『とらハ学園』






第7話





三角学園の中庭。今現在、ここは生徒たちであふれかえっていた。
新学年でのクラス分けが張り出されている為である。

【真一郎】
「えーと、俺のクラスは……と、あったあった。俺のクラスはGか」

【小鳥】
「わたしは………、あ、あったH組だ。真くんと違うクラスになっちゃったね」

【真一郎】
「まあ、仕方ないさ。で、唯子は?」

【唯子】
「んっとね、唯子は……」

【小鳥】
「唯子もわたしと同じH組だよ」

【唯子】
「あ、本当だ。瞳さんは?」

【瞳】
「わたしはIね」

【雪】
「私はCでした」

【唯子】
「あ、雪さん、おはよ〜」

【雪】
「おはようございます、唯子さん」

真一郎たちの後ろから声をかけた少女、海原雪に全員が挨拶をする。
それからその場を離れ、七瀬たちと合流する。

【真一郎】
「で、さくらとななかちゃんは何組だった?」

【ななか】
「私達は一緒のクラスでした」

【さくら】
「井上さんも私も同じD組です」

【七瀬】
「私もDよ。学年は違うけどね」

【瞳】
「この後、さくらちゃんと井上は自分達のクラスに行って、それから入学式ね」

【小鳥】
「頑張ってね二人とも」

【ななか】
「はい、ありがとうございます。瞳さん、小鳥さん」

【真一郎】
「ふーん、しかし雪はCか。これで、小鳥と唯子以外ばらばらだな」

【唯子】
「そうだね。あれ?恭也とか薫ちゃんたちは?」

【真一郎】
「ああ、恭也、耕介、勇吾は俺と一緒だった。後は、知らんというか、見てない」

【小鳥】
「いづみちゃんや弓華はどこのクラスなんだろう? わたしたちと同じじゃなかったし」

【雪】
「C組にもありませんでした」

【瞳】
「わたしと同じクラスでもなかったけど」

【真一郎】
「まあ、それは後から聞けばいいさ。それよりもそろそろ自分たちの教室に行くか」

歩き出そうとした時、後ろから声をかけられる。

【弓華】
「皆サン、おはようございマス」

【真一郎】
「ああ、弓華か。おはよう」

【弓華】
「ハイです。で、皆サンはここで何をしてるですか?」

【真一郎】
「今から教室に移動する所だったんだよ」

【小鳥】
「そういえば、弓華のクラスはどこなの?」

【弓華】
「わたしはF組です。いづみと一緒ね」

【さくら】
「御剣先輩もF組なんですか」

【弓華】
「そうです」

【瞳】
「しかし、いづみが遅いのはともかく、弓華も遅いなんて珍しいわね」

【真一郎】
「瞳ちゃんの言う通りだな?どうかしたの?」

【弓華】
「いいえ、何でもないですよ。ただ、昨日は火影が仕事から帰ってきて、ちょっと……ね」

そう言うと弓華はどこか遠くを見るように昨日の事を思い出し、頬を少し染める。
それを見た真一郎たちも少し赤くなりつつ早口で捲くし立てるように話す。

【真一郎】
「あっ、そ、そういう事……」

【瞳】
「それで珍しく寝過ごしたって事ね」

【弓華】
「そうなんです」

【さくら】
「先輩方、それよりもそろそろ移動した方が……」

【真一郎】
「そうだな、さくらの言う通りだ。行こうか」

さくらが話を逸らし、真一郎がそれに乗るように言う。
全員に異論もなく、その場を今度こそ離れる。
全員が大きな勘違いをしたままなのに気付かず、弓華も一緒に歩き出す。
実際、半分は真一郎たちが考えたような事実ではなかったのだが。
昨日、帰宅した火影に一本の電話が掛かってきた。
これが全ての始まりだった。

