『リリカル恭也&なのは』






第39話 「執務官参戦」






まず最初に動き出したのはユーノであった。
ただし、それは九尾狐への攻撃ではなく周囲への被害や目撃者を作らないために結界を張るという行動であるが。
かなり広く、それこそ碑のあった林一体を覆うようにドーム状の薄い幕が展開される。

「これはあの時の?」

「結界です。これでこの中の事は外からは認識されませんし、被害も外には及びません」

病院での事を思い出して呟いた恭也の言葉に、ユーノが簡単に説明をする。
那美たちは結界の外という事も付け加え、恭也となのははその言葉に安心する。
改めて九尾狐と迎い合い、上空で両者が対峙する。
九つあるうちの一つの尾が恭也たちへと迫る。
その大きさだけでも充分な脅威となりうる尾が唸りを上げて襲い掛かるも、それを恭也たちは躱す。
バラバラに分かれてしまったなのはたちへと、恭也が念話を飛ばす。

≪大丈夫か≫

今の攻撃による安否を問い掛ける念話に、それぞれから大丈夫だと返ってくるのを聞き、恭也は次なる念話を飛ばす。

≪慣れない連携はかえって危ない。さっきのように、それぞれで対処する方が良いだろう≫

恭也の言葉に異論はなく、なのはたちもそれぞれに攻撃を始める。
なのはのディバインシューターが五つ、九尾狐の唯一色彩を持つ赤い瞳へと飛ぶ。
それらは眼前に持ち上げられた一本の尾に全て防がれる。
その上から、フェイトのフォトンランサーが襲い掛かるも九尾狐は躱そうともせず、その巨体でそのまま受け止め、
逆にフェイトへと尾の一つを薙ぐようにして振るう。
上昇してそれをやり過ごす合間に恭也とアルフがそれぞれ左右から九尾狐へと向かって接近する。
だが、その二人にも尾が行く手を阻むように立ち塞がり、二人へと襲い掛かる。
グラキアフィンと拳でそれぞれ迎い討つも、ウェイトの差からか二人とも完全に受け止め切れずに後退する。
そこへ追撃とばかりに更に尾が二人へと襲い掛かる。

「ちっ」

「ああ、もう! 何て堅さだい」

舌打ち一つと文句を共に吐きながらも尾からの追撃を躱す。
そこへなのはとフェイトの魔法がそれぞれ尾へと放たれ、追撃の手を緩ませる。
その間に離脱するも、九本ある尾は一本が本体を守るように眼前でゆらゆらと揺れ、
残る八本がそれぞれに二本ずつ襲い掛かる。恭也とフェイトはその機動力で逃げ回り、
アルフは両手で一本を受け止め、それを盾にするようにもう一本の前へと翳す。
なのはは避けようとするものの、やはり恭也やフェイトに比べて速さに劣る部分があり、
それを補うようにシールドで受け流す。
その肩に捕まりながら、ユーノがなのはへと逃げる場所、シールドを貼るタイミングなどを指示している。

≪コアとなる部分は恐らくあの紅い目だと思います。
 あそこさえ倒せれば、多分≫

≪逆に制御を失った祟りのみが残るという可能性は?≫

フェイトの念話に恭也が即座に応じる。
応じながらも迫ってきた尾をグラキアフィンで弾き、そのすぐ後ろから姿を見せる二つ目の尾を左腕の鎖で絡め取る。
動きを封じた尾へと迫りながら、恭也はグラキアフィンの刃部分へと意識を集中する。

【魔刃】

恭也の意図を汲み取ったグラキアフィンが即座にその魔法を発動させ、刀身に魔力薄く張り巡らせる。
纏わりついた魔力は刃の一部と化し、その切れ味を更に数段にも跳ね上げる。

≪祟りと呼ばれるものを取り込み、その上でこうして具現しているという事は既に融合していると考えられます。
 ですから、コアを破壊すれば祟りも消えてしまいます。
 後はいつもと同じようにジュエルシードを回収すれば≫

フェイトの言葉から久遠に祟りが戻ったりもしないと分かった恭也は思わず得られた幸運に感謝する。
勿論、その前に厄介な敵を相手にしなくてはいけなくなったという気分もあるが、
やはりあれだけ仲の良い那美と久遠をやはり戦わせずに済み、
寧ろ自分が危険な部分を引き受ける事が出来たという事の方が大きかった。
久遠と那美の事だから大丈夫だとは思っていても、ここで完全に祟りを消す事ができるというのは嬉しい限りである。
そんな事を思いつつ、そのままグラキアフィンを振り抜く。
中程から尾を斬り飛ばした恭也は、そのまま返す力でこちらへと軌道を修正した最初の尾も斬り捨てる。
斬られた尾の先は空に消えるように跡形も残さずに消え去り、半分の長さになった尾はそれでも恭也を襲う。

