『リリカル恭也&なのは』






第45話 「そうして全ては動き始める」





恭也の腕に抱かれながら、なのはもフェイトも疲れよりも何処か晴れ晴れとした表情を覗かせる。
約束だからと恭也がなのはへとジュエルシードを手渡そうとし、
アースラの艦内にも安堵したような空気が流れる中、エイミィがその空気を霧散させるように鋭い声を上げる。

「結界外に大きな魔力あり! 目標は……なのはちゃんたち!?」

エイミィが素早く指を動かして割り出すと同時、結界を破るように大きな雷が五つ落ちる。
一つ目は結界が耐え切るが、続けて落ちた二つ目で結界が壊れ、二本は海上に、残る一本が恭也たちに落ちる。
疲弊しきっているなのはとフェイトを庇うように腕に抱き、恭也はシールドを展開する。
しかし、そのシールドもあっさりと打ち破られ、恭也たちに雷が落ちる。

「がっ! くっ……」

恭也はそれでもなのはとフェイトを庇い、二人を突き飛ばす。
疲れていた二人だが何とか自力で飛ぶも、目の前で雷に打たれた恭也は気を失い落下する。
駆け寄ろうにも二人に素早く動くだけの力はなく、恭也は海面へ。
それをアルフが横から攫うように飛び来て、襟を口で咥えて救出する。
そのまま浮上してフェイトの隣に並ぶと、睨むように天に向かって叫ぶ。

「プレシア!」

アルフの言葉に応えるように、口元に酷薄は笑みを刻んだプレシアの映像が空に映る。

「ふんっ、フェイトの犬じゃない。
 もうとっくの昔に何処かでくたばったと思ってたけれど、まだ生きていたのね」

「はん、お生憎さまだね」

「別にどうでも良いわ。今、大事なのはジュエルシードよ。
 ジュエルシード集めで全く役に立たないばかりか、唯一の取り柄である魔法で負けるなんてね。
 本当に役立たずね」

フェイトを見て吐き捨てるように呟く。
その言葉になのはが怒った顔でプレシアを見上げるも、フェイトは逆に俯いてしまう。
そんな二人の態度など歯牙にもかけず、プレシアが何かを呟けば、
なのはの手元にあったジュエルシードが空に映るプレシアの方に向かって飛んでいく。

「あっ」

気付いて手を伸ばすも遅く、ジュエルシードは既に空高く、なのはの元から遠く離れて行く。
どうやら、なのはとフェイトの戦いを何処からか監視していたらしい。

「全てのジュエルシードが揃う前に邪魔が入ったけれど、最低限必要な数は揃ったわ。
 これで貴女はもう用済みよ、フェイト」

「えっ……?」

プレシアの言葉の意味が理解できない、いや、したくないのか、その口からはただ疑問の言葉が零れる。
聞き間違いであって欲しいという願いの篭った声に、しかしプレシアは無情なまでに冷たく淡々と返す。

「聞こえなかったのかしら? 目的は達成できたから、もう貴女はいらないって言ったのよ。
 そういう事だから、消えて頂戴。その姿で、その顔で、その声で存在されるのはもう我慢できないの」

言うなりフェイトへと向かって落ちる雷。
その威力は先程のものよりも大きく、呆然となるフェイトへと向かう。

「そんな事させるかぁ!」

人型に変じたアルフが恭也を片腕に抱いたまま、残る腕を使って雷に拳を打ち出す。
一瞬だけ雷を競り合うも、すぐに押され始め、そのままフェイトと一緒に雷の餌食になりそうになる。
当たる瞬間、二人の前にかなり強力な障壁が展開され、プレシアの攻撃を防ぐ。

「ユーノくん!」

突然の事態に立ち尽くしていたなのはは、その障壁がユーノの張ったものだと分かるとそちらを向く。
なのはの傍にやって来ていたユーノが手を前に突き出し、なのはの予想が間違っていないと教える。
が、その顔はかなり厳しそうで、汗を垂らしながらユーノはなのはに念話を飛ばす。

