『An unexpected excuse』
〜FC編〜
「俺が、好きなのは…………」
その場にいた全員が息を止め、恭也の言葉の続きを待っている。
「特にいない」
この言葉に全員が思わずこける。
「どうした?皆して」
「恭ちゃん!あれだけ期待させといてそれはないよ!」
「そうよ恭也。美由希ちゃんの言うとおりだわ」
「むー、そんな事を言われてもな。第一、俺なんかにそんな好意を寄せる女性なんていないだろ」
「お師匠、それはさすがにちょっと……」
「そうですよ、師匠。この場でそれを言うのは……」
恭也の台詞を聞き、周りにいた女生徒たちは一斉に恭也を取り込むと、次から次へと喋り出す。
「じゃ、じゃあ高町先輩、私が彼女に立候補しても良いですか?」
「あんた、ちょっと邪魔よ。私!私はどうですか?」
「はいはい!私も立候補します」
「高町くん、私も」
我先にと恭也の周りに群がって行く。
「あー、恭也さんモテモテですね」
「そ、そうですね」
「ちょっと、恭也の内縁の妻は私よ」
「ははは、さ、流石にあの中に飛び込む気はしないな」
「ああ、おサルの言うとおりや」
とりあえずこの日は昼休み終了のチャイムが鳴るまで、この騒ぎは収まる事はなかった。
そして、当然のようにこの話は、その日のうちに風校、海中に広まっていった。
……で、次の日
昼休みを告げるチャイムが校舎に鳴り響く。
そのチャイムを聞き、今まで机に突っ伏していた恭也は、のそのそと起き上がり少し硬くなった筋肉をほぐす為、軽く伸びをする。
「う、うーん。もう昼か」
「恭也!お昼どうするの?」
「忍か。今日も晶とレンが弁当を作ったらしいんだが、一緒に食べるか?」
「もちろん」
そんなやり取りをしているうちに、美由希、那美、晶、レンが教室に入ってくる。
「恭ちゃん、今日はどこで食べる?」
「昨日と同じでいいだろう」
「恭也さん、今日は私もお弁当を作ってきました」
「な、那美さんがお一人でですか?」
「はい、耕介さんに手伝ってもらいながらですけど……」
「「(お)師匠!早く行きましょう」
「ああ、そうだな」
恭也が席を立とうとすると、一人の女生徒が恭也の目の前に立つ。
「あ、あの、高町君。私も一緒してもいい?」
「?別に問題は無いが……。皆もいいか?」
恭也の言葉に不承不承ながらも頷く。
この一連のやり取りを見ていた他の女生徒数人も同じ様に声をかけてくる。
恭也は困ったように美由希たちの方を見るが、最初の生徒に許可をした以上、今更断る訳にもいかずそのまま移動する事にする。
そんな感じで中庭に着く頃には、風校海中の生徒がかなりの数集まっていた。
「なあ、美由希。今日は何かあるのか?」
「えっ、どうして」
「いや、今日はやけに生徒が多くいるからな」
この恭也の台詞に、美由希たちは恭也から少し離れると小声で何やら話し込む。
時折、鈍感だの朴念仁といった単語が出て来る所を見ると、どうやら恭也の事を言っているらしい。
そんなこんなでやっと昼食を取る事ができた恭也だったが、
「高町先輩!よかったら、これ少しどうぞ」
「高町君、これ私が作ったんだけど、どうかな?」
「あ、飲み物がいるわね。お茶でいい?」
「デザートもあるから、良かったら食べてね」
といった感じで始終、世話を焼かれ、声を掛けられ、かなり疲れた様子であった。
しかも、日増しにその数は増えていき、男子生徒からは妬みや羨望の視線で見られ、
美由希たちからは殺気の篭った視線で睨まれる事になる。
(何故、美由希たちはあんなに怒っているんだ?それに、この人たちは何故、毎日来るんだ?)
超天然級の朴念仁は未だにその理由に全く気付かず、首をかしげながら今日も昼食の時間を過ごしていく。
〜おわり〜
<あとがき>
浩 「という訳で、とりあえず、An unexpected excuseの第一弾をお送りしました」
美姫 「これはヒロインを選ばなかったパターンね」
浩 「その通り。こんな感じでヒロイン毎に話を作っていこうかと思っています」
美姫 「で、そのヒロインのリクエストも受付中って事ね」
浩 「おう。出来る限り答えていくぞ」
美姫 「出来る限りって……」
浩 「いや、単純に一気に集中してきた場合、すぐには取り掛かれないと言うだけで」
美姫 「ああ、そう言う事ね。でも、今ならだったら結構OKなんじゃ」
浩 「そうだな。今の状態はリクエストもそんなにないしな」
美姫 「まあ、本当に来るかどうかは判らないけどね」
浩 「はははは。それは言うな」
美姫 「さて、綺麗に纏まった所で」
浩 「纏まったのか!」
美姫 「まあまあ。じゃあ、また次回!」