『リリカル恭也&なのはTA』






第45話 「氷解」





美術館での騒動の後、捕まえた者たちからは有用な情報は一切得られず、身柄をそのまま警察へと引き渡す。
その後、一向はスクールへと引き返す。幸いというべきか、あの襲撃のみで以降は何も起こらずに無事に辿り着く。
移動の間に恭也が電話を取り出して話し出したのを横で聞き、美由希は思わず恭也の顔をまじまじと見詰める。
その口から出ている言葉は明らかに日本語ではなかったからである。
美由希の不躾な視線に気付きつつも話を終えて電話を切ると、未だに呆けている美由希へと軽くチョップを落とす。

「いつまでアホ面をさらしているつもりだ」

「あう、ってアホ面は酷いよ」

叩かれた額を押さえつつ文句を言う美由希であったが、当然の如くその言葉は流される。
が、美由希はそれよりもと少し恭也に詰め寄り、

「恭ちゃん、今のってもしかして」

「ああ。ちょっと調べ物を頼んだ」

以前、高町家へとやって来た美沙斗から同じく海鳴へと友人に会いに来たという仕事仲間を紹介された。
一度だけ共に鍛錬をした程度ではあったが、向こうも美沙斗の甥という事もあって覚えていてくれたみたいである。
美沙斗は手が離せないという事だったので、偶々電話に出たのが彼女だったのは助かった。
正直、人手不足を嘆いているのを聞いていただけに心苦しくもあったが恭也は頼む事にしたのだが。
どうやら美由希は美沙斗の仕事先の番号を知っていたのを驚いているようではないみたいである。

「恭ちゃんが日本語以外を喋っているなんて……」

「そっちを驚いていたのか」

美由希の正直すぎる台詞に思わず苦笑しつつ、恭也は言葉を濁しながら腕にそっと軽く掌を這わせる。
既に気付いているかもしれないが、種明かしするまでもなくグラキアフィンが翻訳していたから出来た芸当である。
一応、美沙斗の仕事先を聞いてからは多少、暇を見つけては珍しく勉強していたがそう簡単に身に付くものでもない。
因みに、グラキアフィンも恭也に付き合う形で勉強をし既に他の言語に関してもマスターしてしまっている。
この辺りは流石はデバイスと言えなくもなく、恭也としてはちょっと羨ましいと思ってしまったのは内緒である。
今は恭也の先生として暇な、といっても授業中に睡眠学習するような形で教えてもらっていたりする。
閑話休題。
とりあえず美由希もそれ以上は追求する気はないようなのでこの件はこれで終わりにする。
が、ここに至ってようやく美由希は電話の相手が誰か想像付いたのか、

「母さんに?」

「残念ながら今は手が放せないらしくてな。弓華さんにお願いしたら、快く引き受けてくれた」

「弓華さんっていうと前に鍛錬してくれた人だよね。
 速い上に無手で小太刀よりも更に内側に潜り込んで来たり、いつの間にか武器を取り出したり」

かつての鍛錬を思い出したのか、色々な手で追い詰められた事を思い出しながら言う美由希に頷く。

「あれは本当に良い経験になったな」

「うん。また海鳴に来た時に相手してもらえたら良いね」

二人してそんな会話をしていると、事情を知らないフィアッセが口を挟めない事に気付いて説明してやる。

「ふーん、そうなんだ。でも、ちゃんと仲直りできて良かったね、美由希」

自分たち親子の元にも謝罪の手紙が来た事を教えつつ、そんな事を言うフィアッセに美由希は一つ頷く。
幸いな事にフィアッセもティオレも既に美沙斗の件に関してはその事情や美由希の母親という事で許してくれているようで、
二人に感謝して胸を撫で下ろしつつ、ちょっと苦笑いを浮かべて言う。

「尤も仲直りというのはちょっと違うような気もするけれどね」

「そうなの?」

美由希の言葉にフィアッセが首を傾げるのを見ながら、恭也は美由希に見せられたカードをもう一度思い出す。
自分の記憶に間違いがなければ、あれはあの時の。
自分を間に挟んで楽しげに会話する二人の声を聞きながら、恭也は知らず強く握り締めていた拳を開き、
自らを落ち着かせるように静かに深呼吸をするのだった。



