『12月に降り帰る雪』






冬のある土曜日の午後。
賑やかな商店街を一人の男性が歩いていた。

「うー、今日は一段と冷えるな」

男の呟きに答えるのは、その横を一緒に歩いていた女性だった。

「うん。今日は例年よりも更に寒いって言ってたし」

「それは嫌だな」

「はははは、真くん寒いの苦手だっけ?」

「別にそういう訳じゃないんだが。と、小鳥、他に買う物ってなかった?」

「えーと、…………うん、大丈夫」

「じゃあ、さっさと戻って支度に掛からないとな。耕介さんだけに任せるのも悪いし」

「うん、そうだね」

「翠屋でデザートも買ったし」

「うん。それ、凄く楽しみ。唯子も朝から騒いでたし」

「あいつは、教師になったって言うのに全く変わらないな」

「でも、その方が唯子らしいよ」

「そうかもな。
 まあ、唯子がいれば、作りすぎるって事もないだろうし、それだけの量を作るとなると俺たちも手伝わないとな」

「そうだね」

「だから、ちょっと急ぐぞ」

「うん」

真一郎と小鳥は少し足早に、冷たい風の吹きぬける商店街を去っていた。





  ◇ ◇ ◇





日もすっかり落ちたさざなみ寮のリビング。
そこから賑やかな声が聞こえてくる。

『乾杯!』

グラスの合わさる澄み切った音が辺りに響くと、すぐに喧騒にかき消されていく。

「しかし、久しぶりだな相川君」

「はい。耕介さんも元気そうですね」

「頑丈だけがこいつの取り柄だからな」

「真雪さん、それはないですよ」

「うけけけ。冗談だよ、冗談。家事雑用も取り柄だもんな」

「ははは」

真雪の言葉に真一郎も苦笑いを浮かべる。

「まあ、飲め!」

そう言うと真雪はどこからか取り出した日本酒を掲げてみせる。
それに対し、耕介は嬉しそうにコップを差し出し、真一郎は、

「い、いや俺は……」

遠慮がちに断わる。
耕介のコップに酒を注ぎながら、真雪は二人に話し掛ける。

「まあ、こんな日にあまり日本酒は勧めないか?だったらワインもあるぞ」

これまた何処からか取り出したワインを見せる。

「で、どっちだ?」

「は、ははは。ワ、ワインの方で…」

真一郎は観念し、グラスを差し出す。
しばらく、食べたり飲んだりしていると、庭を見た美緒が声を上げる。

「おっ、雪なのだ。耕介、雪が降ってきたのだ」

美緒の言葉に全員が窓から外を見る。

「本当だ、雪だな」

「うぅ〜、道理で寒いはずだ」

真雪の言葉に何人かが頷く。
しばらくは空から降る雪を眺めていた面々も、すぐに騒ぎの中に戻っていった。
そんな中、真一郎はこっそりとリビングを出て、玄関へと向う。
そんな真一郎の後ろから、耕介が声を掛ける。

「相川君。出かけるのは構わないけど、外は冷えるから…」

そう言って、真一郎の上着を渡す。

「ありがとうございます」

耕介の気配りに感謝の礼を述べて上着を受け取ると、真一郎は外へと出て行く。
雪の降る道を一人歩きながら、真一郎の足は知らずのうちにある場所へと向っていた。
そして今、真一郎の目の前には湖が広がっている。
未だ降り続く雪の中、真一郎は漠然と湖を眺めていた。

(………雪、か)

物思いに耽っていた真一郎だったが、視界の隅に一つの影を見つけ、眉を顰める。

(こんな時間、こんな場所で何を?)

自分の事は棚に上げ、訝しげに目を凝らす。

(ひょっとして、倒れているのか!)

