『An unexpected excuse』

    〜刹那編〜






「俺が、好きなのは…………」

恭也がその名を告げようと口を開いたのを見計らっていたかのように、
そこへと第三者の声が割り込んでくる。

「ようやく京都から戻ってまいりました、恭也さん」

そちらへと全員の視線が一斉に動く。
そこには、長い髪を頭の片側で一つに纏め、風校の制服に身を包み、
肩から長い何かを入れた包みを下げた一人の少女がいた。
少女は突然、その場に居る者が自分へと注意を向けたのにやや驚きつつも、恭也の横へとやってくる。
恭也はそれを笑顔で迎える。

「ああ、お帰り。それで……。聞くまでもないか。
 風校の制服を身に纏っているという事は」

「はい。来週から通うことになります」

「そうか」

親しげに会話をする二人へ、美由希が当然の疑問を口にする。

「恭ちゃん、その方は?」

「うん、ああ美由希たちも初めてだったか。
 こちらは、桜咲刹那さんと言って、来週から風校に通うことになったようだな」

「桜咲刹那と申します。以後、お見知り置きを」

バカ丁寧な挨拶に、美由希たちもつられて頭を下げる。
が、すぐに顔を上げると忍が恭也へと問いただすように口を開く。

「そうじゃなくて、恭也との関係よ。関係!」

「関係と言われても、なぁ」

「え、ええ」

何故か顔を赤めつつ、互いに意識したように顔を背けながら横目で互いの様子を窺う。
その様子をジト目になりつつ見つめる忍たちに気付き、恭也は咳払いする。

「その、俺が大事にしたいと思う人で、その好きな人だ」

「…………」

はっきりと告げた恭也の言葉の意味が分からなかったのか、いや、分かっていたからこそか、
刹那はぽかんとした顔で立ち尽くす。
あまりにも反応がないのに心配になった恭也が、軽くその肩を揺すりながらその名を呼ぶ。

「刹那、おい刹那?」

「えっ、へっ、あ、はい。……え、え、えええぇっ!
 きょ、恭也さん、い、いいいい、行き成り何を!?
 べ、別に嫌という訳ではないのですが、その、このような大勢の人が居るような場所で、
 そのような、あの、ですから……」

「とりあえず、落ち着いて刹那」

「は、はいっ! い、いえ、で、ですけど……」

完全にパニックになる刹那に肩を竦めると、
恭也は刹那の背後へと周って前に腕を回して包み込むように抱きしめる。
流石に恥ずかしいのか、顔を紅くさせながらだったが。
しかし、その甲斐があってか、刹那は徐々に落ち着く。
どうやら、こうされると落ち着くようで、
刹那の顔は完全に恭也を信頼し、とろけきった笑みさえ浮かべいる。
暫くそうしていた恭也だったが、頃合を見て静かに声を掛ける。

「もう落ち着いたか」

「……はい」

どこか夢心地といった様子で応える刹那だったが、すぐに目の間に居る忍たちに気付き、顔を真っ赤にして俯く。
それでも、恭也を引き離さないのだから、これはこれでかなり気に入っているのだろう。
と、刹那は恭也の胸に凭れ掛かるようにやや後方に重心を置きつつ、
自身の前へと伸びている恭也の手を取り、指と指を絡めるようにして遊ぶ。
何が楽しいのか、薄っすらと笑みさえ見せて。
またしても忍たちの事を忘れている事に気付き、慌てて顔を引き締める。
ちゃっかりと指はそのままにして。

「えっと、まあそういう事だから……」

恭也の方が照れながらも、何とか無表情を装ってそう言うと、FCたちは納得したのか、
それとも二人の様子に何も言う事ができなかったのか、ともあれ立ち去っていく。
美由希たちも何故黙っていたのかと言いたそうにしながらも、何も言わずに後を追うのだった。
二人だけとなった中庭で、久しぶりに再会した二人は改めて喜び合う。

