『An unexpected excuse』

    〜瞳編〜






「俺が、好きなのは…………って、別にいいだろがそんな事は」

「駄目よ恭也。言いかけてやめるなんてずるいわよ」

忍の言葉にその場にいた全員が頷く。

「しかし……」

「しかしもかかしもないの。一体、誰なのよ。それとも誰もいないとか?」

「いや、そういう事はないが」

「って事はいるのね。だったら、教えなさいよ。ほらほら」

忍が次から次へと繰り出す尋問紛いの問い詰めに恭也も追い詰められていく。

「まさか言えない理由があるとか」

「そ、そうだ」

忍の言葉に頷く恭也。
これで話さなくてもすむと安堵するが、忍は逆にとんでもない事を言い出す。

「分かった。二股ね!」

『えーーーーー!』

忍の言葉に全員が驚きの声を上げる。

「そ、そんな恭ちゃんがそんな事をするなんて……」

「恭也さん……」

「そんな訳ないだろう!」

「はっ、じゃあ三股?」

「なんでそうなる」

「だって、言えない事情があるなんて言うから。ねー」

忍が美由希たちに半分訊ねるように言う。
それを受けた美由希たちは曖昧に笑うのみだった。
恭也は疲れを感じ大きく息を吐こうとするが、その動きが止まる。
いや、正確には身体が何かに勝手に反応し、その場から跳び退き、後ろへと振り返る。
同時に身体が臨戦態勢を取る。
恭也が反応したのは、背後からすさまじい程の殺気を感じたからだった。
御神の剣士としては当然とも言える行為である。
そして、当然、振り返った今はその殺気の主と対峙する形となっている。
が、恭也は攻撃態勢を解くと戸惑いの声を上げる。

「ひ、瞳。なんでここに?」

「さあ、なんででしょう?」

恭也の問いかけに問いかけで返してきたのは、笑顔を浮かべ腕を組んでいる千堂瞳だった。

「それよりも、恭也聞きたいことがあるんだけどいい?」

「あ、ああ構わないが(何か怒っているような気がするんだが)」

周りを余所に二人だけで話を進めていく恭也と瞳を見て、周りの女子生徒たちが囁きあう。

「あ、あれってもしかして……」

「多分、間違いないわよ。秒殺の女王、千堂瞳さんよ」

「なんで、うちにいるの?」

「あ、それは知ってる。護身道部の鷹城先生と千堂さんって知り合いらしいのよ。
 それで今日の放課後、特別コーチとして来てくれる事になってるの」

「ふーん、そうなんだ」

「そ、それよりも高町先輩とはどんな関係なんだろう?」

「さっきの会話から、知り合いって事は分かるけど」

「そうよね。お互いに名前を呼び捨てにしてたし」

盛り上がる周りを余所に瞳は恭也の目を見てゆっくりと口を開いていく。

「で、二股、三股って何?」

「なっ!聞いてたのか?」

「ええ。前から言ってるわよね。浮気したら、殺すって」

笑顔でそう告げる瞳の目は真剣そのものだった。

「ち、違う!それは誤解だ」

「誤解?」

「そ、そうだ。忍、説明しろ」

そう言うと恭也は忍の襟首を掴み瞳の前に差し出す。

「ど、どうも月村忍です」

「千堂瞳です。……って、あなた確か、さくらさんの」

「へっ、さくらを知ってるんですか?……って、あっああ」

「何だ二人とも知りあいか?」

「ええ。ちょっとね。で、説明って?」

「あ、ああ。さっきの話ですけど……」

ここで忍に悪戯心が芽生え、少し嘘を言おうとするが、さっきの瞳の殺気を思い出し思い直すことにする。

(やめとこ。命が幾つあっても足りない気がするわ)

忍は素直に自分の冗談だという事とこれまでの経緯などを簡単に説明する。
それで納得した瞳は少し頬を染めると恭也に頭を下げる。

「ごめんね恭也」

「いや、いい。気にするな。全て忍が悪いんだから」

「な、なんで私のせいなのよ」

「他に誰のせいだと言うんだ」

「うっ。で、でも恭也が素直に言えばこんな事には。ってそうよ!
 恭也、瞳さんと付き合ってるんでしょ。だったら、始めからそう言えばこんな事にはならなかったんじゃない」

