2007年1月〜2月
2月24日(土) |
美姫 「美姫ちゃんの〜」 ハートフルデイズ〜 美姫 「はっじまるよ〜」 <この番組は、PAINWESTの雑記コーナーより、緊急避難完了としてお送り中!> って、何故に今日まで更新してるんだ。 美姫 「いや〜、無事に作業が終了したからつい」 いや、ついでやられる方は大変なんだが…。 美姫 「ほら、昨日最後は慌しかったから。まあ、仕切り直しよ」 いやだ〜〜!! 美姫 「ほらほら、そんな事よりももう大丈夫なんでしょうね」 多分な。あの後、式に連絡〜。 朝から式のお古のハードディスクと交換してもらった。 SSのデータも移行してもらったぜ! 美姫 「良かったわね。式が偶々前のハードディスクを持ってて」 おう! 容量は前と同じままだが。 美姫 「130GBだったかしら」 うん。ともあれ、オニューと言えるかどうかは兎も角、俺の中ではおにゅ〜。 美姫 「しかし、式もご苦労さまよね」 違うんや〜。あかんのや〜。機械はややこしいねん。 美姫 「機械って」 だってよ、ハードディスクからハードディスクに移すのはコピーなり何なりだってのは分かるよ。 でも、三台異常は繋げれないから、最初に前のデータだけを移して、それから付け替えてって言われても〜。 美姫 「いや、普通に分かる話だと思うけれど」 はぁ、これだから知っている奴は。知らない奴に取って、中を開けるというだけでも恐怖なのに。 美姫 「まあ、とりあえずは大丈夫そうで良かったじゃない」 うんうん。という訳で、ゆっくりとゲームでも……。 美姫 「SS書け!」 ぶべらっ! 美姫 「ったく、このバカだけは……」 あ、あはははは。 美姫 「ともあれ、CMよ〜」 いやいやいや、ないよ、ないない。 美姫 「レッツゴー」 いや、聞けよ、本当に。 TH−29超砲撃戦艦(スーパーシューティング) タカマチナノハ サポートAI:レイジングハート ミドルレンジからロングレンジに長けた主砲級の武装を多数装備した戦艦。 ロングレンジよりも遥かに長い、超々長距離からの砲撃と強固な防御力も持つまさに移動要塞。 ただその主砲の多さや射程距離の長さから、敵味方問わずに撃つなら兎も角、敵だけを狙い打つには相当の腕が必要。 複数の照準を一瞬にして合わせる能力と、それぞれの主砲を手足のように使い分ける技術がないと、 この艦の力を100%発揮できないため、今まで乗る事が出来る者はいても、使いこなせるものはいなかった。 コクピット内には他の艦なら主砲として扱われても可笑しくない大出力のSY−32の副砲発射に関するものだけで十六もある。 これは十六全てがバラバラに敵を狙えるための措置だが、その所為で余計に扱いが難しくなっている。 主砲となる武装の他に、スターライトブレイカーと呼ばれる秘密兵器も搭載されている。 TH−27超武闘戦艦(スーパープロクシブバトル) タカマチキョウヤ サポートAI:八景 完全に接近戦用に特化させた機体。 主砲となる武装でさえ今では副砲としても見る事もないSY−20が一門のみ。 他には次元転換魚雷を200持つだけの上に装甲もとても薄いという、それだけを見るなら最弱とも言える艦。 ただし、この機体の真髄は一撃離脱で、速度に関しては他の艦と比べてもトップレベル。 この艦の主武装は、その艦本体より伸びたアームに繋がった刀のような武器と、必要以上に鋭いエッジの翼。 この刀と翼により、擦れ違うようにして相手の機体を斬り裂く事を主とする機体である。 が、今までの戦艦での闘い方を覆すような戦艦であるため、乗り手も見つからなかった。 TH−25超速砲戦艦(スーパーヴェラシティ) ツキムラシノブ サポートAI:すずか オールマイティな高性能を誇る非常に能力の安定した艦。 逆にそれ故に完全に使いこなせないと器用貧乏で終わってしまう。 武装の種類が最も豊富だが、それを選択して使い分けないといけないため、慣れないと思ったような武装がすぐに使えない。 他にも潮汐力ブースター、斥力場ターボが機体のあちこちに装備されており、アクロバティックな動きを可能とする。 ただし、こういった操作性の難しさから、これまた完全に力を引き出せる者はいなかった。 TH−23超電脳戦艦(スーパーサイバーエレクト) ノエルキドウエーアリヒカイト サポートAI:ファリン 情報を扱う能力に非常に優れた戦艦で、探索能力は他の艦と比べても随一で情報の収集から分析までをも行える。 探索用の超小型搭載艦ブローブを操り、自身は動かずとも周囲の状況を調べ上げる事が可能。 このブローブには小さいながらも武装がされており、威力は小さいが単独での攻撃も可能な上に細かい指示も出せる。 ただし、ブローブにはそれぞれ操作が必要で数が増えればその分操作も複雑になっていく。 操作の難しさで言えばTHシリーズ随一である。また、ブローブの操作と同時に情報の選別なども行わないといけないため、 艦を動かせてもブローブはあまり動かせなかったり、ある程度操縦出来る者でも情報を上手く整理できず、 この艦の本来の意味を完全に発揮出来る者はいないという実状であった。 TH−2系列のこれまでの簡単な報告及び、性能を纏めたレポートを読みながら、リオン提督は嘆息してそれを机の上に放り投げる。 「全く、あなたもまたとんでもないものを作ってくれたわね」 「あははは。ですが、こうして艦の性能を引き出せるパイロットも揃った事ですし、まあ良いじゃありませんか」 そう言ってにこやかに笑うローソンに言うだけ無駄だと悟ったのか、リオンは何も言わずにただ呆れたような、諦めたような表情を覗かせる。 「それで、TH−2系列のパイロットたちは?」 「今、洋子くんたちが迎えに行ってますよ。我々もそろそろ会議室の方へと移動しましょう」 「そうね」 リオンは座っていた椅子から立ち上がり扉に向かって歩いていく。 その後ろを付き従うようにローソンも歩きながら、その背中へと問い掛ける。 「それで、彼らの合否は?」 「分かっているでしょう。 20世紀からのスカウトというのはまた問題のある事だけれど、それを隠す苦労と比べてみても彼らの腕は欲しいわ。 何よりも、あのTH−2系列を操れるパイロットは他にいないのだし」 リオンの提督に満足そうに頷くローソンの、その胸のうちがが手に取るように分かる。 (きっと更に機能を弄るつもりなのね。現在あるTA−2系列、TH−2系列を弄るのはこの際良いけれど、 また新たな艦を作られては堪らないわね。ここはしっかりと釘を指しておきましょう) やや目を細めるリオンが口を開くよりも早く、心底楽しそうな笑みを浮かべていたローソンが口を開く。 「勿論、新しい艦なんて考えていませんよ。 これからは、TH−2系列の艦の技術をTA−2系列に組み入れて更なる躍進を計るつもりですから。 そしてその逆も然り。 どっちにせよ、TA−2系列もTH−2系列も更なる高みへ! あの八人なら、きっと使いこなしてくれるでしょう!」 言っている内に興奮してきたのか、ローソンは鼻息も荒く拳を握り締めて高く掲げ、 それを見たリオンは呆れたように吐息一つ零すと、ローソンをその場に置いてさっさと会議室へと向かうのだった。 ぜ〜、ぜ〜。 まあ、CMと言えるかどうかは微妙だが、何とかなった。 美姫 「うんうん、信じてたわ」 その割には、背中に突き刺さる冷たくて固い感触はなんなのでしょうか、美姫様。 美姫 「勿論、無理って言ったとき用よ♪」 あはははは〜。 美姫 「今のところPCも好調みたいだし、いい事だわ」 願わくば、このまま好調でありますように。 美姫 「そう祈りを捧げつつ…」 今週はこれま……って、昨日も言ったんじゃ。 美姫 「大丈夫よ、昨日は今回って言ってたから」 お前、まさか初めからやるつもりで。 美姫 「いや、言ったのはアンタだし。って言うか、偶々でしょう」 だったな。あははは、思わず疑っちゃったよ。 美姫 「はいはい」 では改めて、今週はこの辺で。 美姫 「それじゃあ、今度こそまた来週〜」 って、来週って言ったのは間違いないよな! なのに、翌日の今日って! 美姫 「全てはもう遅すぎるわよ♪」 シクシク…。 |
2月23日(金) |
美姫 「美姫ちゃんの〜」 ハートフルデイズ〜 美姫 「はっじまるよ〜」 <この番組は、PAINWESTの雑記コーナーより、疲労しつつもお届け中!> ふぅ〜。どうにかこうにか更新できそうだな。 美姫 「本当に冷や汗ものだったわね」 ああ。昨日、一昨日、更に前。 美姫 「手っ取り早く火曜日で良いじゃない」 そう、魔の火曜日! 事もあろうに、フリーズ。 投稿作品をアップした後で良かったよ。 美姫 「しかも、その後再起動してもすぐにフリーズしたのよね」 うん。 で、三回目は怖くてすぐに保存しては書き、保存しては書きと繰り返し。 美姫 「保存をした瞬間にフリーズ」 なのに、再起動した後データを呼び出してみたら保存されてなかった(泣) 美姫 「まあまあ。こまめに保存してたお陰で、そんなに被害もなかった事だし」 だな。 とりあえず、困ったときの式先生〜。 ってな訳で、現在に至る。 美姫 「で、何が悪かったの?」 さあ? とりあえず、今は大丈夫だから良いかな。 美姫 「……はぁぁ。そんなんだから、ちょっとしたエラーで右往左往するのよ」 ちょっとしたエラーじゃないと思うけど…。 まあ、何はともあれこうして何事もなく出来て良かった、良かった。 美姫 「それは確かにね。でもね、更新が出来てない言い訳にはさせないからね」 ……のぉぉぉ〜〜 美姫 「まあ、諦めなさい」 って、お前が言うなよ……。 美姫 「とりあえずは、CMよ〜」 とりあえずって、何が? 30世紀の世界では技術革新の結果、人類は宇宙へと飛び出していた。 更なる技術力向上により戦争で人の死ぬ事も無くなり、戦争自体一種のスポーツライク的なものとなりつつある。 いや、既になっていると言えるであろう。 そんな30世紀の宇宙空間に浮かぶ一つの艦内でのこと。 「ちょっとローソン! 次の戦いまで後一月なのよ。 私たちと組むチームってのは誰なのよ。もう誰だって良いじゃない」 「まあまあ、落ち着いて洋子くん。何せ、今回は二チーム編成だからね。 そうなると、君たち以外にも後四人、一チームが必要になるんだよ」 切れ長の目を吊り上げてそう喚いた少女――洋子を宥めるのはローソンと呼ばれた一人の男性。 困ったような顔をしつつも笑みさえ浮かべる気弱そうな雰囲気のローソンへと、 ポニーテールにした髪と身体を前後に揺らしつつ紅葉が尋ねる。 「そやかてローソンさん。流石にぶっつけ本番やとチームワークも何もないんとちゃいます」 「何を言ってるのよ、紅葉。早い話、私たちだけで倒しちゃえば良いんじゃない」 フリルのたくさんついた衣服に身を包み込んだ少女、まどかが簡単そうに告げる。 それを聞いてこの場にいる残った少女が困ったように口を開く。 「ですが、相手の方がチームワークで来られると流石にきついですよ」 「綾乃の言う通りだけど、かと言って私たちの動きに付いてこれるチームが居ないという実情じゃ、 こっちはチームワークも何もないんだけれどね」 洋子の言葉にローソンは苦笑しつつも胸を張って自慢するように断言する。 「そりゃあね。僕の発明したTA−2系列艦に並ぶ艦(ふね)そのものがTERRA側にない上に、 そのTA-2シリーズを君たちが使いこなしている以上はね」 「何でそこで自慢できるのかしら」 「本当よね〜。そもそも、機体の性能が高すぎて誰にも操れないってのだけでも問題ありだってのに、 それを操れる私たちをスカウトできたかと思えば、チーム戦ではついてこれる味方が居ないってどうよ」 呆れた洋子の言葉に乗るように、まどかも苦言を呈する。 そんなまどかを横目に見遣りつつ、洋子は半分投げやりに口を開く。 「もう一層のことさ、シューティングゲームなんかでよくあるオプションみたいなのを四機作っちゃえば」 洋子の言っている意味が分からずに首を傾げていたローソンだったが、 それは聞き流す事にして現状の問題打開に関する事を話し出す。 「まあ、僕としても何もしてなかった訳じゃないんでね。 洋子くんたちのTA−2系列と同性能の戦艦をちゃんと設計、開発していたんだよ」 これで機体に関しては遅れは取らないと言う割にはローソンの顔はあまり喜ばしいものではなかった。 心配そうにローソンを見つめる紅葉に、それなら楽勝と既に勝った気でいるまどかと違い、 洋子と綾乃は何かに気付いたかのように互いに顔を見合わせ、互いに考えている事が同じだと悟る。 その考えこそがローソンの表情の原因でもあるのだと既に分かった二人は、 お気楽なまどかへと洋子は挑発するように、 「まったく、本当にアンタはそのおでこのようにおめでたいわね」 「何ですって! おめでたいのとおでこと何の関係があるのよ!」 「ああ、よらないで。照明が反射してまぶしい」 「きぃぃ〜。この猫娘が〜」 「誰が猫よ、猫!」 取っ組み合いの喧嘩にまで発展するかと思われた二人のやり取りはしかし、 綾乃の静かな咳払いで収まる。 「洋子さんも気付かれたみたいですけれど、 私たちが操るTA−2系列艦と同性能という事は、その欠点もですよね」 「あははは」 綾乃の言葉に引き攣った笑みで応えるが、それが答えのようなものである。 一方、それを聞いてもまどかと紅葉の二人は首を傾げる。 TA−2系列艦は似たような艦がNESS側にも出てきたとは言え、まだ先端とも言える技術を用いた艦である。 それぞれに特徴は違うが、欠点と言われても思いつかないのだ。 そんな二人へと今度は洋子がはっきりと告げる。 「つまり、高性能故にその力を引き出せるプレイヤーが居ないって事よ。 だからこそ、わざわざ私たちが20世紀から未来にスカウトされたんでしょうに」 洋子の指摘にあっとなるまどかと紅葉。 対してローソンは乾いた笑みを上げ続ける。 「あははは。まさにその通りなんだよね。 実は洋子くんたちには言ってなかったけれど、 その新しい戦艦のパイロット選出をシュミレーターでやってみたんだけれど……」 「駄目だったわけね」 「面目ない。前とは違って、洋子くんたちのTA−2系列艦の存在が有名になってきているからね。 当然、その動きを見ているパイロットたちも居る。だから、今回は出てくるかと思ったんだけど…。 良いとこ、艦の性能20%を引き出したって人が最高記録さ」 「まあ、私みたいな天才はそうそう居ないって事よね〜」 「おでこの戯言は聞き流しといて、結局はどうなるわけ? 何なら、一層の事私たちだけでも良いけれど」 「ちょっと洋子! 既にその名詞で私を指すな! って聞きなさいよ!」 立ち上がるまどかを後ろから紅葉が羽交い絞めにして止めて宥める。 「まあまあ、まどかちゃんも落ち着いて。 しかし、実際どないするんや、ローソンはん」 「今回は二チーム編成である以上、登録は二チームじゃないといけない。 だから、最悪はチームワークなしで、それぞれのチームでバラバラにって事になるだろうね。 でも、相手が相手だからね」 「まあ、何とかなるんじゃない」 お気楽なまどかと違い、洋子は慎重に考える。 が、先程のローソンの言葉に引っ掛かりを覚えて脳内で再生してみる。 「ん? んんっ? ちょっと待ってローソン。 最悪って事は、何か他にも策を考えているってこと?」 「そうだよ。こっちはどうなるかまだ分からないけれどね。 前回と同じ問題が持ち上がったのなら、解決策も前回と同じようにすれば良いじゃないか」 「それって、まさか…」 洋子の言葉にローソンはニヤリと笑う。 「そうさ、適正のある者をスカウトすれば良いのさ。 勿論、20世紀からね」 「これが君たちに乗ってもらう事になる船、戦艦だよ」 言ってローソンはパドックを見下ろす位置から自慢するように両腕を掲げる。 簡単の声が二つ上がり、残る二人は冷静に艦を見下ろす。 もうちょっと驚いて欲しかったとぼやきつつ、ローソンは簡単に説明をしようとして、 紅一点ならぬ、唯一の男によって止められる。 「もう一度確認しますが、本当に搭乗者に危険はないんですね」 「ああ、大丈夫だよ。だから、安心してくれたまえ」 男――恭也の言葉にローソンは自信たっぷりに返す。 恭也の前、パドックにある艦を見ていた少女が振り返って笑いを堪えるように口を開く。 「しっかし、本当に心配性だね恭也は」 「忍、お前ほどお気楽になれないだけだ。第一、俺だけ乗るのなら良いが…」 言って恭也は忍の隣にいる小さな少女へと視線を移す。 勿論、それが分かっていて忍は言っているのだが。恭也もそれが分かっていて尚そう口にしてしまう。 憮然とする恭也に忍は更に笑いを堪える。 「はいはい。恭也はなのはちゃんに甘いからね」 「甘い、甘くないの問題じゃない」 ぶすっと拗ねたようにそっぽを向く恭也を見て、忍となのはは顔を見合わせて笑みを見せる。 それを横目に伺いつつ、恭也は話の腰を折った事を詫びる。 「どうぞ、続けてください」 「ああ。皆にはここに来る前に渡した簡易シュミレーターでそれぞれの艦を操ってもらった訳だけど、 今日はそれよりも難易度の上がった事をやってもらう。 具体的な内容は後で説明が入るけれど、とりあえず実際に搭乗してもらうから。 実際に戦艦を動かすと、シュミレーターとはまた違うからね。 それを見て提督が最終的な判断をするから。それじゃあ、早速で悪いけれど準備してもらっても良いかな」 ローソンの言葉に四人が四人とも頷くと、それぞれの艦に搭乗するための準備に取り掛かるのだった。 全長1500メートルにも及ぶ艦をたった一人で全て制御し、操縦するのである。 細かいサポートをする者がどうしても必要であるのは仕方がないであろう。 そこでそれらを一手に引き受けてくれるのが、人口AIである。 登録時に好きな名前を付けれると聞いて、忍は恭也と名付けようとしてあっさりと本人に却下される。 「良いじゃない。私の艦なんだから〜」 「あのな。戦闘になった際、お前が俺に呼びかけたのかAIに呼びかけたのか分からないだろう。 俺の呼び方を変えるならともかく」 「うーん、じゃあ恭ちゃん」 「本気で殴らせてくれ」 「あ、あははは。そんなに嫌がらなくても良いじゃない。 仕方ないわね。うーん、じゃあ、すずかで良いや」 「あ、それってもしかしてアニメに出てくる女の子の名前ですか」 「そうよ〜。何か他人に思えなくてね〜」 なのはとアニメの話で盛り上がり始めた忍に、恭也は話の内容に付いていけずに残る一人へと声を掛ける。 「ノエル、どうだ?」 「問題ありません。ファリンも問題なしと言ってます」 「ファリン? ああ、それがノエルのAIの名前か」 「はい。忍お嬢様がすずかと名付けられたので、彼女に仕える従者の名前にしました」 忍に仕えるノエルらしい選択に恭也は知らずに笑みを見せ、さっさと自分のAIに名前を付ける。 