≪あまり長く持たない。早くあの場から離れるように伝えて≫

近くにいるなのはにしか念話を飛ばせないぐらいに余裕のないユーノを見て、
なのははその旨をフェイトたちに伝える。
まだ呆然となっているフェイトを見て、アルフはフェイトも抱えてその場から立ち去る。
直後、ユーノの障壁を貫き雷が海面に落ち、水柱を立ち昇らせる。
視界が蒸発した海水により発生した霧で霞む中、プレシアの攻撃が再び襲い掛かる。

「何でこんな事をするんですか! フェイトちゃんは娘なんでしょう。
 自分の子供にこんな酷い……」

説得するようになのはが悲しげに叫ぶが、逆にその言葉によってプレシアは激昂する。

「娘? 誰が誰の娘だというの!? 私の娘は先にも後にも一人だけ。
 アリシアだけよ! そんな役立たずの人形を娘だなんて言わないで!」

「人形だなんて……。どうしてそんな酷い事を平気で言えるんですか!」

そこに居る訳ではないと分かっているが、なのはは空に映るプレシアの映像にレイジングハートを向ける。
その顔は珍しく本気で怒っており、手は激しく震えている。
言い合う二人を視界に収めながらも、力ない瞳で、フェイトはプレシアに縋りつくように、
ふらふらと映像に向かいながら手を伸ばす。

「お母さん……。私が役に立たないから怒っているの?
 全部のジュエルシードを奪ってきたら、そしたら……」

そんなフェイトの様子を痛ましそうに見るユーノと、引き止めるようにフェイトの前に立ち、
腕を伸ばして行く先を防ぐアルフ。

「フェイト、もう良いじゃないか。あんな奴の言う事なんか聞かなくても。
 あたしが居るだろう。だから、逃げようよ」

今にも泣き出しそうな顔でフェイトを見るが、フェイトは小さく首を横に振る。

「私が頑張ったら、きっと元の優しいお母さんに戻ってくれるはずだから……」

頑なに過去の幸せだった日々を思い返すフェイトに、プレシアは更に非情に告げる。

「人形にお母さんと呼ばれたくないと何度言えば分かるの!
 こんな事なら、アリシアの記憶なんて与えるんじゃなかった」

投げ掛けられる言葉にフェイトは瞳を見開く。
どういうことか問い質したくて、けれども聞くのが怖くて声が出ない。
そんなフェイトの表情を見て、プレシアは少しだけ溜飲を下げたのか落ち着いた声で語り出す。

「そっちの白い子がさっき怒ったけれど、人形を人形と言って何が悪いんだろうね?
 フェイト、貴女は本当にお人形なのよ。貴女の記憶はアリシアのもので、偽りの記憶。
 貴女は……」

本能的に続きを聞きたくなくて知らず耳を塞ぐ。
だが、そんなフェイトを嘲笑うかのように、プレシアはその一言を放つ。

「アリシアの遺伝子を使って作り上げた人造生命体、アリシアの出来そこないなのよ。
 プロジェクト『F.A.T.E.』、名前でさえも意味のないただのコードネーム。
 役に立つ間は利用するけれど、役に立たなければ捨てるだけ。
 そして、目的が達成した今、もう貴女はいらない。
 でも、その姿で存在されるのが我慢できないの。だから、消えて欲しかったのだけれど……。
 それももう良いわ。貴女の存在を消すために力を消費するのも馬鹿らしい。私はこれから忙しくなるの。
 その犬の言うように、何処へなりと行けばいいわ」

「あ……あ、……わあぁぁぁっ!! ────────っ!!」

声にならない絶叫を上げ、フェイトはただ己の身体を両腕で抱き締める。
目からは涙が溢れ、身体を痙攣させ、それでも絶叫は止まらない。
カラカラに乾いた喉で止まる事なく吐き出される絶叫に、喉を痛めたのか僅かに血が滲み出す。
それでもフェイトの絶叫は止まらない。

「フェイト! フェイト!」

アルフがフェイトに抱きつき、必死に呼びかける。
まるでこのままではフェイトが壊れてしまうとばかりに。
実際、フェイトの心は既に壊れかけている。それが分かるから、アルフは必死にフェイトを呼ぶ。