【弓華】
「モシモシ、御剣ですが……」

電話に出た弓華がそう告げると、電話の相手から返答が返ってくる。

【久美】
「いつもお世話になっています。私、久美と申します」

【弓華】
「あ、はい。こちらこそ」

【久美】
「火影さんはいますか?」

【弓華】
「少し待ってて下さい」

弓華は火影を呼ぶと受話器を渡す。
そして、そのままその場で会話を聞くとはなしに聞く。

【火影】
「ああ、どうした」

【久美】
「……昨日……楽しかったわ〜。またお願いね。………火影さんじゃないと…………」

火影は相手の話に相槌を打って答えるが、漏れ聞こえてくる幾つかの単語に弓華はその度に反応し、眼つきが険しくなっていく。

【久美】
「今度……二人っきりで……。じゃあ、妹さんによろしくね」

電話を切る前に聞こえた最後の言葉に弓華の目が一気に釣り上がる。
そして、電話を終え受話器を置いた火影の後ろに立つと、そのまま耳を引っ張る。

【火影】
「っ痛。弓華、何をするんだ。耳を離してくれ」

【弓華】
「火影、今の電話誰ね」

【火影】
「誰って、一緒に仕事してた奴だよ」

【弓華】
「にしては、とっても仲が良さそうね」

【火影】
「そ、そんな事はないだろう。普通だ普通」

【弓華】
「じゃあ、何で電話してくるか」

【火影】
「それは昨日のお礼の電話だよ」

【弓華】
「お礼って何ね。大体、男はこういう時、すぐに誤魔化すと言ってたね。後、仕事と嘘を吐くとも」

【火影】
「誰が言ったんだ、そんな事」

【弓華】
「ななかと瞳ね。後、ななかに借りた本にも同じようなことが書いてあったよ」

【火影】
「井上さんに千堂さんか。確かにあの二人なら言いそうだな。って、これは本当に違うってば」

【弓華】
「だったら、さっきの電話は何あるか。それに妹って。わたしがいつから火影の妹になったね」

【火影】
「それは彼女が勘違いしただけだろう。俺に妹がいる事を知っているから」

【弓華】
「何で知っているか」

弓華は火影の耳を離す。
それに火影はほっとするが、すぐさま腕に痛みを感じる。

【火影】
「い、痛っっ。弓華、ちょっと痛いぞ」

【弓華】
「火影、私が始めに言った事覚えてるか?」

【火影】
「えーと……」

【弓華】
「私はこう言ったはずね。火影♪ 浮気は許しませんよ♪」

【火影】
「確かに言ってたな。……って、だから浮気なんかしてない!
 弓華、俺が信じられないのか?」

火影は真剣な顔をして弓華を真っ直ぐに見つめる。
弓華は頬を朱に染めながら、火影の腕を抓っていた指から力が抜ける。

【弓華】
「火影……」

【火影】
「弓華………」

火影はそっと弓華に顔を近づけていき、そして……。

【火影】
「痛っ!弓華、何をするんだ」

弓華が力を込め、先程よりも強く腕を抓る。

【弓華】
「七瀬が言ってたね。男はすぐにそうやって誤魔化すと」

【火影】
「ち、違う。本当に誤解……」

【弓華】
「じゃあ、あの電話の内容はなにね」

【火影】
「な、内容って?」

【弓華】
「昨日、楽しかったとか。またお願い、とかね」

【火影】
「あ、あれは昨日の仕事が終わった後にいった食事の事だ。いてて、弓華、力を緩めてくれ」

【弓華】
「駄目ね。食事に行ったって、やっぱり浮気ね」

【火影】
「な、何でそうなる」

【弓華】
「だって、その後に火影じゃないと、とか、二人っきりで、と言ってたね」

【火影】
「ご、誤解だ。本当に誤解。全部説明するから、とりあえず手を放してくれ」

しばらく火影を睨んでいた弓華だったが、渋々と手を放すと手を腰に当て仁王立ちになる。

【弓華】
「さあ、説明するね」

【火影】
「ああ、つぅ。少しは加減してくれ」

火影は解放され、痛みの残る腕を擦りながら文句を言う。
それを視線で黙らせ、弓華は口を開く。

【弓華】
「いいから、説明するね」

【火影】
「はぁー、良いかこの事は絶対誰にも言うなよ」

弓華が頷いたのを確認すると火影は説明を始める。

【火影】
「今回の仕事は鋼と一緒にやっていたんだが……」

【弓華】
「鋼って、確かいづみお兄さんね」

【火影】
「ああ、俺の弟でもあるんだがな。
 で、さっきの電話の女性、久美というんだが、と鋼、俺の三人はよく仕事が一緒になってな。
 まあ、早い話が鋼の奴に気があるみたいなんだ。で、昨日は仕事の後、三人で食事に行った訳なんだ」

【弓華】
「そうでしたか。でも、火影じゃないと駄目というのは?」

【火影】
「それは、鋼の奴は仕事が終わるとすぐに帰ろうとするからな。で、俺じゃないとあいつを誘えないと言う事だ」

【弓華】
「じゃあ、今度二人きりというのは……」

【火影】
「ああ、鋼の奴とだ」

【弓華】
「……妹と言うのは」

言いながら誤解だと気付き、徐々に最初の勢いがなくなっていく弓華。

【火影】
「ああ、単純にアイツの勘違いだろうな。俺や鋼に妹がいることを知っているからな。
 それに鋼の奴が妹を可愛がっている事も知っているからな」

【弓華】
「そうでしたか……。火影、ゴメンなさいです」

【火影】
「いや、分かってくれればいいんだ。弓華……」

火影は弓華の頬に軽くキスをするとその耳元にそっと囁く。
その言葉を聞いた途端、顔を真っ赤にして俯く。
火影はそんな弓華を抱きかかえ、部屋へと向った。





昨日の出来事を思い返し頬を染めていた弓華に真一郎が声をかける。

【真一郎】
「なあ、弓華。御剣は一緒じゃないのか?」

【弓華】
「はい。今日は途中で会いませんでした」

真一郎の声に我に返った弓華は何事もなかったかのように答える。

【真一郎】
「ふーん。あいつ、まさかまだ……。って、んな訳ないよな」

真一郎は小さく呟くと自分の考えを否定する。

【小鳥】
「真くん、どうかしたの?」

【真一郎】
「いや、なんでもないよ」

そう言って軽く笑みを浮かべる。
途中、まだ上へと上る一年組みの二人と別れ、真一郎たちはこれから一年間、お世話になる自分達のクラスへと入って行った。







つづく




<あとがき>

久々になるのかな?とらハ学園第7話。
美姫 「うーん、どうなんだろうね。途中、他の長編とか短編に行ってたのは確かだし」
まあ、とりあえず7話まで来たな〜。
まだ、出番のないキャラがいるな。
美姫 「そうよね。次辺りに出るのかしら」
それはどうかな。次は………。
美姫 「次は?」
秘密♪
美姫 「また、秘密!これでも喰らいなさい。離空紅流、月遮赤光斬」
こ、今回はいきなりかい!って、ぎゃぁぁあぁあああぁぁぁーーーーーーーー。
美姫 「ふぅー。いきなりじゃないわよ。一応、喰らえって言ってるでしょ。
    それに私の信念は、浩・即・斬よ。と、言う訳で皆さん、また次回♪」
ど、どういう訳なんだよ…………ガク。







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