『リリカル恭也&なのは』






第20話 「時空管理局のお仕事」






アルフやユーノといった者たちが恭也やなのはの元へと訪れ、二人の日常は大きく変わる事となった。
違う世界の住人というだけでも驚きの事であるのに、その上に魔法と言う技術まで存在していたのだから、
恭也たちやなのはの驚きも一入であっただろう。
さて、ここで一つ問題。
違う世界の住人が、他の世界で好き勝手に振舞えばどうなるか。
恭也たちの世界では存在しない筈の魔法を使う者が、好き勝手に振舞えば。
当然、その社会にそれに対する防御や対策があるはずもなく、とんでもない結果が待っているであろう。
だが、そうはなっていない。
それは何故なのかという事である。



「エイミィ、この前の世界で発生した衝撃の解析は済んだ?」

「もうちょいだね。発生した瞬間の映像があるか、直後の魔力残滓が掴めていれば、もっと早かったんだけど」

黒を基調とした服を着込んだ少年が、キーを素早くタッチしていく女性へとそう声を掛ける。
エイミィと呼ばれた女性は、作業の手を休める事無くそう返すと、幾つかの映像を目の高さへと出現させる。
恭也たちの住む世界の技術ではないと分かるソレに、少年も当然のように目を移す。

「やっぱり、原因を探るのは無理そうか」

「諦めるのはちょっと早いんじゃないかな、クロノくん」

親しげに少年の名前を呼び、エイミィは更に指を動かしていく。
彼らが居るここはアースラと呼ばれる戦艦のブリッジである。
戦艦といっても、普通に海上を走る戦艦ではなく、次元間を走る戦艦である。
時空管理局・巡航L級8番艦。次元空間航行艦船アースラ。
それがこの艦の正式な名称であった。
時空管理局――これは恭也たちの世界で言う所の警察のような組織である。
他にも文化管理や災害救助など、多世界に渡って任務をこなす。
彼らが居るからこそ、魔法を悪用とする者が他世界で好き勝手に出来ないのである。
そして、この二人が所属するアースラは、今、
少し前に起こった本来なら魔法がないはずの恭也たちの世界で起こった謎の衝撃の解析を行っていた。

「魔法の存在しない筈のあの世界で、確かに魔法による戦闘を思わせるものがあったんだ。
 その時に衝撃が起こった。あの時、僕が現場に行ってなければ、そっちにすぐに行けたんだけど」

「まあ仕方ないって。あの世界に不法で侵入した形跡が見つかって、それの調査が任務なんだから。
 魔法戦闘が起こった所へと行ったのは、しょうがないって」

とは言え、衝撃が起こったと思われる現場でも魔法による戦闘の形跡が見つかっているのだが。
慰めるエイミィに感謝の言葉を投げ、クロノは視線をじっとモニターへと注ぐ。
エイミィの指が動くたび、画面の中の映像は目まぐるしく変化を見せる。

「うーん、衝撃の方はそう大きくはなかったみたいだけど、大きな魔力の放出があったみたいね。
 これは……、自分の意志というよりも暴走? 暴走に近いかもね」

「それ以上は何か分かりそうか」

「えっと、ちょっと待ってよ。どうも、独特の波動と言うか……。これをこうして……。
 ああー、駄目か〜」

波形のグラフらしき映像が数本現れ、一致するように重なる瞬間、その波形が乱れる。
エイミィは項垂れるように机に突っ伏し、クロノはそんなエイミィを励ますように軽く肩を叩く。

「まあ、そんなに落ち込まないで。もう一度やれば良いんだから」

「そうなんだけどね」

「ああ、でも、出来るだけ早くお願いするよ。取り返しのつかない事態になる前に」

「うぅ、分かってるよ」

再び手を動かし始めたエイミィを暫し見つめていたクロノであったが、
ここに居ても手伝う事もないと、この場を後にする。



 ∬ ∬ ∬



クロノがブリッジを後にして数時間後、エイミィはようやく解析を終える。
だが、やっとゆっくり出来ると思った矢先、それが間違いであると悟る。
寧ろ、慌てた様子でクロノと、この艦の艦長にしてクロノの母親であるリンディへと通信を入れる。
いつになく慌てたエイミィの様子に、二人は急いで駆けつける。

「たい、大変です、艦長!」

「落ち着いて、エイミィ。一体どうしたの」

「そ、それがですね。ほら、前の衝撃の解析をやってたんですけど……。
 あ、クロノくんはさっきまで居たから知ってるよね」

「いや、僕だけじゃなくて全員が知っているって。良いから落ち着いて」

慌てるエイミィを落ち着かせ、リンディは話の続きを聞く。

「それで、何か分かったの?」

「何かどころじゃないですよ。あれはロストロギアの暴走だと分かりました!」

エイミィの言い放った言葉に、リンディとクロノも驚きの表情を見せる。
ロストロギア、物によっては次元世界の崩壊さえも招きかねない代物である。
当然、管理局にとっても最優先で対処しなければいけない事項である。
エイミィの言葉を聞き、リンディは矢継早にクルーたちに指示を出し、後の事をクロノに任せると、
自分は本部へと連絡を入れる。
急に慌しく動き出す艦内。
だが、まだどんなロストロギアかも分かっておらず、現地へと赴いての調査とはいかなかった。

「とりあえず、エイミィは引き続き解析を続けてくれ。
 どんなロストロギアか割り出しを急いで。
 他の者は他世界からこっちに介入している者が居ないか調べてくれ。
 以前、衝撃のあった地、現地名で海鳴をこれ以降、常に監視下に。
 何かあればすぐに報告を。僕が出る」

クロノの指示に従い、ブリッジのあちこちも動き出す。
エイミィの斜め後ろに立ったまま、クロノは小さく嘆息する。
大事にならなければ良いけど。
そんな呟きをエイミィだけが聞いていた。





つづく、なの




<あとがき>

ようやく、クロノたちの出番が〜。
美姫 「でも、短いわね」
あ、あははは。まあ、今回は管理局の現状だけだし。
後、管理局の簡単な説明と。
美姫 「まあ良いわ。さっさと次が出るんならね」
あはははは〜。
美姫 「笑って誤魔化すな!」
ぶべらっ!







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