「貴女だけは許せない!」

既につきかけている魔力を集め、なのははプレシアへと魔法を放つ。
だが、元々映像であるプレシアに当たる事無く、それはプレシアを突き抜けていく。
特に何の感慨もなく壊れていくフェイトを、それこそ道端の石でも見るように見詰め、プレシアの映像は消える。
プレシアの映像が消えた後をただじっと見詰めていたなのはであったが、
アルフのフェイトを呼ぶ声にフェイトの元へと向かう。
ユーノに手伝ってもらいながら、ゆっくりと近付くなのは。
その視線の先ではアルフが泣きながらフェイトに抱き付く。

「フェイト、しっかりして! このままじゃ……。
 恭也、恭也! 何とかしてくれよ! お願いだから!」

意識を失っている恭也にまで助けを求めるアルフ。
と、叫び続けていたフェイトの声が止まる。
安堵の表情でフェイトを見るも、フェイトは泣きそうな顔でアルフの腕にいる恭也を見詰める。

「……私の所為で恭也さんまで。
 人形の私に協力なんかしたから……」

「フェイト! 違う! フェイトは人形なんかじゃない!
 あのクソババァが嘘を言ってるんだ!」

アルフの言葉にもフェイトは何の反応も見せない。
よく見れば、その瞳には光はなく何処か虚ろである。
絶叫こそ収まったが、寧ろ今の状態の方が危ういのではないかと思わせるほどに、顔からも生気が消えている。
それこそ、プレシアが放った言葉通り、人形のように。
その変化を近付きながらただ見ているしか出来なかったなのはが、ユーノに支えられながらも近付く。
だが、フェイトの瞳はやはり何も映さず、近付いたなのはにも反応を見せない。

「お兄ちゃん……」

知らずその唇からどうしたら良いのか分からず、助けを求めるように恭也を呼ぶ声が零れる。
だが、恭也の目は閉じたままで意識も戻っていない。
なのはとアルフが懸命にフェイトを、恭也を呼ぶ。
その願いに応じるように、恭也の胸元から青い輝きが零れ、それは恭也だけでなくフェイトも包み込む。

「まさか、最後のジュエルシード!?」

突然の事に驚くアルフたちの前で、恭也の傷が癒えていく。
しかし、その意識は未だ戻らずに瞳は閉じられたまま。
訳が分からないという顔を見せるアルフたちを余所に、ジュエルシードは役目を終えたとばかりに恭也の胸に落ちる。
それを拾い上げつつなのはがフェイトを見れば、いつの間にかその瞳は恭也と同じように閉じられ意識を失っていた。
これが心を閉ざした事によるのか、単に疲れからくるものなのか。
その判断が出来ずにアルフとなのははただ呆然と立ち尽くすしかなかった。
そこへクロノがようやく姿を見せる。