真一郎はその影が、倒れている人である事に気付くと、慌てて駆け寄って行く。

「大丈夫ですか、しっかり……」

真一郎はその人影を助け起こし、驚愕のあまり言葉を失った。





  ◇ ◇ ◇





「ははははは。いやー、気分が良いな。ほれ、お前も飲め!」

「い、いいいいえ、私は……」

「何だ神咲妹…、飲めないって言うのか?」

「え、えええええっとですね」

那美は困り果てたように辺りを見渡し、耕介を見つけるとそちらを見る。
耕介は苦笑いを浮かべ、

「まあまあ、真雪さん。俺が付き合いますから」

「……っち、仕方がないな」

そう言うと、真雪は那美から手を離す。
真雪に見えないように那美は手を合わせると、耕介に感謝する。

「耕介ー!」

その時、庭で猫たちにご飯を上げていた美緒が声を上げる。

「どうしたんだ、美緒」

「この子供が、いきなりそこから現われたのだ」

庭の植え込みを指差しながら、美緒は小さな女の子を連れて中に入ってくる。

「何?ひょっとして迷子?」

リスティの言葉に全員がその女の子を取り囲む。

「お名前は何て言うの?」

小鳥がその女の子に視線を合わせるように屈み込み、尋ねる。
それに対し、その女の子は人見知りもせず、屈託のない笑みを浮かべながら、

「真雪!」

嬉しそうに言った名前に全員の動きが一瞬だけ止まる。
それを感じ取ったのか、真雪と名乗った少女は不安そうな顔になる。
それを見た小鳥は慌てて、

「真雪ちゃんって言うんだ。いい名前ね」

「うん!」

「で、真雪ちゃんはこんな所でどうしたの?」

小鳥の後ろから唯子が尋ねる。

「えっとね、ここにパパがいるってママから聞いたから、会いに来たの」

『!!!!!』

小さな真雪の言葉に全員が一斉に耕介を見る。
それに首を振りながら、

「し、知りませんってば。身に覚えがありません」

「その言葉を信じろと」

リスティの言葉に耕介は必死の思いで頷く。
が、全員が耕介を見る目は疑いの眼差し以外の何でもなかった。

「信じてくださいよぉぉぉ」

あまりにも情けない声を出す耕介に溜め息を吐きながら、真雪は言う。

「まあ、あいつにそこまでの甲斐性があるのか疑問だしな。その子に聞けば、すぐに事実が分かるだろうし」

真雪の言葉に耕介は頷くと、小さな真雪の傍によって、その肩を掴むと、

「ね、ねえ、真雪ちゃん……イテッ!何するんですか真雪さん!」

「真雪、何もしてないよ?」

「い、いや、真雪ちゃんじゃなくて…。イテッ!だ、だから…」

再び抗議の声をあげる耕介に、

「お前にちゃん付けされると、鳥肌が立つ」

「そ、そんな事言ったって、真雪さんとこの子と同じ名前なんですから、仕方がないじゃないですか」

「だったら、苗字を聞け」

「はいはい。えーと、苗字は何かな?」

「苗字?」

「そう。何、真雪って言うのかな?」

耕介の言葉に真雪ちゃんは不思議そうな顔で首を捻るだけだった。

「うぅぅ」

困り果てた耕介を見兼ねて、那美が提案する。

「じゃあこうしましょう。こっちの子は真雪ちゃん」

「はい!」

自分の名前を呼ばれて返事をする真雪ちゃんに頬を綻ばせながら、那美は続ける。

「で、仁村さん、もしくは真雪さんという事で」

「ちっ、この際、仕方ないか」

このやり取りを不思議そうに見ていた真雪ちゃんに、那美が教えてあげる。

「こっちのお姉さんも真雪って言う名前なのよ」

「同じ♪」

嬉しそうに笑う真雪ちゃんの様子に真雪も苦笑しながら、耕介に無言で話を進めるように促す。

「で、真雪ちゃん。ここにお父さんがいるんだよね?」

「うん!」

「今、ここにいる?」

真雪ちゃんはざっと部屋を見て、悲しそうに俯くと首を横に振った。

「ほら、俺は無罪ですよ。やっほー、おめでとう俺!」

一人浮かれる耕介を余所に、愛がぽつりと呟く。

「じゃあ、この子は迷子なんでしょうか?それに、この子の父親は…」

この言葉に浮かれていた耕介も流石に大人しくなると、真雪ちゃんに聞く。

「真雪ちゃん、お母さんはどこにいるのかな?」

「あっち」

そう言うと、真雪ちゃんは指を指す。

「正確な場所とかは、分からない?」

耕介の言葉に真雪ちゃんは首を横へと振って答える。
