『Sweets』
〜後日談〜
夕飯ができ、二人がリビングへと向うと、そこには何時の間にか復活を遂げ、元気になった桃子がいた。
「さあ〜騒ぐわよ〜」
これに二人そろって苦笑いをすると、
「言った通りだろ」
「うん、思った通りだね。もう元気になってる」
「ほら二人とも早くこっちに来なさいよ。あなたたちが主役なんだから」
桃子は二人を引っ張ると中央へと連れて行く。
「じゃあ、二人ともおめでと〜う」
「「「おめでとー!」」」
全員から祝福を受け、全員が席に着く。
その後、桃子は一人でお酒を飲んだりしていたが、それ以外はいつもの夕飯時と同じ様に進んでいく。
しばらく食事をしていると桃子が恭也たちに聞いてくる。
「で、あんたたち、いつ孫を見せてくれるの?」
「ぶっ、ごほごほ」
「だ、大丈夫?恭ちゃん。かーさん、何をいきなり」
丁度、お茶を飲んだ所でそう言われてむせる恭也の背中を優しく擦る美由希。
そんな二人を面白そうに眺めながら桃子は再度同じ事を言う。
「だ・か・ら〜子供よ。こ・ど・も。桃子さん早く孫を見たい〜」
落ち着いた恭也は桃子に向かい、あの時と同じ事を言う。
「だから、おばあちゃんと言われてもいいのか?」
「うっ。た、確かにそれはちょっと嫌だけど・・・。で、でも、孫が早く抱けるんなら、それぐらいいいわよ!」
どうやら桃子は恭也たちにとってはよくない方向へと立ち直ったらしい。
その桃子の台詞に今度は恭也と美由希が固まる。
「そ、それはそのうちにな」
恭也の言葉に何度も頷いて答える美由希。
そんな二人を見ながら、桃子はさらに問い詰める。
「そのうちっていつよ。ほらほら」
どうやら、少し前に恭也が言った言葉を未だに根に持っての行動らしく、その目は笑っていたりする。
しかし、二人はその事に気づかず、困った顔を見合わせる。
「ま、まあ今は美由希も俺も学生だし・・・」
「そうそう。だからもう少ししてからという事で」
「はぁ〜。それじゃ少なくとも後、約三年は我慢か〜。残念ね〜、早くおばあちゃんと言われても良いから孫が見たかったのに」
「恭ちゃん。ひょっとしてかーさん、おばあちゃんって言われたのを根に持ってるんじゃ?」
「ああ、どうもそうらしいな」
小声で話しながら、そっとため息を吐く二人。
「うん?二人ともどうしたの?」
「いや、何でもない」
「なになに?孫を早く見せてくれる相談とか?」
「何でそうなる!」
「ちぇっ!違うのか〜。残念だわ〜。早くおばあちゃんと言われても良いから孫が見たかったのに」
「勘弁してくれ」
この三人のやり取りを見ていた年少三人組は、
「な、何か分からないけど、桃子ちゃん」
「あ、ああ。ひょっとしたら怒ってるんかな?」
「で、でも、怒っているというよりも、どちらかというと」
「「「からかって、楽しんでる?」」」
そんな年少組を放っておいて、桃子は事あるごとに同じ台詞を口にして、恭也と美由希を困らせて楽しんでいた。
『早くおばあちゃんと言われても良いから孫が見たかったのに』
食事が終わる頃、恭也と美由希は少し疲れた表情をしており、逆に桃子はとても清々しい顔をしていた。
(ああー楽しかった。私をからかった罰よ恭也。まあ、美由希は恭也の道連れと思って諦めてね。
苦楽を分け合ってこそ、強い絆で結ばれるのよ)
二人が聞いたら、何を勝手な事を、と言われそうな事を考える桃子。
そうして、夜は更けていき、この夜、二人は夢の中にまでこの言葉を言われ続けたとか・・・。
数週間後の高町家、リビング──
ここに恭也と美由希の口から驚くべき事を告げられ、その場で固まっている桃子がいた。
「ははははは・・・・・・、ほ、本当に・・・おばあちゃんに・・・・・・」
おわり
<あとがき>
今回は特に語るべき言葉はないな
美姫 「何を難しそうな事を言ってんのよ」
いや、なんとなくなんだけどね。まあ、兎に角、あれだ。今回のテーマは口に出した事は実現すると。
いわゆる言霊ってやつかな?
美姫 「いや、それは違うでしょ」
うわっ、一刀両断か!お前、血も涙もない奴だな。
美姫 「あのね〜」
鬼、悪魔、人非人!
美姫 「今度は、別の意味での一刀両断をしてあげるわ!離空紅流、鎧朱一閃(がいしゅういっせん)」
ズバンッ!
綺麗に真っ二つ〜〜。
美姫 「ふん!さてさて、皆さんにはお見苦しい所をお見せしました。今回はこのへんでお開きとさせて頂きます。
ではでは、ごきげんよう」