「お疲れさま……と、素直には言えない状況みたいだね」

遅くなった事を詫びながら、クロノはアルフへと視線を移す。

「出来れば君たちにもアースラに来て欲しいんだけれど。
 詳しい事情も聞きたいし、何よりその子を休ませるのが先だと思う」

クロノを警戒するアルフであったが、恭也とフェイトの二人を抱えていては逃げれないと悟ったのか、
大人しく頷く。だが、すぐにその瞳も鋭く睨みつけると、

「ただし、フェイトに何かしたらただじゃすまないからね」

「約束しよう。僕らとしてもちょっと状況を整理したい所なんだ」

ひとまずはクロノの言葉を信じ、アルフは大人しくアースラに収容される事にするのだった。



 ∬ ∬ ∬



あの後、フェイトと恭也を医師たちが診察し、恭也の方は単に意識がないだけだと診察される。
すぐに目を覚ますだろうと。
その事にとりあえずほっと胸を撫で下ろすなのはとアルフであったが、
すぐに説明がフェイトの事に映ると表情を引き締める。
恐らくは精神崩壊の手前まで行っているであろう事。
それを守るために、身体が脳が深い眠りに付かせたのではないかと。
それらは推測であったが、告げる医師の口調には迷いがなく、
目が覚めたとき、どうなるのかは分からないとも付け加える。
とりあえずは個室へと場所を移し、今もフェイトは深い眠りについている。
その隣には恭也が寝かされていた。
初めは別々の部屋にするつもりであったのだが、いつの間にかフェイトの手が恭也を掴んでおり、
恭也の手もまたフェイトにしっかりと繋がれており、離そうとするとフェイトがむずかり、
眉間に皺を寄せて苦しそうにするので、そのままにする事にしたためである。
そんな二人の傍から離れず、アルフとなのははずっと言葉も発せずにただ二人を見詰める。
なのはも魔力を殆ど使い切って疲れているのに、それでもフェイトを案じて。
その事に感謝を抱きつつ、アルフは何もでない自分に対する苛立ちや、プレシアに対する怒り、
フェイトの身を案じる不安な気持ちなどが入り混じり、ぐちゃぐちゃになった感情を持て余すように、
ただ不安に揺れる瞳で、それこそ彫像のようにじっと身動ぎもせずにいた。
そんな奇妙な空気を扉の開く音が破る。
だが、アルフはそれでも動かず、視線は二人に注がれたまま。
代わりという訳ではないが、その音になのはが振り返るとそこにはクロノが。

「アルフといったか。ちょっと良いかな?」

「ああ、逃げも隠れもしないよ。ちゃんとフェイトの事を診てくれたみたいだしね」

言って立ち上がると、恭也とフェイトをもう一度だけ見詰め、アルフは部屋の外へと出る。
部屋を出る際、クロノはなのはへと視線を向けてどうするのかと尋ねてくる。
なのはもまた恭也とフェイトを見て、ここにいても何も出来ないと思い、
それでも傍に居たいという思いを振り切り、アルフの口から今回の件を聞くために部屋を出る。
緊張しているのか、表情の硬いなのはの気持ちを解すようにユーノが声を掛ける。
フェレットの姿でなのはの肩に乗っているユーノに何とか微笑み返すと、なのはは元気を出すためか、
握りこぶしを作る。

「うん、大丈夫!」

後ろで展開される光景に知らず頬を緩めつつ、クロノに先導されて一つの部屋に入る。
そこにはリンディが既に来ており、アルフたちに席を勧めてくる。
クロノはリンディの隣に座り、自然と対面にアルフとなのはが座る。
重苦しい沈黙が降りる中、まずリンディが自分たちが調べたアリシアとプレシアに起こった事を話す。
その後、アルフに話してもらうために口を閉ざしてアルフが話し出すのを待つ。
誰もアルフを急かす事無くただ静かに待つ。
ようやくアルフは口を開き、今までの事を話し始める。
プレシアのフェイトに対する扱いには流石に全員が顔を顰めるも、話の腰を折らずにただ耳を傾ける。
ようやく全て話し終えたアルフは大きく息を吐き出す。

「……それがあたしの知っている全てだよ。
 プレシアの奴がどうしてジュエルシードを欲しがっているのかは、あたしもフェイトも知らない。
 ううん、知らされてない。でも、そんなのはどうでも良い。
 ただ、あいつはフェイトを傷付けた。絶対に許さない!」

激昂するアルフを宥めつつ、クロノは話し掛ける。

「君の気持ちも少しは分かるし、プレシアが何を企んでいるにしてもジュエルシードは回収しないといけない。
 その点では僕たち管理局と君の利害は一致しているとも言える。
 だから、プレシアの居場所を教えてくれないか?
 今、エイミィたちが総出でプレシアの居場所を先程の魔法から逆探知している所なんだが、
 君が教えてくれるというのなら、そちらの方が遥かに速いからね。
 何を企んでいるにせよ、止めるためには時間との勝負になる」

「……知らないんだよ。嘘じゃないよ。ここに来て嘘なんて言うもんか。
 ただ、プレシアの居場所は時の庭園と呼ばれる場所だってのは分かっている。
 けれど、それ以外は分からないんだよ。フェイトなら知っているけれど……」

「そうか。なら、当面はプレシアの居場所を探す事に全力を尽くすしかないか。
 見つけ次第、僕たちは乗り込む事になるけれど、君はどうする?」

「あたしも行くよ。フェイトの傍に居たいけれど、何も出来ない。
 だったら、せめてフェイトをあんな目に合わせたプレシアの奴をぶん殴らないと気がすまないからね。
 今までフェイトにしてきた事を何倍にもして返してやる!」

