『Happy Dream』






見渡す限り地平線が広がる草原の中、恭也はただ一人で立ち尽くす。
周りのは一切の建物も見えない程に広大な草原。そこで恭也は気がつく。

(これは、夢・・・・・・?
 ああ、俺は夢を見ているんだな。)

恭也は頭の片隅でそんな事を考えながら、とりあえず適当に方角を決めると歩き始める。
どれぐらい歩いただろうか。一時間、二時間と経ったような気もするし、10分も経っていないような気もする。
そもそも、夢の中で正確な時間なんてものがあるのだろうか。
そんなくだらない事考えが頭に浮かんでは消えていく。
それでも足はひたすら前へと歩み続ける。

(まさかずっとこうやって歩いている夢とかいうんじゃないだろうな)

そんなくだらない考えを頭の隅に追いやり、しばらく歩くと前方にやっと違う風景が飛び込んでくる。
それは光だった。
どこかの家から光が漏れているとかそういう事ではなく、本当に何もない草原にぽつんと光だけがそこにあった。
恭也は不思議に思いながらも、他に行く所がある訳でもないのでその光を目指して歩を進める。
やがて、光の前に辿り着くと恭也はその光を注視する。
それはさして眩しくもなく、熱らしきものも持っていなかった。
恭也は恐る恐るといった感じで手を伸ばす。
と、突然その光が内側から爆発する。
咄嗟に目を庇いながら身構えたが、それだけで衝撃は一向にやってこない。
と、恭也の身体にトンと何かが軽くぶつかってくる。
先程の爆発にしては遅すぎるし、何よりも軽すぎる。
庇っていた手をどけ、恭也が目を開けるとそこには・・・。

「恭也〜♪」

恭也に抱きつく久遠がいた。

「久遠か。と、いう事はこれは久遠の夢か?」

「ううん。恭也の夢」

「俺の?」

「そう。久遠、恭也に会いに来た。でも、寝てたから久遠も一緒♪そしたら、恭也の夢の中にいた」

つまり、遊びに来た久遠だったが恭也が寝ていたので隣で一緒に眠ったらしい。
そして、恭也に会いたくて無意識に恭也の夢の中に入り込んだらしい。

「なるほどな。つまりこの風景は俺の夢なのか。しかし、見事に何もないな」

「うーん、ちょっと違う」

「違う?」

「うん♪これは久遠の」

「久遠が作った風景なのか?」

「そう。恭也と二人で、草の上〜♪」

「そうか」

恭也は久遠の頭を撫でるとその場に腰を降ろし胡座を組む。
久遠は恭也の足の上に座ると背中を恭也に預け上機嫌でニコニコしている。
しばらくそうして穏やかな時間を過ごす。
不意に久遠が恭也を見上げ、聞いてくる。

「久遠、恭也のこと好き〜♪恭也は?」

「うん?俺も好きだぞ」

「恭也も好き?」

「ああ」

「〜♪〜♪」

久遠は耳と尻尾を嬉しそうに振りながら、恭也に身体を預け微笑みを浮かべる。
そんな久遠を見ながら、恭也も嬉しそうに笑みを浮かべ、久遠の髪を優しく撫でる。
ゆっくりと、そして穏やかに二人の周りの時間は流れていく。
やがて、久遠の耳がピンと立ったかと思うと、

「恭也、そろそろ起きる」

「うん?そうか」

「うん、ちょっと残念」

久遠があまりにも悲しそうな顔をするので恭也は久遠の頭に放した手を再び置くと、

「また、今度な」

「うん♪夢でなくても撫でてくれる?」

「ああ、いつでもいいぞ」

そう言うと恭也は久遠の頭をもう一度撫でる。
撫でられる久遠は先程の悲しそうな顔から一転して、嬉しそうな顔になる。
そんな久遠を見ながら恭也も嬉しくなる。

「じゃあ、また後でな」

「うん」

言い終わるとほぼ同時に周りの風景が揺らぎ白い光に変わっていく。
その光が一斉に輝き出し、恭也は眩しさのあまり目を閉じる。
次に目を開けた時には夢の世界ではなく、現実世界であることを理解しながら。











恭也が目を覚ますと、その傍らには久遠が眠っていた。
どうやら恭也の方が先に目覚めたらしい。
恭也は身体を伸ばし、軽くほぐしていく。
それから静かに立ち上がると、久遠を起こさないように気をつけながらリビングへと向う。
恭也がリビングに入ると、すでにそこにいたフィアッセ、美由希、忍、那美、晶、レンが一斉に恭也を見る。

