、ふふふふふ、はっはっはははは」」

「・・・・・・こうなったら明日、師匠に決めてもらおうじゃないか」

「オサルにしては、なかなかええ考えやないか。乗ったで、その勝負!後で吠え面かくなや」

「ぬかせ!そっちこそな」

「そうと決まったら、早速、材料の調達や。ほな、美由希ちゃん、うちは用事があるさかい」

「こっちも材料の買出しだ。じゃあ、美由希ちゃん、俺も用事があるから」

「う、うん。二人とも頑張ってね・・・」

商店街へと走っていく晶とレンを見送りながら、美由希は一人明日のことを思っていた。

(恭ちゃん、明日は大変な事になるだろうけど頑張ってね)



  〜〜那美・忍の場合〜〜



次に美由希が向かった場所は八束神社だった。境内へと続く階段を上りながら、晶とレンから聞いたプレゼントの事を考えていた。

(はぁー、あの二人は手作りの料理か。二人とも料理、得意だもんね。恭ちゃんも喜ぶだろうし。
 でも、同じ物を上げても意味ないし、それ以前に私、料理できないし・・・うぅ、なんか気持ちが落ち込んで行く・・・・・・)

そんな事を考えながら境内へと辿り着く。すると、境内を箒で掃除していた巫女さんが美由希に気付き、声をかけてくる。

「美由希さん、どうしたんですか?」

「あ、那美さん。実は、那美さんに聞きたい事があって」

「私にですか?」

「はい。実は・・・・・・」

美由希は那美に恭也へのプレゼントについて聞く。

「まだ、決まってないんですか」

「はい、それで参考までに那美さんは何にされたのかと思いまして」

「私は、お守りです」

「お守りですか?」

「ええ、私と薫ちゃんの霊力を一週間かけて込めたので、効き目はばっちりです」

「うーん、なんか凄そうなお守りですね。・・・そういえば、忍さんは何にしたか聞いてませんか?」

「私は聞いてませんけど・・・あ、電話で聞いてみたらどうです?」

「そうですね。それじゃ・・・」

美由希はポケットから携帯電話を取り出すと、忍へとかける。
2回ほどコール音がした後、忍へと繋がる。

「もしもし、忍さんですか。ちょっと聞きたい事があるんですけど・・・」

忍にも同じ事を質問する。那美も気になるのか、美由希の反対側から電話に耳をつけ、忍からの返答を聞く。
そして、帰ってきた答えは、

「プレゼントはわ・た・し。忍ちゃんよ(ハート)」

「「・・・・・・えっ!?」」

「だ、か、ら、私自身にリボンをまいて〜、プレゼント(ハート)」

「「え、えええええっ!」」

「し、忍さんっ!な、何を」

「や〜ね〜、冗談に決まってるでしょ。冗談よ、冗談」

「じょ、冗談だったんですか。驚かさないで下さいよ〜」

美由希の講義に忍は素直に謝る。

「ごめん、ごめん。・・・・・・でも、高町君にその気があるんなら、私の方はいつでもOKなんだけどね

「ごめんなさい。よく、聞こえなかったんですけど、何か言いましたか?」

「えっ、何にも言ってないよ。それより、プレゼントは何かだよね」

「あ、はいそうです」

「忍ちゃんのプレゼントは、釣り竿よ」

「釣り竿ですか」

「そう。釣りが趣味って前に言ってたから。なんか凄い名前の竿なんだけどね。
 私はそういうの、よく判んないんだけど、店の人が結構いい品物って言ってたからね」

「はぁ、判りました。どうもありがとうございました」

「どういたしまして〜。じゃあねぇ〜」

忍との通話を終え、携帯電話をしまいながら美由希は考える。

(はぁー、これで趣味関係であげるとしたら盆栽関係か)

「美由希さん、大丈夫ですか。気分が悪いのなら、休んでいかれたら」

「いえ、大丈夫ですよ。ちょっと考え事をしていただけですから」

「そうですか。なら、良いんですけど。で、恭也さんへのプレゼント決まりましたか?」

「うーん。まだです」

「そうですか。でも、あせらずにゆっくりと考えたら良いと思いますよ。
 恭也さんが欲しい物、喜ぶ物というよりも、美由希さんがあげたい物で考えてみたらどうですか?」

「私があげたい物ですか?」

「ええ」

「・・・・・・ありがとうございます!何か判ったような気がします」

「そうですか。お役に立てて良かったです」

「はい。じゃあ、私はこれで」

「ええ、また明日ですね」

「はい」

返事一つを返すと、美由希は階段を駆け足で下りていく。
その表情はここに来た時と違い、晴れやかであった。



   ◇◇◇



駅前のデパートまで出てきた美由希は、デパートには入らずにそのまま何軒かの露店が並んでいる場所へと向かう。
そして、それらの露店の商品の中から自らが探している者を探しながら歩く。

(えーと、確かここらへんのお店にあったって聞いた様な。・・・あった!)

何軒目かの露店で美由希は目当ての物を見つける。
美由希の目当ての物というのは・・・・・・


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  1.「す、すいません。こ、これをお願いします」

  2.「このシンプルなやつなら、恭ちゃんも気に入ってくれるかな?」

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