「という訳で、頼んだぞ八景」 やはり相棒の名前はそれが一番しっくり来るのか、返って来る声に恭也は満足そうに頷く。 そろそろ発進だとローソンから連絡が入り、四人はやや緊張気味に操縦桿を握り込む。 ゆっくりと目の前の防壁が開いていき、その向こうに闇を映し出す。 星の煌きを幾千、幾万も散りばめた黒い空間。 そこへと向けて戦艦がゆっくりと動き出す。 「レイジングハート、サポートお願いね」 【はい】 なのはの言葉になのはのAIが短く返事を返し、薄暗かったコクピット内に光が灯り始める。 幾つか浮かぶ計器に表示される情報を確認し、異常がない事を確認するとなのははスロットを前に倒す。 「TH−29超砲撃戦艦(スーパーシューティング)タカマチナノハ セットアップ!」 白を主体として薄い桜色でカラーリングされた機体が宇宙空間に飛び出していく。 その後に続くように、三人も発艦していく。 「TH−27超武闘戦艦(スーパープロクシブバトル)タカマチキョウヤ 出撃。 ……って、毎回これは言わないといけないのか」 「TH−25超速砲戦艦(スーパーヴェラシティ)ツキムラシノブ はっし〜ん。 面白くて良いじゃない」 「TH−23超電脳戦艦(スーパーサイバーエレクト)ノエルキドウエーアリヒカイト 出ます。 一応、どの艦が出撃したのか分かる為ではないでしょうか」 宇宙空間に飛び出た四機の戦艦を囲むように、十六機の戦艦が姿を見せる。 どれも恭也たちの操る艦よりは少し小さいそれを見ながら、次の指示を待つ。 そこへローソンから通信が入る。 「ミッションは単純さ。その十六機の艦を全て叩き落す事。 一機一機は大した強さじゃないけれど、その連携は厄介だよ。それじゃあ、三十秒後にスタートするから」 それを最後に通信が切れ、それぞれの艦に30という数字が現れてカウントダウンしていく。 0になると同時に恭也と忍の機体が飛び出す。 逆になのはの機体は後ろへと下がり、ノエルはその場から動かない。 その様子をローソンたちと見学しながら、洋子はローソンにあの機体に付いての説明を求める。 敵の群れに突っ込んだTH−25は、その速度のまま殆ど直角に上へと曲がったかと思うと、 そのまま機体を反転させて機首を下に向けて主砲SY−32を撃つ。 同時にミサイルをばら撒き、周囲の戦艦も打ち落とす。 主砲で一機が戦闘不能となり、ミサイルで一機が翼をやられる。 その様子を見ながら、ローソンは機体の力を完全に引き出している忍に興奮冷めやらぬとばかりに口を開く。 「素晴らしい! あのTH−25はオールマイティと言えば聞こえは良いが、 全ての性能が非常に高く安定した艦なんだ。 だから、上手く力を引き出せないとただの器用貧乏で終わってしまうんだ。 それをああも使いこなしてくれるとは。主砲に洋子くんのTA-29の副砲、 綾乃くんの主砲と同じSY−32を二門。副砲にSY−24を四門。 次元転換魚雷にレーザートラムという武装以外にも、潮汐力ブースター、 斥力場ターボを機体の上下にも付けて今のような直角に曲がる事さえも可能にしたんだ。 武装の種類や多さではTA−2系列、そしてTH−2系列でも一番さ」 興奮しながら説明するローソンの前で、翼を失った戦艦へと接近するのはTH−27、恭也の機体である。 「何となく最初の艦の名称でピンと来たんだけれど、あの艦は接近戦用よね」 「流石だね、洋子くん」 「って事は、あの艦には綾乃のTA−27みたいに重力アンカーが着いてたりするの?」 「よく聞いてくれた! この艦ほど乗り手が中々居なかった艦はなくてね。 主砲がSY−20の一門のみ。装甲も薄く受けるよりも避けるのを重視した艦なんだよ。 因みに、他の武装は次元転換魚雷のみ」 「それって、殆ど武装ないじゃない。って言うよりも、はっきりとないわよね」 「そう! だが、あの艦には他にない武器があるんだよ。 それが他の艦よりも大きく左右に突き出した翼。そして…」 ローソンが指差す先では、機体の下部よりアームが二つ出てきており、その先は鋭く反った刃物のようである。 「もしかして、刀ですか?」 綾乃の半信半疑の言葉にローソンは力強く頷く。 「そう。今まで、誰も戦艦で格闘技をしようとは思わなかった」 「普通は思わないわよ」 「だが、綾乃くんのTA−27でそれが有効だと分かったからね。 今度は素手ではなく近接用の武器にしてみたんだ。 まあ、その所為で戦艦での戦闘に慣れきっているパイロットには全然操れなかったんだが」 思わずパイロットの方に同情してしまうまどかの隣で、綾乃は目を細める。 「あの翼もエッジが鋭いですね。それに、さっきのローソンさんの言葉からすると、あれも」 「そう。あれも武器さ。あのTH−27は本当に接近戦用の艦なんだ!」 恭也の操る機体がアームを振るい、翼を失っていた艦を沈める。 そのまま近くにいた二機へと機体を翻し、擦れ違いざまに翼で一機の機体を斬り裂く。 残る一機はアームの刃で切りつけ、これで合計四機の戦艦が沈む。 残る十二機の戦艦は戦線を離脱して周囲に散らばる小惑星の陰に隠れる。 だが、それらは全てノエルの操る艦に補足される。 ノエルの艦のコクピットは他の艦と違い、左右前面は言うに及ばず頭上にまでなにやら操作盤が設置されている。 それらを忙しく操りながら、ノエルは次々に表示される画面をその揺るぐ事のない瞳で見つめていく。 「いやー、しかし本当に彼女も凄いね。 TH−23の真髄はその情報収集力にあるんだけれど、そのためには偵察用のブローブが必要でね。 これが簡単な命令なら自動でやるんだが、そうじゃない場合は手動なんだよ。 それを全て操るなんて、人間技じゃないね。あははは。 しかも、それらから送られてくる情報をより分け、必要な物のみを整理して他の艦に伝える。 オペレータとしてとっても優秀、いや、優秀なんて言葉じゃすまないかも」 ローソンの言葉を証明するかのように、恭也と忍の乗る艦は次々に敵艦へと正確に攻撃を繰り出す。 だが、それでも上手く回避したり、軽微で済んでいるようである。 「確かに凄いかもしれないけれど、射撃が下手ね〜。 まあ、あのTH−27は近接武器しかないから仕方ないのかもしれないけど」 まどかの洩らした言葉に、しかし洋子は首を横に振る。 「違うわ。あれは一箇所に敵を集めているんだわ。 戦闘が始まってからTH−29の姿を一度も見てないもの。 きっと、彼女が最後の一撃を出すつもりなんでしょうね」 「そうだろうね。TH−29はロングレンジに長けた主砲級の武装を多数装備した戦艦だからね。 装甲も厚く、まさに移動要塞だよ。何より、副砲としてSY−32を16門装備しているからね。 驚くのは彼女はその全てを一度に照準して撃って見せた事だよ」 ローソンの言葉には流石の洋子も少し驚く。 だがすぐに不敵な笑みを浮かべると、面白いじゃないと呟くのだ。 どうやら、TH−29のパイロットに興味を抱いたらしいと綾乃は洋子らしいと小さく笑みを洩らす。 同時に自分もまたTH−27のパイロットに興味を抱く。 誰が登場しているのかは後のお楽しみという事でまだ会っていないが、 戦艦での近接戦闘は想像よりも遥かに難しいのである。それをああも鮮やかにやって見せるとは。 恐らくは何らかの武術を修めたものだあろうと綾乃は考え、楽しみを覚えるのだった。 戦闘の方は洋子の言う通り、残っていた戦艦が全て一箇所に集められていた。 同時に離脱する二機。 程なくして、何処から撃ったのか艦の姿もなくただ敵艦を打ち抜く主砲と思われる攻撃が通過していく。 後には何も残っていなかった。 「な、今のはなんなん、ローソンはん」 「ふっふふふ。よくぞ聞いてくれた紅葉くん。 あれこそTH−29の特殊武装。超々距離砲だよ。 うーん、名前はまだ決めてなかったんだが、スターライトブレイカーなんて良いかもね。 まさに星さえも砕く一撃」 愉悦に浸るローソンに肩を竦めつつ、洋子は今なのはが打った位置をレーダーで把握し、 その距離に思わず身を震わせる。 (あの距離で命中させるなんてね。まぐれ……ではないわよね。 まぐれに賭けてこんな作戦は取らないものね。つまり、あそこから必ず当てる自信があり、 他の仲間もそれを信じていた、いや、確信していたって事ね。 ふふん、面白いじゃない。久しぶりに楽しめそうだわ) 敵ではなく味方だということをすっかり忘れ、洋子はなのはと会う楽しみに小さく笑うのだった。 宇宙戦艦 トライアングルハート 近日……?? って、いきなりだが時間がない! 美姫 「って、本当にいきなりね」 というか、PCの調子がちょっと怖い。 美姫 「もう大丈夫だと思うけれどね」 本当に? 美姫 「多分」 と、冗談はさておき、本当に今回はここまで! 美姫 「いや、理由は?」 ハードディスクから変な音が。 美姫 「……撤退!」 ラジャー! という訳で、無事に来週にまた会える合える事を願いつつ。 美姫 「また来週〜」 |
2月16日(金) |
美姫 「美姫ちゃんの〜」 ハートフルデイズ〜 美姫 「はっじまるよ〜」 <この番組は、PAINWESTの雑記コーナーより、暴走しながらお送り中!> 寒いのか暖かいのか。 美姫 「確かに、最近の気温は難しいわね」 だよな。寒いと思ったら暖かく、暖かいと思えばまた寒く。 まあ、暖かいと言ってもぽかぽかとまではいってないけど。 美姫 「春の気候の方が良いの?」 いや、断然冬で! 美姫 「でしょうね」 だってよ、春ってば色んな花粉が飛んでるんだよ。 春が来て、ずっと春だったら外に出ません! 美姫 「そこまで言い切るんだ」 花粉症の辛さはなった者にしか分からないよ…。 とは言え、この時期になるとこの話題だな。 美姫 「アンタが花粉症だからね」 うぅぅ、ぐしゅぐしゅ。 と、オープニングはこの辺りにして。 美姫 「ゲストの紹介をしないとね」 本日のお客様は…。 フィーア 「どうも〜。あなたの心の妖精、フィーアです」 妖星? フィーア 「ひ、酷いです!」 美姫 「なに泣かしてるのよ!」 ぶべらっ! む、むしろ、俺が泣きたい……。 と、冗談はさておき。 フィーア 「相変わらずですか」 うん? 何がだ? フィーア 「いいえ。あ、お姉さま……と浩さん。これどうぞ」 その間が気になるが、そこはまあ良しとしよう。 さっきから甘い匂いがしてて我慢できなかったからな。 で、それは何々? 美姫 「へ〜、ブラウニーとチョコレートタルトね」 ブラウニー? 美姫 「簡単に言えばチョコレートケーキの一種よ。これはナッツが入っているみたいね」 フィーア 「その通りです。頑張りました!」 ほうほう、フィーアが作ったと。 …………。 フィーア 「その沈黙が気になりますが、まあ良い出来だったので許してあげます」 美姫 「まあ、アンタなら大丈夫でしょう」 お、おい、どういう意味だ? 美姫 「ああ、変な意味じゃないわよ。ブラウニーは普通に作るととっても甘いのよ」 フィーア 「はい、甘味が強いので甘いのが苦手な方にはちょっと辛いかもしれませんね」 なるほど。だから、俺は大丈夫だと。 ふんわりとはしてないんだな。 フィーア 「これはそうですね…、クッキーとケーキの間ぐらいの食感かな」 まあ、百聞は一食に如かずと言うしな。 美姫 「言わないわよ。一見よ、一見」 まあまあ、良いじゃないか。という訳で、いっただきま〜す。 美姫 「それじゃあ、私も…」 フィーア 「どうぞどうぞ〜」 ……ほうほう。うんうん。そっちのタルトも…。 美姫 「こら、私のまで取るな!」 ええい、ケチケチするな! 美姫 「そういう問題じゃないでしょう!」 フィーア 「あははは。お二人が食べている間は、 私がこっそりと持ってきた隠していたバレンタインの没ネタをどうぞ〜」 って、それ俺の! 美姫 「これでお相子よ! という訳でCMよ〜」 どんな訳だよ! 堕ち鴉編 「むぅ……」 本日、2月14日…… 破滅の堕ち鴉不破 恭也はホワイトパーカスの街を唸りながら歩いていた。 それは何故かと言うと…… 「あっ、あの不破様!!」 「なにか?」 「ここここ、これを受け取ってくださいっ!!」 恭也自身は知らない女性から、チョコを渡される。 「どうもありがとう」 小さく笑いながら、恭也は返事をする。 「……はぅ」 そして、それを見た女性はボンッと言う音を出して、顔を真っ赤にして走り去る。 「……なんなんだ?」 心底分からない、と言った風に恭也は首を捻る。 朝から恭也は、ことあるごとに女性からチョコをプレゼントされていた。 何故自分に渡すのかを理解できない恭也は、こうして朝から首を捻るばかりなのだ。 渡している女性は皆、恭也に好意を持っている者ばかりなのだが…… 自分への恋愛感情になると国宝級の朴念仁となる恭也に、そんなことを理解できるはずもない。 ちなみに、ロベリアやなのはは朝一番に恭也に手渡ししている。 「あら恭也、随分もてるわね」 「イムニティか……皆、たぶん普段の礼か何かでくれたんだろうと思うぞ」 苦笑しながら言ってくるイムニティに、恭也も苦笑しながら答える。 「はぁ……」 その答を聞いて、イムニティは小さくため息をついた。 「鋭いんだか鈍いんだか……」 「何のことだ?」 眉間を押さえながら言うイムニティに、恭也は尋ねる。 「なんでもないわよ」 そう答え、イムニティは懐からキレイにラッピングされた物を取り出す。 「はい、恭也にバレンタインのチョコよ」 少し顔を赤くしながら、イムニティはチョコを渡す。 「……いいのか?」 少し驚きながら、恭也は尋ね返す。 「もちろん、恭也以外に渡す相手なんて居ないわよ」 そう答え、イムニティは笑う。 「ありがとう、イムニティ」 そんなイムニティに、恭也は小さく笑って言う。 その笑顔を間近で見て、イムニティは顔を赤くする。 滅多に見ないからこそ、その威力は凄まじい。 「イムニティ、これから時間はあるか?」 「えぇ、別に予定はないけれど」 「なら、俺の話し相手になってくれないか? なにぶん手持ち無沙汰でな」 「別に構わないわよ」 珍しく、恭也からのお誘いだ。 それを断るほどイムニティは甘くはない。 「では、行くか」 恭也の言葉に頷き、イムニティは恭也と共に歩き出した。 後日、嬉しそうなイムニティよりロベリアとなのはにこの事が自慢され、 恭也が被害を受けたのは周知の事実である…… ふぅ〜、美味しかった。 美姫 「本当よね」 フィーア 「えっと、全部食べちゃったんですか。結構な量というか、作りすぎたと思ったぐらいなのに」」 あ、フィーアの分を残してなかった。 美姫 「ご、ごめんね、フィーア。このバカが食べ過ぎるから」 いや、俺だけじゃないだろう。 フィーア 「あ、良いんですよ。元々、お二人の分で私のは入ってないですから」 あ、そうなんだ。良かったよ〜。 美姫 「本当にね。で、このCMネタは堕ち鴉の設定なのね」 フィーア 「あ、はいそうです」 今回はイムニティがメインみたいだね。 フィーア 「そうみたいですね」 でも、何で没にしたんだろう。 フィーア 「それは私にも分かりません。ただ、隠してたから持ってきちゃいました」 美姫 「えらい! えらいわ、フィーア」 えっと……。まあ、俺としてはその手段が穏便だった事を祈るよ。 美姫 「それじゃあ、今度は恒例行事に移りましょうか」 フィーア 「ずばり、どこまで進んだのかな♪ですね」 いや、勝手にコーナー化されても…。 美姫 「まあ、その辺りはどうでも良いから、実際どうなのよ」 ……空が青いや。 フィーア 「思いっきり現実逃避してます、お姉さま!」 美姫 「きつい一発で現実に戻ってきてもらうしかないわね」 いや、充分に戻ってきてます! まあ、実際、リリカルとハル恭を交互に書きながらその間に他のを、って感じで。 とは言え、とらみてもちょくちょくと書いているような。 逆にとらハ学園や天星が進んでないよ〜。 美姫 「いや、さっさと書けば良いだけじゃない」 言うは易しってな。 フィーア 「威張るような事でもありませんけれどね」 あはははは。 美姫 「結局は笑って誤魔化すと」 ……頑張ってはいるんだよ。 でもでも、シャンプーは目に染みるから。ホントだよ、頑張ってるんだよ。 フィーア 「ブッブー」 美姫 「可愛い女の子がそうやったら考えるけれど、アンタじゃねぇ」 フィーア 「逆に殺意が芽生えます」 ちっ。とりあえず、頑張ってます! これで良いだろう。 美姫 「何よ、その言い方は」 フィーア 「そうだ、そうだ〜。やっちゃえ、お姉さま」 美姫 「オッケ〜」 ふっ。最近ではパターンになりつつある今、既に諦めてさ。 フィーア 「嫌な意味で達観しましたね」 美姫 「達観しようと逃げ出そうと、やる事はひとつ!」 はは、空が高いや…。 美姫 「ぶっ飛べーーっっ!!」 ぶべらぼごえびゃぁぁぁっっ! 空は何処までも広がるぅぅぅぅぅ〜〜。 フィーア 「今日はまた盛大に飛んでいきましたね」 美姫 「まあその内戻ってくるでしょう」 フィーア 「ある意味、これも信頼関係ですね♪」 美姫 「そうよ♪ それじゃあ、落ちてくるまでの間は」 フィーア 「CMですね」 美姫 「その通り。それじゃあ…」 美姫&フィーア 「CMで〜す」 真夜中の校舎。 冬だという事を除いても、充分に暗くなる夜中、その少女は一人廊下に立っていた。 窓から差し込む微かな月明かりに照らされ、静かな湖面のような黒い瞳に流れる黒髪もそのままに。 その幻想的とも思える光景に、知らず相沢祐一は言葉もなくして見惚れる。 これまた現実との差異を生む事となっている一振りの剣を手にし、少女は静かに祐一を見つめる。 「お、お前は…」 何とか掠れる声でそう切り出しつつも、祐一は昼間に北川から聞いた一つの名を思い出していた。 祐一の一年先輩で、三年生の女子生徒。 昼間、祐一がぶつかった生徒に間違いはない。 「……川澄舞」 制服を来た少女、舞を見つめながら祐一はその名を口にする。 それに答える事もなく、舞は辺りをざっと見渡すと手にした剣をようやく下ろす。 今更のようにその事に思い至り、またこんな時間に校舎に居るという事実に祐一は少なからず興味を抱く。 「こんな時間にこんな所で何をやっているんだ」 「…別に」 「別にじゃないだろう。さっきのあれは何なんだ」 舞と出会う前、自分を襲った殺気を思い出して尋ねる祐一に、舞の方が質問を投げる。 「あなたはアレの攻撃を躱した。あなたにはアレが見えているの」 「あれ? あれってのは何だ」 「……魔物」 舞の口から紡ぎ出された、これまた現実離れした言葉を、しかし祐一は笑い飛ばすような事はせず、 ただ首を振って否定の言葉を同時に吐き出す。 「残念ながら見えていない。あれを避けれたのは、ただ殺気に反応しただけだ。 