【翔矢】

迫る二本の尾へとグラキアフィンが続けざまに魔法を発動させる。
魔力で作られた細長い針のような物が十数本生み出され、尾へと襲い掛かる。
威力は大きくないが、その数と速さで尾が恭也へと届く前に先に攻撃を当てる。
その僅かな隙に恭也は尾から距離を開ける。

「これで後、七本」

尾が邪魔をして攻めれないと言うのなら、その尾を先に潰すとばかりに恭也は蠢く七本の尾を見遣る。
恭也の考えを理解し、フェイトたちも尾へと集中して攻撃すべく動こうとして、侵入者の存在に気付く。
ユーノの張った結界を一部だけ壊して中へと入ってきた人物へと自ずと全員の視線が集まる。
新たに現れた黒を基調とした服装の少年を警戒するフェイトやアルフ。
九尾狐もまた新たな侵入者を判断しかねたのか、警戒するように攻撃の手を一時的に止めて様子を見ている。
結果内へと侵入した少年――クロノはアースラとの通信を開き、何も問題がない事を確認すると、
この場に居る者たちを見渡す。
とりあえずは、なのはとユーノへと怒ったような呆れたような視線を向ける。

「まったく君たちは何をしているんだ。ジュエルシードを見つけたのなら、すぐに連絡をしてくれ。
 結界を張ったのは良かったが、僕まで入るのに苦労させられたよ」

「ごめんなさい。でも、お友達が取り込まれそうになってたから、すぐに助けなきゃって思って……」

「そうか。まあ、その辺りは後で聞くよ。さて……」

クロノはなのはの言葉にそっけなく返すと、今度はフェイトとアルフ、そして恭也へと視線を移す。

「君は何者なんだ。何故、ジュエルシードを欲する。それと、貴方は誰ですか。
 見たところ魔導師のようですが……」

「あ、クロノくん……」

なのはが説明する前に恭也がまず名乗る。

「高町恭也と言います。そっちのなのはの兄です。で、君は?」

「なのはのお兄さん? まさか、この世界に魔法はないはず……。
 あ、失礼しました。僕、いえ、私はクロノ・ハラオウンと言います」

恭也の言葉にクロノは疑問を抱くもすぐに名乗り返す。
その上で恭也が魔導師であるという事に疑問を抱く。

「まさか、あの時の……」

クロノが何か問い掛けようとするよりも早く、九尾狐の方に動きがあった。
尾を恭也たち目掛けて横薙ぎに振るってきたのである。
流石に距離が開いていた事もあり、即座にそれらを躱す恭也たち。
更に恭也は自分の前を通過して行った尾にグラキアフィンの切っ先を向ける。

【翔矢】

即座に恭也のやりたい事をこれまた察し、デバイスが魔法を発動させて通り過ぎた尾へと攻撃を放つ。
痛くも何ともないのだろうが、数だけは多いそれを小煩く思ったのか、
尾は刀を返すように翻り恭也へと襲い掛かる。それこそ恭也が待ち望んでいたとも分からず。
自分の頭上から振り下ろされる尾を静かに見遣りながら、恭也はグラキアフィンを下から上へと振るう。
先ほど二本の尾を斬り飛ばした時同様、またしても尾が途中から切断される。
流石に危険を察知したのか、この戦いで初めて九尾の狐は後退して見せる。
その様子になのはたちがデバイスを構えるも、クロノは呆然としたように恭也を見つめる。

「さっきの魔法……。恭也さんと仰いましたよね。
 もしかして、フェイト・テスタロッサの関係者ですか」

「関係者というか、協力者だがそれがどうかしたのか?」

「どうかしたって……。ジュエルシードがどんなものか知っているんですか!
 彼女たちが何をしているのかも!」

「よくは分からないが何か力を持った石だろう。
 そして、フェイトたちはそれを集めている。その手伝いを俺がしている。
 ちゃんと理解しているが」

平然と返す恭也にクロノはちゃんと理解していないと思ったのか、それとも利用されているとでも取ったのか、
兎も角、魔法を知らない世界の住人である恭也に説明するよりもとフェイトへと再び向かい合う。

