とらいあんぐるハート3
〜Sweet Songs Forever〜
−美由希編−
序章
ここビジネス街は昼間は仕事で行き交う人々で溢れている。
しかし、逆に日が沈み時が経つにつれ人の数が減っていく。
それが深夜にもなるとなおさらで、人の姿はほとんどなく、建物からも明かりが消える。
この時間帯、このあたりを照らすのはところどころに設置されている街灯と夜空に浮かぶ少し欠けた月の光だけ。
少し道をそれると街灯の光はなくなり、月の光によってある種、神秘的な光景が創りだされる。
しかし、そんな月の光すらも入ってこないような、建物同士が並ぶ路地裏で二つの影が向かい合っていた。
「じゃあ、兄さん・・・の事、頼んだよ」
まだ、若い女性の声が静かな闇にのまれていく。
「それはまかせろ。
しかし、本当に行くのか?
今ならまだ、間に合う。考え直さないか」
答えるもう一方の影は、先程口を開いた女性よりもやや年上で男性のもの。
「ダメなんですよ、兄さん。
私の中からもう一人の私が言うんだ。
立ち止まるなってね。
どうしても、止まることは出来ない」
「そこまで言うのならもう、止めはしないさ。
ただ、いつでも戻って来い。
俺もそして、・・・も待っているから」
「ありがとう、兄さん。
でも、私は戻るつもりはないよ。
私はあの時、あの人と一緒に死んだんだから。
だから、・・・には最初のとおり伝えてくれて構わないよ」
「そうか、わかった。
もう、何も言わないさ。
だが、お前がこれから行くのは闇の世界のさらに暗部、修羅の道だぞ。
覚悟はしておけ」
「わかってるつもりだよ。
たとえこの先にあるものが全く、光の射す事のない暗い闇でも私は進む。
この呪われた剣とともにね」
「俺たちの剣は別に呪われてなんかいないさ。
闇の剣ではあるがな。
でも、何かを守る為の剣だと俺は思っているよ」
「兄さんらしいよ。
でも、私は何も守れなかった。あの人を、守れなかった・・・。
奇麗事を並べても剣は所詮、人を斬るだけのもの。特に、私たちの剣はね。
守る為の剣なんてありえない。あるのはこの呪われた剣のみ。
でも、私の目的にはそれで充分さ。
じゃあ、兄さん。私はもう行くよ」
「そうか・・・。元気でな」
「ええ、兄さんも」
そう言うと女性の方は、踵を反し歩きだそうとする。
そこへ男性が再び声をかける。
「もし、次に・・・」
「次に?」
女性は振り返らず聞き返す。
「いや、何でもない」
「そう。それじゃ」
女性は一度も振り返らず、まるで闇と同化するかのように夜の闇の中へと消えていく。
それは、これからの歩む道を示しているかのように。
残された男性、不破 士郎はため息を一つつくと女性とは逆の方へと歩き出す。
しばらく歩き、街灯の光が届く所まで来ると足を止め、夜空を見上げる。
(もし、次に会う事があれば、その時は、俺たちの剣が呪われただけの剣ではないことを教えてやる。)
そんな決意にも似た思いを胸中で呟き、再び歩き出す。
しかし、士郎が再び女性に会う事はなかった。
この数年後、士郎はイギリスでボディーガードの仕事中にその命をおとす。
最後まで大切なものを守りとおして・・・・・・。
そして、月日は再び流れ、
ここ海鳴市で思いを受け継いだ者たちは再び問われる事になる。
その剣が、その技が、呪われたものなのか、
それとも、守る為のものなのかを・・・・・
<to be continued.>
<あとがき>
どうも、氷瀬 浩です。
さて、これは長編になります。
先に言うと、とらハ3の美由希編です。
当然、私が書くのでかなりへっぽこにはなると思います。
しかし、がんばって書きますので最後までお付き合いください。
さて、今回は序章と云う事で、本編より昔です。
一応、次回から本編を始める予定です。
基本的には、ゲームの流れに沿って書いていきます。
しかし、多少アレンジが入る可能性もあります。
あまり期待せずに待っててください。
よーし、最後までがんばるぞー!
では、次回作で。