「恭ちゃん、起きたの」

「ああ」

「じゃあ、ここに座って」

「どうしたんだ皆」

「いいから座ってください」

「あ、ああ」

恭也は言われた通りに大人しく座る。
その恭也を囲むように美由希たちは座りなおすと恭也に詰め寄る。

「恭ちゃん、なんで久遠と一緒に寝てるの!」

「そうです、なんでですか」

「ち、ちょっと待て。なんでと言われても、俺が寝ている間に久遠が横に来て寝てたんだから、そんな事を言われても。
 第一、何をそんなに怒っているんだ?」

「そ、それは良いのよ。それより、今の話は本当?」

「ああ」

「それもそうよね。やっぱり恭也は子供よりも私みたいなナイスボディのお姉さんの方が良いわよね」

「フィアッセ、何を言ってるんだ?」

恭也の疑問を打ち消すように那美がフィアッセに言う。

「そんな事はありませんよ。恭也さんは外見で人を判断するような人ではありません」

この台詞にレンと晶も頷く。
が、忍がそんな三人に反論する。

「確かにそうだよね。でも、内面だけでなくプロポーションも良いに越した事はないと思うけど」

胸を強調するかのようなポーズを取りながら言う忍。
この台詞に今度はフィアッセ、美由希が頷く。

「む、胸が全てではありません」

「胸だけじゃないもーん」

「そ、それは・・・う、うぅー、美由希さーん、ってこの件では美由希さんも敵でした」

「い、いや敵とか言われても・・・」

親友である那美に強く言われ、少したじろぐ美由希は何とかフォローしようとする。

「ほ、ほら。私は栄養たっぷりの食事を毎日取ってるから・・・。だからだよ、ね」

「美由希さん・・・」

美由希の必死のフォローに那美は感激するが、それを遮ってレンが美由希に話し掛ける。

「ほっほーう。美由希ちゃん、それはうちに対する皮肉ですか。幾ら美由希ちゃんでも聞き捨てできませんな。
 美由希ちゃんと同じ物をうちも食べてるはずなんやけどな」

レンからどす黒く禍々しいオーラが噴き出す。

「ち、ちがう。レ、レンはほら、まだ成長期に入ったばかりだから。わ、私もレンぐらいの歳から成長したから。
 そ、それに私は恭ちゃんと鍛練していたから、運動も結構してたし・・・。
 だから、ちゃんと食べてよく運動すれば大丈夫だよ。ね」

