『恭也の小さいって事は不便だね』

  〜後編〜






ん………うう……。
こ、ここは…………。
白い天井に白い壁……病院か。
なにやら廊下の方が騒がしいな。


【フィリス】
「全く、一体何をしたんですか」

【美由希】
「な、何ってケーキを食べただけなんですけど………」

【フィリス】
「そんなはずはないでしょ。かなり強力な毒でもあそこまで苦しみませんよ。
 いえ、あっさり殺す所か殺さずに苦しみだけ与えるなんて拷問でもしたんですか」

【美由希】
「本当なのに……」

【フィリス】
「………本当なんですか?」

【那美】
「ええ。美由希さんの言った通りです」

【フィリス】
「信じられません………。何をどうやったら、あんな症状を引き起こさせる物が………」



【恭也】
「美由希………お前は何て物を作るんだ」

恭也は廊下から聞こえてくるフィリスと美由希たちの話を聞き、溜め息を吐く。
そして、目が覚めた事を知らせるようと布団から抜け出そうとしたところで、おかしな事に気付く。

【恭也】
(何故、こんなに布団が大きいんだ)

恭也はもぞもぞという表現がぴったりとくるような動作で布団から這い出る。

【恭也】
「って、なんで裸なんだ!」

布団から這い出た恭也は自分が裸という事に気付き、慌てて周りを見て服を探す。

【恭也】
「…………な、何だ、ここは?ちょっと待て。落ち着くんだ俺」

恭也は一度目を閉じ、呼吸を整えると再度目を開ける。
その目に映る物全てが、先程目を閉じる前と変わらずに飛び込んでくる。
そう、通常よりも何倍もの大きさで。

【恭也】
「…………変化なし。これは、つまり…………」

 1.俺をからかうために、かーさんたちが用意した悪戯。
 2.俺が小さくなった。
 3.これは夢。

【恭也】
「俺としては3を切実に希望だな」

恭也は自分の頬を抓り痛みを感じる事を確かめる。

【恭也】
「うむ、早くも3は『はい、消えた』だな。なら、1か?いや、幾らなんでもかーさんたちでもな、それは……。
 いや、かーさんたちだぞ……。う〜ん、ここは思い切って1でいってみるか」

【恭也】
「よし、1のかーさんたちの悪戯で!」

フィアナルアンサー?

【恭也】
「ファイナルアンサー!」

って、何か性格が変わってないか?

【恭也】
「些細な事だ。気にするな」

気にするなと言われてもな……。

【恭也】
「まあ、あれだ美由希の料理によって精神汚染されたと思ってくれ」

まあ、こっちとしては別に構わないんだが……。

【恭也】
「とりあえず、1でファイナルアンサーだ」

……………………………
………………………
…………………
……………
………

【恭也】
「おい、まだか」

……………
………
ざぁ〜んね〜ん。

【恭也】
「くっそー。じゃあ、やっぱり2なのか」

その通り!ピンポンピンポ〜ン!大正解!

