『とらハ学園』






第14話





HRの途中、教室の扉が開く。

【恭也】
「すいません、遅れました」

【担任】
「え、えーと…………じゃあ、空いている席に着いて下さい」

【恭也】
「はい」

恭也は赤星たちを見つけ、そこの空いている席へと向う。
その途中で薫から鞄を受け取る。

【恭也】
「すまないな、助かった」

【薫】
「いや、それよりもなのはちゃんは間に合ったの?」

【恭也】
「ああ、何とかな」

【耕介】
「朝からお疲れさん」

【恭也】
「ああ、本当に疲れた」

【真一郎】
「恭也はなのはちゃんに甘いからな」

【恭也】
「そんな事はない」

【忍】
「いや、充分甘いわよ」

【恭也】
「忍まで」

【勇吾】
「少しは自覚しろって」

【恭也】
「むっ」

【耕介】
「それにしても、ちょっと時間が掛かり過ぎじゃないか?」

【恭也】
「ああ、色々とあってな……」

恭也は簡単に朝あった事を話す。

【薫】
「はははは……。士郎さんは大丈夫だった?」

【恭也】
「父さんにはたまにはいい薬だ」

【真一郎】
「しかし、なのはちゃんの担任は相沢先生か」

【恭也】
「ああ、縁とは不思議なものだな」

【忍】
「恭也と真一郎はその先生の事、知ってるの?」

【真一郎】
「ああ、俺と恭也が6年の時で、相沢先生が教師に成り立ての頃に担任だったんだ」

【恭也】
「そういう事だ。もっとも俺は昔に何度か会ってたがな。
父さんとも知り合いでな。昔から面倒ごとによく首を突っ込んでいたな」

【真一郎】
「後、面白い事が好きで、口も達者な人だったな。まあ、いい人ではあるよ」

【恭也】
「まあ、そうだな」

【勇吾】
「しかし、朝から色々と大変だな」

【恭也】
「確かにな。賑やかなのも嫌いじゃないがたまには静かに過ごしてみたいな」

【耕介】
「それは無理だろ」

少し笑いながらそう言う耕介に恭也は少し憮然としながら言葉を続ける。

【恭也】
「その原因のうち、何割かはおまえ達のせいだという自覚があれば嬉しいんだがな」

【真一郎】
「ははは、自覚だけならあるぞ。なあ、耕介」

【耕介】
「ああ。ただ、やらないという選択肢がないだけだ」

【恭也】
「そこまで言い切られてもな」

【勇吾】
「まあ、こいつらの性格を考えれば、仕方がないからな」

【忍】
「そうそう。人間諦めが肝心よ恭也」

【恭也】
「お前の訳の分からない発明品も原因の一つだと思うが」

半眼で睨んでくる恭也に乾いた笑みを浮かべながら忍は言う。

【忍】
「ははは。発明は私の趣味みたいなものだから」

【恭也】
「自分の趣味を人に押し付けるのか、お前は。ましてや、人を実験台にするか、普通」

【忍】
「ははは。だって、普通の人だったら怪我しちゃうかもしれないじゃない」

【恭也】
「ほーう、俺は怪我しても良いと」

【忍】
「違う違う。恭也ならあの程度の爆発平気でしょ」

【恭也】
「その前に爆発しないものを作れ!」

【忍】
「ははははは。ほら、昔の偉い人も言ってたじゃない。失敗は成功のははって」

【真一郎】
「それに恭也、忍を普通の人として考えたら駄目だって」

【耕介】
「そうそう。こと発明に関する限り、忍はマッドサイエンティストだからな」

耕介の言葉に一斉に頷く恭也たち。

【忍】
「あんたらね。今度の発明品はあんたら全員で実験する事に決めたわ!」

【恭也&耕介&真一郎&勇吾】
「遠慮する!」

【忍】
「遠慮はいらないわよ」

【恭也】
「薫からも何とか言ってくれ」

恭也の言葉に全員が薫を見る。
薫は溜め息を一つ吐くと口を開く。

【薫】