全員がどうしたものか悩んでいると、玄関から慌てた真一郎の声が聞こえる。

「こ、こ、こ、耕介さん。た、たた、大変です」

「この声は相川か?そう言えば、途中から見てなかったな」

「真くん、慌ててどうしたの?」

「真一郎ー、こっちも今大変なんだよ」

「いや、こっちも大変なんだって」

そう言ってリビングへと入って来た真一郎は背中に一人の女性を背負っていた。

「どうしたんだい、相川君。その女性は」

「ええ、倒れていたので……」

真一郎が全て言う前に、真雪ちゃんがその女性を見て声を上げる。

「ああ、ママ!」

「この人が真雪ちゃんのママ?」

「若いですねー」

驚きの言葉を口々に言う耕介たちに、真一郎は背負った女性をソファーに横たえると、疑問顔で聞く。
そんな真一郎に今までのやり取りを教えると、驚いたような顔で真雪ちゃんを見る。

「って、事は……、俺の……?」

真一郎の言葉はまたしても途中で遮られる。

「ええ、私と真一郎さんの子供です」

「雪…」

『えぇぇぇぇぇーー!!』

雪の言葉に、真一郎と雪、真雪ちゃんの三人以外から大声が上がる。
驚く面々を余所に、それを証明するかのように真雪ちゃんが真一郎に抱きつく。

「パパー!」

「し、真くん、いつの間に……」

「真一郎に子供がいたなんて、ビックリ」

「所で、その人は一体誰なのだ?」

美緒の言葉に真一郎は何か言いかけるが、口を閉ざして雪を見る。
雪は暫し考え込んだ後、

「皆さんの記憶をお返しします」

そう呟く。
それからしばらくして、

「あ、ああああああ!雪さん!」

「な、何で忘れてたんだ」

驚く耕介たちに、今度は雪と真一郎が事情を説明する。
それぞれに納得をした後、耕介が声を上げる。

「ちょっと待ってくれ。雪さんがここにいるって事は、ざからは?」

耕介の言葉に事情を知る者から声が上がる。
それが収まるのを待って、雪が声を掛ける。

「それは、大丈夫みたいです。ざからは、この地に力はまだ未熟だけれど、心がとても強い方がいる事を感じ取ったみたいです。
 ですから、その方が力を備えるまでは待つつもりみたいです」

雪の言葉に安堵の息を漏らすと、真雪が本題とも言うべき事に入る。

「さて……。その子はお前たちの子供で間違いないんだな?」

真雪の言葉に真一郎と雪は頷く。

「はい。このは真一郎さんと私の子供です」

「そうなの?真一郎?」

「ああ」

「成る程ね。それで真雪か」

真雪が少し複雑そうな顔で呟く。

「す、すいません。でも、本来ならこの子は真一郎さんに会う事が出来ないはずだったんです。
 だから、名前だけでも真一郎さんの字を貰えたらって……」

申し訳なさそうに言う雪に真雪は頭を掻きながら、

「あー、別に怒っちゃいないさ。だから、そんな顔すんなよ。まるで、あたしが虐めてるみたいだろう。
 まあ、真雪ってのは確かにいい名前だしな」

最後の方はおどけた感じでそう言う。
そんな真雪に礼を述べる雪の頭に真一郎は手を置き、その髪を優しく愛しげに撫でる。

「会いたかった……」

「真一郎さん、私もです」

雪は涙ぐみながら、真一郎の胸に顔を埋めると抱きつく。
その背中をゆっくりと叩きながら、真一郎も少し涙ぐむ。
それを見られないように、雪の肩に顔を埋め隠す。
暫くは皆も気を利かせ、二人を気遣うように遠巻きに宴会を再開していたが、やがて真雪が大声を上げる。

「だぁーーー!おめーら、いつまでそうやってるつもりだ!これからは一緒に居られるんだろうがっ!
 だったら、辛気臭いのはそこまでにしとけ!」

真雪の言葉に真一郎と雪は微笑み合うと、素直に離れる。
それを満足げに眺めた真雪は真一郎の首に腕を回すと、

「さて、それじゃあ酒の肴も出来た事だし、じっくりと聞かせてもらおうか」

その顔にはいつもの笑みが張り付いていた。
それを見た耕介は、ぼつりと呟かずにはいられなかった。

「真雪大魔神の出撃……」

それを一睨みで黙らせると、真一郎と雪を中央に座らせ、からかい始めた。
二人はどこか困ったような様子だったが、始終楽しそうだった事は言うまでもなく、
そのお互いに繋いだ手から伝わる温もりから、お互いの存在を確認していた。
やっとの事で真雪たちから開放された真一郎たちに、耕介が飲み物を渡す。