右の拳を左掌に叩きつけ物騒な事を口にするアルフ。
だが、この場でそれを咎める者もなく、クロノとエイミィは再び管制室へと戻り、
アルフとなのはは恭也とフェイトの眠る部屋へと戻る。
一応、なのはがアルフを監視するという名目で、艦内をある程度は自由に歩き回れるアルフであるが、
やはりフェイトの傍から離れる気はないらしく、他の所には足を運んでいない。
なのはは監視という名目上、アルフと同じ場所に付いて行かなければならないが、
恭也とフェイトが気になるのはなのはもまた同じであったから、ある意味丁度良かったとも言える。
寧ろ、恭也とフェイトを同じ部屋に寝かせると決まったからこそ、リンディがこうしたのかもしれない。
まあ、アルフもなのはが監視という事なら納得するというのもあるだろうが。
二人は再び未だに眠りつづける恭也たちの元に座り、ただ時間を潰す。
が、なのははやはり疲れが出たのか、うとうとしていたかと思ったら、いつの間にか完全に寝入ってしまう。
起こさないように気を付けつつ、アルフはその身体にそっと余っていた毛布を被せる。
フェレットとなっているユーノもなのはの足の上で丸くなって眠っている事に気付くも、
こちらは何もかけなくても良いかと判断して放って置く。
どのぐらいの時間が経ったのかアルフには分からないが、なのはが目を覚まし、
自分に掛けられた毛布にお礼を言ってくる。
それに照れて返していると、再び扉が開いてクロノが姿を見せる。

「プレシアの居場所が分かった。どうする」

答えなど分かりきっているが、それでも一応確認する為に尋ねるクロノ。

「勿論、行くさ」

「わ、わたしも行きます!」

言いながら立ち上がった所為で、なのはの足の上にいたユーノはそのまま床に落ちる。

「ああ、ごめんユーノくん!」

「いや、大丈夫だから」

言ってなのはの肩によじ登り、ユーノも付いて行く意志を伝える。

「分かった。それじゃあ、こっちに」

クロノは足早に部屋を後にする。
その後に続こうとして、二人は揃って足を止める。
自然と同じ行動――恭也とフェイトの傍に近付いてしゃがみ込むと、その手を握り締める。

「恭也、本当にありがとうね。フェイト、行ってくるよ。
 帰ってきたら、もうプレシアの事なんか気にしないで恭也と三人でまた遊ぼう。
 あんな奴の言った事なんか気にしないで。フェイトはフェイト、世界でたった一人のあたしのご主人様だよ」

「お兄ちゃん、行ってくるね。お兄ちゃんが守ろうとしたフェイトちゃんのためにも絶対に負けれない。
 確かに、アリシアっていう子の事はとっても悲しい事だったのかもしれない。
 でも、フェイトちゃんはちゃんとここに居るのに、なのにそれを見ようとしない。
 難しい事は分からないけれど、プレシアさんは間違っていると思うから。
 わたしにも出来る事があるから。だから、行ってきます。
 フェイトちゃん、帰ってきたらいっぱいお話しようね。
 ジュエルシードの事だけじゃない。今までの楽しかった事や、お兄ちゃんとの事、……そしてこれからの事。
 まだわたしはフェイトちゃんに何も聞いてないし、わたしもお話してないでしょう。
 だから、帰ってきたらいっぱいいっぱい。
 そして、お兄ちゃんとアルフさん、そこにわたしも入れてもらって、一緒に色んな事をしようね」

「「それじゃあ、いってきます」」

揃って立ち上がりながら、二人は同時に同じ言葉をもう一度、恭也とフェイトに向かって告げる。
再びここに戻って来た時、その時は皆が笑顔で居られるように願いを込めて。
なのはとアルフが立ち去り、再び静寂に包まれた電気も消えた部屋の中、
恭也とフェイトの繋がれた手が、先程まで握られていた温もりを伝えるように、
ぼんやりと淡く小さな青い輝きを灯すのだった。





つづく、なの




<あとがき>

いよいよ時の庭園へ。
美姫 「なのに、恭也とフェイトは眠ったまま」
さてさて、どうなるのか!?
ってな所で次回です。
美姫 「次こそ早めの更新を目指して!」
が、頑張ります。
美姫 「それじゃあ、また次回でね〜」
ではでは。







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