【恭也】
「…………って、ぬあにぃぃぃ〜〜」

思わず大声で叫ぶ恭也。
その声は廊下まで届き、廊下にいたフィリスたちが病室へと入ってくる。

【フィリス】
「どうかしましたか、恭也くん………って、あれ?どこにいったんですか」

フィリスはベッドに人がいないのを見ると辺りを見渡す。

【フィリス】
「どこにもいませんね。一体、どこに」

【恭也】
「ここです」

声のする所を全員が良く見ると、そこには15センチ程の大きさになった恭也が服の襟元から顔を出していた。

『…………………』

全員が絶句する中、恭也は一人話す。

【恭也】
「どうしてこうなったのかを知りたいんだが、その前に何か服を………」

【フィアッセ】
「きゃー、恭也可愛い!」

フィアッセが恭也へと手を伸ばす。

【恭也】
「わっ、馬鹿危ない」

逃げようとするが小さい身体では逃げきれる訳もなく、あっさりと掴まってしまう。

【恭也】
「いいから、先に服を貸してくれ」

フィアッセの手の上で前を隠しながら恭也は言う。

【フィアッセ】
「今の恭也に合うサイズの服なんてすぐには用意できないよ」

そんな恭也を突っつきながらフィアッセも答える。

【恭也】
「だったら、何か服の代わりになるような物を」

【美由希】
「フィアッセ、私にも貸して」

【恭也】
「先に服を……」

【フィアッセ】
「駄目よ、美由希。今は私が持っているんだから」

【美由希】
「それはずるいよ」

今まさに恭也を取り合う戦いが始まろうとした瞬間、少し怒ったフィリスの声が聞こえてくる。

【フィリス】
「病室では静かにしてください。それと、恭也くんの服はこのハンカチで……」

数分後、原因と解決策を調査するため、フィリスは美由希たちに詳しい話を聞くことにする。
ちなみに恭也は未だにフィアッセの手に握られていたりする。
それを羨ましそうに見る美由希たち。
それらを無視して恭也は咳払いを一つすると、美由希を見る。

【恭也】
「で、美由希。お前は俺に一体何をしたんだ。怒らないから素直に言ってみろ」

【美由希】
「ひ、酷いよ恭ちゃん。それだとまるで私が悪いみたいに聞こえるじゃない」

【恭也】
「言い方が悪かったか?聞こえるも何もそう言ってるんだが」

【美由希】
「うぅー、私は普通に料理しただけなのに」

【那美】
「何か変な材料とか代わったものを入れたりとかはしなかったんですか?」

【美由希】
「何もしてませんよ。ちゃんと晶やレンに教わった通りにしただけです」

【恭也】
「普通の材料でこんなものを作る方が凄いけどな」

【美由希】
「恭ちゃん、酷いよ………」

【恭也】
「事実だ」

【フィリス】
「それよりも美由希さん、一体何を入れたんですか」

【美由希】
「な、何って……」

【フィリス】
「全部思い出してください。でないと対処のしようがありませんから」

フィリスの強い口調に美由希は自分が使った材料と作った手順を並べていく。

【恭也】
「………材料には何も問題ないな」

【フィアッセ】
「うん。作る手順も間違ってないよ」

【恭也】
「なのに何であんなものが出来上がるんだ?」

本気で首を傾げる恭也を前に何も言い返せず、ひたすら身を小さくする美由希。
そこへ那美がおずおずといった感じで声を上げる。

【那美】
「あ、あのー……」

全員の視線が那美へと向く。

【那美】
「実は………、私が使った材料にひょっとしたら問題があったのかなーって………」

【恭也】
「一体何の材料を使ったんですか?」

【那美】
「いえ、良くは知らないんですが」

そう言って那美が説明した材料は簡単に言うと薬草に霊力を込めたものらしい。
詳しい説明を聞いても恭也たちにはちんぷんかんぷんだった。

【恭也】
「そ、それは人体には影響は……」

【那美】
「あ、それは大丈夫……だと思います。今までにそんな事をした人はいませんでしたし。
 ましてや、それを食べる人なんて……」

【恭也】
「!ちょ、ちょっと待って下さい。そんなのを材料に使ったんですか!」

【那美】
「元々は薬草ですから身体に悪いものではないですから」

那美は視線を逸らしながら、そんな事を言う。

【美由希】
「でも、那美さん。どうしてそんな事をしたんですか?」

【那美】
「あ、そ、それは……。ほ、ほら恭也さんが疲れているみたいでしたから、薬草で疲れをとってもらおうかと……」

【恭也】
「そうでしたか。それはありがとうございます」

【那美】
「いえ」

【忍】
「怪しいわね〜」

【那美】
「ギクッ」

【美由希】
「那美さん、今のギクっていうのは?」

【那美】
「わ、私そんな事言いましたっけ?はははは」

【忍】
「那美、あんた何かお呪いみたいな事をしたんじゃ……」

【那美】
「は、はははは」

【忍】
「やっぱり」

【那美】
「で、でも、それが身体に害を及ぼすなんて事はないですよ」

【忍】
「滅茶苦茶怪しいんだけど」

【美由希】
「ちなみに何のお呪いを?」

【那美】
「え〜と………、まあ簡単に言えば鈍感な所が治るように、みたいな」

【忍】
「特に特定の一人に対しては、とか?」

【那美】
「あ、あはははははは」

フィアッセ、美由希、忍の三人が半眼で睨む中、冷や汗を流しながら誤魔化し笑いを浮かべる那美。
そんな那美にフィリスが尋ねる。

【フィリス】
「どんな種類の薬草か分かりますか?」

【那美】
「えっと、幾つか入れたんですぐにはちょっと」

【フィリス】
「じゃあ、それを調べて教えて下さい。薬草は複数混ぜると違う効果を引き起こす事があるので。
それと、その霊力に関してなんですが、実際にどうなるか分からないんですか?」