「お疲れ様。まあ、まだ料理はあるから、ゆっくりと食べて」

「ありがとうございます」

「確かに疲れましたよ」

「まあ、真雪さんが、こんなネタを放っておくはずないしね」

「ははは、確かに。でも、雪が傍にいてくれるなら、少しぐらいからかわれても構いませんよ」

「あははは。相川君も言うねー」

「いい加減、慣れますって」

その横で黙って食べていた雪が声を出す。

「これ、美味しいです」

「そう?ありがとう。そう言ってもらえると作った甲斐があるってもんだよ」

「じゃあ、俺も貰おうかな」

真一郎が箸を持つ前に、雪がその料理を摘み真一郎へと差し出す。

「あ、あの、よかったら……」

最初は驚いた顔で雪を見ていた真一郎だったが、すぐに笑顔に変わると、口を開ける。
それを嬉しそうに見て、雪は料理を真一郎の口へと運ぶ。

「はい、あーん」

「あーん」

「どうですか?」

「うん、美味しいよ。雪に食べさせてもらったから、尚更だ」

「そ、そうですか……」

真一郎の言葉に顔を赤くし、俯く雪に今度は真一郎が食べさせる。

「どう?」

「お、美味しいです」

二人だけの世界を作り出す真一郎と雪に、真雪が声を掛ける。

「お前ら、この際、あたしたちの前でなんて事は言わないけど、子供の前でよくやるな」

真雪の言葉に横を見ると、娘の真雪ちゃんが二人の方をじっと見ていた。

「ち、違うのよ真雪」

「そ、そうそう。違うんだ」

「???」

慌てて取り繕う二人に真雪ちゃんはただ、首を傾げるだけだった。
その娘の様子に二人は胸を撫で下ろす。
そこへ、真雪が真一郎の足の上に座り、口を開ける。

「真雪もあーん」

たちまち二人の顔が赤くなるが、雪は娘に食べさせる。
真雪ちゃんは嬉しそうに食べた後、今度は真一郎へと顔を向けると、

「パパもあーん」

真一郎は苦笑いを浮かべると、真雪ちゃんの口へと料理を運ぶ。

「えへへへ〜」

嬉しそうな真雪ちゃんの顔を見て、知らず真一郎と雪の表情も緩む。

「はい、パパにも食べさせてあげる」

真雪ちゃんはそう言うと、たどたどしい手つきで真一郎に料理を食べさせる。
それを食べた真一郎を見ながら、真雪ちゃんは何かを期待するように真一郎を見上げる。
それに気付いた真一郎は、真雪ちゃんの頭を撫でる。

「美味しかったよ真雪」

「へへへ〜♪」

真雪ちゃんは真一郎の膝の上で嬉しそうに笑いながら、今度は雪にも食べさせる。

「………おい、耕介。あいつら何とかしろ」

「な、何で俺が。真雪さんが言えば……」

「目の前であそこまで堂々とされると何も言う気にならん」

「だ、だったら、そっとしておいてあげましょうよ。ね」

「はぁー、仕方がないか。その代わり、お前とことん付き合えよ」

「分かってますって」

真雪はこれ以上、係わってられないとばかりに肩を盛大に竦めると、二人から少し離れた所で酒盛りを始めた。
そんな外野を余所に、真一郎たち三人は楽しそうに食事を続けていた。



それから、しばし時間が経ち、殆どの者が酔い潰れるか、眠りについた頃、真一郎と雪は庭へと出ていた。
どちらともなく寄り添い、いつの間にか雪の止んだ空を眺める。
そこには少し曇っていたが、それでも幾つかの星が見えた。
その空をぼんやりと眺めながら、真一郎は雪の肩を抱き寄せる。
雪も特に驚く事もなく、そのまま受け入れ真一郎へと身を委ねる。