「そうですか?」

「うんうん」

「そうですな。うちはまだ成長期ですし」

美由希の説得に納得したレンから禍々しいオーラが消え、安堵する美由希。
しかし、今度は晶が先程のレンにも負けないほどの禍々しさを出す。

「つまり、俺はもう手遅れって事ですか?」

「あ、晶もまだ成長期だから大丈夫だよ。ちゃんと食べて運動してれば」

「でも、俺だって空手で毎日体は動かしてるんだけど・・・」

「あ、あうぅぅぅ」

自分の胸を見下ろしながら悲しい気に呟く晶に美由希も言葉をなくす。
そんな晶に忍が容赦なく止めをさす。

「まあ、お子様たちは置いといて、恭也は胸が大きい方が良いよね」

「何で俺に聞く」

「じゃあ、他に誰に聞くのよ」

「そ、そうだ師匠が小さい方が好きなら・・・。師匠!小さい方が良いですよね」

「だから、何故、俺に聞く」

「いいから、いいから。恭也はどっちなの♪」

フィアッセも恭也へと問いただす。

「いや、だから・・・」

『どっち?』

全員が恭也と問い詰める。
そこへ眠りから覚めた久遠が入ってきて、恭也を見つけると恭也に抱きつく。

「恭也〜♪」

「久遠、起きたのか」

「うん」

『あ、ああああ〜』

「久遠、何やってるの」

那美が慌てて久遠を引き剥がす。
久遠は訳が分からずに首を傾げる。

「那美、どうしたの?」

「今、恭也さんに大事な事を聞いてる所なの。だから、久遠も大人しくしてて」

「・・・大事なこと?」

「そうよ。恭也さんが胸の小さいのと大きいのどっちが好きか」

「そうやで、久遠。久遠もうちらの味方やな。ほな、こっちにおいで」

レンが久遠を引っ張る。
それを聞いた久遠は首を傾げて言う。

「恭也、胸小さいほうがいい?」

「いや、久遠、そうじゃなくて」

「じゃあ、大きい方なんですか!」

晶の叫びに美由希たちが笑みを浮かべる。
それを聞いた久遠は恭也を見て訊ねる。

「恭也、大きいほうがいい?なら、久遠も」

そう言うと久遠は大人バージョンに変化する。

「恭也、これで大丈夫」

「あ、ああー。久遠、あんたまで裏切るの!」

「ふっふふ。久遠、こっちにおいで。そっちにいたら小さくなっちゃうわよ」

「忍さん!それはあんまりにも酷いです」

「残念でした、恭也は大きい方が好きなんだよね」

「いや、そんな事は一言も言ってないが・・・」

「ええ〜、じゃあ恭ちゃんは小さい方が好きなの!」

「おっしゃー!」

美由希の叫びに今度は那美たちが喜ぶ。

「恭也は小さい方が好き。なら、・・・」

久遠がまた子供バージョンへと戻る。

「これで大丈夫♪」

「く、久遠!そ、そう言えば久遠って変化でどっちにもなれんだったけ」

忍の呟きに久遠は嬉しそうに微笑みながら言う。

「どっちでも大丈夫♪真雪が言ってた」

「真雪さんが?何て言ってたの」

那美の問いに久遠は何かを思い出しながら答える。

「うーんと・・・。久遠、一粒で二度美味しい♪」

「っく、これは強敵や」

「ああ、確かにな」

「どっちにも変化可能なんてずるいわよ」

口々に久遠を敵視する発言をする忍たちに、久遠は怯え恭也にしがみ付く。

「皆、何か怖い」

「ああ、確かにな」

恭也はそんな久遠を優しく抱きとめるとその頭を撫でる。
それだけで久遠の表情から恐怖が消え、喜びに変わる。
これを見た美由希たちが恭也へと視線を飛ばす。

「恭ちゃん、結局どっちなの!」

美由希の台詞に恭也は溜め息を吐くと口を開く。

「・・・あのな、俺はどっちでも構わない。そんなのは気にしないからな」

この言葉に全員が詰めていた息を零す。
久遠は頭を撫でられながら、恭也を見上げ訊ねる。

「じゃあ、久遠どっちでもいい?」

「ああ、どっちの久遠も、例え狐の姿でも久遠は久遠だろ」

「じゃあ、恭也はどっちの久遠も好き?」

「ああ。どっちの久遠も好きだぞ」

その恭也の言葉に久遠はこれ以上ないというぐらいに笑みを浮けべ、恭也の胸に擦り寄る。
美由希たちもそんな二人のほのぼのとした雰囲気にさっきまでの毒気を抜かれ、笑みを浮かべる。

「〜♪ これで久遠、恭也とずっと一緒♪」

『はいぃぃぃぃぃ』

突然の久遠の台詞に全員、目を点にして素っ頓狂な声を上げる。
そんな那美たちを置いて、久遠は恭也に話し掛ける。

「真雪が言ってた。久遠、恭也好き。恭也も久遠好き。だったら、恭也と久遠、恋人。
 そしたら、ずっと一緒にいれるって」

(ま、真雪さん。あなたは何を吹き込んでいるんですか)

思わず天井を見上げる恭也に久遠は不安そうに聞く。

「恭也、久遠と恋人嫌?」

この久遠の言葉に恭也は少し考え込む。
自分は久遠のことをどう思っているのだろうか。
色々、考えるが答えは既に出ていた。
それを恭也は口に出して久遠に伝える。

「俺も久遠の事を好きだぞ。だから、恋人だ」

「本当?」

「ああ、ずっと一緒にいような久遠」

「うん♪」

リビングには真っ白に燃え尽き、何かブツブツと呟いている美由希たちがいたが、
恭也と久遠にはそんなものは映っておらず、ただお互いに見詰め合い幸せそうな笑みを浮かべていた。







おわり



<あとがき>
ケイジさんの70,000Hitきりリク、恭也X久遠です。
美姫 「今回はほのぼのな感じね」
どっちかと言うとな。でも、少しラブラブだろ?
美姫 「どうかしら?でも、最近、きりリク遅くない?
     60,000は70,000Hit後に完成してるし、これはこれで77,777Hit直前だし」
そ、それは言わないでくれ。しかも、77,777Hitの後は80,000Hitを予定してるからな」
美姫 「まあ、浩が苦労する分には私には関係ないし」
お、鬼か、あんた
美姫 「はいはい。それよりもきりきり次を書く!」
は、はいぃぃぃぃ。




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