「君は彼を利用しているのか」

「失礼なことをいうな! 恭也は自分から協……」

クロノの言葉に激昂してアルフが何か言いかけるも、フェイトはそれを止めるようにアルフの前に手を掲げる。
管理局に捕まったとき、恭也が協力していたというよりも利用されていたとした方が罪が全く違うから。
それを察したアルフは文句を飲み込み、ただクロノを睨みつける。

「そもそも、何の目的でジュエルシードを集めるんだ。
 あれの力はそう簡単に制御できるものでもないし、ましてや……」

尚も何か言おうとするクロノにアルフはやはりすぐに忍耐を切らす。
というよりも、フェイトが完全に悪いとして話すクロノが気に入らないといった所だろう。

「ごちゃごちゃ煩いよ! 大体、あたしたちだって何で集めているのかなんて知るか!
 知りたければプレシアに聞け!」

「アルフ!」

すぐにフェイトが窘めるが、クロノはアルフの口から出た単語に眉を顰める。

「プレシア? それはもしかしてプレシア・テスタロッサのことか。
 一体どういう関係なんだ。まさか本当に娘なのか?
 いや、プレシアに娘は確かにいたけれど……。それに名前が。
 いや、単に記録にないだけで二人目の子供なのか?」

行き成り一人でなにやら考え出したクロノに困惑した顔を見せるなのはとユーノ。
対して、恭也とフェイトは九尾狐へと再び注意を移す。
本来ならこのようにのんびりと話をしている暇などないはずである。
しかし、九尾狐は一向に攻撃を仕掛けてくる様子はない。
その事を怪訝に思いつつ眺めていると、九尾狐は切れた尾三本を前面へと持ってくる。
何をするのかと構えた恭也たち三人であったが、特に攻撃してくる意志は感じられない。
クロノやなのはも九尾狐に注意を移すが、やはり攻撃の気配は感じられないのかやや戸惑いを見せる。
と、不意に尾が灰から黒に変わったかと思えば、千切れたはずの尾が元の形に再生する。
再生し終えた尾は再び灰色へと戻り、そこには既に他の尾とも区別がつかない完全な形の尾が。

「再生するのか……」

「みたいですね。どうします。これだと幾ら尾を攻撃しても無駄に……」

「少し良いか、フェイト・テスタロッサ」

戦いの最中だというのはクロノも充分理解していたが、それでも問わずにはいられず、
また攻撃してくる気配が今のところはない事から、クロノはフェイトへと再び声を掛ける。
チラリとクロノを一瞥し、九尾狐に注意をしながらも横目で続きを促す。

「アリシアと言う名前に聞き覚えは?」

クロノの発した言葉に、しかしフェイトはただ怪訝そうな顔を見せるだけである。
それがもし演技ならとんでもない女優という事になるのだろうが、クロノが見る限りそうではないと思われる。
つまり、フェイトにとってその名前は聞いた覚えがないという事であろう。
だが、それは正直な話どうでも良い事であった。
クロノにとって大事なのはジュエルシードとフェイトたちの確保というこの二つなのだから。
だからこそ、クロノはフェイトへと投降するように言い募ろうとして、その場を飛び退く。
考え事に意識を囚われていてもそこは執務官といった所だろうか。
そもそも、戦いの最中に考え込むのはどうかという話もあるのだが。
八つの尾が一斉に恭也たちに襲い掛かる。
それらを躱し続ける恭也たちを紅い目に映しながら、九尾狐は一つ甲高い鳴き声を上げる。
それに応えるように、九尾狐の周囲に九つの蒼白い球形のものが生まれる。
再び鳴き声を上げると、球形だったものは帯状に伸びて雷となる。
久遠が放つ雷よりも遥かに大きな、空気を振るわせるような雷にギリギリでの回避はできずに大きく回避する。
九本の雷が放たれた後もまだ空気中に名残のように静電気みたいなものが感じられる。
その威力に直撃したらただでは済まないと、恭也は先程よりも更に注意して九尾狐の動きに気を配る。
クロノもそれを目の当たりにして九尾狐へと集中すべく手にしたデバイス――S2Uを握り締める。
こちらへと向かってくる尾へとS2Uを向ける。

「ブレイズキャノン!」

尾がクロノに当たる瞬間、S2Uから放たれた魔法に尾の方がそのまま吹き飛ばされる。
が、やはり尾は再び再生してみせる。再生するのに多少の時間は掛かるみたいだが、
その間にも他の尾がコアと思しき個所への接近は許さないと立ちはだかる。
思わず舌打ちしそうになりつつもクロノは近くに来たフェイトを捉え、ついつい口にしてしまう。