「会えない間、時々、不安になりました。
 いえ、今も不安なんです。こうして、恭也さんが傍にいてくれているのに」

瞳に翳を見せながら告げる刹那の言葉を恭也はただじっと黙して聞く。

「本当に幸せを掴んでも良いのか。私にそんな資格があるのかって。
 女としての幸せと剣士として上を目指す想い。それに、お嬢さまの事も。
 お嬢さまに何かあったら、私はすぐにお嬢さまの元へと行くでしょう。
 でも、それは恭也さんを……」

それ以上言わせないように、刹那の唇にそっと人差し指を立てる。

「そんなに悲観的な事ばかり考えなくても良い。
 木乃香に何かあれば、俺も一緒に行く。木乃香は俺にとっても大事な友人だからな。
 どれかを捨てる必要なんてない。全て手にすれば良いんだ。
 俺も協力するし、二人なら大丈夫だ」

恭也の言葉に刹那は小さく頷く。
しかし、その顔はまだ少し不安そうにしている。

「幸せになるのが怖いんだな、刹那は。
 別に誰も責めやしないよ。木乃香だって喜んでくれただろう」

「分かってます。でも……」

「分からなくもないが。今までの事を考えると、急に満ち足りた幸せを恐れるというのも。
 なら、これが当たり前になれば、その内慣れるだろう」

言って恭也は刹那を強く抱きしめると、その首筋に顔を埋める。
突然の出来事に驚き顔を後ろへと向けた瞬間、その唇を塞がれる。
すぐに離れたが、刹那は真っ赤になって恭也を驚きの顔で見詰める。
誰も居ない場所でなら今までにもあるが、学校内という、
いつ誰が来てもおかしくないような状況で恭也がそういう事をしたということに。
驚きに見開かれる刹那の目に、同じように照れて紅くなっている恭也の顔が映る。
じっと見詰めていると、恥ずかしさが肥大したのか、やや慌て出す。
そんな様子をじっと見ていると、何だかおかしくなってくる。
さっきまで感じていた不安も何処かへと行ったみたいに、急に身体が軽くなるのを感じつつ、
刹那はつい悪戯心が湧きあがる。
いつも恭也にやられっぱなしなので、この機にとばかりに。

「まだ不安です。だから、慣れる為にももう一度……」

言って目を閉じるふりをして、薄めを開けて慌てふためく恭也の様子を楽しむ。
いつも平然としている恭也の慌てる姿に自然と浮かぶ笑みを懸命に堪えつつ、
そろそろ許してあげようかと考えていると、不意に肩を掴まれて唇を塞がる。
これには逆に刹那が慌てるが、しっかりと肩を押さえられていて逃げる事もできず、
また逃げる理由もなく、刹那は完全に目を閉じると、ゆっくりと手を恭也の背中へと回すと、
自分から恭也を抱きしめる。
一つに重なったまま、二人は一時の幸せを感じていた。





<おわり>




<あとがき>

…………あ、あはははは。
美姫 「じと〜」
あ、あはあはあは。
美姫 「じ〜」
アハハハハ……。
美姫 「はぁ〜」
ア、アハハハ。
美姫 「ほっっっっっんとーーっに、何を考えてるのよ、このバカ!」
ぶべらっ。
美姫 「またしても、新シリーズだして。何を考えてるの!
    いいえ、何も考えてないのよね。だから、こう次から次に」
いや、だって、これは……。
美姫 「言い訳無用!」
いや、だから、これは、前にリクが……ぶべろぉぉっ!
美姫 「で、何?」
ごめんなさい。私が書きたかっただけです。
美姫 「このバカっ!」
ぶべみょにょびょ〜〜!
美姫 「肝心のとらハの方がまだ全キャラ書いてないのに」
う、うぅぅ。ずいまぜんんん。
美姫 「はぁぁ。で、次は誰なのよ」
えっと、『ネギま!』でなら、木乃香とか、まどかとかエヴァとか、かな。
多分だが。あくまでも予定だし。
美姫 「このシリーズ自体で、次は誰になるの?」
うーん、誰にしようか。
カレン辺りもまだだしな。
美姫 「結局、いつも通りに未定なのね」
そうとも言う!
美姫 「いばらないの!」
ぶげっ!
美姫 「はぁぁぁ。それじゃあ、また次回でね〜」
う、うぅぅ。ではでは。







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