『リリカル恭也&なのは』






外伝 何でもない一日






お茶とお茶請けを用意して縁側に座った恭也は、いつもなら見かけるネコの姿がないことに気付く。
いつもなら、この時間には何匹かの猫の姿を見かけるのだが。
居ないとなると、何故か無性に構いたくなるのは人の性なのだろうか。
そんな詮無いことをつらつら考えつつ、恭也は一人お茶を啜る。
と、そんな恭也を遠慮がちに眺めている視線に気付く。
アルフやなのはと出掛けていたはずのフェイトがいつの間にか戻ってきていたらしい。

「なのはたちは?」

「えっと……、まだお店にいると思います。
 私だけ先に帰ってきちゃいました」

人が多いところはまだ慣れないのか、それともなのはやアルフの着せ替え人形になるのに疲れたのか、
恐らくは後者だろうと当たりをつけつつ、こちらを窺うように眺めているフェイトに気付く。

「……フェイト」

「はい、何ですか?」

気付いて恭也はフェイトの名を呼び、呼ばれたフェイトは嬉しそうにトコトコと恭也の傍に。
寄ってきたフェイトに自分の隣をポンポンと叩き、その意図を察してフェイトが隣に座る。
手を伸ばしてフェイトの頭を不意に撫でる。
突然の事に驚きながらも、フェイトは目を細めて嬉しそうに恭也の手の感触を味わう。
ごつごつとした、けれども優しく撫でてくる恭也の手に身を委ねる。
無防備なフェイトの頭から手を離し、名残惜しそうな顔を見せるフェイトの喉に今度は指を当てて撫でる。
くすぐったそうに身を捩るも、次第に慣れたのか、恭也がツボを心得たのか、
先ほどと同じように目を細め、まるでネコのように喉を鳴らす。
その反応に満足そうな顔で小さく頷くと、もう一方の手でフェイトのツインテールにした髪の毛を梳く。
髪から頭、うなじへと手は動き背中を撫でる。

「ひゃぁんっ!」

「む、すまない」

「あ、いえ、大丈夫です」

突然背中を撫でられてビクリとするも、恭也だと分かっているからか、すぐに大人しくされるがままになる。
恭也は一応謝罪を口にするも、その手はやはり優しく背中を撫で上げていた。
そのまま恭也はフェイトの背中を軽く押し、頭を自分の膝に乗せる。
知らず身体を丸め、横たわるフェイトの背中から頭へと手を戻し、喉と頭を一緒に優しく撫でる。
気持ち良さげに目を細めていたフェイトは、次第にウトウトし出す。

「遠慮しないでそのまま寝ても良いぞ」

「でも……」

恭也の言葉にそう声を上げるも、既にその声は半分朦朧としており、夢の中へと今にも旅立ちそうである。
とろんとした目を懸命に抉じ開けようとするフェイトの瞼をそっと手で覆う。

「お休み、フェイト」

「……おやすみなさい」

そっと目を閉ざされ、フェイトは次第に強くなる睡魔に恭也の言葉に素直に甘える事にする。
優しく撫でられる感触を感じながら、フェイトはゆっくりと眠りにつく。
そんなフェイトを優しく見守りながら、恭也はフェイトを撫でて満足した顔で湯飲みを手にするのだった。





おわり、なの




<あとがき>

普通ではあり得ない出来事、まあ外伝という事で。
美姫 「本編とは関係ないのね」
全くないな。単に恭也とフェイトのほのぼのとしたものを書きたかっただけだ。
美姫 「まあ、別に良いんだけれどね」
猫のようにフェイトを愛でる恭也と、
美姫 「それを享受するフェイトというわけね」
おう。これでフェイト分も補充したし、今度こそ本編に戻るぞ。
美姫 「はいはい。というか、先にそっちをやれ!」
ぶべらっ!
美姫 「やるならやるで、もうちょっと長くしなさいよね!」
ぶべらっ!
美姫 「ふ〜、それじゃあ、この辺で。次こそは本編でね」
ではでは。
美姫 「って、何気に普通に挨拶しないでよ!」
ぶべらっ!







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