「今はあれの方が優先だけれども、これが終わったら終わったら僕と一緒に来てもらうよ。
 詳しい事情が聞きたい。それと恭也さん貴方にも。断るようなら、今ここで君から先に……」

言ってフェイトを捕らえる素振りさえも見せるクロノへと、恭也が一喝する。

「現状を把握しろ! さっき自分が言った事だろうが!
 何を優先すべきかは分かっているのだろう。こいつをこのままにしておけば、どうなるのか分からないぞ。
 管理局がどういう所なのかは知らないが、まずは力なき者たちを護るべきじゃないのか!」

「……確かにその通りです。今のは僕が悪かった」

恭也の言葉にクロノは自らの行動を思い返して顔を顰めると、すぐさま素直に非を認めて謝罪する。
その間にも九尾狐の尾が迫るが、それは魔法で容易く撃退する。
ふと周囲を見れば、一番遠くにいるなのはの所へは尾の攻撃は殆どいっておらず、
偶にくるものはユーノがシールドで防いでいた。
肝心のなのはは、そこから砲台のように尾を撃つ。
ただし、その魔法はディバインシューターなどの発動が早くて威力の低いものばかりで、
それだけでは尾を破壊するまでにはいっていない。
では何をしているかと言えば、アルフやフェイトが尾を迎撃している際に死角から迫る尾を牽制しているのだ。
尾の破壊まではいかなくても、少しだけ軌道を逸らしたり、
また尾に魔法が当たる際の爆発で死角から迫った尾にフェイトたちが気づく事が出来る。
だから、威力よりも発動の早いものを使用しているのである。
あちらへのフォローはいらないと判断したクロノは、今度は恭也へと視線を移す。
彼があの時邪魔をした者ならば、そのランクはCである。
となれば、魔法に出会って間もない事もあるしフォローが必要かもしれないと。
だがクロノが移した視線の先で、恭也は迫る二本の尾を間髪置かずに撃破していた。

「デバイスを武器として使っているのか!? まさかアームドデバイスなのか。いや、しかし……」

思わず恭也の持つデバイスに注意がいってしまうが、その隙を付くように尾が再び迫るのを見てすぐに切り替える。
尾を魔法で破壊し、もう一度恭也を見る。
機動力で言えばフェイトと同じぐらいか少し劣るというところか。
だが、その認識している空間が出鱈目に広いというのが分かる。
目で見ているのではなく、どういう理屈か、それとも魔法によるものなのか、
兎に角、恭也は自分に迫ってくる物を全て認識しているのである。
だから、なのはもあまり恭也へとフォローは入れていないのだろう。逆に邪魔にもなりかねないと。
目で捉えきれない程速いと言う訳ではない。けれども、実際に捉えるのは難しいのはその機動の技術だろうか。
一つの動きが次に繋がっている為に、驚くほどに無駄がないのである。
これならフォローはいらないと判断し、クロノはアースラへと通信を入れる。

≪エイミィ、彼は本当にCランクなのか?≫

無駄口を叩く暇はないのだが、やはり気になってしまい尋ねる。
アースラの方でも恭也たちの姿を捉えているのだろう、即座に答えが返る。

≪うん、間違いなくCランクだよ。
 正確に知るにはやっぱり検査しないと難しいけれど、今までの観察から魔力量はCに間違いないよ≫

≪なら、あの動きは? しかも、周囲全てを把握しているみたいなんだが。
 しかも、あの尾はちょっとやそっとの魔法じゃ全く傷すら付かないんだ≫

≪あー、その事なんだけれどね。非常に言い難いんだけれど……。
 彼、飛行魔法とあのデバイスの刃部分に纏わりつかせている魔力以外は魔法、使ってないのよ。
 多分、あの刃にある魔法が剣の切れ味を増やしているとは思うんだけれどね〜。そんな魔法聞いた事もないし……≫

エイミィの言葉にもう一度恭也を見て、それから確認するように更に問う。

≪本当に魔法による補助はないのか?≫

≪間違いないって。正真正銘、魔法の補助なし。単純な体術なんだと思うよ。
 つまり、魔力量だけから測定されるランクはC。
 けれども、実際の戦闘力を加味すれば今のところは不明だけれど、多分Aランクは超えるんじゃないかな≫

