2008年3月〜4月
4月25日(金) | |||||||||||||
美姫 「美姫ちゃんの〜」 ハートフルデイズ〜 美姫 「はっじまるよ〜」 <この番組は、PAINWESTの雑記コーナーより、益々酷くなる花粉症にはうんざりだ、とお送り中!> 「……俺の部屋? やっぱりあれは夢だったのか」 目を覚ました武は今しがたまで見ていた夢を思い返し、その内容に知らず苦みばしった笑みをその顔に貼り付ける。 だが、すぐに違和感を感じる。 まさかという思いとやっぱりという思いを抱え、武は寝巻きから制服へと着替えると部屋を後にする。 家の外に出た武は辺り一面に広がる廃墟を見て、やっぱりあれが夢でなかったと確信するに至る。 前の世界とは違い、はっきりと自覚出来るほどに鍛えられた身体。 すぐ目の前に放置されてかなりの時間が経ったと思わせる巨大ロボット。 「戦術機」 それを目にしてそう呟くと同時、目の前の瓦礫が崩れて音を立てて落ちる。 離れていたために特に何ともなく、また前の記憶と符合した出来事に武は苦笑の色を濃くさせるも、 すぐに自分の記憶を思い返す。オルタネイティヴ5と呼ばれるG弾による反撃作戦。 僅か数十万と言う人類だけを移住させる計画。 それらを思い出し、武はそれを阻止すべく再び夕呼に会おうと決意する。 元の世界で通っていた白陵柊学園がある場所、この異世界では横浜基地として存在する場所へと向かう。 その途中、これまた記憶通りに一人の友と再会をする。 「武か! やはりお前も戻ってきたんだな」 「……俺もという事は恭也も記憶があるのか」 武の言葉に恭也は再会していきなり発した言葉に失敗したという顔をする。 「言われてみれば、俺一人が戻ってきていたとい可能性もあったんだな。 だとすれば、あの発言は場合によっては変に取られる可能性があった訳か」 一人で反省する恭也を促し、武は少し足早に横浜基地へと向かう。 その道すがら、自分が覚えていることを述べていく。 「で、最後にオルタネイティヴ5が発動した事までは覚えているんだけど、それ以降が曖昧というか」 「俺も似たようなものだな」 互いの記憶を照らし合わせてみるも、やはり5へと計画が移行してからの記憶は曖昧であり、 また何故、記憶を持ったまままた時間を逆行したのかと言うのも不明である。 深く考え込みそうになる恭也を制するように、武は軽いことだとばかりに笑い飛ばし、不意に真剣な顔つきになる。 「とりあえず、今度は絶対に5になんかさせない! 俺達の持つ記憶はその点でも有利になるはずだ」 「確かにそうかもしれないが、そう上手くいくか」 「なに弱気になっているんだ恭也!とりあえずは夕呼先生に会いに行こう。 その上で協力して何としても4を成功させてもらうんだ」 強い意志を見せる武と並んで歩きながら、恭也は今ひとつ不安を感じていた。 だが、何もしないというつもりもなく、他に案もないために武の言葉に従い動いてみようと考え、 こうして二人は横浜基地へと辿り着く。 だが、やはり歴史は繰り返すものなのか……。 「って、何でまた営倉に入れられているんだ!」 「そりゃ、身分を証明できない以上はこうなるだろう」 鉄格子に両手でしがみ付いて叫ぶ武とは違い、こちらは落ち着いて壁に凭れ掛かりながら身体を休めている。 「お前、落ち着き過ぎだっての」 「とは言え、この状況では何も出来ないだろう。 大人しくしているしかない。余分な体力を使うだけ、それこそ無駄だ」 「そりゃあ、お前は天元山の件で入っているから慣れているかもしれないけどさ」 「お前だって前に最初の時点で入っているだろう」 あまりにも落ち着いている恭也へとちくりと皮肉を込めて言えば、そう返されて言葉に詰まる。 だが、ここで大人しく引き下がるのも何か癪なので、 「その最初の時点ではお前も一緒に入ったよな。今と同じような感じで。 つまり、お前の方が多いって事だ」 とそんなやり取りをする二人の前に、どうしても会いたかった人物が現れる。 香月夕呼、この基地の副指令にしてオルタネイティヴ4の中心人物である。 