『とらハ学園』






第15話





入学式とその後のHRも無事に終わり、新入生達も放課後を迎える。

【那美】
「うーん、何とか初日も無事に終わったね」

【美由希】
「一応、無事なのかな?」

美由希は入学式の時に見えた士郎の姿を思い出し、何とも言えないような表情を浮かべる。
それを察した那美も苦笑をその顔に張り付かせるが、気を取り直すように話を続ける。

【那美】
「それよりも、これから剣道部を見に行くんでしょ」

【美由希】
「うん、那美も一緒に行こう」

【那美】
「うん」

美由希と那美は剣道部が剣舞を行う場所へと向う。
そんな二人の後ろから声がかかる。

【和真】
「よお、美由希ちゃんに那美」

【北斗】
「二人もこれから剣道部に行くんだろ」

【瑠璃華】
「だったら、私たちと一緒に行きましょう」

【美由希】
「うん。って、月夜も行くの?」

【月夜】
「そうだけど、なんで?」

【美由希】
「だって……ねぇ」

美由希は瑠璃華の方を同意を求めるように見る。
それを受けて瑠璃華は何かを思い出したように手を軽く合わせと、

【瑠璃華】
「そう言えば、去年、恭也さんが剣道部に入った時に月夜ちゃん文句言ってたもんね」

【美由希】
「うん。そんな暇があったら鍛練しろ、みたいな事を言っていたから」

【月夜】
「そ、それは」

【美由希】
「それは?」

【月夜】
「うぅぅ。そんな事、どうでもいいじゃないか。それよりも早く行かないと、始まっちゃうぞ」

【楓】
「そうだね。じゃあ、行こうか」

楓の言葉に全員が従い、歩いて行く。





  ◇ ◇ ◇





【恭也】
「はぁー、こっちの準備は終わったぞ。そっちは?」

【勇吾】
「ああ、こっちも大丈夫だ。じゃあ、行くか」

【恭也】
「はぁー、全く気が進まないんだが」

【勇吾】
「諦めろって」

恭也と赤星が外へと出ると、準備を終えた薫が待っていた。

【薫】
「あ、恭也準備終わった?」

【恭也】
「ああ」

【勇吾】
「じゃあ、行きますか」

【恭也】
「はぁー、できれば遠慮したい……」

【勇吾】
「まだ、言ってるのか。諦めが肝心だぞ」

【恭也】
「………はぁー、せめて知り合いには見られない事を祈るか」

【勇吾】
「無駄だと思うがな。だって、演舞は校庭でやるんだぞ?」

【恭也】
「既に帰宅している事を祈る」

【薫】
「でも、少なくともうちの弟たちは来るよ。剣道部に入部するみたいだし」

【恭也】
「……美由希も来るだろうな」

【勇吾】
「月夜ちゃんや瑠璃華ちゃんは来ないのか?」

【恭也】
「月夜は部活動はしないんじゃないかな。瑠璃華は……まあ、運動部には入らないだろ」

【勇吾】
「それはどうかな?」

【恭也】
「何か言ったか?」

【勇吾】
「別に何も」

赤星の言葉に首を傾げながらも、大した事ではないと判断し、そのまま流す。
そこで恭也は今気付いた事を薫に尋ねる。

【恭也】
「あれ、八瀬先輩は?」

【薫】
「留美部長なら先に行ったよ」

【恭也】
「だとすれば、急いで行かないと」

【勇吾】
「そうだな。何を言われることやら」

恭也たちは少し早足になって、その場を離れて行く。





  ◇ ◇ ◇





【アリサ】
「なのは!早く早く」

【なのは】
「ちょっと待ってよアリサちゃん」

教室のドアの所で足踏みをしながら、今にも駆け出しそうな勢いでアリサはなのはを待つ。
そんなアリサに苦笑しつつ、なのはも急いで支度をするとアリサの元へと小走りに駆け寄る。

