『An unexpected excuse』

    〜なのは編〜






「俺が、好きなのは…………なのはだ」

『えぇぇーーーーーーーーーーーー』

恭也の驚くべき告白に真っ白になる美由希たち。だが、FCの人たちはなのはがいかなる人物かを知らないので、
美由希たちとは違い単純に恭也に好きな人がいることにショックを受けている。
そして、FCの人たちはショックを受けたまま、その場を後にする。
一方、残された美由希たちは未だにショックを受けていた。

「おい、そろそろ休み時間も終わる頃だぞ。おい!美由希、晶、レン。忍に那美さんも」

恭也が美由希たちに声をかけるが、当人たちからは全然反応が返ってこない。
恭也は溜め息を一つ吐くと立ち上がり、

「俺は先に戻っているからな。ちゃんと遅れないようにするんだぞ」

その声が美由希たちに届いていたかは分からないが、それだけを言うと先に教室へと戻って行った。
結論から言うと、全員午後の授業には間に合わなかった。
更に、全員が心ここにあらずの状態で放心しており授業の内容など聞いていないに等しかった。







放課後、恭也は未だに呆けている忍に一応、一声掛けてみるが忍からは反応がない。
恭也はそれ以上は放っておく事にしたらしく、そのまま教室を出て帰宅しようとする。
その腕を忍が掴んで止める。

「恭也、なのはちゃんは血の繋がった妹なんでしょう」

忍の言葉が終る前に、教室に美由希たちが雪崩れ込んでくる。

「忍さんの言う通りだよ、恭ちゃん」

「恭也さん、禁断の愛に憧れるのも分かりますけど、現実はそんなに甘くないですよ」

「師匠、年下が良いのなら、俺が」

「おサルは黙っとき!お師匠、うちが!」

恭也に詰め寄りながら、口々に言ってくる美由希たちを手で制し、恭也は疲れた顔で言う。

「はぁー。お前たち、少しは落ち着け。
 なのはは妹なんだから、好きに決まっているだろうが」

『はい?』

恭也の言葉に美由希たちの動きが止まる。
それを確認して、恭也はゆっくりと話す。

「それとも、お前たちはなのはが嫌いなのか?」

心底不思議そうに尋ねてくる恭也に、美由希たちは顔を見合わせて苦笑をする。

「あはははー。そういう事か。うん、なのはちゃんは可愛いし、好きだよ」

「私も好きにきまってるじゃない。変な事聞かないでよ、恭ちゃん」

忍、美由希に続き、那美たちも同じような答えを返す。
それを一通り聞き、恭也は頷く。

「だろう。だったら、何故そんなに怒っているんだ?」

「別に怒ってなんかいませんよ。ねえ、美由希さん」

「うんうん。恭ちゃんの勘違いじゃない。あ、那美さんちょっと寄り道して行きましょう」

美由希と那美は頷き合うと、仲良く教室を出て行く。
それに合わせたかのように、忍たちも教室を出て行く。
それを確認し、恭也はほっと胸を撫で下ろすと、家路に着くのだった。







家に帰ると、まだ誰も帰って来ていないらしく、玄関に鍵が掛かっていた。
それを開け、恭也は部屋で着替えを済ませると、特にする事もなくリビングで湯呑みを傾ける。
暫らくそうしていると、玄関が開き誰かが戻ってくる。
声から察するになのはのようだった。
なのはは部屋に戻り、着替えを済ませるとリビングへと顔を出す。

「ただいま〜、お兄ちゃん」

「ああ。なのは、先に手を洗え」

「はーい」

なのはは元気に返事をすると、手を洗う。
それからコップに飲み物を注ぎ、恭也の横へと腰を降ろす。

「お姉ちゃんたちはまだなの?」

「ああ」

それで会話は終わり、二人は静かにお茶を飲む。
一口、二口と飲んだ所で、恭也がなのはに話し掛ける。

「なのはは出掛けないのか」

「うん。久し振りなんだもん。お兄ちゃんと一緒にいるの」

「そうか」

嬉しそうに笑うなのはの頭を恭也は優しく撫でる。
普段、あまりかまってやれない分を補うかのように。
そんな恭也に甘えるようになのはは呟く。

「お兄ちゃんは誰か好きな人、いないの?」

「皆、好きだぞ」

恭也の予想通りの答えに、なのははこれみよがしにため息を吐く。

「そういうんじゃなくて……。家族や友達としてじゃない好きなんだけど」

なのはの言葉に恭也はどういったもんか悩み、とりあえずそんな事を言う理由を尋ねる。

「どうして、そんな事を聞くんだ?」

「うん……。実は今日、学校でねそういう話になったの。
 それで、なのはの好きな人はって聞かれたから、お兄ちゃんって答えたの」

恭也は黙ってなのはの話を聞く。
しかし、その実、鼓動はかなり早くなっていた。
そんな恭也の様子に気付かず、なのはは少し俯いたまま話を続ける。

「そしたら、そういった好きじゃないって言われて……」

恭也はなのはを慰めようと、頭に置いた手を軽く動かして再び撫でる。
そして、優しい口調でなのはに答える。

「その子は、家族以外でという意味で聞いたんだろうな」

「うん。それで、その後に兄妹でそんなのは可笑しいって言われた」

悲しそうに言ったなのはの言葉に、恭也は少し胸に痛みを覚えるが、それを隠し、なのはの頭から手を退ける。

「その子も悪気があって、言ったんではないだろう」

そんな恭也の言葉を遮る形で、なのはは顔を上げると恭也に詰め寄るように声を上げる。

「でも! なのははお兄ちゃんが好きなんだもん。それって可笑しい事なの?」

「なのは、それは別に可笑しい事ではないよ。
 ただ、その子は家族としての好きじゃないを聞いたのに、なのはが家族の名前をあげたから、可笑しいって言っただけだ。
 別に家族なんだから、好きでも可笑しくないだろう」