それよりも、お前がこんな所に居るのはあの魔物とかいうものと関係があるのか」 そう訪ねた祐一へと、舞はただ静かに小さいけれども不思議とよく通る声で応える。 「…私はアレを、魔物を討つ者だから」 これが、相沢祐一と川澄舞の出会い。 そして、当人たちの記憶からは消え去ってしまっていたが再会でもあった。 それを知るのは、もう少し物語が進んだ後のこと……。 夜の校舎に本来なら聞こえるはずのない騒音が響く。 魔物の攻撃によって吹き飛ばされ、背中を強打した舞の元へと祐一は駆けつける。 強く打った所為で肺の空気が一気に押し出されたのか、舞は小さく咳き込みつつ壁に背を預ける。 祐一には見えないけれど、確かにそこに居る気配を感じて舞を庇うように前へと出る。 「…駄目、祐一」 それを留めて無理に立ち上がろうとするも、すぐに膝を着く舞を見て祐一は前方の空間を見据える。 その脳裏に浮かぶのは、六年ほど前の記憶。 何故かこの町に行きたくないと強く思うようになった祐一が、 しかし、己の無力さを、守れなかったという思いだけを感じていた頃の記憶。 一ヶ月半ぐらいの短い出会いだったが、今も尚鮮明に思い返す事の出来る出来事。 そして、去り際に告げられた言葉。 『本来なら名乗らせるべきじゃないんだろうな。基本的な事しか教えていないし。 だけど、その気持ちはよく分かるから、だから…』 舞を守るように見えない敵との間に立ちはだかり、手に持った木刀を投げ捨てる。 後ろで息を飲む気配を感じるも、祐一はただ眼前の敵へと意識を集中させる。 『ただ、その名を名乗る以上はそれ相応の覚悟が必要になる。 覚悟を持て。名乗る事で狙われるという覚悟を、何を捨てでも守るという覚悟を。 そして、名乗る以上はその大事なものを守り抜け』 少し年上の少年の言葉を一言一句はっきりと思い出しながら、祐一は背中側へと腕を回し、 静かに、素早くソレを手にして眼前に構える。 一つの叫びと共に。 「永全不動八門一派御神真刀流・小太刀二刀術、見習剣士、相沢祐一!」 眼前に構えた、舞の持つ剣よりも短く、日本刀のように反った片刃の小太刀。 それを手に祐一は舞を守るべく、迫る気配へとただ無心に、何度も繰り返し行った斬撃を放つ。 春――それは別れと新たな出会いの季節。 「舞や佐祐理さんは大学生になって、俺はまだ高校生か。 仕方ない事とは言え、もう会うこともないんだろうな」 舞い散る桜を眺めながら、そう寂寥感を感じさせる呟きを零す祐一。 その祐一の頭に鋭いチョップが落ちる。 「っつぅぅ。舞、何をするんだ、痛いじゃないか」 叩かれた頭を押さえて背後を振り返る祐一に、拗ねたように唇を尖らせるのは舞で、 その隣で楽しそうな笑みを浮かべているのは、舞の親友である倉田佐祐理である。 「祐一が悪い。もう会えないなんて言うから」 「あははは〜。舞は祐一さんが会えないって言ったのが嫌だったんだよね」 「違う」 「そうかそうか、それは悪い事をしたな。 ちょっとした冗談だったんだが、そんなにも愛されているのか。わははは」 「違う。さっきのは祐一が嘘を吐いたから」 「舞ったら照れちゃって。本当にラブラブですね、二人とも」 「その通りだ。俺と舞はラブラブなんですよ。勿論、佐祐理さんも一緒ですよ」 「違う。そんな事はない」 「あははは〜。佐祐理も一緒で良いんですか〜。でも、舞の祐一さんを取るわけにはいきませんし」 「別に私のじゃない」 祐一と佐祐理に交互にチョップという突っ込みをいれるのに忙しい舞を間に置き、 二人は楽しそうにからかうように会話を連ねていく。 このまま続くかと思われたが、いい加減、舞が本当に拗ねそうになったので会話を止める。 「それじゃあ、改めて入学おめでとうございます」 「ありがとうございます、祐一さん」 「うん」 「でも、本当に良かったんですか。私たちの入学式なんかに来ても」 「なんかじゃないですよ。授業よりも大事な事じゃないですか。 大丈夫です、秋子さんの許可は取ってありますから」 言って親指を立てる祐一を、佐祐理は楽しそうに、舞は嬉しそうに見るのだった。 「ふぅ。とりあえずは帰って荷物の整理だな。後、買い出しにも行かなければ」 入学式を終えたばかりの校内にある桜並木を歩きながら、恭也はそう一人ごちる。 ギリギリまで海鳴に居た所為で、引越しの荷物整理がまだ終わっていないのである。 その事自体は自分が決めた事だから問題はないのだが、如何せん、この辺りの地理に明るくないのである。 何処に何が売っているのか、それをこれから見て回らないといけない。 散歩がてらに回るかと考えていた恭也の耳に楽しそうな声が届く。 三人グループなのか、男性と女性が話をしており、その間で残る女性が忙しなく動き回っていた。 知らず微笑ましいものを見る目つきで眺めていた恭也は、 男性の方にどこかで会ったような気がして、思わず注視してしまう。 その視線に気付いたのか、男性がこちらへと視線を向け、 つられるように連れの二人もこちらへと振り返る。 気まずいものを感じながらも、恭也は小さく頭を下げる。 その途端、男性の方が驚いたような声を上げる。 「ひょっとして、師匠!?」 そんな呼び方をするのは後にも先にも二人しか知らず、そこまで考えて恭也はいや、と思い直す。 昔、休学して全国を周っていた時に出会った一人の少年を思い出す。 記憶にはないが、守れなかったという己の無力さを嘆いていた少年を。 「まさか、祐一?」 新たな出会いから始まる、新しい物語。 彼らはどんなお話を紡いでいくのだろうか―― Kangle プロローグ 北の国での再会 近日妄想爆発! あぁぁぁぁぁ〜〜。上空は寒いぃぃぃぃ。 美姫 「タイミングを見計らったかのように落ちてきたわね」 フィーア 「本当ですね〜」 美姫 「それじゃあ、フィーア頼んだわよ」 フィーア 「はい♪」 って、何で構えてるんです…ぶべらっ! フィーア 「もう一発、おまけです♪」 美姫 「あ、私も♪」 ぼぐわげみょぴょぉぉぉっっっっっ〜〜〜〜!! フィーア 「やり過ぎちゃいましたかね」 美姫 「まあ、大丈夫でしょう」 フィーア 「でも、そうなるともう浩さん弄りができないんですよね」 美姫 「そうなのよね。基本的にCM明けは浩をいびって楽しむコーナーなのに」 いや、勝手にコーナー化されてもな。 フィーア 「っ!」 美姫 「いや、流石にそれは私も驚くわ。って、何で当たり前のようにいるのよ!」 簡単な事。お前らに上空に打ち上げられた後、飛行機に撥ねられてすぐに戻ってきただけだ。 因みに、流石に立てませ〜〜ん。 フィーア 「言いながら、次の台詞の時にはもう立ち上がっているんでしょ……って、もうですか」 あっはっは。 美姫 「何か疲れたわ」 今更だな。 美姫 「そうなんだけれどね。でも、戻ってきたって事は……」 フィーア 「弄れるって事ですよね♪」 いや、二人してそんなに楽しそうに言われましても……。 ノ、ノォォォォォーー!! 美姫 「うふふふ♪」 フィーア 「くすくす♪」 …………ピクピク。 お、お前ら、酷いっ!(泣) 美姫 「さて、冗談はこれぐらいにして」 フィーア 「そうですね」 って、冗談でこんな事を!? フィーア 「それこそ、今更ですよ〜」 それもそうか〜。って、お前が言うなよ! 美姫 「あ、そろそろ時間だわ」 聞けよ! フィーア 「それじゃあ、今週はここまでですね」 美姫 「そうね。じゃあ、フィーアには後でホットチョコをいれてあげましょう」 フィーア 「やった〜♪」 俺を無視して進めないでよ……。 美姫 「はいはい。分かってるわよ」 怪しいもんだが。 美姫 「それはそれ、臨機応変で」 いや、意味分からんって。 フィーア 「それよりも、時間良いんですか?」 美姫 「もう、アンタの所為よ!」 ……もう何も言うまい。 フィーア 「悟ってますね〜」 お陰さまでね。 ともあれ、今週はこの辺で。 美姫&フィーア 「それじゃあ、また来週〜」 |
2月9日(金) |
美姫 「美姫ちゃんの〜」 ハートフルデイズ〜 美姫 「はっじまるよ〜」 <この番組は、PAINWESTの雑記コーナーより、元気いっぱいにお届け中!> ぼ〜〜。 美姫 「いや、初っ端からそんな気を抜かれると流石に私もやり難いんだけれど」 ほけ〜〜〜〜。 美姫 「いや、聞きなさいよ」 ぼ〜〜ぶげらっ! 美姫 「そんなにぼーっとしておきたいのなら、一層の事考えなくても良いようにしてあげましょうか?」 あ、あはははは。遠慮します。 美姫 「全く、何をぼけーとしてるのよ」 いや、何か身体がだるくて〜。 美姫 「そんな時は文章を書くのよ!」 おお、なるほど! って、んな訳あるかい! 美姫 「騙されたと思ってやってみなさいよ」 いや、絶対に騙されるから。 美姫 「うふふ」 いや、無意味に笑うのはやめて。 美姫 「後でゆっくりと話し合いましょうか?」 ああ。俺たちには一番大事な事だよな。 話し合いは。 美姫 「ええ、話し合いは大事よね」 ……あ、あのー。何故、そう言いながら素振りしているのでしょうか。 美姫 「ちょっと身体を動かしたくなっただけよ」 そ、そうですか。 架空の相手が見えるのは…。 美姫 「気のせい、気のせい」 架空の相手の背格好が俺に近いのは…。 美姫 「気のせい、気のせい」 急所ばかり狙っているように見えるのも? 美姫 「気のせいよ」 ……話し合いですよね? 美姫 「話し合いよ♪」 え、えっと〜。あ、そろそろCMに行かなくちゃ。 美姫 「ええ、そうね」 えっと、あの、その…。 美姫 「とりあえずはCMよ〜」 あ、やっぱり、とりあえずなんだ……。 昼休み後最初の授業というのは、えてして睡魔が襲いくるものである。 ましてや、授業をする教師の声という最強のペアが現れれば尚の事。 とは言え、眠っているのは一部の生徒のみで真面目に授業を受けている生徒の方が圧倒的に多い。 時折、睡魔と闘っているのか欠伸を噛み殺したり、腕を抓ったりしている生徒も見受けられる一方で、 頭を左右に小さく振り、今にも眠りの世界へと旅立とうとしている生徒も。 そんな教室の一番後ろ、窓側からの二席は揃って早々に眠りの世界へと誘われたようである。 朗々とした教師の声が響く中、その席の一つに座る青年が不意に顔を上げる。 寝起きにしてははっきりとした眼差しでふと廊下を窺う。 そんな気配に勘付いたのか、隣の少女も目を開ける。 こちらは未だに眠気を存分に蓄えた瞳で、隣の青年を見遣る。 「どうかしたの、恭也?」 授業中だということを理解しているからか、少女は青年――恭也へと小声で問い掛ける。 今が授業中だという事を気遣っての好意だが、それなら寝るなという声は何処からも上がらない。 恭也は少女の言葉に未だに廊下の方へと視線を向けたまま、同じく小声で返す。 「忍か。起こしてしまったか」 「ううん、気にしないで」 これが普通に家などの会話なら可笑しくはないのだが、ここは学校の教室で授業中なのだ。 どこかずれている二人に、しかし、これまた突っ込む声は上がらない。 まあ、小声で会話しているからというのもあるだろうが。 忍は机の上で小さく両腕を伸ばし、眠気を少しだけ取るともう一度恭也へと視線を向ける。 背中越しにその視線を感じ取り、恭也は廊下に向けていた視線を再び忍へと戻す。 「いや、何か知っているような気配を感じたんでな。 後、嫌な予感を少々」 恭也の言葉を笑い飛ばすような事を忍はしなかった。 気配を探るという事に関して、自分の目の前にいる青年は本当に人間かと疑いたくなるように鋭いからだ。 「知っているって、誰なの?」 「いや、そこまでは分からない。それに気のせいか……では、ないようだな。 しかも、これはかーさんの…」 「え、桃子さん?」 「いや、そうじゃなく…」 恭也がそれ以上口にするよりも先に、教室の扉が勢い良く開け放たれ、教室中の視線がその主に集中する。 そんな視線をものともせず、その人物はずかずかと教室の中に入ってくると悠々と教室内を見渡す。 出る所は出て、引っ込むところはきちんと引っ込んでいるグラマラスな美女に、 男子生徒だけでなく女子生徒までが見惚れ、言葉を無くす中、その美女は目当ての人物を見つけたのか、 破願すると手を振る。 「ああー、恭也くん、いたいた!」 途端、恭也に向かう幾つもの視線。 男子からのそれは殆どがまた高町かという呪詛を込めたもので、女子からは何かを問い掛けるようなもの、 残りは興味津々といった視線であった。 その中に一つ、とても近くからまるで突き刺すような視線が一つ。 「恭也、あの美女は誰なのかしら?」 「……彼女は英理子さんといって」 「ふーん。あのお堅い恭也が下の名前で呼んじゃうぐらいに親しい人なんだ」 「いや、だからそれは…」 何か言おうとした恭也よりも、またしても英理子の方が先に行動を起こしていた。 それも教師に向かってである。 「私、七尾英理子と申しまして、高町恭也の親戚になります。 すこし家の方の用事が出来ましたので、今日は早退ということにさせて頂きたいのですが」 そう言うや否や、英理子は教師の返答など待たずに恭也の方に顔を戻すと手招きする。 逆らっても無駄だと悟りきっている恭也は、素早く帰り支度を終えると鞄を掴んで席を立つ。 疑わしげに、何か言いたげに見ている忍へと恭也はとりあえず短く告げる。 「本当に親戚だよ。ただし、かーさんの方のな。 疑うのなら、後で美由希辺りに聞いてみろ」 何故か疲れたようにそう呟くと、恭也は英理子の下へと向かう。 英理子は時間が惜しいとばかりに近付いてきた恭也の腕を掴むと、有無を言わさずに引っ張り出す。 恭也が何か言うも耳を貸さず、そのまま校舎の外まで引っ張ってきた英理子は、 そこに止めてあった車へと乗り込み、恭也にも乗るように促す。 恭也が助手席に乗るや否や、車を発進させる。 「それで、英理子さん。今日は何の用ですか。 そもそも、いつ日本に戻ってきたんですか」 「戻ってきたのは今日よ。その足でここに来たって訳」 遺物(ロスト・プレシャス)と呼ばれるものがある。 何らかの異常な力を秘めたソレを自在に操る者を遺物使いと呼ぶ。 そして、今恭也の隣にいる英理子もまた遺物使いであった。 しかも、遺物と聞くと目の色を変える程の。 遺物はそう簡単に見つかるようなものではなく、 世界中に居るハンターたちが目の色を変えて探すようなお宝でもある。 当然、危険は付き物であるし、遺物使いによる遺物を使用した戦闘なんて事もあり得るのである。 だからこそ、恭也は単に会いに来たのではないだろうとこれまでの経験と合わせて確信していた。 そして、その恭也の確信を覆すような事もなく、英理子の口からはとんでもない事が語られる。 曰く、今日これから向かう港にて遺物の取引が行われるということ。 そして、そのランク――遺物にもその能力や希少価値などによるランクが存在しており、 当然、高い物ほど能力が高いと言われている――そのランクがAだという話である。 しかし、その取引を行う組織が問題であった。 その世界でも悪い噂の絶えない組織。そこから荷を奪うというのだから。 止めても聞くような人でもなく、聞いてしまった以上は見捨てる事も出来ず、恭也は渋々と付いていく。 七尾家の広いリビング。こう見えても、英理子はお金持ちのご息女だったりするのだ。 ともあれ、無事に荷物を奪い取った恭也と英理子は、早速箱の中身を確かめるべく箱を開けていく。 が、蓋を開けた所で二人は揃って動きを止める。 信じられないものを見るように、箱の中を凝視する。 そんな二人に構わず、箱の中身がゆっくりと身を起こす。 そう、身を起こしあまつさえ、二人をじっとそのサファイアのように綺麗な瞳で見つめてくる。 「まさか、誘拐!?」 ようやく事態を飲み込めた英理子が叫ぶ中、絹のようにサラサラとした金髪の少女は、 ただ恭也のみをじっと見つめ、不意に満面の笑みを見せると抱き付く。 「なっ!?」 驚く恭也を余所に、少女はまるでこここそが自分の居場所だと言わんばかりに恭也の胸に頬を摺り寄せる。 「って、ちょっと何してるのよ!」 慌てて引き離そうと英理子が少女に手を置いた瞬間、少女の手が素早く動いて英理子の手をはたく。 「っつ〜」 手を押さえつつも攫われて不安だったんだろうと自分を納得させ、英理子は注意深く少女を見る。 そして、少女の首に付けられた首輪に目を留める。 金色の細かな意匠が施され、所々に宝石が散りばめられた首輪を。 「ひょっとしてこれが遺物」 夢心地で手を伸ばした英理子であったが、すぐに現実に引き戻される。 伸ばした手を少女に噛み付かれた痛みによって。 「ちょっ、いたっ。きょ、恭也くん、何とか言って!」 「気持ちは分かるが、やめてもらえないだろうか」 「気持ちが分かるって何よ!」 恭也に文句を言いつつも、恭也の言葉に素直に離れてくれた事にほっと胸を撫で下ろし、 次いで恭也をじろりと睨む。 「何で恭也くんの言う事は素直に聞くのよ」 「いや、俺に言われましても…」 「まあ、良いわ。その子に首輪を見せてもらって」 英理子の言葉に恭也は溜め息を飲み込むと、一言断ってから少女の首輪にそっと手を伸ばす。 言葉が通じているのかも怪しいが、少女は今度は大人しくしてくれている。 その事で英理子の視線が一段ときつくなるが、恭也は気付かない振りをして首輪に手を掛け。 「英理子さん、これ外れませんよ」 「本当?」 「ええ。どうなっているのか。もしかしたら、鍵か何かが必要なのかも」 「うーん、だからあいつらもこの子ごと攫ったのかしら」 考え込む英理子に、恭也はそろそろお暇しようとするが、その腕をぎゅっと少女が握って離さない。 恭也以外に懐いていない以上、恭也も今日は泊まりなさいという英理子の命令により、 恭也は仕方なく座り込む。そんな恭也の首筋に抱き付きながら、少女はニコニコと笑うのだった。 「ちょっと、まさか……。やっぱりそうだわ。この子の存在そのものが遺物なのよ。 それもSランクのね。ドラゴンよ、ドラゴン!」 遺物使い七尾英理子によって持ち帰らされた一つの荷物―― 「うーん、それじゃあその子の名前はローズにしましょう」 それがただの荷物でなかった事が運の尽きか―― 「恭也、好き」 「あら、昨日の今日でもう言葉を覚えたの? 流石はドラゴンね」 「いや、感心してないで少しは離れるように言ってくださいよ」 「恭也くんが言って聞かないのなら、他の人が幾ら言っても無駄よ」 それとも、ドラゴンの少女に何故か懐かれたのが悪かったのか―― 「そのレッドドラゴンの娘を返してもらおうか」 生きた伝説を狙い襲い来る者も現れ―― 様々な思惑が交差する中、恭也はどうする!? クライシスは〜と 近日……ZZZ 美姫 「という訳で、後で話し合う予定だったけれど、CMの間に話し合いは済んだわね」 ふぁい……。頑張って書きます……。 美姫 「ところで、今は何を書いているのよ」 とりあえず、リリ恭なの、ハル恭、とらみてを。 美姫 「珍しく長編が順調……って程でもないのよね」 う、うぅぅ。厳しいッス。 美姫 「まあ来週は時事ネタがあるし…」 いや、書けるかどうか分からんってば。 美姫 「書きなさい!」 うわ〜、命令だよ。 美姫 「当たり前じゃない」 言い切ってるし。 美姫 「それとも、もう一回話し合ってみる?」 いや、もう本当に勘弁してください(涙) とりあえず、長編を何とかしたいんだが。 美姫 「今年中に三本は完結させて欲しいわよね」 いや、そんなにかよ! って、無理じゃー! 美姫 「叫ぶ前に努力あるのみよ!」 う、うぅぅ。こんなにも頑張っているのに…。 美姫 「まだまだって事よね」 ひ、酷い…。 美姫 「ほら、グダグダ言っている間にも書けるのよ」 グシュグシュ。うぅ、涙が止まらないよ。 美姫 「それは花粉よ、花粉」 って、そう言えばそんな時期も近付いてきたな。 うぅぅ、またしても嫌な時期が。 美姫 「嘆かない、ぼやかない。手を動かす!」 って、鬼ですか! なぁ〜んて、冗談だよ、冗談。 ぶべらっ! 冗談って言ったのに…。 美姫 「はいはい。それじゃあ、今週はこの辺にしておきましょうか」 うぅぅ。最近、よく殴られているような気が…。 美姫 「そう? 前からこんなもんじゃない」 それはそれでどうよ。 美姫 「はいはい。それじゃあ、今週はこの辺で」 軽く流されるのにも慣れた〜。って、慣れてどうするよ、俺! 美姫 「などとぼやく浩を放置しつつ……」 う、うぅぅ(泣) 畳の目を数えながら、来週までいじけてやる〜。 美姫 「……地味だけれど目の前で本当にやられると鬱陶しい嫌がらせね……」 って、カーペットを引くなよ! どっちの方が嫌がらせだよ……。 美姫 「それじゃあ、また来週ね〜」 |