【那美】
「うぅぅ、すいません。あ、でも薫ちゃんか十六夜さんに聞けば何か分かるかも」

【フィリス】
「では、そちらの方もお願いしますね」

【那美】
「はい……」

【忍】
「全く、とんでもない事ばっかりして」

【那美】
「なっ!そう言う忍さんだって、何か怪しげな瓶を取り出して中身を入れてたじゃないですか」

【忍】
「み、見てたの……」

【恭也】
「……忍、一体何を入れたんだ」

今度は忍へと全員の視線が移る。

【忍】
「は、はははは。どうしても言わなきゃ駄目?」

【恭也】
「当たり前だ」

【忍】
「ちょっとした薬を入れちゃった♪えへっ♪」

【恭也】
「ちなみに何の薬だ」

【忍】
「色々よ、色々」

【那美】
「まさか惚れ薬とか」

【忍】
「あー、それに近いのもあったかもね」

【那美】
「忍さん、人の事言えませんよ!」

【忍】
「や、や〜ね、私も那美と一緒で恭也の疲れを取ってあげようと滋養強壮の薬とかを……。
で、さくらの家からエリザの作った薬とかを幾つか持ち出したのよ。
だから、ひょっとしたら今言ったみたいな薬もあったかもしれないってだけよ」

【恭也】
「ちょ、ちょっと待て!お前、効果もよく分からない薬を入れたのか?
しかも数種類を混ぜて」

【忍】
「………てへ、よく考えたらそうなるわね」

【恭也】
「お、お、お前という奴は………」

【フィリス】
「とりあえず、その薬の詳しい事も教えて下さい」

フィリスは溜め息を吐きながら呆れつつもそう告げる。

【恭也】
「フィリス先生、お願いします」

【フィリス】
「ええ、出来るだけの事はやってみますけど………。あまり期待はしないでくださいね。
幾ら何でも今回の件は医学を越えていますから………。とりあえずは現状維持という事で」

かなり疲れた口調でそう告げる。

【フィリス】
「で、恭也くんはどうしますか?」

【恭也】
「どうするとは?」

【フィリス】
「このまま入院という形を取るかどうかですよ」

【恭也】
「………帰ります」

【フィリス】
「そうですね、その方が良いでしょうね。そんな大きさだと誰かに世話してもらわないと何もできないでしょうし。
かと言って、その現状を説明するのも疲れますしね」





【恭也】
「まあ、そういう訳だ」

高町家に戻ってきた恭也はそう説明する。
リビングでは、なのは、晶、レンがいて恭也の話を聞くと、何ともいえない表情をする。
美由希は翠屋に電話し、とりあえず問題がない事を伝えている。
詳しい事は帰ってからとか、そういった声が聞こえてくる。