「とりあえず、恭也は席に着いた方が良いんじゃないかな。皆もそれぐらいにしておいた方が。
ほら、先生がさっきから………」

薫の指差す先を見ると………。
そこには座り込んで何かを呟く担任の姿があった。

【担任】
「良いんです、良いんです。どうせ私なんか……。
教師になったばかりの私の言う事なんて、どうせ誰も聞いてくれないんです。うぅぅぅぅ〜〜〜」

涙目になり、床にのの字を書き始める。

【忍】
「じゃ、じゃあ恭也、後は頼むわ」

【恭也】
「……勇吾、後は任せた」

【勇吾】
「真一郎、頼む」

【真一郎】
「耕す………」

【耕介】
「俺はパス」

【真一郎】
「かお……」

【薫】
「うちには無理」

【恭也&耕介&勇吾&薫&忍】
「という訳で、頼んだ」

【真一郎】
「お前らなー」

【耕介】
「まあまあ。この中で一番、女性の扱いに慣れているという事で」

【真一郎】
「別に慣れてない!って、はぁ〜、仕方がないな」

真一郎は席を立つと座り込んでいる先生の元まで行き、しゃがみ込むと話し始める。

【真一郎】
「え〜と、先生。あいつらも悪気があった訳じゃないんで勘弁してあげてください」

この台詞に一斉に『お前もだろうが!』と突っ込みたくなるのをどうにか堪える。

【真一郎】
「別に先生が嫌いって訳じゃないですから。
それどころか、こんな綺麗な先生が担任でもうラッキーってぐらいですよ。
だから、元気を出してですね……」

【担任】
「うぅぅぅ。本当に?」

【真一郎】
「ええ、だから早くHRの続きをしないと始業式が始まっちゃいますよ」

真一郎は手を差し出し、担任がその手を取ると力を入れ、引き起こす。

【担任】
「あっ」

【真一郎】
「どうかしましたか?」

【担任】
「ううん。何でもないです」

【真一郎】
「そうですか。じゃあ、俺じゃなかった、僕も席に戻ります」

【担任】
「あ、私の名前は樋口って言います」

【真一郎】
「はい、知ってますよ。さっきのHRで自己紹介してましたし」

【樋口】
「そ、そうでした。すいません。私ってば……。え〜と、あ、あなたのお名前は……」

【真一郎】
「相川真一郎です」

【樋口】
「相川真一郎……くん」

【真一郎】
「はい。じゃあ、戻りますね」

席に戻っていく真一郎の背中を潤んだ瞳と少し赤くなった頬で見詰める。
その様子を見ていた耕介たちは小声で話をする。

【耕介】
「おい、もしかして、あれって」

【忍】
「多分、間違いないと思うけど……。薫はどう思う?」

【薫】
「うちもそうじゃなかと」

【勇吾】
「薫が気付くぐらいだから間違いないんじゃないか?」

【恭也】
「一体、何の話だ?」

【耕介】
「マジだと思うか」

【勇吾】
「いや、幾ら恭也でもこれは流石に……」

【忍】
「でも、あの恭也だよ」

【薫】
「うちは本気で言ってると思う」

四人は揃って恭也の顔を見る。
その行動を不思議に思いながら首を傾げる恭也を見て、四人は顔を見合わせると一斉に頷く。

【耕介&勇吾&薫&忍】
「間違いなく、気付いていない」

【真一郎】
「何の話だ?」

【耕介&勇吾&薫&忍】
「何でもない」

【真一郎】
「何だよ、俺だけのけ者か。恭也、一体何の話だ?」

【恭也】
「いや、それが俺にもさっぱり」

【薫】
「そ、それよりも話をやめないと」

【耕介】
「そうそう。また同じ目には合いたくないだろ」

その言葉に恭也と真一郎は頷くと大人しくする。
そして、やたらと上機嫌になった?によるHRが順調に進んでいった。
その後、入学式を済ませた新入生達と入れ替わる形で恭也たちの始業式が体育館で行われた。