 ∬ ∬ ∬



恭也が連絡した事で得られた情報は美沙斗たちにも影響を与えていた。
美沙斗からの報告で、すぐさま件の組織の動向を探るチームとは別にコンサート及びクリステラ親子に関するチームが組まれる。
同時にこちらは予定通りに美沙斗たち第四部隊がイギリスへと向けて動き出す。
一気に慌しくなったオフィス内で、弓華が早足で歩く美沙斗の横に並ぶ。

「もし恭也さんの話が今回の組織と関連があるとしたら、向こうで娘さんに会うかもしれませんね」

「そうだね。可能性はなくはないかもしれないね。
 でも、あの子たちは守る事が専門なのに対し、私たちは……」

「組織を壊滅させる事が専門ですから、会わない可能性の方が高いと?」

弓華の言葉に頷きつつ、美沙斗は僅かに強張っていた表情を緩める。

「どちらにせよ、会おうと思えば休暇の時に会えるから無理して会う必要はないよ。
 この前、会ったばかりだしね」

一応、簡単に事の経緯を聞いていた弓華は美沙斗の表情を見て、大丈夫だなとこっそりと胸を撫で下ろす。
今回の事件、恭也からの連絡と関係があるとすれば、
それは以前に美沙斗が襲撃側の実行者として参加していた件と全く関係がないと断言できない。
加えて、その際に再会した甥と娘の件もあり、弓華は心配しただがそれは杞憂だったようである。
一度会っただけではっきりとは言えないが、優しそうな娘さんだったから大丈夫だとは思っていてもである。
似たような経験――弓華の場合は家族ではなく友人に刃を向けたという事だが――を持つだけに、要らぬ心配をしてしまった。
まだぎこちなくはあるが、それでもしっかりと親子の絆を築いている事を我が事のように嬉しく思う。
が、そんな美沙斗の表情に僅かばかりの翳が射す。

「美沙斗、どうかしましたか?」

「いや、恭也や美由希とはこの間の休暇で何とかなったというか、向こうが許してくれたけれど……」

もしも美由希と会う可能性があるという事は、同時にそれはあの親子にも会う可能性があるという事である。
前に邪魔をした自分が今度は守る立場になったからと言って、そう簡単に許してもらえるとは思えない。
まだ会うと決まった訳でもないし、覚悟も決めているとは言えやはり考えてしまう。
そんな美沙斗を元気付けるようにその背を軽く叩き、

「きっと大丈夫ですよ。恭也さんと美由希さんも言ってたじゃないですか。二人の言葉を信じましょう。
 それに駄目だったとしても今はちゃんとやり直してます。だから、すぐに許してもらえなくてもいずれはと考えましょう」

これからの行動で示しましょうと締め括り、暗く考えないように忠告する。
弓華の励ましに応えるように美沙斗は頷き、

「そうだね。あまり考え過ぎると任務に支障が出るかもしれない。
 そうなると隊の者たちにも迷惑が掛かるしね。まだどうなるか分からないのだから、まずは任務の事だけを考えないとね」

「そうですよ。っと、私はこっちですから、ここで」

「ああ、ありがとう」

「いえ、どういたしまして。それじゃあ、任務頑張ってくださいね」

丁度分かれ道に差し掛かったので二人はそこで会話を切り上げると、それぞれ目的地へと向かう。
真っ直ぐに背を伸ばして歩く美沙斗を見送り、弓華は自分の言葉が少しでも励ましになっていれば良いなと思うのだった。



 ∬ ∬ ∬



スクールへと戻った恭也たちを待っていたのは一つの小包であった。
当然ながら中身の検査は留守役のエリスの部下たちによって既に済まされており、危険物ではないと分かっている。
差出人がないという見るからに不信物であった為に封も開けられており、男たちの微妙な表情がただの贈り物ではないと語っている。
案の定、エリスが中を覗いてみると、そこには明らかに隠し撮りされたと思われるフィアッセの写真が数枚収められている。
街中を歩いている時の物だが、どれもが最近の物らしく尤も古いものでイギリスの前に立ち寄った街であった。

