『とらハ学園』






第36話






【士郎】
「はー、中々見つからないな」

【恭也】
「そう簡単に見つかるようなら、人に頼まないだろう」

【士郎】
「だよな」

恭也と士郎は、何軒目かになる骨董品店から出てくるなり、そう零す。

【アルシェラ】
「嘆いていてもしょうがあるまい。それよりも、次の店じゃ」

一人元気でご機嫌なアルシェラは、そう言うと歩き出す。
それに引っ張られる形で恭也も歩き出す。

【恭也】
「アルシェラ、いい加減に離してくれないか」

恭也はアルシェラに組まれた腕を見ながらそう尋ねるが、それを聞いた途端、

【アルシェラ】
「迷惑か?迷惑ならやめるが」

哀しそうな表情で問う。

【恭也】
「いや、別にそういう訳じゃないんだが」

【アルシェラ】
「なら、構わんな」

そう言って、再びご機嫌な顔になる。
その何度目かになるやり取りを見ながら、士郎はそっと溜め息を吐くのだった。

【士郎】
「アルシェラがやけにご機嫌なのは、そういう事か」

【アルシェラ】
「まあの。いつもは、すぐに突っかかってくる小うるさい小娘共が、今日はおらんからのぉ」

アルシェラは楽しそうにそう告げると、恭也の腕を少し強く抱きしめるのだった。





  ◇ ◇ ◇





【男A】
「とりあえず、アレが売りに出されていないかはおまえ達で調べてくれ」

【男B&女B】
「はい」

【女A】
「しかし、金目当てのただのこそ泥とは思えませんけど」

【男A】
「ああ。だが、全く可能性がない訳ではないだろう。それに、アレを使用して既にこの世にいない可能性もある。
その場合、たまたま通りかかった奴の手によって、拾われ、売りに出されている可能性も考えなければ…」

【男C】
「どっちにしろ、考えられる全ての可能性を当たるしかないんですよね」

【男A】
「そういう事だ。最も、簡単にアレを使う事は出来んだろうが」

【女C】
「そうなると、まだそいつが持っている可能性が高いって事よね」

女の言葉に、リーダー格の男は頷く。

【男D】
「しかし、一体何の目的であんなものを…」

【男A】
「さあな。だが、そんな事はどうでもいい。アレさえ取り返せればな。では、行くぞ!」

リーダー格の男の声にそれぞれが頷きかえすのだった。





  ◇ ◇ ◇





【お爺さん】
「はて、この辺りじゃと思うたんじゃがの」

ビルなどが立ちならび、人の行き来も多い中心街から少し離れた人通りも少ない場所。
そんな場所の路地裏、人が一人がやっと通れるような細い路地を抜け、少し開けた場所に佇みながら、
そう呟くのは、士郎に探し物を依頼した老人だった。

【お爺さん】
「全く、年寄りをこき使いよって。あやつも元とはいえ、弟子ならば少しは気遣え」

ブツブツと呟く言葉の内容とは裏腹に、老人は機敏な動きで四方を囲った壁に手を付きながら動き回る。

【お爺さん】
「ふむ。ここに来たことは間違いないようじゃな。全く、面倒な事が起きねば良いが。
ここにはもう用はないな。次を当たるとするかの。後は、……あやつらが先に見つけてくれることを祈るか」

老人は呟くと共に、その場に背を向け立ち去るのだった。





  ◇ ◇ ◇





辺りを闇が覆い出した時刻。
人の来ないような林の中で、二人の声が聞こえろ。

【男2】
「はー。ちっくしょう。しくった」

【男1】
「ったく。一体、どうする気だ」

【男2】
「そんな事を言っても仕方がないだろうが。どこへやったのか分からないんだから!」

【男1】
「はー。後先考えずに行動するからだ」

【男2】
「しかし、あの爺さんがそんなに早く気付くなんて思わなかったから…」

【男1】
「言い訳か。見苦しい」

【男2】
「なっ!」

【男1】
「第一、あの爺が一筋縄でいかないのはよく分かっていた事だろうが。あれでも…」

【男2】
「分かってるよ。あんたに言われなくてもよーくな」

【男1】
「だったら、何故そんな失敗をした」

【男2】
「爺さんが相手だったからだろ」

今まで責めていた男は、その言葉に鼻を鳴らすと、唾を吐き捨てる。

【男1】
「ちっ。こうなったら、一気に計画を進めるぞ」

【男2】
「しかし、肝心の刀が」

【男1】
「知るか!それはお前のミスだろうが。お前が何とかしろ。いや、考え様によっては逆に好都合かもしれんな」

【男2】
「どういう事だ」

【男1】
「気にするな。大した事じゃない。それよりも、計画の第3段階に移るぞ。準備しろ」

【男2】
「あ、ああ、分かった」

【男1】
「今度はしくじるなよ」

【男2】
「分かっている」

それっきり、声はおろか、人の気配すらも消え、辺りは再び静寂に包まれた。
期せずして、ここに一連の事件の関係者が同じ地に揃うこととなった。
この先、どのように事態が動いていくのか、それはまだ誰も知らない。






つづく




<あとがき>

これで、不知火事件の大まかな関係者が揃ったかな。
美姫 「名前が全然、出てきてないけどね」
ははは。ちゃんと、設定はされてるんだけどね。
まあ、もう少しだけ待ってね。
美姫 「はいはい。分かってるわよ」
まあ、そういう事ですので、また次回!
美姫 「次回まで、枕を涙で濡らして待て!」
しくしく〜。(って、何故に?)








ご意見、ご感想は掲示板こちらまでお願いします。



二次創作の部屋へ戻る

SSのトップへ