2月2日(金) |
美姫 「美姫ちゃんの〜」 ハートフルデイズ〜 美姫 「はっじまるよ〜」 <この番組は、PAINWESTの雑記コーナーより、寒さを吹き飛ばしながらお送り中!> って、今日は一段と冷え込みますな〜。 美姫 「本当よね」 まあ、冬らしくて良し! 美姫 「良いんだ」 暑いのよりは。 美姫 「本当に暑さに弱い奴よね」 とは言え、この時期は大丈夫だから嬉しいね〜。 美姫 「寒すぎるのも考えものだと思うんだけれど」 あははは〜。あははは〜。 この寒さが俺を強くする〜! 美姫 「おかしくするの間違いね」 さて、寒さを堪能したところで」 美姫 「急に素に戻られてもね」 まあまあ。 とりあえず、一月も終わってしまったな。 美姫 「早いものね。遅いのはアンタの執筆速度のみか」 う、うぅぅ。仕方ないんや。これ以上は早くできへんのや。 美姫 「それを何とかするのが腕の見せ所でしょう」 ほら、俺の腕だぞ〜。 美姫 「なまっちょろい腕ね〜。……えい♪」 ぎゃぁぁぁっ! お、おま、な、なにを。 い、今、ボキッって音したぞ、おい! 美姫 「鍛えてないから、こんなに弱いのよ。ちょっと弄っただけで関節が鳴るなんて」 あ、鳴っただけか。 ……って、それにしては痛いんですが。と言うか、この方向に曲がるのっておかしくない? と言うより、間違いなくおかしいよね、ね? 美姫 「もう煩いわね。元に戻せば良いんでしょう、戻せば」 って、折れた腕を持って何をって、や、やめっぎょっわおぉぉぉぉぉっ! 美姫 「ほら、元通り」 う、うぅぅぅ。痛いよ、痛いよ、痛いよ〜。 美姫 「それは錯覚よ、気のせいよ、気の迷いよ」 んな訳あるか……。うぅぅ。 美姫 「ほら、いつもみたいにさっさと治しなさいよ」 その台詞を吐いている時点で、治っていないと認めているようなものだぞ。 美姫 「良いから、ほらほら」 ああ、無理だ〜。この腕では完治するまで書けないよ〜。 でも、俺の所為じゃないし仕方ないよね。 美姫 「ほほう」 あ、あれ? 美姫さん? えっと、一応怪我人ですよ、僕。 や、やだな、そんな睨まれても……。 美姫 「くすくす♪ 浩が可笑しい事を言うから、笑いが止まらないわ。くすくす」 と〜〜っても、怖い笑いなんですが。 美姫 「ふふふ楽しい事を思いついちゃった♪ 浩もきっと気に入ると思うわよ」 え、ほ、本当かな……。で、出来れば遠慮しようかと。 美姫 「だ〜め♪ だって、二人じゃないとできないし」 いやいや、本当に激しく遠慮しよう。 美姫 「大丈夫。これをすれば、リフレッシュして書きたくなるから」 嫌な予感しかしないからイヤだ! 美姫 「つべこべ言ってないで、素直にした方がまだましよ♪」 …………そ、ソコマデイウノナラ、チョットダケヤッテミヨウカナ。 美姫 「うんうん♪」 え、えっと、本当に手加減してくれるよね。 美姫 「それじゃあCM〜」 って、はっきりと肯定してくれよ! 冬休みに入り数日。 直前に色々とあったがどうにかそれらも何とか解決し、 自室でキャンバスに向かい合っていた浩樹は電話の音に我に返って部屋を出る。 「相変わらず、とんでもない集中力だな」 閉ざされた扉の向こうを見つめて呟きつつ、浩樹は急いでリビングの電話を取りに行く。 「はい、もしもし上倉ですが」 電話の相手、自らが勤める撫子学園の理事長代理に呼び出され、浩樹は理事長室に来ていた。 「お忙しいところ、本当に申し訳ありません」 「いえ。それよりもあいつ、鳳仙に関する事って何ですか」 飄々としてグータラとして有名な浩樹が今にも詰め寄らんばかりの様子を微笑ましく思いつつも、 これから告げる事に影を落とし、理事長代理である鷺ノ宮紗綾は口を開く。 「実は、こういったものが」 言って差し出されたのは一枚の紙。 それは何処にでも売っていそうな紙で、これがどうしたのかと浩樹は受け取る。 そこに書かれた文字を見て、次第に顔を強張らせる。 「…どういう事でしょうか」 目付きも悪く睨み付ける浩樹に、紗綾も困ったように眉を寄せる。 紗綾が悪いわけではないとすぐに思い至り、浩樹は自分を落ち着けるように椅子に深く座り、 少しの間目を閉じる。充分に気持ちを落ち着かせると、浩樹は握りしめたままだった手紙をテーブルに戻し、 紗綾へと確認するように尋ねる。 「これは、やはり鳳仙の留学が関係しているんですよね」 「留学そのものよりも、鳳仙さんが祖母であられるパリ校の理事長と会う事が大きいのでしょうね」 「遺産絡み、ですか」 「そこまでは分かりません。違う可能性もあるでしょうし。 ただ、こういった脅迫状が届いた以上は、無視するわけにもいきませんから」 重苦しい息を吐き出し、紗綾はテーブルに置かれた皺の寄った手紙へと視線を落とす。 鳳仙エリスの留学の取り止めと、祖母と今後一切会わないことを強要する脅迫状へと。 浩樹も同じように脅迫状へとを落としていた視線を上げ、紗綾へと顔を上げる。 「この件はエリス、鳳仙には暫く黙っていてもらえませんか。 今、あいつは桜花展に出展する絵を描くことに必死になっているんです。 それなのに、こんなものを見せたら…」 「私としても判断は上倉先生にお任せしようと思い、こうして今日お呼び立てしたのです。 ですが、これが悪戯だと断言できない以上、何らかの対策が必要になるでしょうね。 理事長である藍と私から一人、護衛の方をお呼びします。 その方に新学期から上倉先生の補佐という形で来てもらえるように手配を致しますね」 「いえ、ありがたいお言葉ですが、俺の方にもそういう伝手がありまして。 出来れば、それはこちらで」 浩樹の言葉に紗綾は少しだけ考え込み、小さく頷く。 「上倉先生がそこまで信用される方なのでしたら、きっと大丈夫でしょう。 分かりました。それは上倉先生にお任せします」 「ありがとうございます」 浩樹は紗綾に頭を下げると、さっさと席を立って理事長室を出て行く。 すぐにでも走り出しそうな様子で出て行く浩樹を見送り、 紗綾はとっても大事にされているんだなと一人になった理事長室でしみじみと思うのだった。 冬休みに入って数日、恭也は懐かしい名前を電話越しに聞く。 互いの近況を軽く話し合うと、恭也はいつになく深刻な声を出す相手を心配そうに気遣う。 「ああ、問題ない。実はお前に頼みがあって…」 父親と武者修行の旅で全国を周っている時に知り合い、短い期間ながらも友として過ごした相手からの頼み。 まして、大学で再会してから昔のように付き合った友の頼みである。 相手の方が先に卒業した事や、その年の冬頃からは忙しかったのかあまり会ってはいなかったとしても、 互いに親友と呼べるような存在である。 恭也にその頼みを断るなんて選択肢はなかった。 こうして、恭也は撫子学園へと旅立つ事になる。 「高町恭也と申します」 「あら、上倉先生のお知り合いとは高町さんだったんですね」 「へっ!? あ、ひょっとして高町と学園長代理は知り合いなんですか?」 「はい。藍や私がお呼びしようとしていた方ですから」 「だったら、初めから頼んでおけば余計な手間はなかったですね」 「上倉、それは結果に過ぎんぞ」 「それはそうなんだがな」 ――撫子でも意外な再会を果たす恭也 「エリス、お前覚えているか。昔、北海道で会ったことあるだろう」 「久しぶりです、エリスちゃ……いや、鳳仙さん」 「…………えっと、もしかして高町さん?」 ――狙われるエリス 「今日から暫くの間ですがお世話になる、高町恭也と申します」 「うーん、上倉先生があまりにも不真面目だから、真面目そうな先生が赴任してきたのかな?」 「……萩野、お前後でちょっと準備室に来い」 「え、はわわっ。そんな、二人きりで準備室だなんて。エリスちゃんに悪いよ」 「お前、分かってて言っているだろう? エリスの奴にその手の冗談は通じないんだぞ。 本人の前では絶対に言うなよ」 ――新学期、新たな教師が撫子に赴任する 「撫子の歌姫と呼ばれているそうですね。本当に良い歌声です」 「そんな…」 「あ、高町先生! こんな所に居たんですか。もう何をしているんですか。 真面目そうだと思ったのに、まさか上倉先生と同じでサボリ魔だったなんて…」 「えっと、確か竹内さんでしたね。それは誤解です。 俺は上倉先生に美術室に案内してもらうと聞いていたのですが、上倉先生の姿が見えず、 一人で向かおうとして、声が聞こえたから美術室の場所を聞こうとしただけです。 まあ、歌声に聞き惚れてしまったのは俺の責任ですが」 「あ、すいません。そうだったんですね。私ってば早とちりを。 それじゃあ、美術部の部長として顧問の不始末をフォローしますので、こちらへ」 「助かります」 「それと、高町先生は教師なんですから、そんな馬鹿丁寧にしなくても」 「いえ、これはもう癖と言いますか。まあ、一応教師として気を付けるようにはしよう。 ……やはり、あまり慣れそうもありませんね。暫くは勘弁してください」 「まあ、別に私は構いませんけれど。あ、美咲ごめんね。それじゃあ、また」 「ええ。竹内さんも部活頑張って。高町先生も頑張ってください」 「ええ、ありがとうございます。 ――幾つかの出会いをしつつ、教師として日常を過ごしていく。 「今、パリ校の理事長から連絡があり、娘さん、鳳仙さんのお母さんが描かれた絵が一枚盗まれたそうです。 幸い、理事長には怪我はなかったようですが」 「そうですか。それは良かったです。 で、それを俺に聞かせるという事は、それと今回の件に関係があるという事ですか?」 「分かりません。ですが、一応お耳に入れておいたほうが宜しいかと思ったもので」 「そうですか。ありがとうございます。また何かあればお願いします、理事長代理」 ――日本から離れた地でも蠢く不穏な影 「フランスにあった絵と対になる、鳳仙アンナの絵は何処だ?」 「対になる絵? それが狙いなのか?」 「ちっ!」 ――渦巻く陰謀に見え隠れする二枚の絵 「アンナおばさんの絵?」 「ああ。上倉なら何か知らないかと思ってな」 「うーん、殆どは俺の実家に置いてあるんじゃないか。 幾つかは人の手に渡っているし、エリスも何枚か持っていたな。 あ、俺も持っているぞ。それがどうかしたのか」 「まだ現段階では分からないが、ひょっとしたら…。 いや、憶測を口にするのは止めておこう」 果たして、その先に待つものとは…。 Canvas 〜黒の輝石〜 ナウオン……。 …………ボク、ガンバッテカクヨ、カクヨ。 美姫 「やる気になったのね。ああ、これも偏に私の愛ね」 カクヨ、カクヨ、カクヨ、カク、カ……カク…………きゅぅぅぅ。 美姫 「あ、こら、ちょっと! え、えっと〜」 カクヨ、カクヨ〜。 美姫 「頑張って書いてね」 ウン、ガンバルヨ。 美姫 「目標は一日100本よ。……ウン、ガンバル」 って、お前は俺の手を持ちながら何をやってるのかな? 美姫 「腹話術よ、腹話術」 ほうほう。 とんでもない約束を勝手にさせるつもりはなかったんだな。 美姫 「当たり前じゃない。って言うよりも、もう少し寝てなさいよね。ちっ」 今、何か言わなかった? 美姫 「気のせいよ、気のせい」 じと〜。 美姫 「……」 じ〜。 美姫 「……ええーい、うっとしいっ!」 ぶべらっ! 美姫 「浩の分際で何を偉そうに!」 ぶべらっ! って、今の何処が偉そうだった!? 美姫 「私をジト目で睨んだ」 それだけ!? 美姫 「その前にも私を追い詰めようとした発言したじゃない」 いっつもはお前がやってるんだから、偶には良いじゃないか! そもそも、あれはお前が悪いんじゃ……いえいえ、冗談ですよ、はい。 美姫 「ふんっ」 う、うぅぅ。切ないよ〜。 美姫 「ほら、馬鹿言ってないで、そろそろ終わるわよ」 ぐしゅぐしゅっ。う、うぅぅ。そ、それじゃあ、皆さん…。 美姫 「あー、もう! メソメソするな!」 ぶべらっ! おまえな、もう少し心遣いって奴を。 美姫 「してるじゃない」 どこがっ!? 美姫 「もうメソメソしてないじゃない」 いや、あれは本気じゃなかったからであって。 美姫 「あ、もう時間だ〜」 はいはい。分かりましたよ。 美姫 「ほら、拗ねない、拗ねない。後でメイドさんが待ってるわよ♪」 そんな訳で二月最初のハートフルデイズも、残る時間は後僅か! 名残は尽きませぬが、如何せんこの後に重大な用事が控えており間する故に、本日はこれにて! 美姫 「それじゃあ、また来週ね〜」 |
1月26日(金) |
美姫 「美姫ちゃんの〜」 ハートフルデイズ〜 美姫 「はっじまるよ〜」 <この番組は、PAINWESTの雑記コーナーより、世界の中心でメイドを呼びながらお届け中!> 寒い日々が続く今日この頃。 美姫 「皆さん、如何お過ごしでしょうか」 また今週もやってまいりました、ハートフルデイズの時間です。 美姫 「司会は、可憐にして優雅、極上美少女の美姫ちゃんと…」 天上天下唯我独尊、困った時は力頼みだろうと突っ込みたいのに怖くて突っ込めない浩でお送り……ぶべらっ! 美姫 「美姫ちゃん専用雑用係の浩でお送りしま〜す」 …な、なかなかに手荒い歓迎だな。 美姫 「口は災いのもとってね」 何も言ってないじゃないか! 美姫 「いやいや、言ってたから」 ば、バカな! 美姫 「いや、アンタがバカよ」 しかし、早いものでもう一月も終わりだぞ。 美姫 「本当に振り返れば月日とはかくも早いものなのね」 うんうん。時間がこれだけ早いんだ。 俺の書く速度が遅い訳じゃないんだ。 美姫 「って、結局はそこへと持っていくのね。その前に、言い訳は無用!」 ぶべらっ! 美姫 「ほ〜ら、キリキリと書け〜」 ぐぅぅぅ。ぐるじぃぃぃ。 美姫 「ほらほら、どこまで書くたのよ」 ちょ、リリカルとハル恭が二〜三割です、はい。 あ、後は他の奴がちょろちょろと。 美姫 「他のって何よ、他のって! 一つに絞って書け!」 いてててっ! や、やめ…。 美姫 「まったくバカなんだから」 はぁー、苦しかった。 うわ〜、首にお前の手の跡が残ってるよ。 美姫 「あら、おしゃれじゃない。この私の手形よ」 全く嬉しくないな。 美姫 「冒頭にも言ったのにね。口は?」 わ、災いの元……ぶべらっ! 美姫 「学習能力のないバカは放っておいて、CMにいってみよ〜」 恭也は自室に戻って人心地つく。 今しがた、大事な大事な任務を終えた所である。 時刻は深夜。 美由希との鍛錬を終えた後、その任務をこなしたのだ。 何て事のない任務のはずであったが、思った以上に緊張していたらしい自分を嘲笑する。 だが、この程度の疲れなど報酬すれば些細なものである。 恭也はそう考えを変えると、そろそろ休もうと布団に潜り込む。 が、ふと庭先に気配を感じて静かに部屋を後にする。 気のせいかとも思ったが、間違いなく庭から人の気配がする。 静かに足音を殺して庭先を見た恭也は、思わず声を出しそうになって堪えるも、小さな息を飲む音がする。 どうやら向こうはその小さな音を聞き逃さず、恭也に気付いたようで顔を向ける。 恭也をその視界に納め、明らかにほっとした様子で構わずに話し掛けてくる。 「いやー、良かったよ。窓も開いてないし、煙突なんてもんもないからな。 そっちから来てくれて助かった。不……じゃなかったな。高町恭也さんで間違いないよね」 「ええ、ありませんが」 未だに警戒をしたまま、目の前の女性を見つめる恭也。 そんな訝しげな視線などものともせず、真っ赤な服で全身をコーディネートした女性は大きな袋を庭に下ろす。 「それじゃあ、確かに届けたからな」 意味が分からずに見つめ返す恭也に構わず、女性はそれに乗ってやって来たのか、 背後にずっと浮かんでいたソリに乗り込む。 女性が握った手綱の先には赤い鼻をした鹿のような…いや、はっきり言うとトナカイが。 信じられないような答えを導き出す自分の頭を軽く振り、恭也は女性へと問い掛ける。 「あの、届けたというのは? それに、この袋は?」 「だから、高町恭也さんだろう」 「ええ、そうですが」 「今から十数年前に、サンタにプレゼントをお願いしただろう」 「……記憶にあまりありませんが、多分したんでしょうね」 「まあ、なくても仕方ないかもな。何せ、3歳の頃だから」 「えっと、それがどうして今になって?」 もう目の前に居る女性がサンタクロースだという事はこの際認めよう。 散々、非常識なものを目にしてきたのだ。 今更一つ増えたところで変わるまい。 そう自分に言い聞かせるも、どうしても浮かぶ疑問がある。 それが、今口にしたどうして今ごろになってという事だ。 だが、恭也のそんな疑問をサンタは当然だろうとばかりに返す。 「頼んだプレゼントが複雑すぎたんだよ。だから、こんなにも時間が掛かってしまった。 そもそも、本物のサンタにプレゼントを貰える確率ってのは結構低いんだぞ。 なのに、時間の掛かるものを頼むから…。本当は前任の奴の仕事なんだが」 ぶつくさ文句を言いながら手綱を手繰ると、ゆっくりとソリが浮上していく。 それを見上げながら、恭也は肝心のプレゼントが何なのか尋ねる。 