「これだけか?」

「それとこちらが中に」

言って別の男が差し出したのは真っ赤な薔薇の花束だった。
そして、そこには一枚のメッセージカード。
「君を手に入れる」というメッセージの他には襲撃者が持っていたカードに印されていた物と同じデスサイズと黄色のクローバーが。
怯えるフィアッセを落ち着かせ、傍に美由希を置いて自室で休ませる事にする。
他の面々は応接室へと移動し、今後の予定を話し合う。
全員が席に着くなり、先程の男が実はと一枚の紙を取り出す。

「こちらはフィアッセさんに見せない方が良いと判断して、あの場ではお見せしませんでしたが」

言ってエリスにそれを差し出す。受け取ったエリスはざっと目を通し、

「ふざけた事を」

語尾も荒くその紙をティオレに渡す。
それを恭也も後ろから覗き込み、その内容にエリス同様に憤慨し、ティオレは表情を曇らせる。
それはありふれた脅迫文で、コンサートの中止を求めるもの。
従わない場合、ティオレの命を狙うとはっきりと名言されてはいたが、以前に送られた物とそう変わらない。
違うのは、要求がもう一つ付け加えられており、そこにはフィアッセ本人を求める事が書かれていた。
自分の命が狙われる程度ならばコンサートは実行するティオレも、娘や生徒を狙われれば躊躇ってしまう。
が、今回の要求はコンサートの中止だけではない。
最後の項目だけはフィアッセの心を知る親として飲む訳にはいかない。
尤も、仮に知らなくても認められるような事ではないだろうが。

「でも、どういう事だ? コンサートの中止に関しては当初から要求していた事だが……」

「フィアッセに関しては実行犯の独断、もしくは依頼主への報酬としてそれを求めたか」

エリスの呟きに恭也が答えつつ、二人は共にふざけた事をという共通の認識を抱く。
その上でティオレに一応、この要求をどうするか尋ねるのだが、きっぱりと首を横に振られる。
ましてや、掛かっているのは自分の命なのだ。ならば、躊躇う事はないだろう。
予想通りの応えに、しかし今度はエリスも何も言わず、護衛の強化をする旨を伝えて立ち上がる。
部屋を去る前に、言うまでもないですがと前置きし、この件はこの場にいる者たちの胸の中に納められる。
例外は美由希だが、今はフィアッセと一緒に居る為、折を見て恭也から伝えるという事になったのだが、
美由希にフィアッセへの隠し事が出来るかどうかという部分で、恭也はこの件を美由希に伝えるかどうかは暫く保留にする事にした。
こうして慌しい一日はようやく落ち着きを見せるという訳にはいかなかった。
夕食の後、フィアッセに付きっ切りの美由希は別として恭也はスクール内を見て回っていた。
そんな恭也をエリスが探し出し、躊躇いがちに声を掛ける。
背後から声を掛けたのに驚きもせずに振り返る恭也に、そう言えば士郎も同じだったなと少し懐かしい事を思い出す。
幾ら驚かせようと忍び寄っても気付かれてしまい、むきになって何度か試した事があったものだ。
思わず思い出した出来事を懐かしそうに恭也に話すと、恭也はそんな事をしていたのかと少し驚いた顔を見せる。

「知らなかったのか」

「ああ、父さんからは聞かされていないな。
 しかし、エリスもそんな子供みたいな事をしていたんだな」

「あの時は子供だったんだから別に良いだろう」

恭也の言葉に思わず顔を赤くしつつ反論するのだが、すぐに口を紡ぐ。
何から切り出すべきか考えているエリスを察し、恭也は話し出すまで待つ。
幸い、二人が居るのは教室の一つで、この時間には誰も来ないから廊下で立ち止まっていても迷惑にはならない。
ゆっくりと言いたい事を整理しているのか、単に切り出す切欠を探しているのか、考え込むエリスをじっと見詰める。