恭也の言葉になのはは激しく首を振る。

「違うもん!なのははちゃんとお兄ちゃんの事が好きなんだもん!
 お兄ちゃんの事を、お兄ちゃんとしてじゃなくて、一人の男の子として好きなんだもん。
 だから、お姉ちゃんや晶ちゃん、レンちゃん、それに忍さんや那美さんにも渡したくないって思ってるの!」

なのはの言葉に、そして何より、子供と思っていたなのはがやっぱり一人の女性なんだと思わせるような態度に、
恭也は驚き、言葉に詰まる。
それをどう受け取ったのか、なのはは恭也から少し離れると、寂しそうな顔をする。

「ごめんね、お兄ちゃん、変な事言って。今のは忘れて。
 ……やっぱり、兄妹なのにこんな気持ちになるのは、なのはが可笑しいからなんだね」

そう言って部屋を出て行こうとしたなのはの腕を掴み、足の上に乗せる形で胸の中に抱き締める。

「なのはの言う通り、兄妹でこんな気持ちを持つのは可笑しいのかもしれない」

その恭也の台詞に、なのはは怖がるように身を一度震わせる。
次に紡がれる言葉を聞きたくなくて、耳を塞ぎたかったが、なのはの片腕は恭也に掴まれ、そうする事は出来ない。
そんななのはに構わず、恭也はそっと続ける。

「でも、だとしたら、俺も可笑しいんだろうな」

恭也の意外な言葉に、なのはは訳が分からず、きょとんとした顔で恭也を見上げる。
思った以上に近くにある恭也の顔に胸をドキドキさせつつ、その唇から紡がれる言葉を期待と不安を抱きつつ待つ。

「俺もなのはの事が好きだから。勿論、妹としてではなく」

そう言って、恭也は今日の昼と放課後の出来事を話して聞かせる。

「やっぱり、この気持ちは隠しておかないといけないと思ったから、美由希たちには誤魔化したが……。
 自分まで簡単に誤魔化せるほど、軽いものではなかったからな。一生言わないつもりだったんだが……」

恭也の言葉を聞き、なのはは涙を零す。
それを慌てて拭い、心配そうな顔でなのはを見詰める。
そんな恭也になのはは笑い掛ける。

「違うよ、お兄ちゃん。この涙は、嬉しかったから。
 本当に、嬉しかったから……う、うぅぅ、ぐすぐす」

また泣き出したなのはの顔を胸に埋め、その頭をそっと撫でる。
やがて、落ち着いたのか泣き止んだなのはの瞳を正面から見詰め、恭也は改めて自分の気持ちを口にする。

「なのは、愛してる」

「なのはも……」

二人はそっと唇を近づけると軽く触れる程度のキスを交わす。
誰にもいえない禁じられた愛だけれど、それでも二人一緒にいたいという想いが何よりも強いから。
抱き合ったまま、恭也は囁くように言う。

「誰にも言えないし、ばれたら後ろ指さされることになるぞ。
 それでも良いのか?」

「うん。それでも、なのははお兄ちゃんと一緒にいたいから。
 お兄ちゃんがいてくれたら、他には何もいらないから」

なのはの答えを聞き、恭也は抱き締める腕に力を込める。

「絶対に離さないからな」

「うん、離さないでね」

外が紅く染まり、部屋の中までも朱へと染める中、二人は誓い合うように再び唇を重ねる。
この先、二人を待つものがどんなに険しくても、お互いの想いだけは決して譲れないと言わんばかりに。





<おわり>




<あとがき>

Mr.Kさんの64万リクエストにして、書く、書くと言いながら、全然書いていなかったなのは編〜。
美姫 「自分で言う所が既に……ね」
はははは。
美姫 「でも、こんな展開して良いの?」
……実は血が繋がっていなかったネタはやってしまったからな。
今回はこっちで。
美姫 「し〜らない」
ははははは。ま、まあ、兎も角祝!50人目!
美姫 「おめでとう!」
ありがとう!
美姫 「でもさ……」
何々?
美姫 「正確に数えると50人目じゃないのよね」
な、何!?
美姫 「だって、最初は誰もいないってパターンだったでしょう。
    まあ、これはFC編として一人と数えても良いけど……」
うんうん。
美姫 「なのははこれで2回目でしょ。この時点で49人目。
    そして、途中で一回、翼持つもの編ってのをやってるでしょう」
あ!
美姫 「だから、人数で言うと48人目?さらに、FCをなしにすると、47人目なのよね」
あうあうあうあうあう。
え、えっと……、え〜。
よし!50作目という事で。
美姫 「何か急よね」
まあまあ。とりあえず、祝50作目!
美姫 「で、その50作目が禁断もの」
あはははは。
とりあえず、次に取り掛からなくては……。
美姫 「逃げたわね……。はぁ〜、じゃあ、また次回でね」







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