「また会えて、本当に嬉しいよ」

「私も同じです…」

「これからは、ずっと一緒だよな」

「はい」

真一郎は雪をその腕で抱きしめ、雪もまた、真一郎の背に手を回す。

「雪にまた会えるなんて、本当に奇跡の起こる日だな…。
 愛しているよ、雪」

「私も愛しています。もう、離れませんから」

「ああ、俺も離さないさ」

雪を抱く腕に少しだけ力を込めながら、真一郎は囁く。

「雪……」

「真一郎さん」

真一郎と雪はそっと口付けを交わす。
会えなかった時間まで取り戻そうとするかのように、深く貪欲にお互いを求め合う。
と、その時、部屋の中から声がする。

「パパ、ママ、何してるの?」

「真雪ちゃん、声出したら駄目だって」

「そう言う耕介の声もでかいのだ!」

二人が振り向いた先では、寝ていたはずの住人たちが起きており、真一郎たちを見ていた。
その顔は、申し訳なさそうな顔をする者、赤くなっている者、笑みを浮かべているものとまちまちだった。
真一郎は誤魔化すように笑うが、その時、真雪と目が合う。
そして、その手に握られている物に目がいく。
それに気付いた真雪は、にやりと笑いながら、指で上を指す。
不思議に思いながら、真一郎は頭上を見ると、いつの間にいたのか、
真雪が手にした物と同じ物を持ったリスティが屋根の上にいた。
真一郎に気付いたリスティは、これまた真雪と似たような笑みを浮かべながら、片手を上げる。

「さあて、今夜はもう遅いからここまでにするが、また明日宴会だな!」

『おー!』

真雪の声に、一同から声が上がる。
そして、頭上から降りてきたリスティが付け加えるように、

「当然、上映会も兼ねてね」

二人に手に持ったビデオカメラを見せながら、そんな事を言う。

「ちょ、ちょっと、一体いつから見てたんですか!」

「そんなに見てないって。ねえ、真雪」

「ああ、ぼーずの言う通り。確か……」

真剣に考え始める真雪の肩をリスティがそっと抱き寄せ、真雪に話し掛ける。

『また会えて、本当に嬉しいよ』

それを受けて、真雪も普段からは考えられないような可愛らしい声で答える。

『私も同じです…』

『これからは、ずっと一緒だよな』

『はい』

リスティが真雪をその腕で抱きしめようとした所で、真一郎が大声を上げる。

「滅茶苦茶最初からじゃないですか!」

「ちっちっち」

真一郎の言葉に真雪とリスティは揃って指を立て、左右に振る。

「最初って言うのはな……」

『会いたかった……』

『真一郎さん、私もです』

真雪は泣き真似をしながら、リスティの胸に顔を埋める振りをする。
そして、二人揃って笑みを浮かべながら、真一郎と雪を見る。

「ここからを最初って言うんだ」

「さて、これから少し忙しくなるね」

「ああ。最初から編集しないとな」

「最初から編集って、ま、まさか」

「それは明日……いや、もう今日か?兎に角、お楽しみって所だな。さて、忙しくなりそうだし、もう一眠りするか」

真雪はそう言いながら、リビングを出て行く。
その後に続くように、リスティも出て行った。
他の面々も気を利かせたのか、それとも、気の毒に思ったのか真雪ちゃんを連れてリビングを出て行った。
残された真一郎は、未だ真っ赤になって固まっている雪を促し、リビングへと入る。

「まいったな。まさか皆起きていたなんて」

「は、恥ずかしかったです」

「確かに少し恥ずかしかったけど、あの言葉は嘘じゃないから」

「はい……」

二人は誰もいなくなったリビングで再び口付けを交わした。
折りしも今日は12月24日、クリスマスイブの出来事。





おわり




<あとがき>

遅くなってしまいましたが、設楽さんで22万Hitきりリクです。
美姫 「真一郎X雪でした。時代はリリカルという事よね」
うん。で、こんな感じになりました。
美姫 「ざからに関しては触れないでやってください」
ま、まあざからはああいった理由で大人しくしているという事で。
美姫 「にしても、えらく遅かったわね」
反省はしてます。
美姫 「反省だけなら猿でもできるって、昔あったわね」
懐かしいな〜。
美姫 「はいはい。ちゃんと反省してなさい。じゃあ、またね」





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