「そんなの見ればすぐに分かるだろうに」 尤もだと納得した恭也が袋の口に手を伸ばし、小さい頃自分は何を頼んだのかとちょっと楽しみに袋を開ける。 開けて動きを止める。 そこにあったのは、可愛らしい女の子であったから。 「なっ! こ、これは…? ちょっと、人じゃないですか。 まさか誘拐犯」 「失礼な奴だな。私は見ての通りサンタクロースだよ。 大体、それだってお前の頼んだプレゼントだろうが。姉を頼んだのを忘れたのか?」 「あ、姉って。どう見ても俺よりも年下なんですが」 「仕方ないだろう。頼んだ時はお前は三歳だったんだから。 まさか、ここまで時間が掛かるとは思ってなかったんだよ。 あ、そうだ。お前が頼んだのは妹だった。そうそう、妹だった。 ほら、何も問題ない」 「さっきの理屈でいくのなら、それだとこの子は大きすぎませんか? 三歳の俺の妹なら…」 「ああ、忙しい、忙しい。 それじゃあな。私は忙しいからこれでな」 強引に話を打ち切ると、サンタは手綱を力強く打ち、あっという間に夜空に消えていく。 その姿を呆然と見送った恭也は、ワンピース一枚という薄着の少女をこのまま外に放っておくこともできず、 自室へと連れて行き布団に寝かせてやる。 暫く眠る少女を見つめていたが、 寝ているなのはの枕元にプレゼントを置くという任務で思った以上に気を使い過ぎて疲れたのか、 恭也は次第にうとうとし始める。 鈍る思考の中で、恭也は今までのが全て夢だったんだなと思い始め、 翌朝、喜ぶなのはの顔という報酬を楽しみにしつつ、そのまま眠りに落ちるのだった。 翌朝、いつものように起きた恭也は、自分が布団で寝ていない事に気付き首を捻るも、 変わりに布団で眠る少女を見て、昨日の事が夢でないと分かり肩を落とす。 それでも、眠る少女を起こさないように気を使いながら鍛錬の用意をして部屋を出て行くのだった。 鍛錬から帰ってきた恭也を待っていたのは、部屋で寝ていたはずの少女と桃子であった。 「かーさん、その子誰?」 「あー、恭也。ちょっと座りなさい」 美由希の言葉に答えず、恭也に座るように促す。 大人しく恭也が座ったのを受けて、桃子はどう切り出すか悩んだ挙句、ようやく第一声を発する。 「周りにあれだけ色んな女の子が居るのに、その中の子じゃないのはこの際良いわ。 でも、でもね、こんな幼い子に手を出すのは…」 「いや、色々と誤解しているようだが違うから」 「違うって何が!? 朝、アンタの部屋からこの子が出てきた時、どれぐらい驚いたと思ってるの! しかも、恭也どこ? って聞かれたのよ!」 桃子の言葉に美由希も恭也を見つめ、 キッチンで朝食の準備をしながらこちらの様子を窺っていたレンも思わず包丁を落としそうになる。 なおも桃子が何か言おうと口を開きかけるも、恭也の前に両手を広げて件の少女が立ちはだかる。 「恭也を苛める子はわたしが許さないんだから!」 「いや、別に苛められている訳では…」 「良いから、恭也は心配しないの。お姉ちゃんが守ってあげるからね」 「お、お姉ちゃん!? きょ、恭也、自分よりも小さい子にお姉ちゃんだなんて、また何てマニアックな事を」 「恭ちゃん、見損なったよ! まさか、恭ちゃんがそんな人だったなんて…」 「だから、話を聞け!」 思わず声を荒げ、美由希にはしっかりとその無礼な口の聞き方に対する鉄拳も付けてから、 恭也はその場に居る全員を見渡す。 恭也の剣幕に流石に全員が静かになったのを見計らい、恭也は昨夜の出来事を説明する。 流石に半信半疑ではあったが、この状況で恭也が嘘を吐くこともないだろうとその言葉を信じる。 「でも、本当にサンタクロースっていたのね」 「かーさん、そんな呑気な事を言っている場合じゃない。 この子をどうするかだ」 「もう、恭也。ちゃんとお姉ちゃんと言わないとと駄目でしょう」 明らかになのはと同じ年ぐらいの子にお姉さんぶってそう言われるのを複雑な顔で見下ろし、 恭也は桃子に助けを求める。 「えっと、とりあえずあなたの名前は何かしら。 あなたが恭也の姉だと言うのなら、あなたも私の子供ってことになるからね」 「……ちょっと待って」 言って少女は手に持っていたメモ帳をパラパラと捲る。 「恭也のお母さん。私が恭也のお姉ちゃん。だったら……。 うん、お母さん」 一体何が書いてあるのか気になるが、とりあえずは少女の名前が先決だと黙って見守る。 しかし、少女の口から出た言葉は。 「名前はないの」 「……え?」 少女の言葉に桃子は暫し固まり、とりあえずは朝食にしようと話を変える。 なのはや晶にも同じような説明をし、朝食を終えた頃少女の名前が決まる。 「ちょこちゃんってのはどう?」 「……朝食の前に渡したチョコレートと何か関係があるような名前だな」 「ち、違うわよ。何かあるとあんちょこを見てるでしょう。だから、ちょこよ。 そんな安直な付け方しないわよ」 「それも充分に安直だと思うけどな」 「ちょこ…。うん、わたしの名前はちょこ〜」 本人が気に入ったようなので、恭也もそれ以上は何も言わない事にする。 「えっと、恭也のお姉ちゃんって事は……。 美由希となのはのお姉ちゃんだね」 「いや、それは…」 ちょこの言葉に美由希たちも揃って苦笑し、困ったように恭也を見つめる。 恭也は仕方なさそうにしつつも、自分もまた困るのでちょこへと言う。 「ちょこ、俺の妹じゃ駄目か」 「妹? でも、お姉ちゃん…」 「実は妹が欲しいと思ってたんだ」 「うーん……、分かった、お兄ちゃん♪」 あんちょこを見たと思えば、すぐにそう返す。 ますますあんちょこの中身が気になるも、ちょこはそれを決して見せてはくれなかった。 ともあれ、こうして高町家に新たな住人が増える事になるのだった。 「お兄ちゃん、お姉ちゃん、なのはちゃん、早く、早く〜」 「待ってよ、ちょこちゃん」 急かす声になのはは走り出す。 そんな二人の後ろ姿を見遣りながら、恭也と美由希は微笑を交わしつつ少し足を早める。 同じ年頃の姉妹が出来たのが嬉しいのか、二人の仲はとても良く、見ていて微笑ましいものがある。 最初は戸惑ったプレゼントだったが、嬉しそうな二人を見ていると悪くないと今では思っている。 はしゃぎまわる二人を眺める恭也へと、美由希が少しだけ拗ねたように言う。 「二人の妹を可愛がるのに、どうしてもう一人には厳しいのでしょうか」 「もう一人? 俺に妹は二人しかいないぞ」 「そんな恭ちゃん! ちょこちゃんは恭ちゃんの妹でしょう!」 怒る美由希の言葉を軽く受け流し、恭也は当たり前だと頷く。 「なのはとちょこは俺の妹だぞ。ほら、妹はふた…」 「お願い、それ以上はもう言わないで。 うぅぅ、最近、前にも増して兄の苛めがきつくなっているような気がする」 「冗談だ」 「嘘だー! 今、真顔だったよ」 「お、お姉ちゃん落ち着いて。お兄ちゃんは前から真顔で嘘を言ってたじゃない」 「お兄ちゃん、お姉ちゃんどうしたの?」 なのはに慰められる美由希と、本当に何がどうなっているのか分からないといったちょこ。 そんな二人の手を取り、美由希は恭也から離れる。 「二人とも、あんな冷たいお兄ちゃんの傍にいたら苛められるよ」 が、その手はあさっりと離される。 「お兄ちゃんは優しいよ」 「ごめんね、お姉ちゃん。私もちょこちゃんと同じ意見かな。 普段は偶に意地悪だけど」 「そ、そんな……。兄だけでなく、妹にまで見放されたー!」 大げさに驚く美由希へと、恭也はただ肩を竦めるだけで言葉を掛ける事はしない。 美由希もまた分かっているのか、何事もなかったかのようにまた横に並ぶ。 何だかんだと言いつつ、本当の兄妹のようにじゃれ合う四人であった。 ちょこっとハ〜ト 近日、クリスマスプレゼント〜。 うーん、ネタは色々とあるんだが文にするのは難しいな。 美姫 「また何か書くつもりなの」 いや、新作じゃなくて長編のネタだよ。 大まかな流れやエンディングは決まっているんだけど、その途中、途中の話でな。 どうしようかな〜。色々とネタはあるんだが。 美姫 「まあ、精々頑張ってね」 うーん。オルタで武X冥夜で本編にそった話というのも面白いかもな。 純夏じゃなくて冥夜をヒロインしたオルタ。か、書きたいな。 美姫 「って、新作になってるじゃないのよ!」 ぶべらっ! まだ書くって言ってないのにぃぃ〜。 美姫 「ほら、バカやってないでさっさと今ある奴を書き上げなさい」 それは勿論だ! とりあえず、今年はリリカルとハル恭に力を入れつつ、他の長編も満遍なく。 って、そんな理想通りにいくか! 美姫 「やる前に諦めるな!」 ぶべらっ! …こ、今年の目標変更……。美姫に吹き飛ばされる回数を出来る限り減らす……ガク。 美姫 「まあ、それはアンタの努力しだいね」 そう言えば、キョンXキョン妹というのも面白そうだと思わないか? 美姫 「アンタは本当に学習しないのかぁぁっ!」 ぶべらぼえぇぇっ! ……う、うぅぅ。目標を立ててすぐにこんな目に(涙) 美姫 「同情の余地なしよ。ほら、アンタがバカやってるから、もうこんな時間じゃない」 うぅ、すまん。って、俺一人のせ……。そ、そうだな。 美姫 「あら、学習したじゃない」 当たり前だ! 毎度、毎度、本当の事を言って吹き飛ばされては堪らんからな。 大体、お前はすぐに手を出すんだから。もう少しお淑やかになったらどうだ? まあ、無理かもしれんがな。って言うか、想像できないっての、あはははは〜。 そもそも……、コホン。さて、そろそろ本当に時間もなくなってきたな。 美姫 「ふふふ♪」 ……アハ、アハハ。 美姫 「最後に盛大に吹き飛べーーーーー!!」 のぎょおぉぉぉぉん!! 今週は、この辺でーーーーーーーーーー!! 美姫 「今年の目標、浩即斬にしようかしら。あ、それじゃあ、また来週〜♪」 |
1月19日(金) |
美姫 「美姫ちゃんの〜」 ハートフルデイズ〜 美姫 「はっじまるよ〜」 <この番組は、PAINWESTの雑記コーナーより、気合いで寒さを吹き飛ばせ、とお送り中!> テレポートが使えたら、そう思った事はないか。 美姫 「突然ね」 疑問はいつも突然だよ。 美姫 「今のを疑問というかどうかは怪しいけれどね。で、どうしたのよ」 うむ。電車に乗ったんだが、一、二分ほど送れていてな。 その数分で乗り継ぎが上手くいかなった。 ホームに降り立ち時計を見れば、乗り継ぎの電車発射まで後一分。 走っても三分は掛かる。おおー無理だー! テレポートがあれば、一気に乗り継ぎするホームへ行けるのにぃぃ。 ってな感じだな。テレポート欲しいだろう。 あったら、こんな時助かると思わないか。 美姫 「ふーん、なるほどね。 事情は分かったけれど、それだったら、そのまま目的地までテレポートすれば良いじゃない」 あっ。 美姫 「バカだわ、バカが居る。それも真正のバカよ」 に、二回も繰り返すな! 後、真正ってなんだよ! ちょっと思いつかなかっただけじゃないか。 もしも話にそこまで突っ込むなよ。 美姫 「いや、そうは言われてもね。今のは突っ込むべき所じゃない」 うぅぅ。確かに逆の立場なら突っ込んでそうだが。 美姫 「気付かないっていうのもありそうね、アンタの場合」 自分でも否定できんな、それ。 美姫 「やれやれだわ」 そこまで呆れるな。流石に虚しくなるから。 美姫 「とりあえずは、気分を変えるためにもCMよ〜」 「あの飛行要塞ガルガンチュアに対する兵器がない訳ではない」 そう言ったクレア女王の言葉に、誰もが期待に満ちた目を向ける。 「だったら、勿体ぶってないでさっさとその兵器とやらでアレを打ち落としてくれよ」 大河の言葉にクレアは渋面を変えず頷く。 それに違和感を感じた恭也が問題があるのかと尋ねる。 「ある。一つは周囲のマナを膨大に消費するという事じゃ」 「……魔導兵器が使用された土地はマナが枯渇し、作物が育つようになるにはかなりの時間を必要とします」 補足するように告げるリコの言葉に、しかし大河は声を荒げる。 「それは大変な事だってのは分かる。けれど、こうしている間にも人の命が失われているんだぞ!」 「分かっておる! 誰も使わないとは言っておらんだろう!」 大河の言葉にクレアもまた声を荒げてそう告げると、即座に興奮した自身を抑えるように小さく謝罪する。 「すまんな」 「い、いや、俺も悪かったよ」 やや気まずい沈黙が降りるが、その時間も勿体無いと恭也がクレアへともう一度声を掛ける。 「やるのならやるで、すぐに行動しよう。 俺たちを呼んでそれを聞かせたという事は、その兵器はここにはないのだろう」 「その通りじゃ。魔導兵器を起動できるのは王家の血を引く私のみ。 そして、その場所は地下迷宮の奥じゃ。お主らには魔導兵器レベリオンの元まで私を連れて行って欲しい」 クレアの言葉に全員が頷き、救世主一向はレベリオンの元へと向かうのであった。 「マスター、レベリオンならば確かにあの要塞を破壊できるかもしれません。 ですが、もしそこにイムニティか白の主がいたら」 「しまった。完全に忘れていたぞ」 リコの言葉に大河は困ったような顔を見せるも、他の者たちは先へ先へと進んでいる。 今更引き返そうとも言えず、またそれを言える明確な理由もない。 一層の事、全てを話してしまうか。 リコと大河がそんな風に内緒話をしている間に、一向は大きな扉の前に立つ。 クレアが鍵を取り出してその扉を開けば、中には大きな砲台を思わせる兵器が鎮座していた。 中へとクレアが踏み入った瞬間、恭也はクレアを引き戻して八景を抜き放つ。 金属音と共に恭也の完全で火花が散る。 「恭也、大丈夫」 慌てて駆けつける忍に、恭也はただ黙って頷く。 恭也の無事な姿を見て胸を撫で下ろすと、鋭い眼差しで前方を睨み付ける。 そこには仮面を着けて銃を構えたシェザルが、いや、彼だけでなくイムニティの姿もあった。 彼らとの激闘の末、追い払った恭也たちはいよいよレベリオンの起動へと移る。 が、去り際にシェザルが放った爆弾により、レベリオンの回路に異常でも起きたのか、すんなりと起動しない。 「うーん、こっちの機械がどうなっているのかは分からないけれど、ちょっと良い」 忍はポケットから工具を取り出すと、レベリオンのコンソールらしきものを行き成りばらし始める。 驚く面々を余所に、恭也は忍の背中へとただ言葉を掛ける。 「何か分かりそうか」 「うーん、幾つかは分からないけれど、ノエルたち自動人形よりは簡単、簡単。 あれ、これって。ふんふん。あ、恭也、これより小さいドライバ取って」 忍の言葉に足元に広げられた工具から忍が望むものを取って手渡す。 「うーん、前にエリザに見せて貰った魔科学に似てるかもね」 「魔科学?」 「うん。エリザって言うのは、私の親戚なんだけどね。ほら、さくら知ってるでしょう。 さくらとも仲良くてね。で、色々と魔術に詳しいのよ。 で、魔科学ってのはエリザが何処からか見つけてきた古代文明にあった魔法と科学の融合したようなものらしいよ。 幾つか古文書を見つけて、それを見せてもらった事があるから」 良いながらも手を休める事なく、忍はレベリオンをばらし、 なにやらコードを引っ張り出しては繋いでいく。 他の者たちは訳も分からず、下手に声を掛ける事も出来ずにただ見守るしかなかった。 「よーし! 完成!」 ようやく忍がそう言って立ち上がると、大河たちもやっとかと待ちくたびれたように動き出す。 真っ先に恭也が忍へとその成果を尋ねる。 「で、どうなんだ」 「もうばっちり! これで起動するはずよ」 忍の言葉にクレアがレベリオンを起動させる動作を行うと、先ほどは途中で止まったソレが、 今度はきちんと起動を果たす。 恭也を除いて一同がどよめく中、忍は召還器を取り出してレベリオンの横に即席で造られた台座の上に乗せる。 「ふっふっふ。ただ直しただけじゃないわよ」 その不敵な笑みに嫌な予感をひしひしと感じつつ、恭也は忍へと続きを促す。 恭也の態度に不満そうな顔を見せるも、すぐに忍は機嫌よく語り始める。 「ふふふ。マナを収集する回路をちょっといじって、召還器をエネルギー源とするように改良したのよ! 召還器の無尽蔵とも言える根源の力を使えば、この周囲のマナの枯渇問題も解決。 しかも、恭也は召還器ないから除くとしても、これだけ召還器があるんだもの。 その威力は前とは比べものにならないはず!」 「やはりそこは断言しないんだな」 「だって、前のがどれぐらい凄いのかしらないし。恭也が苛める…。 これがドメスティックバイオレ…」 「忍、時間が勿体無いから」 「それもそうね。それじゃあ、ちゃっちゃとやちゃいましょう。 皆もこの台座に召還器を乗せて。で、ちゃんと召還器を持っててね。それじゃあ、クレアちゃんお願い」 相変わらず自分をちゃん付けしてくる忍に苦笑しつつ、クレアはレベリオンにマナの収集作業へと移らせる。 本来なら、レベリオンのマスター以外でこの場に居る者からもマナを吸い取ろうとするレベリオンだが、 そのような動きは見られない。 それどころか、文献に書いてあったよりも早くエネルギーのチャージを終えてしまう。 マナが充分に溜まった事を伝えるクレアに、忍はにやりと笑みを見せ、 いつの間にか展望台のようにせり出し、砲身を空へと向けていたレベリオンを、 次いで遥か彼方の空に浮かぶ要塞を順に楽しそうに見遣る。 「座標設定完了じゃ」 クレアのその言葉に、忍はびしっとガルガンチュアに指を突き刺す。 「てな訳で、照準よーし。距離、風向きよーし。 魔導兵器レベリオン改発射っっ!」 何故か忍の声に合わせてクレアがレベリオンを解き放つ。 真っ直ぐに伸びていった光の帯は、ガルガンチュアから発せられた同じような攻撃とぶつかり合い、 打ち破る。だが、それが緩衝材となり、ガルガンチュアに大したダメージは与えられない。 しかし、忍は慌てる事無く不敵な笑みを尚を見せる。 「ふふふ。向こうの次の攻撃までに時間が掛かるのは最初の時に確認済みよ。 それに対して、こっちは」 忍が召還器に声を掛けると、まるでそれに応えるように召還器から力が溢れる。 それはマナとしてレベリオンへと伝わり、エネルギーが溜まっていく。 忍の行動を見ていた大河たちも同様に召還器から力を引き出す。 すぐにレベリオンにエネルギーが充填され、再び発射準備が整う。 「それじゃあ、第二射いってみましょうか♪ 恭也と私の門出を祝して…はっし……いたっ!」 「こんな時にふざけるな」 流石に今度はクレアも発射させず、何故か冷めた眼差しを忍へと向けていた。 忍は笑って誤魔化すと、後はクレアに任せる。 こうして放たれた第二射により、ガルガンチュアの先端が崩壊する。 更に続けて第三射を砲撃し、ガルガンチュアは完全に崩れ去っていく。 その様子を眺めながら、大河とリコは息を潜めて成り行きを見守る。 完全に崩れ去った今も、自分たちには何の変化もない。 