『とらハ学園』






第38話






【士郎】
「な、何だこれはっ!!!!!」

士郎の叫び声が、狭い室内に響き渡る。
その声に驚いたのか、恭也はアルシェラの背に隠れる。
そして、そこから顔だけを出して、士郎の様子を伺う。

【アルシェラ】
「士郎、突然そんな大声を出すでない。ほら、恭也が怖がっておるではないか。
大丈夫だぞ、怖くないからな。コレはお前の父親じゃぞ」

そう言って、恭也と視線を合わせるために両膝を着き、上から覗き込む。
そう、恭也の姿は4、5歳の頃になっていた。

【恭也】
「お父さん……?」

【アルシェラ】
「そうじゃ。ほれ、見覚えがあるじゃろ?」

【恭也】
「う、うん。お父さんだ」

【士郎】
「…………………」

【恭也】
「どうしたの、お父さん?」

【士郎】
「だ……」

【恭也】
「だ?」

可愛らしく首を傾げる恭也。それを見て、アルシェラは抱きつきたくて手をうずうずさせている。

【士郎】
「誰だ……。お前は誰だ?」

【恭也】
「僕は恭也だよ、お父さん」

【士郎】
「………………う、………」

【士郎】
「うがぁぁぁ〜、誰だこれは!!違う!違う!恭也じゃない!恭也が なんて言うかー!
うがあああああああああ!!!」

士郎は錯乱気味に叫ぶと、頭を掻き毟る。
それを見た恭也は、怯えながら半泣きになるとアルシェラの足にしがみ付く。

【恭也】
「お姉さん、お父さんが怖いよ」

アルシェラはそれを見て、恭也を抱きしめると頭を撫でる。

【アルシェラ】
「大丈夫じゃ。士郎はちょっと疲れているだけだから、すぐに元に戻るぞ」

【恭也】
「う、うん」

優しくいうアルシェラに安堵したのか、恭也は落ち着いた顔になる。
だが、その手はアルシェラの服を掴んで、離す気配はない。
それがまた、アルシェラの心を喜ばせる。
それら一連の出来事を見ながら、士郎は真っ白に燃え尽きていた。

【士郎】
「あ、あれは恭也じゃない……。そ、そうか、俺は酔ってるんだな。
昨日、あんなに飲んだんだから、仕方がないか。これに懲りたら、酒は少し、そう、ほんの少しだけ控えよう……。
って、俺、昨日、一滴も飲んでねーーー!
って言うよりも、飲ませてもらえなかったんだー!恭也の奴!」

士郎は、金を落とした罰として、昨日は酒を飲ませてもらえなかったのである。

【士郎】
「今、思い出しても腹が立つ!その上、こんな嫌がらせまでしやがって!」

【アルシェラ】
「士郎、少しは落ち着け。コレは本当に恭也じゃ」

アルシェラの言葉に動きを止めると、士郎はまじまじとアルシェラを見る。

【士郎】
「お前まで一緒になって、俺を騙そうと…。
どうせ何処からか、自分に似た子供を攫って来たに違いない」

【アルシェラ】
「違う。これは本当に恭也じゃ。それとも、余が間違えるとでも思うか?」

妙に説得力のあるアルシェラの言葉に、士郎はアルシェラに抱かれた恭也を見る。
その瞳は、先程の士郎の言動ですっかり怯え、まるで小動物のように潤んでいた。

【士郎】
「きょ、恭也。幾ら、嫌がらせでも、これはちょっときつすぎるぞ。
いい加減、元に戻れ」

【アルシェラ】
「だから、落ち着けと言うておろう」

【士郎】
「俺はいたって冷静だぞ」

【アルシェラ】
「何処がじゃ。第一、恭也がこんな事出来る筈なかろう」

【士郎】
「いーや、こいつなら、やる。俺を嫌がらせるためだけにやってみせる」

【アルシェラ】
「あのな…」

飽きれて何か言おうとするアルシェラよりも早く、士郎は言い放つ。

【士郎】
「いや、やる!何だかんだ言っても、こいつは俺の息子だ。嫌がらせの為には手段を選ばん」

よく分からんが、妙に説得力があり、情けない事を胸を張って言う士郎にアルシェラは溜め息を吐く。

【アルシェラ】
「諦めろ士郎。これが現実じゃ。何故、こんな事になったのかは分からんが、恭也自身、自力では戻れないみたいだぞ」

【士郎】
「う、嘘だと言ってくれーーーーーーー!!」

しかし、現実は甘くなく、士郎の望む言葉を掛けるものはそこには誰もいなかった。
最も、この部屋には三人しかいないのだが。
ただ、士郎の叫び声だけが、再び木霊するのだった。






つづく




<あとがき>

うぅぅ〜。前回の嘘予告の所為で、急遽続きを書かされてしまった……。
もう駄目。流石に、さっきの今では完治してないよ〜。
美姫 「いや、充分回復してるって。あそこまでボコボコにしたのに」
そう思うんだったら、もう少し手加減をしてくれよ。
美姫 「あら、充分してるじゃない?それとも、本気の力で喰らいたい?」
あ、あれで本気じゃないって……。遠慮しますです、はい。
美姫 「分かれば良いのよ。でも、事態がやっと展開してきたわね」
うん。この調子で頑張るぞー!
美姫 「じゃあ、急いで次を書いてね♪」
………はい。
美姫 「今の間がちょっと気になるけど、とりあえず、次回まで眠りながら待て!」
ぐぅー。
美姫 「アンタは寝るな!」
ふぎゃっ!








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