≪主様は女性の憂いを秘めた表情がお好きなのですね。了解しました≫

≪唐突に何だ、ラキア≫

そんな中、不意に響く声に思わず声を上げそうになるのを堪えて同じく念話で返す。

≪いえ、随分と熱心に眺められておいででしたので≫

≪何処をどう見たらそうなるんだ≫

≪では、私の勘違いだと≫

グラキアフィンの言葉に肯定の意を返し、どうにか納得させた所で今度は電話が鳴る。
エリスに断って電話を見れば、それは待っていた連絡だった。

「エリス、少しすまない」

「ああ、構わない」

電話に出る許可を貰い、恭也は通話ボタンを押す。

「何か分かりましたか」

軽く挨拶を交わし、恭也はすぐさま本題に入る。

「恭也さんから送られて来た写真を照合した結果、本物に間違いありません。
 まあ、今までに偽物が出たという話も聞きませんが。
 間違いなく、これはクレイジー・ボマーの物ですね」

頼んでいたカードに描かれたマークの真偽の確認が取れ、恭也もやはりかと漏らす。
その上で本物だった場合に頼んでいた事を弓華が続けて報告してくれる。

「彼は既にイギリスに渡っています。
 それとは別にまた気になる人物も同じ日にイギリスへと入国してました」

「この時期にとなると無関係と言い切れませんね。それで、その人物というのは?」

「スライサーと称される剣士です。もし、彼が雇われたのだとしたら、その目的は恭也さんか美由希さんだと思います。
 彼は何よりも剣士との戦いを求めていると聞いた事がありますから」

「そうですか。わざわざ忙しい中、ありがとうございます」

「いえいえ、気になさらずに。美沙斗から話を聞いて、隊長を始め皆さん、恭也さんと美由希さんに興味を持っていますから」

将来をまだ決めるつもりはないんですがと思わず返す恭也に、弓華は笑いながら言う。

「違いますよ。あ、勿論、入隊してくれるならそれはそれで歓迎ですけれどね。
 皆さん、一度、一緒に特訓してみないかと興味を持っているんですよ。
 美沙斗はうちでは人気者ですからね。その剣士が自分よりも上だと言う二人の剣士に会いたいという人が結構居るんですよ」

「そういう事ですか。まだ美沙斗さんの方が上だと思うんですけれどね。
 それはそれとして、鍛錬には正直、興味があるので時間があれば考えてみます」

「それは大変喜ばしい返事です。上にも伝えておきますね。
 特に美由希は男連中が一目でも見たいという人が結構居ますから」

「俺もですが、それこそ美由希はまだまだですよ?」

「あははは、皆さん違う意味で期待してます。さっきも言いましたが、美沙斗は人気なんですよ。
 剣士として以外でもね。ただその気がないのは皆さん知ってますから」

「そっちの人気ですか。で、娘の美由希にと」

昔の美沙斗を知っているだけに妙に納得できる恭也だが、だからと言って娘に興味を持つかと恭也は思う。
まあ、ただ見てみたいというのが大半なのだろうと分かりつつも、美沙斗の職場が職場だけに思わず大丈夫かと思ってしまう。
そんな気持ちが伝わったのか、弓華は小さな笑い声を上げる。

「普段は皆さんも普通の人ですからね」

それもそうかと納得しつつ、もう一度礼を述べる恭也に弓華は少し迷った後に告げる。

「一応、隊長たちから許可は得ているのですが伝えるかどうか悩みます」

「そう言われると余計に気になるんですが」

そう返しつつも、無理には聞き出さない恭也。
そこから更に二、三秒考え、弓華は話す事にした。

「実は美沙斗の所属する部隊が出動しました。相手は龍の下部組織と思われる所です。
 そして、その場所というのが……」

「まさか」

「はい、イギリスです。今の所、詳しい情報は掴めていませんが、うちとしてはそちらの事件との関わりも調べています」

「以前の襲撃がまだ終わっていなかったという事ですか」

「もしくは、今になって再び出てきたか、ですね。ただし、まだ確証はありません。
 ですが、一応耳に入れておいた方が良いかと思いまして」

「気遣い感謝します。確かに可能性としてはありますね。
 更に用心する事にします」

互いに別れの言葉を交わし合うと恭也は電話を切る。
思わず壁に背を預け、天を仰いで重い息を吐く。
予想していたよりも大事になるかもしれない可能性に、それでも何としても守るという意志を更に強くする。
と、すっかり忘れていたエリスがこちらを見ている事に気付く。
その視線はつい数時間前に見たものと非常に似ており、気分を変える意味でも恭也はそんなエリスへと言葉を掛ける。