つまり、あそこにはイムニティと白の主は居なかったか、助かったかという事だろう。 その事に、敵の身を案じなければならないという複雑なものを抱きつつも、とりあえずは胸を撫で下ろすのだった。 「よくやったな、忍」 「んふふふ〜」 恭也に褒められてご機嫌な忍は、その視線をガルガンチュアへと向ける。 「うーん、この戦いが終わったらガルガンチュア分解させてくれないかな」 「何のためにだ」 「ほら、構造を知れば小型して違うエネルギー、そうね電気とかで代用した物が造れるかもしれないじゃない。 それをノエルの武器として…いた、いたた、いたい、痛いよ、恭也」 「で、それの実験として俺に相手をさせる気か?」 「あ、よく分かったわね。やっぱり愛の力ね。考えている事が伝わる、以心伝心だなんて。 って、ちょっ、ほ、本当に痛い、痛い、痛い!」 「お前、俺を殺す気か!」 「や、やめやめ…。きょ、恭也なら大丈夫よ、うん」 「お前、あの威力を見てそれを言うか」 「ほら、避けちゃえば」 「その後、その光線は何処を突き進むんだ」 「…………あ、あははは〜。じゃ、じゃあ、威力を弱くすれば」 「却下だ、馬鹿者」 軽く恭也に頭をはたかれ、恨めしそうに恭也を見上げつつも、忍はどこか楽しそうに笑う。 まだ破滅が全滅したのかどうかは分からないが、当面の脅威であったガルガンチュアは取り除く事が出来た。 だからか、忍だけじゃなく他の面々もどこか晴れ晴れとした顔をしていた。 SAVIOR HEART 〜恭也と忍の異世界戦記〜 とまあ、またしてもDUELだな。 美姫 「今回は忍が救世主候補として呼ばれたのね」 美由希の料理を食べて気が付いたらアヴァターだった。 美姫 「いや、それはまた違う話だから」 あははは。冗談はさておき、レベリオンを見てたら、何となくノエル用に小型化さえせてみたくなってな。 そこから、だったら忍だろうと。 美姫 「で、こんなのが…」 うんうん。完全武装ノエル。 主砲、レベリオン・改 全長2メートル弱のレーザー砲。 左手にそれを持ち、右手にはブレードを装備。 両足にはバーニアを装備し、瞬間的速度は従来以上に。 美姫 「はいはい。お馬鹿はそこまでにしておきなさいよ」 だな。 それじゃあ…。 美姫 「そうそう。今年に入ってから、何かとろとろしてるわね。 SSの方はどうなってるのよ」 せ、誠心誠意頑張ってます…。 美姫 「じと〜」 ほ、本当だよ。ほら、シャンプーって目に染みるじゃない。 美姫 「訳分からないわよ!」 ぶべらっ! 美姫 「まったく、長編もちゃんとやってよね!」 わ、分かってるよ。今年はリリカルに力を入れようと思いつつ、ついつい新しいのに。 美姫 「それを止めなさいっての!」 再び、ぶべらっ! ……す、既に虫の息なんですが。 美姫 「自業自得よ。ちゃんと、他の長編と満遍なくやるのよ!」 ふぁ、ふぁ〜い。 美姫 「気の抜けた返事をしない!」 三度、ぶべらっ! ……あ、あ、あ。……ガク。 美姫 「って、ちゃんと返事しないで寝てるんじゃないわよ!」 ぐべっ、あばばばっ! が、頑張りますです、はい! 美姫 「それで良いのよ!」 四度、ぶべらっ! ……って、今のは何故? 美姫 「あー、ごめん♪ 勢いってやつ?」 ひ、酷い……。 美姫 「あ、もうこんな時間だわ。それじゃあ、今週はこの辺でね」 それじゃあ…。 美姫 「……いや、今更だから良いんだけどね」 ふっ。今年のモットーは、更に加速する回復だ。 美姫 「それってやられるの前提のモットーよね」 し、しまった!! じゃ、じゃあ、十回に一回は殴られないようにするとか? お、おお、何か大きな目標になりそうだぞ。 美姫 「言ってて虚しくないの」 ちょっとだけ。 美姫 「はぁ、私も疲れるわ」 うっ。と、とりあえず、今週はこの辺で! 美姫 「それじゃあ、また来週〜」 |
1月12日(金) |
美姫 「美姫ちゃんの〜」 ハートフルデイズ〜 美姫 「はっじまるよ〜」 <この番組は、PAINWESTの雑記コーナーより、まだまだやるわよ〜、と絶賛お届け中!> 祝! 美姫 「放送100回〜!!」 うぅーん、とうとうハートフルデイズも100回目を迎えたか。 美姫 「よく続いたわよね」 いや、本当に。まさか美姫の冗談から始まって、ここまで来るとは。 美姫 「うんうん。私のお陰ね」 ……えっと、ウン、ソウデスネ。 美姫 「何か含みのある言い方よね」 あははは。えっと、CMネタは100以上になるのかな。 一回の中で、2回、3回とやった事もあったし。 美姫 「幾つかは、頂いた人の作品をそのまま利用ってのもあったわね」 他にもとらハだけのネタSSってのもあったな。 えっと、純粋に自分だけでやったCM数でクロスとして数えていくと……。 97かな。 美姫 「同じのも幾つかあるけれどね」 まあな。しかし、全て元ネタ分かっている人っているのかな。 美姫 「いるんじゃないかしら」 かな。 ともあれ、祝100回! 美姫 「次は1000を目指すわよ」 いや、絶対に無理だって。 美姫 「目標は高く持たなきゃ駄目なのよ!」 高すぎます。せめて、200にしておいてください……。 美姫 「それだって怪しいんじゃない」 ……おっと、今回はこんな素敵な贈り物が。 美姫 「上手く避けたわね」 何の事やら。えっと、安藤さんからの贈り物だな。 美姫 「祝100回を記念してですって」 いやはや、ありがたいことです。 美姫 「それじゃあ、早速だけどCMよ〜」 ――フィリス=矢沢医師は夜勤が苦手だった。 その理由は夜の病院が暗くて怖いという、ある意味幼い外見の彼女にぴったりのもの。 尤も本人にそう言えば、小さな唇を尖らせてかわいらしく怒ってみせるのだろうが。 とにかくそんな訳で、彼女は夜勤が苦手だった。 そんなフィリスに救いの手を差し伸べたのは、我らが究極朴念仁こと、高町恭也だった。 半ば高町家のホームドクターと化している彼女に、恭也は並々ならぬ恩義を感じていた。 そんな彼女の悩みを知った彼は夜勤の間、自分も付き合うと申し出たのだ。 最初は迷惑が掛かると渋ったフィリスも結局はそれを受諾し、 結果として恭也が病院に通う頻度も格段に上がることになる。 そうして何度目かの夜勤の日、フィリスとともに院内を見回っていた恭也は一人の少女と出会った。 少女はフィリスと二、三、言葉を交わすとこちらに軽く会釈して去っていった。 「フィリス先生、彼女は?」 「如月さゆりさん。わたしが担当している患者さんです」 「そうですか」 「彼女が何か?」 「いえ、少し気になったものですから」 入院患者らしいその少女を恭也は何度か院内で見掛けたことがあったのだ。 「彼女、美人ですもんね」 「フィリス先生?」 何故か不機嫌そうに頬を膨らませてそう言うフィリスに、恭也は不思議そうに首を傾げる。 彼は知らない。 この時、フィリスが不機嫌だったのは何も自分の想い人が他の女性に関心を示したからではなかった。 少女は難病を患っていて、早急に手術をしなければ死んでしまう。 だが、彼女はそれを拒んだ。 おそらくは知っているのだろう。例え手術をしたところで、生き長らえるのは精々数年でしかないことを。 それから数ヵ月後、恭也は少女が死んだことを彼女の妹から聞かされていた。 元々、助からない命だった。 だが、如月はるかと名乗ったその少女は、姉は自分を助けるための代償として数年の時間を払ったのだという。 妹は生まれつき心臓が弱く、移植しなければ長くは生きられなかった。 そんな彼女に、彼女の姉は言ったのだ。自分が死んだら、心臓をあげると。 姉妹は一卵性双生児。これ以上の適合者もいないだろう。 手術は無事に成功、術後の経過も順調で、少女は明日には退院するという。 今日、恭也に声を掛けたのは単なる好奇心からだ。 生前の姉は家族以外のことにはまるで無関心だったが、 唯一高町恭也という男性にだけは強い関心を示していたから。 それが一体どんな人物なのか、退院する前に一度会って話してみたいと思ったのだ。 「ごめんなさい。わたしのわがままであなたの貴重な時間を取らせてしまって」 「いえ……」 申し訳なさそうに頭を下げる少女に、恭也は却って恐縮してしまった。 * 「そう、彼女に会ったんですか」 診察室で恭也からその話を聞いたフィリスは、幾分暗い表情でそう言った。 無理もない。如月さゆりが死去してからまだ何ヶ月も経っていないのだ。 如何に彼女が優れた医師であったとしてもすべての患者を救えるわけではない。 だが、幾ら頭では理解していても、やはりそれは悲しいことだった。 「そんな顔をしないでください。 確かに如月さゆりさんは亡くなってしまわれましたが、 彼女が心臓を提供したことで彼女の妹さんは生きることが出来ています。 それだけで彼女の死は無駄にはならなかったと言えるんじゃありませんか」 「そう、ですね……」 励ますような恭也の言葉に、弱々しく頷くフィリス。 彼女にも姉妹がいる。同じ立場だったなら、自分も迷わずそうするだろう。 ……でも、それでも、やっぱりわたしは二人とも助けてあげたかったです。 心残りを内心で呟き、フィリスは表情を引き締める。彼女の患者は何も如月さゆりだけではないのだ。 酷なようだが、済んでしまった事にいつまでも囚われているわけにはいかなかった。 気持ちを切り替え、フィリスは医師としての顔で新しいカルテに手を伸ばす。 ――如月さゆり。 彼女の心臓移植手術も無事成功し、明日はいよいよ退院だ。 暫くは様子を見るために定期的に通院してもらうことになるだろうが、それも二ヶ月程度のことだろう。 寧ろ問題なのは精神面でのケアだった。 表面上は立ち直っているように見える彼女だが、心に受けた衝撃は決して軽いものではなかったはずだから。 そして、フィリスの懸念は彼女の想像を遥かに超える形で現実のものとなる。 * 「最近、よく夢を見るんです」 それは楽しかった姉との思い出。けれど、何処か自分の知る過去とは違う、そんな夢……。 * 「心臓移植を受けた患者が臓器提供者の記憶の一部を持ってしまうという例は過去に数件ですが報告されています」 「彼女もそうだと?」 * 知らないはずの光景が、夢に現に少女を悩ませる。 次第に鮮明さを増していくそれらは妹に知られざる姉の一面を垣間見せるようになる。 * 「わたし、こんなの知らない……」 * 半ば錯乱状態に陥った少女の前に、死んだはずの彼女の姉が姿を見せる。 それは夢か、幻か。 その日を境に、少女の周囲で起こり始める不可解な現象。 * 「バカな、固有結界だと!?」 * ――世界は夢に食われている……。 * 「まさか、そんな方法で封印を破るなんてね。さすがは如月の魔女といったところかしら」 憎悪に歪んだ聖職者の剣を少女へと向けるシスター。 * 「教会の執行官がこんな極東の島国に何の用だ」 魔を従え、魔を滅する魔導探偵という存在があった。 * 「彼女は俺が護ります。この剣はそのためのものですから」 その手に護りの剣を携え、自身が信じる道を貫く青年。 * 「もう止めてよ、お姉ちゃん!」 * 少女の悲痛な叫びは届かず、彼女はただ、そこにあり続けるために世界を食らう。 * 「どうして認めてくれないの。わたしはただ、普通に暮らしていたかっただけなのに!」 * 護るものと奪うもの。 迷走の果てに譲れぬものを抱えた両者が激突するとき、どうしようもなく開幕しる悲劇がそこにあった。 ――戦いが、始まる……。 Labyrinth of the heart 2007年 浩さんが書いてくれるのをみんなで待とう! ほうほう。中々面白そうって、またこのオチですかっ! 美姫 「あははは。これはもう書くしかないわね」 いやいやいや無理だっての! 美姫 「へっぽこめ」 グサッときたよ、今。そう、この辺に見えない刃がグサっと。 美姫 「この辺?」 そうそう、その辺……って、いたっ! な、なななななな、なんばしよっとか!? 美姫 「えっ? 何って、この針でこうやって」 ってチクチク刺すな! って、地味に痛いな、おい! 美姫 「じゃあ、大きいのでガツンといっておく?」 って、そもそも、刺すなっての。 美姫 「あ、そうそう…」 って、そんなあからさまに話を逸らすなよ。 美姫 「そうは言っても、本当に大事な事なのよ」 ぶーぶー! 美姫 「まあ、浩がそう言うのなら、もう一つの贈り物はいらないのね」 ちょっと待て! それを先に言いなさい! で、誰から。 美姫 「こっちはテンさんからよ」 おお、テンさんからも頂いたのか。 美姫 「ありがとうございます」 ありがとうございます。 美姫 「それじゃあ、こっちもまた早速だけど」 ありがたく公開〜。 美姫 「レッツ、CM〜」 いや、何か可笑しくないか、その言い方? 「父さんが亡くなって……すぐの年?」 捨ててあった新聞に書かれていた年月日を確認して、彼は大きく目を見開いた。 さて、少し状況を整理してみよう。 彼の名前は高町恭也。年齢は二十歳である。海鳴大学の一年生で、少々剣術を嗜んでいる。 剣術の関係でボディガードなんていう仕事もしていたが。 家族構成は母、桃子。長女であり恭也の弟子である美由希。次女のなのは。それと姉的存在であるフィアッセ。 妹的存在であるレンと晶がいる。時たま叔母が休暇を使って帰って来たりもする。 友人に月村忍と赤星勇吾がいて、妹の親友である神咲那美や、 ほぼ高町家のホームドクターと化しているフィリスや、 人外魔境と名高いさざなみ女子寮の寮生たちなどを知り合いに持つ。 そうここまではいい。 そして、先ほどのことである。 なのはと……なぜか途中で忍に知佳、フィリス、リスティ、他諸々の方々と出会い、 着いてきたのだが……買い物をしていたとき、一人の少女が車に引かれそうになるのを目撃。 神速を使ってもかなり微妙な距離で、それでも恭也の身体は勝手に動き、彼女を助けるために疾走した。 少女を突き飛ばして救い出したものの、恭也は車を避けられそうになかった。 そのときたまたま目に入ったのだが、フィリスたちが背中に翼を出していたのに気がついた。 で、気づいてみると恭也は公園の芝生の上で眠っていた。 HGSの能力を使って、フィリスたちがアポートしてくれたのだろうと思い、 最初は高町家に帰ってみたのだが。 「……俺?」 そう高町家に戻ってみれば、庭で無茶な鍛錬をしている幼い恭也がいたのだ。 そして訳もわからず公園に戻り、そこに捨てられていた新聞を見て、先程の台詞である。 「過去に戻った?」 今まで散々不思議な事に巻き込まれ、そういったものに慣れてきてはいたが、 これはさすがにどうしていいのか。 というよりも、どうやって元の時代に戻ればいいのか。 やはり知佳たちに助けを求めるべきか。 とはいえ、この時代では面識などない。 「……いやしかし、この時代の俺はまだ膝を壊してはいなかったな」 元の時代に戻れる保証はない。 「俺が俺に御神流を教えたらどうなるんだ?」 父を失い、恭也はほぼ自己流で御神の技を覚えた。そのため使えない技も多かった。 今の恭也は叔母との再会により、その失ったはずの技をほぼ体得している。 しかしそれでも膝に爆弾を抱えているため、剣士としては完成することはない。 だが、この時代の自分は? そして、今の恭也ならば御神の技の全てを教えられるし、 相手は自分自身なのだから効率よく鍛えてやることができるのでは? 「ふむ、元の時代に戻る方法があるのかわからんし、知り合いもまったくいないのも同然だしな」 そう呟いて恭也は笑った。 「少しぐらいハメをはずしてみるか」 恭也はタイムパラドックスとか、そういう難しいことを考えることもなく、 すでに過去の自分をどうやって鍛えるかに集中していた。 その後、鏡を見てなぜか自分が少し若返っているのにも気づいたりもしたのだが、 まあいいか、と軽く受け止めて、再び高町家へと向かったのだった。 「あなたは誰ですか?」 過去の自分との邂逅。 「俺は……」 言葉を詰まる未来の恭也。 (……全然考えてなかった) 幼い自分を鍛えることしか頭になかったので、 どうやって高町家に入り込むかなんて考えていなかったりした。 「俺は不破恭吾だ」 てっとり早く名前は親友の一文字をもらうことにした。 「不破!?」 その名字に幼き恭也が驚愕の表情をみせたのだった。 「うむ、君の父親、不破士郎の弟、不破一臣の『隠し子』だ」 爆弾発言だった。 きっと一臣は草葉の陰で泣いて……睨んでいることだろう。 「つまりは君の従兄だ」 「い、従兄……か、一臣さんはいつあなたを」 まあ確かに、士郎と一臣の年齢差は結構あったはずである。その弟の方が先に子供を作るのは…… 「一臣さ……父さんは早熟だったんだ。十代だった、とだけ言っておこう」 もう草葉の陰から睨むどころか、殺気すら叩き込んできそうな答えだった。 その後、とりあえず言いくるめ、さらに恭也の師になることに成功。 さらにさらに、桃子すらも巻き込んで高町家に住むことまで成功。 そして時が経ち…… 「兄さん、もう少し右の方を切った方がいいんじゃないか?」 「む、確かに」 盆栽に向かう恭也と恭吾。 「あの二人、本当は兄弟なんじゃないの?」 恭也が成長するごとに、恭吾へと似ていき、さらにその渋い趣味まで同じなのを見て、 どこか疲れた表情で桃子は呟く。 「ふう、茶がうまいな、恭也」 「ああ、天気もいいしな」 縁側でまったりとしている恭也と恭吾。 「恭兄さん、恭ちゃん、二人とも枯れすぎだよ」 とりあえず恭吾は弟子に、恭也は妹弟子に飛針を投げておいた。 「恭也、釣りをしに山へ行くぞ、ついでに修行もしよう」 「逆なんじゃないか、兄さん。まあそれもいいが」 「俺より多く釣れたら、奥義を一つ教えてやる」 「……御神流に負けはない」 「俺も御神流だ。そもそも釣りに御神流は関係ない」 とまあ、恭吾は過去に戻ってそれなりに楽しくすごしていたりした。 しかし恭吾が来たことで、剣腕よりもその枯れ具合に磨きがかかっている恭也。 今後、二人の恭也は……過去の恭也はどこまで老成していくのか。 というよりも、神咲薫等と同級生となり、知佳たちとも出会ったのだが、 未だ未来に戻る方法を聞かないのはどうなのか…… 過去を大幅に変えてしまったので戻れないかもしれないが。 「とりあえず恭也、一年留年しろ」 「なぜ!?」 「でなければ出会えない人がそれなりにいる。まあ前の通りに武者修行にでも行くか」 「兄さん、たまにあなたが何を言ってるのかわからなくなる」 高町恭也改め不破恭吾の高町恭也(小)育成計画 公開日は未定です おお。 美姫 「もの凄い設定のお話ね」 これ、かなり気になるな。 美姫 「思いっきり歴史に介入してしまった恭也、もとい恭吾」 介入というか、完全に改変しちゃってるな。 美姫 「一体、どうなっちゃうのかしらね」 いや、本当に面白そうなお話ですな〜。 