前とは違う早い登場に武は何が何でも話を聞いてもらおうと詰め寄り、鉄格子越しの対話が始まるのだった。 後に12・5事件と呼ばれる事となる帝国軍の一部によるクーデターが終息を向かえるも、 207隊の皆は元気がなかった。 それぞれに少なからずこのクーデータに関しては思う所があり、自然と無口になる。 それらの事情を知る武もまた掛ける言葉が見つからず、今はそっとしておくのが一番だと判断する。 武自身もまた、このクーデターに関しては無関係ではいられなかったため、 他の者たちよりもその疲労は目に見えて大きかった。 それでも何とか自力で歩けているのは―― 武は自分の隣、性格には肩を貸して半分担ぐようにして共に歩いている冥夜を見遣る。 その瞳は空ろで何処も見ていないようにも見える。 ようやく落ち着いたとは言え、まるで呼吸するだけの人形となったかのようなその様子に薄ら寒いものを感じる。 取り乱したと思われる着衣の乱れも普段ならあり得ない事にそのままで、解けた髪も乱れるままにしてある。 生気をなくした顔は隊の中でも最も酷く、その理由も分かってはいるが武自身、掛ける言葉がない。 もし冥夜がこのような状態になっていなければ、また後を託されていなければ、 武自身がこうなっていたかもしれないと思いつつ、とりあえずは冥夜を運ぶ事に専念する。 (恭也……) その胸中で思うのは、冥夜が将軍の影武者としてクーデターの首謀者、 沙霧尚哉を説得すべく行われた謁見での出来事。 上手くいくと思われたその瞬間、全てをぶち壊すかのように放たれたたった一発の銃弾。 これにより再び戦術機による戦闘へと雪崩れ込み、冥夜を武に託して殿として部隊の最後に付いた恭也の事である。 全てに決着がついた後、恭也の戦術機も見つかったが、機体は形を留めておらず、 特にコクピット部分は吹き飛ばされており、搭乗者は無事では済まないと思わせた。 幸いと言えるのかどうかは分からないが、恭也の身体は周辺を探しても何処にも見当たらなかった事だろうか。 故に武は恭也の生存を藁にも縋る思いで信じ込ませ、取り乱す冥夜を何とかこうして運んでいるのだが。 とは言え、コクピットが吹き飛んでいるぐらいであるから、無事であるとも言い切れず、 むしろ見つからなくても当然と言う不吉な予感が何度も頭を過ぎる。 その度にその考えを打ち消し、何とか踏み止まっていた。 直接やられた所を見た訳ではないので、何とか希望に縋ろうとしているのであろう。 そんな精神状態でありながらも、武は何とか気丈にも表面上は繕ってみせていた。 「…………」 目を覚まして目に入ったのは見慣れない天井であった。 習慣とも呼ぶべき自然の行動で、恭也はすぐに周辺の気配を探る。 どうやら近くには誰もいないらしく、次いで身体を起こそうとするが全身を激しい苦痛が襲いそのまま倒れこむ。 見ればかなりの大怪我でもしたのか、全身が包帯に包まれている。 起き上がるどころか、腕すらも満足に動かすことが出来ないと分かり、恭也は現状の把握に努めるべく、 記憶を掘り起こす。最後に自分が見た光景は、こちらへと大型の銃器を向ける戦術機。 体勢を崩していた恭也は回避が出来ないと瞬時に判断してコクピットから飛び降りたのを思い出す。 下は雪だったから上手くすれば大丈夫と考えたのかもしれないが、 その後起こった爆発までは考慮している暇がなかった。 結果として、恐らくは吹き飛ばされて何処かに叩きつけられたのであろう。 そして意識を失ったと。 だとすれば非常に幸運だったとしか言いようがないな、と現状を鑑みて苦笑を漏らす。 あの後どうなったのかは分からないが、こうして治療されているということは武たちが回収してくれたか、 もしくは敵に捕まったが利用価値があると判断されたか。 そこまで考えたところで部屋の外に気配を感じ、恭也はとりあえずは寝た振りを装うために目を閉じる。 近づいてくる気配は自分の頭の横まで移動し、恐らくはこちらを覗き込んでいるのであろう。 複数であれば会話が行われ、少ないなりとも何らかの情報を得られたかもしれないが。 その事を残念に思いつつ、わざとわしくない程度に目を覚ます機会を探る。 