エイミィの言葉にクロノは何とも言えず、ただ魔法なしでランクを何段も跳ね上げる恭也を見つめる。
必ずしも魔力は遺伝するものではないと分かっているクロノだが、
やはり兄妹でここまで魔力量に差のある二人を知らず交互に見てしまう。
だが、もしこの二人がやり合ったとしたら……。そう考えた時、結果は明らかであった。
どういう訳か知らないが、恭也のほうが圧倒的に戦い慣れしているのである。
と、またつまらない事を考えている自分に気付き気を引き締めると、クロノは二本の尾を同時に破壊する。
何度も尾を破壊し、斬り飛ばしとするが再生が思った以上に早い上、

「避けろ!」

恭也の声が届くと同時、視界を蒼白い光が埋め尽くし、体を空気を振るわせる震動が続く。
九つの雷が時折、こうして天をも斬り裂かんとばかりに放たれる。
その直後に恭也は九尾狐へと接近するも、
戦いが始まってから常に紅い目の眼前で防御のみに専念していた尾が立ち塞がる。
これまでと同じように斬り掛かるが、これまでと違い中ほどまで進んだ所でグラキアフィンの進行が止まる。
尾に食い込む形でその動きを止められた恭也へと残る八本の尾が襲い掛かる。
それをフェイト、クロノ、アルフ、なのはが吹き飛ばす。
その間にグラキアフィンを引き抜く恭也へと、その尾の側面から刺のようなものが生えてきて襲いかかる。
下がる恭也と他の尾を相手にするクロノたちへと今度は小さな雷が幾つも襲い掛かる。
威力は大きくはないが、今までの雷のように溜めが全くなく放たれた雷に反応できたのは恭也とフェイトのみ。
二人は大きく旋回して回避し、反応の送れた他の者たちはシールドで防ぐ。
再び距離を開けた両者が対峙する中、またしても九尾狐の前に九つの球体が作られる。
次に来る攻撃に備え、全員が回避するために神経を集中させる中、雷ではなく尾が振るわれる。
前方から扇状にこちらを包み込むかのように向かってくる六本の尾。
そして、その尾ごと撃ち抜くように特大の雷が放たれる。
逃げ場は後ろのみだが、雷が真っ直ぐに向かってくる以上は後ろには下がれない。
そのまま直撃するかと思われたが、恭也たちは既に動いていた。
尾が広がった瞬間に恭也は咄嗟に下へと逃げるように指示を出していた。
勘とも呼べるべきものが働き、恭也はそれに従って動いたのだが、
他の者たちが動いたのはそれが恭也の発した言葉であったからだろう。
アルフは何度も恭也と共にジュエルシードを集めていたからこそ、こういう時の恭也の言葉を信じているし、
フェイトやなのはに関しては恭也自身をかなり信用している故に。
クロノに関しては、こちらも勘のようなものが働いたためである。
故に雷が放たれた直後に恭也たちは下にある尾へと攻撃を繰り出し、そこから射程範囲外へと逃れる事が出来た。
とは言え、近付こうにも一つだけやたらと堅い尾が一つに、攻撃用の尾が八つ。
しかも、それらは無限に再生するのである。更には二種類の雷。
簡単にコアへと近付く事も出来ない上に、遠くからの攻撃は全て尾で防がれる。
流石に恭也たちにも疲れが見え始める。

「ん?」

そんな中、クロノの目が二本の尾へと向かう。
先ほど自身の雷で吹き飛ばされた六本の尾は既に再生を終えているが、その二本だけは未だに再生していない。
だからこそ、先ほどの攻撃では六本だったのかと思いつつ、可笑しな点に気付く。

(何故、あの二本だけ再生していないんだ)

そう思いつつクロノが凝視する中、尾は思い出したかのように再生を始める。
再生にも限界があるのだろうか。
だとすれば、まだ光明があるが。それとも他に理由があるのか。
クロノはあの二本と他の六本の違いを考える。
その間にも六本の、いや八本に回復した尾が迫ってくる。
それらを退けながら、クロノはこの事態を打開するべく考えを巡らせるのだった。





つづく、なの




<あとがき>

いやー、バトルは難しいな。
美姫 「本当に下手っぴ〜」
うぅぅ。もっと上手くなるように努力せねば。
と、反省はとりあえず置いておいて。
美姫 「強いのよね」
まあ、そのつもりなんだが。
美姫 「いや、だって簡単に尾が壊れるから」
いやいや、一応一定レベル以上の魔法でのみ破壊されてるんだよ。
現になのはのディバインシューターじゃ破壊は出来てないでしょう。
美姫 「分かり難いわよ」
グサグサ……。と、ともあれ、次回は決着がつくのか!?
美姫 「それじゃあ、また次回でね〜」
ではでは。







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