美姫 「ありがとうございます〜」 ございます! 100回記念でちょっと豪華にCMSSも二本立て。 それじゃあ、そろそろ…。 美姫 「ちょ〜〜っと待った。これってどっちもプレゼントでしょう」 そ、そうだね。 美姫 「で、アンタは?」 ……ちっ。 美姫 「ほう。この私に向かって舌打ちね」 ア、アハ、アハ。 美姫 「永遠に目覚めない眠りと、呼吸が止まるのとどっちが良い?」 え、えっと、どう違うのかな? 美姫 「心臓が止まっちゃうのと、心臓がなくなるのでは?」 それも、どう違うのかな? 美姫 「くす♪」 あははは(汗) 美姫 「吹き飛べ愚か者!」 ぶべらぼぇっ! 美姫 「それじゃあ、CMで〜〜す♪」 高町家の庭。 月村邸のようにとてつもなく広いという事はないが、それでも軽い鍛錬を行うぐらいは出来る広さの庭。 今、そこで一組の男女が向かい合っている。 その手に握るは、日常ではまず目にする事のない日本刀。 いや、正確には小太刀というべきか。 それを手に、向かい合う二人。 既に勝負は決したのか、片方の刃が残る一方の喉元で寸止めされている。 決して長くはない沈黙は、恭也の一言で持ってして破られる。 「見事だ」 突きつけられた刃から身体を離し、弾き飛ばされて庭の片隅に突き刺さった小太刀を手に取ると、 それを鞘に納めて美由希へと差し出す。 恭也が目の前に立ち、さっきまで自分が使っていた小太刀、御神正統の証たる龍鱗を自分へと差し出すのを見て、 信じられないように目を見開き固まっていた美由希がようやく起動し始める。 「……私が勝ったの?」 呆然と呟く美由希に、恭也は強く頷いて肯定すると差し出した小太刀を受け取るように促す。 半ば呆然と龍鱗を受け取る美由希に、恭也は静かに問い掛ける。 「美由希、お前は何のために剣を握る?」 「え? 何のって、それは大事なものを守るために」 殆ど自然と口をついて出た言葉。 それに恭也は頷きつつも続ける。 「そうだ。俺たちの剣は奪うためのものだが、その想いの元に振るわれるべきものだ。 だが、俺たちが奪った人たちにも同じように守るべきものがあったのかもしれない」 「でも、それは…」 「いずれはその事でおまえ自身が悩む時が来るかもしれない。 その答えは結局は自分で出すしかない。 守るために奪う覚悟を持て。守れなかった時には全て失ってしまうという事を忘れるな。 これからは、自分で考え、自分で判断しろ。 生かすも殺すも己次第。何を守り、何を奪うのかもまたお前次第だ。 御神の技はお前と共にある。美由希、これにて皆伝の儀は終わりだ」 「恭ちゃん……。ありがとうございましたっ」 最後、少しだけ涙目になりながらも美由希は深々と頭を下げる。 今言われた事の意味を全て理解できた訳ではない。 それでも、これで一つの目標をやり遂げたという気持ちが美由希の胸に湧き上がる。 自然と潤みだす目に力を込め、自然と浮かび上がる笑みはそのままに顔を上げる。 恭也は自分に付いてきた弟子を誇るように、今までの成果を認めるように、 そっと伸ばした手で美由希の頭を一度だけ撫でる。 その優しい眼差しに美由希はまた潤みそうになるのを、瞬きで誤魔化すようにする。 恭也が美由希から手を離すのを切っ掛けに、それまで庭での出来事をじっと見つめていた桃子たちが騒ぎ出す。 皆の前で皆伝の儀を行いたいという美由希の気持ちを汲んでの今回の皆伝の儀。 そこには、声を掛けたもののどうしても抜けれない仕事で来れなかった美沙斗の姿はなく、 それだけが少し寂しいけれど、 それでも美由希は自分のこの剣を知っても変わらずにいてくれる友達たちに笑顔を見せる。 盛り上がる光景を離れて見つめながら、 恭也もまた肩の荷が下りたかのように何処かすっきりとした顔で空を見上げる。 後日、美由希と共に士郎へと報告に行かないとなと頭の片隅で思いながら。 物語はこうして一つの区切りを迎えた。 ただし、それはあくまでも一つの区切りでしかない。 何故なら、彼らの人生はまだこれからなのだから。 そう遠くない未来において、美由希はこの時の恭也の言葉を思い知る事となる。 奪う覚悟とは。 自分が踏み込もうとしている世界が本当に優しくはないということを。 そして、平和な日常と言うのが、何かの拍子に意外にもあっけなく壊れる薄氷の上のようなものだという事を。 薄暗い部屋の中、浮かぶ二つの影。 一人は椅子に腰を降ろし、両足を投げ出してテーブルの上へ。 もう一人はそんな男の対面に立ったまま男を見下ろす黒いスーツ姿の男。 スーツ姿の男はテーブルの片隅に置いたケースから書類の束らしきものを取り出し、男へと投げる。 男は受け取ろうともせず、テーブルの上に落ちた書類の表面を目で追う。 「これが今回の仕事内容?」 「そうだ。その資料の中にある奴三人を始末しろ」 「僕に頼むって事は、強いんだろうね、その三人は」 「…一人はあの人喰い鴉だ」 「へえ」 今まで興味なしとばかりに視線を合わせようともしなかった男は、不意に唇を笑みの形に歪ませると、 テーブルから足を下ろして書類を手に取りパラパラと捲っていく。 軽く目を通す男へ、スーツの男が更に言葉を投げかける。 「後の二人は、あの女を打ち負かした者らしい。詳しくは分かっていないがな」 男の顔に浮かんでいた興味の色が更に濃くなり、笑みも深まる。 「…面白いね。人喰い鴉を打ち破った二人、か」 「面白いではすまないんだがな。 こっちとしては、チャリティーコンサートを中止にできず、 あまつさえ、かなり上等な駒が敵に回る事になったんだからな」 「そんなのは僕には関係のない事だよ」 「貴様も一応は組織の人間だという事を忘れ……」 スーツの男の言葉は、いつの間にか立ち上がった男によって遮られる。 ネクタイを強く引っ張られ、苦しげに呻くスーツの男へ、静かな、だけど冷たい声を眼差しを投げる。 「そっちこそ忘れない事だよ。僕は僕の思うように、好きなようにしても良いっていう権利があるという事を。 君たちのボスからの許可だったはずだよ。忘れたのかな? つまり、ここで君を殺したとしても僕は咎められる事はないんだ。 まあ、後片付けが面倒くさいし、今は機嫌が良いからそんな事はしないけどね」 行ってスーツの男のネクタイから手を離し、男は再び席に座ると書類を再び捲り始める。 小さく咳き込みつつもスーツの男は何も言わずに首元を何度か軽く擦ると再び口を開く。 「ヴァン、この事は報告するからな」 「どうぞ、ご自由に。君だって分かっているはずだよ。 その程度の事で彼が僕をどうこうしないって事ぐらいはね。それより…」 ヴァンと呼ばれた男はスーツの男の言葉など気にも留めず、逆に自分の疑問をぶつける。 「君はさっき三人と言ったが、ここには二人分の資料しかないようだけれど? これはどういう事かな」 「…もう一人の情報は掴めなかった。別に隠している訳でも何でもない。 あの女とやりあったのが、そこにある奴かどうかさえ怪しいんだからな。 だが、生き残った者の情報から、あの場に居たのは二人。 その内の一人はそいつで間違いないらしい。 そこから、うちの諜報部が色々と動き回って更に詳しい事を…」 「そんな事はどうでも良いんですよ。僕が興味あるのは、僕を楽しませてくれるのかどうかという事だけ。 それで、どうなの?」 ヴァンは目を通していた書類を再びテーブルの上へと放り投げる。 資料に一瞥くれると、男はヴァンの問い掛けに答える。 「…詳しい事は分からないが、そいつの使う剣は御神らしい」 「へぇ、音に聞こえし古の剣術使い。未だに生き残っていたとはね。ああ、人喰い鴉もそうだったか。 くすくす。良いね〜、久しぶりに楽しめそうだよ」 「楽しむのは構わないが、きちんと任務は遂行してくれよ」 「ああ、分かっているさ」 クスクスと笑うヴァンを、内面ではどう思っているのかは兎も角、表面状は無感情で見下ろし、 男は必要な事だけをさっさと告げようとする。 「いつものように、必要な物があれば言ってくれ。こちらで用意する」 「……そうだね。それじゃあ、腕の立つ者を三人程度用意できる?」 「珍しいな。いや、初めてか。お前が他の奴の力を借りようとするとは」 「借りる? 違うよ。僕はただ見極めたいだけ。 この子が僕を本当に楽しませてくれるのかどうかをね」 「…捨て駒という訳か」 非道な事を聞いたにも関わらず、男もまた眉一つ動かす事なく当たり前のように返す。 「そういう事。もし、僕を楽しませるほどの腕でなかったのなら、その三人で充分だろうしね。 くすくす。ねぇ、高町美由希。君は僕を楽しませてくれるのかな?」 愛しげに書類に添えられていた美由希の写真に指を這わし、ヴァンは舌を出して唇を一度だけ舐め上げる。 再び降りた沈黙は、伝えるべき事は伝えたとばかりに部屋を去る男が、扉を閉めるまで破られる事はなかった。 再び沈黙が降りる薄暗い部屋の中、ヴァンはいつまでもその顔に笑みを浮かべていた。 「殺せない殺人剣の使い手ね。残念だ。本当に残念だよ高町美由希…」 迫る凶刃。 殺す覚悟と殺される覚悟を持ったヴァン相手に、殺さずを貫く美由希は―― 「今日のところはこれで引き下がるよ。最後の攻撃、あれは良かった。 でも、まだまだ覚悟が足りないね。君は怒りに我を忘れた方が本領を発揮できるのかもね。 ……そういう事なら、君の親しい人に死んでもらおう。 一人ずつ順番にね。早く僕を止めないと、大変なことになっちゃうよ」 不穏な言葉を残して立ち去るヴァン。 しかし、傷付き、力を使い果たした美由希はそれを止める事はできなかった。 皆伝した今も恭也と続けている深夜の鍛錬。 その帰り道、美由希へと恭也が話し掛ける。 「ここ最近、焦ったり、落ち込んでいたりするようだが何かあったのか」 「う、ううん、何でもないよ」 「そうか」 それっきり二人の間に沈黙が下りる。 それを破ったのは美由希で、何処か思い詰めたような顔で。 だが、それを言葉にするよりも前に、大きなサイレンの音が美由希の出鼻を挫く。 「消防車か。何処かで火事でもあったか」 何気に呟いき、本当に意味もなくふと視線をとある一転に向けた恭也は眉を顰める。 僅かに立ち昇って見える煙。 その先にあるのは。 「さざなみの方だな」 ただそう洩らした言葉に、しかし、美由希には過剰に反応して走り出す。 後ろで恭也の呼び止めるような声が聞こえるも、構わずにただ嫌な予感を振り払うように。 全力で走り、辿り着いた先には無事なさざなみ寮の姿。 火事は他の場所で起こったらしく、追いついてきた恭也が相変わらずの美由希の早とちりに苦笑いを零し、 美由希は恥ずかしげに何とも言えない曖昧な笑みを浮かべる。 そう、いつもと似たような感じに。 自分が恥をかくことにはなるけれど、今この胸を襲う嫌な予感が当たるよりはずっと良いと。 だが、残酷にも辿り着いた美由希が目にしたのは炎上するさざなみ寮。 そればかりか、そこから今しも救急車へと運び込まれるのは何よりも大事な親友の姿。 「那美さん!」 「……み、美由希さん?」 駆けつける美由希の声に、気を失っていた那美の目が薄っすらと開かれ、 傷だらけになりながらも小さく微笑む。 しかし、すぐにまた気を失う。 那美の体に縋り付きそうになる美由希を、周りにいた隊員が止める。 大丈夫だからと声を掛けて救急車に乗り込む。 サイレンの音を立てて小さくなるその影を呆然と眺める美由希の元へ、こちらも傷だらけの耕介が近付く。 耕介だけではない。リスティも真雪もあちこちを傷だらけにしていた。 那美のように重傷ではないものの、決して火事で負うはずのない刀傷を幾つも付けて。 掠れる声で美由希が耕介へと尋ねる。 「な、何が……あったんですか」 ようやく追いついた恭也も、現状を見て耕介に顔を向ける。 耕介だけでなく、真雪やリスティも悔しそうに唇を噛み締めながら事の起こりを話し出す。 「私たちがやっている剣術って何なのかな」 那美が入院した病院へ、耕介たちも治療が必要だという事で迎い、 誰も居なくなったさざなみ寮のあった敷地内。 そこで、美由希は焼け跡にただ立ち尽くし、涙で濡れて乾いた頬もそのままに恭也に訪ねる。 急に小さくなってしまったように感じらる美由希の背中へと、 恭也は望む答えを掛けてやる事の出来ない自身へと腹立だしさ感じ、ただ強く拳を握る。 いや、正確には答えてやることは出来る。 だが、それは恭也自身が辿り着いた答えでもあり、 美由希の答えは厳しいようだが自分で見つけなければならないのだ。 だからこそ、恭也はただ沈黙でもって応える。 恭也の沈黙の意味を正しく汲み取った美由希は、ヴァンと名乗る男との事を話す。 狙われたのが自分だったから、迷惑を掛けないように黙っていた事も含めて。 「美由希、今のお前の気持ちで剣を振るえば、それはただ憎しみに取り付かれた修羅の剣と変わらない。 かつての美沙斗さんと同じだ。 そんな事を、神咲さんは決して望まないし、美沙斗さんだってそれを知れば悲しむ」 「そんなの分かってるよ。でも…、でも!」 「一度、神咲さんに会って話してみることだな」 恭也の忠告に、しかし、美由希は那美と会う勇気を持てずに逃げる。 折角得た親友を失う恐怖から、また昔のように責められるかもしれないという恐怖から。 「恭也さん、美由希さんは?」 「まだ来てませんか。すいません」 「いえ、私も逆の立場だったら迷うと思いますから。 美由希さんは今、とっても臆病になってるんだと思います。 私は全然、気にしてないんですけどね。 こんな目にあっても、やっぱり美由希さんと友達になれて良かったって思います」 そう笑顔を浮かべて話す那美に、恭也はただ静かに頷くだけだった。 「あぁ、分かってるのか美由希! 那美の奴だって、お前に会いたがってるんだよ! それをいつまでも逃げやがって」 「真雪さんには分かりませんよ。否定されるって事が…」 呟いた美由希の右頬に痛みが走り、そのまま地面に倒れる。 ようやく真雪に殴られたのだと気付いた美由希は、起き上がることもしないまま、真雪をただ静かに見上げる。 「真雪さんだって怒っているでしょう。私に関わらなければ、こんな事にはならなかったんですから。 私の事を罵って恨んでも構いませんよ。私が剣を握る限り、きっとそういった事ばかりなんですから…」 「本気で言ってるのか。だとしたら、あたしは怒る気にもなれないね。 もうお前に構うのもやめだ。好きにしろ。あの青年、恭也も報われないな。 あたしは那美ほどお前ら兄妹に関わってきた訳じゃないからな。 それでも、那美から聞く話や、お前たちと何度か会っている内に分かった事だってある。 恭也の奴が、自分の殆どお前の為に使ったってのに。 肝心のお前は、それか。それがお前の出した結論なんだな。 もう、用はないよ。邪魔したな」 真雪が立ち去った後も、美由希は起き上がる様子を見せず、ただ天を見上げて腕で目元を覆い隠す。 声も無く泣き叫ぶ美由希。 「嫌われ役、ご苦労さんです。真雪さん」 「はっ。何を言ってやがる耕介。あたしはマジでむかついただけだ」 「そういう事にしておきますよ」 「ふんっ。まあ、でも、本当にあたしは何もしてやれねぇよ。 実際、あいつら兄妹が立っている世界ってのは、あたしたちじゃ分からないからな」 「それは俺も同じですよ。 それに、真雪さんの立っている世界だって真雪さんにしか分からないでしょう。 否定云々で、知佳の事を思い出したんでしょう」 「ちっ。普段はとろいくせに、偶に鋭い奴だなお前は。 ほら、さっさと戻るぞこの馬鹿」 「馬鹿はないでしょう、馬鹿は」 再び美由希の前に姿を見せるヴァン 闇夜の中に散る火花。 静寂を破るは剣戟。 ぶつかり合うは、憎しみと狂喜。 「いいよ、いいよ。前とは比べものにならないぐらいに良い」 「うあぁぁっ! お前が、お前が!」 何度目かの交錯で、倒れ伏したのはまたしても美由希の方であった。 「ふぅ。まだ駄目か。っ! でも、前よりも確実に強くなっているね。 それでこそ、あの女を襲った意味があったというものさ。 だけど、まだ満足できない。君の力はこんなものではないだろう。 打ち合った僕にはそれが良く分かる。まだ怒りが足りないというのなら、今度は……」 ヴァンの言葉に飛び起きるなり小太刀を振るう。 しかし、それをあっさりと躱すとヴァンは美由希から大きく距離を開ける。 「くすくす。三日後だ。三日後もう一度ここで殺し合おう。 その時になってもまだ僕を満足させれないのなら、また誰かを襲うとしよう。 今度は君の妹か、上級生のお友達か。もしかしたら、またあの女かもね。 そう言えば、生きていたんだってね。中々しぶといね。 そうだね、一層の事今度はちゃんと殺しに行ってあげようか」 「ヴァンっっっ!」 「あははは。それじゃあ、また三日後にね」 美由希によって付けられた傷などないように、ヴァンは楽しそうに闇の中にその姿を消す。 ヴァンが消え去った闇をただ睨みつけ、美由希は一人今にも振り出しそうな空の下立ち尽くすのだった。 病室を遠慮がちにノックする音。 那美が外へと返事を返すと、扉がゆっくりと開かれ、怯えたような美由希が顔を見せる。 その後ろから、そっと背中を優しく押すようにして恭也が入って来る。 恭也に背中を押され、美由希はぎこちなくではあるが那美の前に姿を見せる。 「あ、それじゃあ私は花瓶の水を替えてきますね」 「それじゃあ、俺も花を持ってきたんで一緒させてください愛さん」 「はい、どうぞ」 明らかに二人きりにしようとする恭也と愛に、美由希はただ無言のまま那美の隣に立つ。 「座って美由希さん」 「うん…」 那美の言葉に従い、大人しく椅子に座る美由希。 そんな美由希に那美は嬉しそうに笑いかける。 「やっと来てくれたね。待ってたのに、中々来ないんだもの」 「ごめっ…ごめんなさい、ひっ、ごめんなさ…」 「え、あ、やや。そ、そんなに責めてる訳じゃなくて。み、美由希さん」 行き成り泣き出す美由希を前に那美は慌てるも、美由希はただ首を横へと振る。 「ちがっ、そうじゃ、なくて…。その怪我、わた、わたし…ごめ…」 那美もようやく美由希が泣き出した理由に思い至り、ベッドの上で姿勢を正すと、 涙で顔をくしゃくしゃにしながらこちらの様子を窺う美由希へと手を伸ばす。 びくりと震える美由希の額を、ちょんと軽く突っつくと、那美は少し怒ったように顔を膨らませる。 「それこそ、美由希さんが気にすることじゃないでしょう。 私をこんな目に合わせたのは美由希さんじゃないんだから」 「でも…」 「でももストもありません。私が違うって言ってるんだから。それとも、私の事も信じられないですか」 その言葉に首を横へと振った美由希に、那美はいつものように笑いかける。 「だったら、大丈夫です。逆に私に関わる事で美由希さんがこういう目に合う可能性だってあるんですよ。 今ならまだ、引き返せます。美由希さん、私と友達で居る事、やめますか」 「やめない、やめたくないよ。