それから時は流れ、放課後……。
担任が終わりを告げ教室を出て行くと同時に鞄を持つ恭也に近づく三つの影。
真一郎、耕介、忍である。

【勇吾】
「じゃあ、俺は部の勧誘があるから先に行ってる」

【薫】
「うちも」

【恭也】
「じゃあ、俺も行くか」

【真一郎】
「………え〜と、恭也はまだ帰らないのか?」

【恭也】
「ああ、一応部員だからな。演舞には出なくても入部希望者の受け付けぐらいはやらないとな」

【耕介】
「そうか……」

【忍】
「じゃあ、別に私たちが足止めする必要はなかったんじゃない」

【恭也】
「ん?何か言ったか、忍?」

忍の呟きように言った言葉が聞き取れなかった恭也は聞きかえすが、忍は微笑みながら口を開く。

【忍】
「ううん、何でもないわよ」

恭也は納得すると教室を出て行く。
玄関口で靴に履き替えた所で赤星と薫と別れる。

【勇吾】
「じゃあ俺たちは着替えてくるから」

【恭也】
「ああ、その間に準備をしておく」

【耕介】
「面白そうだから、俺も見に行くか」

実際には面白そうではなく、面白くするからなのだが、当然そんな事はおくびにも出さない。

【忍】
「私も行こうっと」

【真一郎】
「じゃあ、俺も行くか」

【恭也】
「耕介や忍はともかく、真一郎は空手部の方はどうするんだ」

【真一郎】
「大丈夫、大丈夫。今回の勧誘は三年が中心になってやるし」

【恭也】
「別に構わんが、手伝ってもらうぞ」

【耕介】
「はいはい、分かってるって」

【勇吾】
「じゃあ、後は頼んだからな」

【薫】
「うちらもそろそろ行かないと」

薫に促され、その場を離れようとした赤星たちの元に一人の男子生徒が歩いてくる。

【?】
「いたいた。お前たちこんな所にいたのか探したぞ」

【勇吾】
「あ、折原部長」

一瞬だが赤星と折原と呼ばれた生徒の視線が意味ありげに交わされる。

【恭也】
「どうしたんですか、こんな所で。演舞の準備は?」

【折原】
「ああ、実はその事なんだがな。不破、お前俺の代わりに出てくれ」

【恭也】
「お断わりします」

【折原】
「はやっ。一瞬かよ。もう少し考えてから返事しても良いじゃないか」

【恭也】
「………………考えました。が、やっぱりお断りします」

【折原】
「お前、実は俺のこと嫌いだろ」

【恭也】
「いえ、そんな事は……」

【折原】
「まあ、良い。とりあえずは話を聞いてくれ」

【恭也】
「はあ、聞くだけなら構いませんが……」

【折原】
「そう、あれは今から数年前の事だった。俺がいつものように遅刻寸前で学校へと向っている時にそれは起こったんだ……」

【薫】
「いつものように遅刻寸前……ですか」

【忍】
「そう言えば折原先輩って……」

【耕介】
「ああ、遅刻の常習犯だったな」

【折原】
「何でそこに注目をするんだ。もっと他に注目するような所があるだろう」

【恭也】
「折原部長」

【折原】
「おお、さすが不破。分かってくれるか」

【恭也】
「いえ、冗談はそれぐらいにして早く本題へ」

【折原】
「お前、やっぱり俺のこと嫌いだろ」

折原の質問にまたしても淡々と恭也は答える。

【恭也】
「いえ、そんな事はありません。ただ、もう時間があまりないので」

【折原】
「そんな事を気にするな。俺はいつもぎりぎりだぞ!ははははは」

【薫】
「それは威張って言う事じゃないかと……」

【勇吾】
「それに演舞の時間に遅れたら留美先輩が怒りますよ」

赤星の口から女子剣道部部長の名前に折原の笑い声が止まる。

【折原】
「それはまずいな。あいつは素手で熊を殺せるくせに剣を習っているという凶暴極まりない奴だからな。
では、名残惜しいが本題に入ろう。実はな、手首をやっちまったらしくて激しく動かすと痛いんだ。
と、言う訳だから代わりを頼む」

【恭也】
「事情は分かりましたが、何で俺なんですか?他にも部員はいるでしょ」

【折原】
「あのな、俺らの演舞は型だけでなく打ち合うのは知ってるよな。で、俺の相手はあいつだぞ」

折原の言葉に折原の相手が留美であることを思い出す。

【折原】
「一応、打ち合う手順とかも決まっているけどな、あいつが力の加減をするのが苦手なのは知ってるだろ」

折原の言葉に恭也たち剣道部員は頷く。

【折原】
「あいつの力任せの剣を受け止めれる奴がそうそういるか?
それに今から他の奴を当たる時間もないしな。という訳で頼む」

【恭也】
「はぁ〜、分かりました」

【折原】
「よし、決まりだな。ほら、早く行かないと時間がなくなるぞ」

折原の言葉に渋々ながらも恭也は赤星たちと一緒にこの場を去る。
そして、恭也の姿が完全に見えなくなると……。

【折原】
「うん、上手くいったな」

【忍】
「じゃあ、私たちも見学に行きましょう」

【耕介】
「そうだな」

【真一郎】
「いや〜、楽しみだな」

などと勝手な事を言いながら、歩き出した。







つづく




<あとがき>

浩と
美姫 「美姫の」
とってもいい加減なあとがきぃ〜〜。
美姫 「と、言う訳でいつもとは少し違った感じで始まったこのコーナー」
だからと言って、何が変わる事もなし。
美姫 「って、変わらないの?」
逆に聞くぞ。あとがきをどうやって変えろと?
美姫 「確かにね。じゃあ、いつも通りに浩が私にボロボロにされて終わりというあとがきのままね」
ちょ、ちょっと待て。いつもじゃないだろ。
そ、それに何か無性にあとがきを変更したくなったような。
美姫 「じゃあ、ボロボロになってね♪」
って、聞いてねえし。
美姫 「離空紅流、朱凰天舞(すおうてんぶ)!」
あっぎゃ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!
美姫 「うん♪いつも通りの後書きね♪じゃあ、また次回」








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