【レン】
「じゃあ、学校の方にも当分行けませんな」

【恭也】
「だな。今日は日曜で元々学校はなかったが、流石にこの姿ではな。明日から治るまでは家にいるしかないな」

【晶】
「しかし、誰のが原因なんでしょうかね」

【恭也】
「それも分からん。それを調べるためにも、忍と那美さんには頑張ってもらわないとな」

恭也の言葉が指すように、忍と那美はそれぞれ家へと戻り、電話でやり取りをしているのだろう。

【晶】
「俺としては美由希ちゃんが原因じゃない事を祈ってますよ」

【レン】
「そやな。流石に美由希ちゃんが原因やと、料理を教えたうちらも責任を感じてしまうしな」

【美由希】
「うぅぅぅぅ〜、二人とも酷いよ〜。私は那美さんたちとは違って変な物使ってないのに……」

【晶&レン】
「あはははは、じょ、冗談だよ(やて)」

【恭也】
「まあ、普通の材料であんなものを作るのはある意味凄いがな」

【美由希】
「恭ちゃん、まだ言うの……」

【恭也】
「しかし、こうなったのはお前の料理じゃないとしても、倒れたのは事実だしな」

【美由希】
「…………」

【恭也】
「ひょっとしたら、美由希の料理にあの二人の薬や薬草が入った結果、こうなったのかもしれないしな」

【美由希】
「うぅぅ……返す言葉もないよ」

落ち込む美由希を何とか励ます晶とレン。
恭也は一人難しい顔をして、腕を組んでいたが突然顔を上げると、それまで黙っていたなのはに話し掛ける。

【恭也】
「で、なのはよ。さっきからお前は何をしているんだ」

【なのは】
「えっ?あ、あははは。だってお兄ちゃん人形さんみたいで可愛い♪」

なのはは笑顔でそう言うと、また恭也の頭を人差し指の指先で慎重に撫でる。
その目はやけにきらきらとしており、表情はどこかうっとりとしている。
ちなみに、恭也は現在なのはの足の上にいたりする。
翠屋を手伝いに行ったフィアッセがなのはに恭也を渡したためだ。
フィアッセ曰く、『なのはなら安心だから』だそうである。

【なのは】
「は〜〜、可愛い♪」

【恭也】
「いい加減にやめてくれ」

【なのは】
「〜〜♪ふんふーん♪」

恭也の言葉も聞かずなのはは鼻歌混じりで恭也を構う。
この後の昼食時には、恭也の目の前にスプーンを置き食べさせたり、その後も絶対に恭也を離さなかった。
で、当然のことながら、帰ってきた桃子にも玩ばれるわと、散々な一日を過ごした恭也だった。

【恭也】
(良く考えてみれば、うちの家族達はよくこんな非常識な事態をあっさりと受け入れたもんだな)

今更のように変な感心をする恭也の背中に悪寒が走る。

【なのは】
「お兄ちゃ〜ん。これ、見て!」

なのはが恭也に見せたのは一枚の小さな服だった。

【恭也】
「それは?」

【なのは】
「おかーさんに作ってもらったお兄ちゃんのパジャマだよ」

【恭也】
「それは助かる。正直、服をどうしようかと思っていたからな」

【なのは】
「じゃあ、お風呂に行きましょう」

なのははそのまま恭也を掴むと風呂へと向う。

【恭也】
「待て待て待て!一人で入れるから良い」

【なのは】
「どうやって?」

【恭也】
「……桶に湯を入れてくれたら」

【なのは】
「どうやってお風呂の戸を開けるんですか?」

【恭也】
「………………」

恭也はそのままなのはに連れて行かれた。



そんなこんなで数日が過ぎたある日、恭也はフィリスに呼ばれて病院へと来ていた。
そして、診察室へと入ると……。(実際にはフィアッセに連れられてなのだが)
そこにはさくらと薫がいた。
二人は恭也を見るなり謝りだす。

【薫】
「恭也くん、今回はうちの妹が迷惑を」

【さくら】
「ごめんなさいね。忍にはきつく言っておいたから」

【恭也】
「いえ、お二人が謝る事はないですから。で、どうしてお二人が?」

【フィリス】
「それは私から説明しましょう。まあ、早い話が元に戻る薬が出来たといった所です。
で、それを作るのにお二人には協力してもらったんですよ」

【恭也】
「そうでしたか。ありがとうございました」

【薫】
「礼には及ばんよ」

【さくら】
「ええ、元を辿れば忍たちの所為なんだし」

【フィリス】
「で、恭也くん、これがその薬ですよ」

フィリスは恭也のサイズにあった薬をピンセットで摘むとそのまま渡す。
それを受け取った恭也はそれを飲む。

【恭也】
「ぐっ……か、身体が熱い………」

ボン
鈍い音と共に部屋一帯に煙が漂う。
フィリスは急ぎ、窓を開けると煙の中心にいるであろう人物に声をかける。

【フィリス】
「恭也くん、大丈夫ですか!」

【恭也】
「は、はい。何とか」

煙の向こうから聞こえてくる声にフィリスたちは胸を撫で下ろす。
そして、煙が晴れた先には元に戻った恭也がいた。
恭也は数回瞬きをし、目線の高さを確かめるように辺りをゆっくりと見渡す。