【なのは】
「お待たせ、アリサちゃん」

【アリサ】
「じゃあ、行こう」

アリサはなのはの手を掴むと駆け出す。





  ◇ ◇ ◇





【晶】
「おーい、レン。お前も今帰りか?」

【レン】
「なんや晶かいな。そういうアンタもか?」

【晶】
「俺は師匠たちの所に行こうと思ってな」

【レン】
「ああ、剣道部の演舞やな」

【晶】
「ああ、勇兄がでるからな」

【レン】
「ほな、うちも行ってみるか」

【晶】
「お前も来るのかよ」

【レン】
「ああ。晶一人だと何か問題起こすかもしれへんしな」

【晶】
「なっ。言うに事欠いて、テメェー。俺がいつ問題を起こした」

【レン】
「ほっほー、自覚がないとは。これまた都合の良い頭やなー。それとも、すぐに物事を忘れる鳥頭か?」

【晶】
「ふ、ふ、ふ。ふぁっははははは。テメェーは泣かす!」

【レン】
「返り討ちにしたる!」

晶とレンの拳がぶつかり合うと思われた時、珍しく晶がその動きを止める。
それを訝しげに見詰めるレンに晶は言い訳するように言い放ちながら、駆け出す。

【晶】
「お前との勝負はお預けだ。早く行かないと始まっちまうからな」

しばらく茫然としていたレンだったが、小さくなっていくその背中に追いつくように走り出す。

【レン】
「とりあえず、お預けにしといたる。うちも演舞は見たいさかいな」

レンは少しでも晶に追いつこうと速度を上げた。





  ◇ ◇ ◇





【留美】
「おっそ〜い。遅いよ三人共」

留美の言葉に時間を確認する恭也。

【恭也】
「まだ、時間には余裕がありますけど」

【留美】
「口答えしない!急に代役って事になったんだから、打ち合わせが必要でしょ」

【恭也】
「はぁ」

【留美】
「で、簡単にやるわよ。まず、数人が演舞をした後に薫ちゃんと赤星君の真剣での演舞ね」

【勇吾】
「ちょ、ちょっと待って下さい。俺と神咲がするのは木刀での演舞で、真剣は留美先輩たちがやるんじゃ」

【留美】
「仕方がないじゃない。演舞の練習をしていた折原が出来なくなったんだから。
練習していない不破君に真剣での演舞なんてさせられないでしょ。それに二人なら木刀が真剣になった所で問題ないでしょ。
手順を忘れていなければ。当然、忘れてないわよね」

留美の言葉に赤星と薫は頷く。

【恭也】
「では、俺は何をすれば?」

【留美】
「勿論、不破君には私の相手をしてもらうのよ。ただし、木刀でね」

【恭也】
「はぁ」

【留美】
「勿論、手順とかも一切なし。本気での打ち合いよ」

【恭也】
「なっ。何でそうなるんですか」

【留美】
「だってその方が今から打ち合わせするより早くて良いじゃない。
それに、不破君ってば、部活でもいつも指導してばっかりで自分から試合とかしないし。
一度、やり合ってみたかったのよね。あ、安心して。一応、手加減はしてあげるから」

【恭也】
「で、でも」

【留美】
「つべこべ言わない!いいわね」

まだ納得できない恭也の型を優しく叩く人物がいた。

【折原】
「諦めろ不破。あいつが言い出したら、もう変える事は出来ない」

その説得力ある物言いに恭也は諦めて頷く。

【恭也】
「分かりました」

【留美】
「分かれば良いのよ。あ、軽く身体を解しておいてね」

留美も言葉に頷き、身体を軽く動かし始める。
それを横目に見ながら折原は留美に話し掛ける。

【折原】
「手加減しない方が良いと思うぞ」

【留美】
「どういう意味?」

【折原】
「さあな。本番になれば分かるさ」

折原の言葉を不思議に思いながらも、留美は自分もまた身体を解すために軽くストレッチを始めるのだった。







つづく




<あとがき>

次回!いよいよ剣道部による演舞が始まる。
美姫 「そして、恭也と留美の真剣勝負の行方は?」
次回、第16話で!








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