「何を呆けているんだ。それでは護衛失格だぞ」

「うっ、べ、別に警戒を解いていた訳じゃない。ただ恭也が可笑しな言葉を喋り出したから」

「可笑しなとは現地の人に失礼だな」

「そういう意味で言ったんじゃない。君は勉強が出来ないと勝手に思い込んでいた」

「それはそれで俺に失礼だな」

エリスのはっきりとした物言いに顔を顰めつつ、恭也はエリスに思ったよりも長話だったことを詫び、改めて用件を尋ねる。

「ああ、それなんだが……。改めて二人に護衛の手伝いをお願いしたいと思って」

非常に言いづらそうにそう口にするエリスに対し、恭也はどうしてと尋ねる。
別に意地悪のつもりではなく、純粋のそう思った事が口に出ただけである。
エリスもそれを分かっているのか、少し躊躇った後に昼間の襲撃の件を口にする。
銃は剣よりも強いと思っていた。だが、実際に襲撃者を撃退したのは恭也であり、美由希だった。
寧ろエリスたちは接近されると反撃手段が一気に減る事を痛感し、部下たちの言葉もあり意地を張るのは止めたのだと。
改めて頭を下げて謝罪とお願いをしてくるエリスの頭を上げさせる。

「初めから言っているように俺たちだってフィアッセたちを守りたいんだ。
 その想いは君と一緒だろう。なら、協力するのに何の問題もない」

「そうだったな。私だけが変な意地を張っていただけだな。それでは、改めて協力者として頼む」

言って差し出してくる手を握り返す。

「ああ、こちらこそ」

握手を交わす間、恭也がじっと見詰めている事に気付いたエリスが首を傾げると、恭也はやや照れくさそうに鼻の頭を掻きながら、

「いや、こっちに来て初めてエリスの笑っている所を見た気がしてな」

「なっ、それでは私がずっと怒っているみたいではないか」

「現に今も」

「これは恭也が……」

詰め寄りかけたのを何とか留まり、エリスは気持ちを落ち着かせるように一度深呼吸をする。

「ふぅ、全く君が怒らせてばかりいるから悪いんだろう」

「いつ怒らせたんだ?」

本気で首を傾げる恭也に再び激昂しそうになるのを何とか押さえ込み、エリスは改めて明日の打ち合わせに参加するように要請する。
それを受諾した後、恭也はこちらからも伝えておく事があると口にする。

「カードの送り主が分かった。クレイジー・ボマーやスナッチ・アーティストと呼ばれる爆発物のプロフェッショナル。
 名前はファンと言って、奴が入国したのと同日、スライサーと呼ばれる剣士も入国している。
 こちらはまだ関係しているかは分からないが、恐らくはこの二人だと思う」

「さっきの電話はもしかして」

「ああ。知り合いに頼んで調べてもらった。カードの刻印も本物に間違いなかった」

「そんな知り合いが居るのか」

「知り合いというか、美由希の母親の仕事先だよ」

「という事は、二人と同じ剣士なんだな。一体、どこに?」

「香港国際警防だよ」

「香港国際警防……って、あの世界最強にして、非合法ギリギリの法の守護者!?」

はぁと何とも言えない吐息を漏らすエリスを見ながら、だからこの情報は確かだと付け加える。
それを聞き、エリスも表情を改める。

「それじゃあ、改めて頼んだよ恭也」

「ああ、こちらこそなエリス」

互いに拳を握り突き出して軽く合わせる。
願うはただ一つ。クリステラ親子の無事とコンサートの成功、ただそれだけ。
その為にバラバラで動いていた二人が力を合わせる事をここに誓うのだった。





つづく、なの







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