【恭也】
「元に戻った……か」

恭也は元に戻った事が分かるとフィリスたちに礼を言う。
所が、フィリスたちは恭也から視線を逸らし、顔を真っ赤にする。

【恭也】
「どうかしたんですか?」

その恭也の言葉にフィアッセが代表するように答える。

【フィアッセ】
「恭也、服!服、着てよ」

言われて気付く。さっきまでは小さい服を着ていたわけで、当然ながらあの薬では服までは大きくならない。
つまり、今の恭也は素っ裸であった。

【恭也】
「しかし、服なんて持って来てない……」

【フィアッセ】
「そ、そこの鞄に一応の為に用意して持ってきてあるから」

恭也はフィアッセが持って来ていた鞄から服を取り出し身に付けていく。
その顔は少し赤かった。
どうにか体裁を繕い、一息ついた恭也はフィリスたちに礼を言う。

【恭也】
「はぁ〜、何とか元に戻ったか。本当に一時はどうなるかと」

【さくら】
「本当にごめんなさいね。忍には地下で目一杯反省させたから」

【薫】
「那美も似たような形で反省させたから」

恭也は二人の目を見て深く聞くのはよそうと思い、再度礼を述べると病室から出て行く。
フィアッセと一緒に病院の外へと向って歩きながら、

【恭也】
「ったく、あいつらの所為で本当に酷い目にあった……」

恭也はどこか遠くを見詰めてそう呟く。
その脳裏には、今までの様々な出来事が思い浮かぶ。
箪笥の裏に落ちた物を拾わされたり、美由希たちから隠れるために入った天井裏でねずみと格闘したり……。
その他もろもろの事が浮かんでは消えていく。
そんな恭也に笑いながらフィアッセは、

【フィアッセ】
「はははは。でも、元に戻れてよかったじゃない♪」

【恭也】
「まあな」

フィアッセはそっと恭也と腕を組む。

【フィアッセ】
「小さい恭也も良いけど、やっぱりこうして抱きしめれる方が良いもんね」

【恭也】
「俺もこっちの方がいいな。あそこまで小さいとフィアッセを抱きしめる事ができないからな」

【フィアッセ】
「うふふふ。じゃあ、今までの分も抱きしめて良いよ恭也」

【恭也】
「………遠慮しておく」

【フィアッセ】
「何でよ!それとも今言ったのは嘘だったの?」

【恭也】
「そういう訳じゃないんだが……」

【フィアッセ】
「大丈夫だって。誰もいないから」

【恭也】
「………………………分かった」

恭也はフィアッセを軽く抱き寄せ、一度強く抱きしめるとすぐに離す。

【フィアッセ】
「もうお終いなの?」

【恭也】
「ああ。後は、また今度な」

顔を赤くしながらそんな事を言う恭也にフィアッセは笑みを浮かべ、再び腕を組む。

【フィアッセ】
「じゃあ、次を楽しみにしてるね♪今日はこれで許してあげるよ」

二人はそのままその場から立ち去る。
そう、その陰に隠れていた人物に気付かないまま。





高町家へと帰ってきた二人を美由希が迎える。

【美由希】
「あ、丁度良い所に帰ってきた。
フィアッセ、ちょっとこれ味見して欲しいんだけど……」

【フィアッセ】
「えっ……み、美由希が作ったの?」

【美由希】
「大丈夫だよ、今回はちゃんと味見してあるから。
ごめんね、恭ちゃんの分はないんだ」

【恭也】
「気にするな」

【フィアッセ】
「じゃあ、貰うね」

フィアッセがそれを受け取り、口へと放り込む。
その頃、高町家の台所には、薬草の切れ端と中が空になった瓶を持つ那美と忍の姿があった。
二人が怪しげな笑みを浮かべるのと、玄関から絹を裂くような悲鳴が上がるのはほぼ同時だった。





Endless ?




<あとがき>

ナハトさんの13万Hitきりリクでした〜。
美姫 「リクエスト通りかどうかはかなり怪しいけどね」
確かに……。恭也Xフィアッセでコメディというリクだったからな。
美姫 「コメディになってるの?」
うっ、痛いところをついてくるな。
とりあえず、今回の事で分かった事がある。コメディは難しいな。
美姫 「あんたの人生そのものが喜劇なのに?」
放っておけ!
美姫 「そう言えば、今までにも色々な喜劇を演じてたわね」
確かにな……。
美姫 「例えば小学校の頃、マラソン大会で道を間違え、一人違う所へと迷い込んだり」
本人にとってはどちらかというと悲劇だったんだが……。
美姫 「ほら、浩の悲劇は私にとって喜劇だから」
さいでっか。
美姫 「まあ、とりあえずこんな感じに出来上がりました〜♪」
と、言う訳です。
美姫 「では、この辺でお開きに」




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