「ま、待て忍。それは責任転嫁だぞ」

「ううん。そんな事ないよ。だって恭也と瞳さんって付き合ってるんでしょ。だったらどうして言わないのよ」

忍の問いかけに瞳も聞きたそうな顔で恭也を見る。
やがて恭也は話し始める。

「た、確かに瞳と俺は恋人同士だが、それを言って瞳に迷惑がかかったら困るから黙っていたんだ」

「迷惑?」

「ああ。瞳は護身道の世界では有名だからな。それでな」

「ふーん」

「恭也……」

恭也の言葉に納得する忍と少し目を潤ませる瞳。

「そもそもお前が変な事を言うから……」

また忍に文句を言おうとした恭也の台詞は横から飛びついてきた瞳によって防がれる。

「ひ、瞳?!」

「恭也!そんなに私の事を考えていてくれたなんて。なのに私ったら疑ってごめんね」

「別に気にしていない。それに、瞳の事が好きだからな、当たり前だろ」

そう言って瞳の背中を優しく撫でる。

「恭也〜」

瞳は甘い声を出すと恭也に強く抱きつくと、そのまま恭也の唇を奪う。

「んっ!」

突然、目の前に瞳の顔が一杯に大写しになり、唇に柔らかい感触を感じた恭也は驚きの声を出すが、
唇を塞がれていてくぐもった声しか出ない。やがて、恭也は観念したのか大人しく瞳にされるがままになる。
それを感じた瞳は舌を恭也の中へと侵入させ蹂躙していく。
ここで、恭也も反撃に出る。舌を絡め、逆に瞳の中へと侵入する。
あっという間に立場を逆転させた恭也は執拗な程、舌を瞳の口の中へと行き来させる。
次第に身体から力が抜けていく瞳を両手で抱えながら、尚も攻めるのをやめない。
すでに周りの女子生徒たちは顔を赤くしながら目を手で覆っている者、あらぬ方向を見ている者、その場を去る者などが出ている。
当然、二人のやり取りを一部始終見ている女の子たちもいる。
しかし、二人はすでに周りが目に入っておらず未だに口付けをしている。
やがて瞳は完全に力が抜け、身体を恭也に預ける。
恭也は瞳を支えながらゆっくりと唇を離す。
二人の間に先程までの行為の名残が出来る。
瞳は上気した顔のまま恭也の耳に口を近づけるとその耳元にそっと囁く。

「恭也、上手すぎ……」

恭也は何と答えて良いのか分からずにただ苦笑を浮かべ、瞳の髪を優しく撫でる。
瞳は嬉しそうに目を細め、恭也にされるがままになる。
そこへ遠慮がちな声がかけられる。

「あ、あのー恭也さん……。そ、そろそろ昼休み終わっちゃいますけど」

顔を赤くした那美が目を少し逸らしながらそう言う。
その声に恭也と瞳は改めて現状を思い出し、周りを見渡す。
周りには顔を赤くした女子生徒たちがいて、恭也が目を向けると慌てて下を向いたり、横を向いたりする。
慌てて離れようとするが、瞳はまだ身体に力が入らないのかよろけそうになる。
そこを恭也が再び抱え、そっと地面に座らせる。

「大丈夫か?」

「ええ。すぐに元に戻るわ」

そう言って微笑むと瞳は続ける。

「だから、午後の授業に行っていいわよ」

「し、しかし、このままの瞳を置いていくのは……」

「いいから、行きなさい。恭也はまだ学生なんだから。学生の本分は勉強よ。いいわね」

「あ、ああ、分かった」

「その代わりって訳でもないんだけど、また放課後にね」

「ああ、分かった」

恭也が納得したのを見ると、そっと恭也にしか聞こえない声で囁く。

「続きは今日の夜にね」

その台詞を耳にした恭也は顔を赤くし、足早にその場を離れて行く。
そして、未だに興味深げに瞳をみている生徒たちにも瞳は声をかける。

「ほら、あなたたちも早くしないと授業に遅れますよ」

この言葉に全員が頷き、その場を後にする。
後に残された瞳は何とか身体に力を入れると立ち上がり、道場へと向って楽しそうに鼻歌混じりに歩いて行く。
そして放課後、護身道部の指導を終えた瞳と恭也は連れ立って校門を出て行くと、そのまま暮れていく街へと消えていった。
ちなみに恭也はその日、高町家に戻らなかったらしい。





おわり



<あとがき>

今回は慧さんの77,777Hitきりリクで瞳編でした。
美姫 「きりリクありがとうございました〜。とか言ってる間にもう次のきりリクね」
うむ、速いものだな。
美姫 「いや、速いんじゃなくて浩が遅いだけ」
ぐはぁ、それを言うなよ〜(泣)努力はしてるんだから。
美姫 「はいはい」
つ、冷たいな。
美姫 「浩に関して言えば、結果の伴わない努力なんて認めないわ」
うぅ〜。ま、いいか。
美姫 「ったく、立ち直りは早いわね」
まあまあ。今回は77,777フィーバーという事でいつもより際どい所まで……。
美姫 「これって大丈夫なの?」
まあ、この程度ならOKでしょう。(多分)
美姫 「まあ、そう言うんならいいけど」
おう。じゃあ、今回はこのへんで。
美姫 「そうね。じゃあ、また次回でね」




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