そんな事、気にしないよ」 「ですよね。私だって気にしてません。 それに、今回は美由希さんが居ない時でしたが、傍に居るときはちゃんと守ってくれるよね」 「…うん。うん!」 そっと手を握って来る那美の手をその上から遠慮がちに伸ばしたもう一方の手で触れ、 強く、強く握り返す。 ぎこちなくではあるが久しぶりに浮かんだ笑顔。 それを真っ直ぐに見据え、那美もまた笑みを見せる。 「やっと笑ってくれましたね。私、美由希さんの笑顔って好きですよ」 「え、あ、そ、そんな。わ、私も那美さんの笑顔好きかな」 照れつつもそう返す美由希に、那美も照れながらも視線を逸らさずにじっと見つめる。 美由希の中にある不安を見透かすような瞳に、美由希は三日後にヴァンとやり合うことを話す。 その結果、自分が負けたらまた害が及ぶかもしれないと。 そんな不安を吹き飛ばすように、那美は握ったままの手に強く力を込め、やはり柔らかな笑みを見せる。 「大丈夫。きっと大丈夫です。小さな頃からずっと、ずっと鍛錬してきたんだもの。 恭也さんから、その前の何代ものご先祖様が今に、美由希さんに伝えた剣を、自分を信じて。 必ずしも奪う必要なんてないんだから、美由希さんは美由希さんの思うようにその剣を振るえば良いんだよ。 恭也さんや美沙斗さんとは違う理由でも、それは間違いなんかじゃない」 「那美さん。でも、負けたら…」 「もし、負けてしまっても、それは少しだけまだ努力が足りなかっただけ。 だから、気にしないで。それに、私は美由希さんを信じているから。 どうなっても、絶対に恨んだりしないし、後悔もしないよ」 美由希も那美の手を握り返し、肝心な、もっとも大事な事を見失っていた自分に活を入れる。 御神の剣は守るためにこそ力を、その真価を発揮する。 そして、守るために奪う。けれど、必ずしも奪う訳ではない。 奪う覚悟を持ったからといって、奪わなければならないのではない。 守るために奪う覚悟。守れなかった時に失ってしまうという事実。 どちらしか取れないのなら、守るために奪う。 それが、己の身を汚してでも守るという事。だが、それは最後の最後で構わない。 ギリギリまであがいても良いんだ。 生かすも殺すも己次第。何を守り、何を奪うのかもまた私次第。 それはつまり、何も奪わないというのも私次第。 そんな難しい事を全て無くして考えたとしても、私の願いなんて最初からただ一つだけ。 私はただ、那美さんたちを守りたい。それだけ。 何かを吹っ切ったようにすっきりした顔の美由希へ、那美は変わらない笑みを見せる。 無言のまま見つめ合い、どちらともなく笑い出す二人。 そこへ、恭也たちが戻ってくる。 美由希を一目見て恭也は何も言わずにただその頭に手を置く。 語るべき事は昨日のうちに全て終えたと。 だから、最後の一言を元弟子の為に、安心して挑めるように投げてやる。 「こっちは任せろ。俺たちを関わりを持った人たちには、一箇所に集まってもらうから。 月村の家なら、全員揃っても問題ないからな。 だから、お前はお前が思うようにしろ」 恭也の言葉に美由希は深く頷くと、揺ぎ無い瞳で恭也と那美を見つめるのだった。 深夜。 誰も人の来ない山奥で、二人の剣士は静かに対峙する。 美由希の纏う雰囲気の変化に気付くも、ヴァンは言葉なくただ静かに剣を抜き放つ。 それに対峙する美由希もまた、静かに小太刀を抜き放つ。 今、最後となる戦いの幕が開かん。 とらいあんぐるハート タイトル未定 20XX年 公開! ……なあ、これって殆ど一本書けるよな。 まあ、やってから言うのもあれなんだが。 美姫 「まあ、諦めなさい」 シクシク。 美姫 「良いじゃない。100回記念なんだし」 ま、まあな。 えぇい、100回記念だ〜。 美姫 「そうこなくちゃ。じゃあ、後10本ぐらいお願いね」 いや、無理です。 美姫 「情けないわ」 いやいやいや。 美姫 「本当にやる気のない」 いやいやいや。 美姫 「もう書くのを強要しないわ」 いやいやい……って、それは大歓…! 美姫 「ふっ、もう遅いわ。アンタの言質はしっかりと取ったわ」 さ、詐欺だ! 美姫 「って言うか、こんな方法で騙されるなんて、やっぱりバカ……」 う、うぅぅ。何て100回記念なんだ…。 美姫 「って、もう時間ね」 えっ! 俺、何もしてないぞ。 記念なんだから、ほら盛大にパーっと。 美姫 「何するの?」 ……特にないな。 美姫 「……はぁ。こ、こんな締め方だなんて…」 あ、あははは。ま、まあ、この方がらしいじゃないか! 美姫 「そんな訳ないわよ!」 ぶべらっぴょ〜ん!! 美姫 「うんうん。やっぱり、こっちの方がらしいわね」 ど、どこが……ガク。 美姫 「それじゃあ、また来週〜」 |
1月5日(金) |
美姫 「美姫ちゃんの〜」 ハートフルデイズ〜 美姫 「はっじまるよ〜」 <この番組は、PAINWESTの雑記コーナーより新たな年を迎えて意気込みも熱くお送り中!> 新年明けましておめでとうございます。 美姫 「おめでとうございます」 新たな年の幕開けだ〜。 美姫 「そんな訳で、今日は着物〜」 グッジョブ! 美姫 「皆さん、今年も宜しくお願い致します」 お願いします。 美姫 「てな訳で、今年もビシバシといくわよ〜」 お、お手柔らかにお願いします。 美姫 「それじゃあ、早速」 って、無視!? その前に、どこからソレを取り出した。 という以前に、何で行き成りお仕置きモード? 美姫 「冗談よ、冗談」 目は真剣でしたが…。 美姫 「さーて、新たな年になった事だし」 無視!? いや、この場合はその方が良いのか。 美姫 「ほら、ぶつくさ言ってないで、どうなのよ」 いや、どうもこうも何も進んでいる訳ないじゃないか。 美姫 「ほほ〜」 いや、そんな凄まれましても…。 美姫 「新年早々、ダメダメね〜」 新年早々、酷い言われ様だな。 美姫 「うふふふふ」 あはははは。 美姫 「…………」 …………。 美姫 「何か言いなさいよ」 今までの経験から、ここで何かを発言する事によって導き出される結果がはっきりと分かっているからな。 沈黙は金なり。 美姫 「敢えて言う必要はないと思うけれどね…」 ふっ、みなまで言うな。既に分かっている。 美姫 「あ、そう」 過去の経験から、沈黙したところで……ぶべらぁぁっ!! 今年初吹き飛ばされぇぇっ! 美姫 「新年初吹き飛ばしぃっ!」 今年も地球は青かったぁぁぁぁぁぁっ! 美姫 「まあ、年毎に色が変わったら大問題だしね。 とりあえず、あの馬鹿が落ちてくるまでにCMよ〜」 沈黙。 そう、ただ沈黙だけがその周囲を支配していた。 確かに、住宅地とも呼べる路地、しかも時間的にあまり人が通らないとも言えない事もない。 だが、全く人通りがない訳でもない。 現に、恭也の視界の先では下校する生徒だろうか、二人で連れ立って歩いている生徒の姿が。 幾ばくも目を動かさない内に、買い物へと向かう主婦の姿が。 決して多くはないが、全く人が居ない訳ではないのだ。 なのに、今、恭也の目の前、いや、恭也の立つ位置から2、3メートルの範囲は完全に沈黙が横たわっている。 通り過ぎる人は皆、何も見なかったかのように通り過ぎて行く。 それらを見遣りながら、恭也は世間の冷たさを嘆きつつ、 目の前に倒れ伏したままピクリとも動かない、恐らくはなのはと同じぐらいであろう少女へと声を掛ける。 「もしもし、大丈夫ですか」 恭也の声が耳に届いたのか、少女はゆっくりと顔を上げると、にっこりと満面の笑みを見せて恭也へと抱き付く。 突然の出来事に驚くも、相手が幼い少女であっては乱暴に振り払う事も出来ず、 恭也は困ったように少女へと声を掛ける。 「えっと…」 掛けようとして困り顔になる恭也。 何を尋ねれば良いのか思案し、とりあえずは身体は大丈夫なのかと尋ねる。 「はい、大丈夫ですよ。わたしの身体はとっても頑丈に作られていますから。 それよりも、お兄ちゃんの…」 「待った」 「はい?」 何か聞き逃してはならないような単語を聞き、恭也は即座に少女の言葉を遮る。 「そのお兄ちゃんというのは?」 「お兄ちゃんはお兄ちゃんじゃないですか」 疑う事を知らない笑顔でそうきっぱりと言い切る少女へ、確認の為にお兄ちゃんの名前を尋ねて見ると、 「高町恭也ですよね」 「ああ、そうだ…」 「やっぱり、お兄ちゃんでした」 言って少女が起きるのを助けようとして屈んでいた恭也の腰にしっかりと抱きついてくる少女。 困惑しつつも恭也は良く晴れた空を見上げ、もう一度少女を見つめる。 少女は変わらぬ純真な笑みで恭也を見上げて、疑いも何もないともう一度お兄ちゃんと口にする。 (……生き別れの妹。いや、それだったら俺が知っているだろうが。落ち着け。 …かーさんの親戚か何か。可能性的にはなくもないが、やや難しいな。 こんな小さな子がいるとは聞いたこともないし。 ……だとすると、父さんの隠し子か。ああ、これが一番あり得る……か? 幾らなんでも、それはないな) 様々な可能性を考えるも、そのどれもをすぐに否定する恭也。 当然、答えなど出てくるはずもなく。 そんな風に悩む恭也へ、少女は変わらぬ笑みを湛えたまま言う。 「お兄ちゃん、どうかしたんですか」 「いや、そのお兄ちゃんというのは…」 困惑したままそう口にする恭也へと、少女は首を少しだけ傾げると、 「お兄ちゃんは気に入りませんでしたか。それじゃあ、他には…。 兄くん、兄ちゃま、お兄様などの呼び方がありますが」 「そうじゃなくて…」 「ああ、妹という設定を変更されるんですね。ならば、どの設定にしますか〜。 他には幼馴染に血の繋がらないお姉ちゃん、従姉妹、御主人様にお仕えするメイドなど、色々とありますよ。 更に細かい設定も今なら可能です。例えば、毎朝起こしに来るちょっとドジな幼馴染とか、 高飛車なお嬢様風の年下の幼馴染。逆に、甲斐甲斐しく世話をしてくれる年上の幼馴染…」 「いや、いらないから。と言うか、設定って」 「は〜い、初期設定のことです。 わたしの外見から最初の設定は妹という事になってますが、一度だけ変更ができます。 で、どうしますか?」 「いや、だからその初期設定って。まるで人間じゃないみたいな言い方だな」 「はい。わたしは形式番号FRF-12TS・X004と言いまして、簡単にこっちの世界の言葉で言うとアンドロイドですね」 恭也は遠くを眺め、それからゆっくりと深呼吸をし、再び少女を見下ろす。 ノエルみたいな自動人形と呼ばれるものかと整理を付け…。 「って、何故、そのアンドロイドが俺の所に来たんだ。 しかも、何故、妹なんだ」 「妹なのは設定だからですよ〜。で、わたしがやって来たのは、お兄ちゃんを守るためです」 「守る?」 「はい。それ以上は何も教えられてませんけれど」 「そんな事を言われてもな。とりあえず、俺は家に帰るからまた後日詳しい話を…」 そう言って少女を帰そうとするのだが、少女は恭也の腰を掴んで離さず、しかも恐ろしい事を口にする。 「駄目です。さっきお兄ちゃんに抱きついた事によって、わたしの体内のスイッチがオンになりました」 「オンになったらどうなるんだ?」 「お兄ちゃんから半径5メートル以上離れると自爆します」 「……因みに威力は?」 「周囲一体が綺麗に消え去ります」 また厄介で可笑しな出来事に巻き込まれたかと何処か達観したように空を仰ぎ、 結局、恭也は大人しく少女を連れて帰るのだった。 これ以上、ややこしい事が起こらないうちにさっさと帰ろうと判断したのだろう。 詳しい事を聞こうにも、場所を移動した方が良いだろうし。 ただ、この少女がさっきも口にしたように、何も知らされていないという可能性は大きいと思いながら。 だが、この判断は果たして良かったのか、悪かったのか。 まあ、最終的には帰宅するのだから、避けれぬ運命ではあったのだろうが。 ともあれ、事態の悪化を恐れての帰宅ではあったが、これが更なる悪化を招くとは、 この時は思いもしない恭也であった。 帰宅した恭也へと突然、見知らぬ少女から声を掛けられる。 連れて帰った少女とは違い、こちらは美由希と同じ年ぐらいの少女である。 思わず見惚れそうになる程の美少女を前に、しかし恭也は美由希の友達かと軽く挨拶をするだけに留め、 部屋へと引っ込もうとする。 しかし、そんな恭也へとその少女は構わずに話し掛けてくる。 「随分と遅かったではないか。予定ではもう少し早い帰宅だと聞いているぞ。 全く、遅くなるなら連絡の一つも入れろ。任務に付く前に行き成り任務失敗になるかと思ったではないか。 兎も角、これからはお前の外出には私が付き添うからな」 一方的に喋る少女を前に、恭也は嫌な予感を覚えつつ、もしやと尋ねてみる。 「もしかして、俺を守るとか言うんじゃ…」 「その通りだ。私に与えられた任務はそれだからな。 他のことなど知るか。お前は黙って私に守られていれば……」 言いかけて少女は口を閉ざし、恭也の背中に負ぶさっている幼女に目を留める。 「科学者(マーガ)のアンドロイドかっ!」 言って行き成り飛び上がると、幼女へと拳を繰り出す。 そのあまりの速さに驚きつつも、恭也は咄嗟に回避行動を取る。 当然、背中に乗っている幼女もそれにより、少女の攻撃から逃れる。 しかし、少女の攻撃は止まらず、そのまま壁に穴を開ける。 「貴様っ! 何故、科学者の手の者を庇う!」 「あ、あうあう。お、お姉さんは妖精(アプリリス)ですよね。 確か、わたしたちと協定を結んで…」 「そんなもの知るか! 貴様たちが私の故郷に何をしたのか忘れたとは言わせんぞ!」 「そ、それはわたしの中間たちかもしれませんけれど、わたしじゃなくて。 それに、協定が」 幼女の言葉に聞く耳持たず、少女は信じられない速度を持って幼女へと迫る。 幼女は恭也の背中から飛び降りると、危ないと叫ぶ恭也の声を聞き流し、上着の裾から中へと手を突っ込む。 再び手が外に出されたとき、その手には幼女の身長もあろうかという大砲らしき筒が握られていた。 「……どこから出したとか色々と聞きたい事はあるが、まさか家の中で撃つつもりじゃ…」 「発射ー!」 恭也が止める間もなく、幼女は躊躇いもなく大砲を放つ。 だが、更に驚く事が目の前で展開される。 幼女が放った大砲から打ち出された弾。それをあろうことか少女は拳で殴りつけ、軌道を変える。 驚愕する恭也であったが、壁に着弾して煙に音、 そして、家の中なのに外の景色が見えるという事態に慌てて二人を止めようとする。 が、恭也を無視するように戦闘を続行しようとする二人。 流石にこのままでは家が崩壊すると悟った恭也は…。 「いい加減にしろっ!」 叫びながら神速を発動し、今にも激突せんとしていた二人の間に割り込む。 幼女の新たに持ち出してきた銃を取り上げ、少女の腕を絡め取るようにして関節を決める。 恭也の行動に驚いたのか、二人揃って驚愕した顔を向けてくるのを無視し、改めて声を掛ける。 「お前らが何を言っているのか分からんが、とりあえずは家の中で暴れえるのは許さん」 静かな、だが凛とした声に二人は言葉をなくして大人しく戦闘態勢をとりあえずは解除する。 それを眺めながら、恭也はほっと一息吐こうとして…。 「ああー!」 「な、何だ、どうした。そんなに強く言ったつもりはなかったんだが」 突然幼女の上げた大声に慌てる恭也。 しかし、幼女は首を横に振ると、 「さっきの戦闘でお兄ちゃんから5メートル以上離れたみたいで、いつの間にか自爆スイッチが入っちゃいました」 幼女の言葉に無言になる恭也だったが、少女はそれを聞いて舌打ちをする。 「これだから科学者の造ったものは! おい、貴様! 自爆まで、あと何秒残っている」 「もう15秒、14秒…」 「そんな大事な事はもっと早く気付いてくれ、頼むから。 自爆は解除できないのか」 「出来なくはないですよ」 「だったら、その方法を!」 会ってそんなに時間は経っていないというのに、 恭也は既にとんでもない事になっているという事をひしひしと痛感しつつ、 少女の指示に従って自爆解除の作業をするのだった。 「…と、まあそんな訳なんだが」 「あ、あははは。桃子さんとしては、お客さんは大歓迎なんだけれど……」 言って桃子の視線は綺麗に壁がなくなり、急遽、 美由希と二人掛りで恭也がとりあえず塞いだだけのブルーシートを眺める。 「…ごめんなさい」 しゅんと項垂れて謝る幼女を見た瞬間、引き攣っていた桃子の顔が輝かんばかりに変わり、 幼女に抱き付く。 「いや〜ん、そんな顔しなくても良いのよ。 間違いは誰にでもあるわ。まして、違う世界から来たのなら、ここの常識も分からないだろうし」 「いや、幾らなんでも可笑しいだろう」 ある程度予測していた桃子の行動に頭を抱えつつ、恭也はそっと嘆息する。 予想通りというか―― 「そうね、何となく猫みたいだから猫子って名前で良いでしょう」 「かーさん、そんな安直な」 「だったら、アンタが考える」 「猫子、とってもいい名前だな」 「分かりました。猫子というのがわたしの名前ですね。今、登録します」 恭也の日常は、更にとんでもない事へと―― 「名? 無意味だ。お前たちではとても発音はできないだろう」 「それだと、呼ぶときに困るんだが」 「こっちでの名なら付けてもらったのがある。 津門綾羽紬だ」 そして、恭也の前に現れる刺客―― 「ああ、僕はとってもやる気が起こらないよ」 「先生、そんな事では困りますわ」 「はぁ、何もしないでそのまま眠る事が出来れば、何よりも幸せだと思わないかい。 えっと、君は僕の弟子だったよね。名前は、名前は…」 刺客以外にも恭也の前に姿を見せる者たち―― 「高町恭也。妖精の守護から離れ、私たち剣精(メイ)による守護の元にいつ来ても構わないわよ」 「お久しぶりですね。こちらでは紬さんで良かったでしょうか」 「すみれ台、こんな奴に挨拶なんていらないわよ!」 果たして、恭也の平穏はどこに!? 恭也の平穏をまもれないヒトたち 近日、宇宙の彼方にて公開……? あぁぁぁぁぁっ! ……つっっ。ただいま。 美姫 「おかえり」 いたた。ちょっとは手加減を求む。 美姫 「それで、今年は何から書くのかしら」 さらりと流すなよな。 と、今年最初は既に短編を上げたからな。 美姫 「じゃあ、次は?」 キリリクのやつか、長編だな。 美姫 「何かは決めてないのね」 あはははは〜。 えっと、更新を待て! 美姫 「威張るな!」 ぶべらっ! 美姫 「はぁ。今年もこんな調子なのね」 勿論だ! 美姫 「だから、威張るな!」 ぶみょにょぉぉんっ! 美姫 「はぁぁ」 あははは。そう落ち込むな。 美姫 「誰のせいよ、誰の」 照れるな〜。 美姫 「もう突っ込む気力もないわ」 まあまあ。ともあれ、今年も宜しくお願いします。 美姫 「お願いしますね」 それじゃあ、今週はこの辺で。 美姫 「また来週〜」 |