と、その人物が自分に向かって手を差し出した気配を感じ、とりあえずはもう暫く寝た振りを続ける。 (抵抗しようにも身体も動かないしな) 本当に全く動かない身体に自嘲しそうになるのを堪え、眠っている振りを続ける恭也の髪がそっと掻き揚げられる。 知らず掻いていたらしい汗で額に張り付いていた髪が除けられ、そっとその汗を拭かれる。 どうやら普通に看病をしてくれているようであるらしく、恭也はもう良いかと目を開けようとする。 だが、それは続けて聞こえてきた声の前に止まってしまう。 「高町、そなたには本当に感謝しています」 聞こえてきたあり得ないはずの声に思わず目を開ければ、向こうも驚いたような顔をしてこちらを見下ろしてくる。 「目が覚めたのですか?」 「…………殿下?」 事態がまだ分からずに呆然と呟かれた言葉に、殿下――煌武院悠陽は優雅な笑みで応えるのだった。 マブハート オルタネイティブ と言うことで、今回はCMを冒頭に持ってきてみた。 美姫 「恭也X悠陽?」 おう! このパターンは珍しいだろう、多分。 国連軍じゃなくて、帝国軍で恭也が動き、国連軍では武が原作に近い形で動く。 美姫 「そこまで考えているって事は、続くとか」 あはははは、そんな訳ないやん。 美姫 「やっぱりね」 まあまあ。さて、今週も始まったけれども。 美姫 「どうもCMの後になると、締めようとしてしまうわね」 うん、実は俺もだ。 困ったことに、既に今週は……とか既に言い出しそうだ。 美姫 「まだ始まったばかりなのにね」 だな。いや、だが偶には変わった事をとこういう形にしたのなら、一層とことんまでやってみるか。 美姫 「ちょっ、アンタまさか」 そのまさかだ! そんな訳で今週はこの……ぶべらっ! 美姫 「却下!」 や、やっぱり? でも、初めてのパターンだしやってみようよ。 美姫 「…………」 ものは試しだよ。 美姫 「単にアンタが楽したいだけじゃ」 っ! な、ないない、そんな事はないから! 美姫 「じとー」 イヤイヤホントウダヨ! 美姫 「思いっきり怪しいわよ!」 オウチッ! ぶべらっ! …………ま、負けません。と言うわけで、今週はこの辺で……。 美姫 「はぁぁ、分かったわよ付き合ってあげるわ。それじゃあ、また来週〜」 …………やっといて何だが、本当に良かったのかな? 美姫 「本当に今更ね。勿論、交換条件があるに決まってるでしょう♪」 おおう! 今、激しく後悔している! 美姫 「後で悔やむから後悔だもの」 う、うぅぅ、早まったかもしれない……。 |
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4月18日(金) | |||||||||||||
美姫 「美姫ちゃんの〜」 ハートフルデイズ〜 美姫 「はっじまるよ〜」 <この番組は、PAINWESTの雑記コーナーより、うがぁぁ使い辛い、とお届け中!> うがぁぁっ! 使い辛いわ! 美姫 「行き成りの始まりね」 はぁー、はぁー。思わず叫んでしまった。 新しいキーボードが使い辛いんだよ。 今までは足を立てて、斜めにしてたんだ。 だが、新しいキーボードは足を立ててもようやく水平になるかどうかというぐらいに、 前というか上というか、ともあれfンクションキーの方向に下へと斜めになっている。 お陰で、まだ慣れん。 美姫 「普通に台を作るか、前のキーボードを使えば良いじゃない」 ……そうだよな。 美姫 「アンタ、改めて言うまでもないけれどアホよね」 はっはっは。 美姫 「とりあえず、一発殴っておくわ」 な、何故に!? 美姫 「何となくよ」 そんなご無体な……ぶべらっ! 美姫 「さーて、それじゃあいつも通りの展開になった所でCMにいってみよ〜♪」 一番強いのは誰なんだろう? ふと浮かんだ桃子の発想。 これが後に海鳴市全域を巻き込んだ騒動に発展するなど、誰も予想だにしていなかった。 「という訳で、ここに海鳴横断ウルトラハイパーバトルの開催をお知らせします! 実況はこの私、井上ななかでお送りし……え、わ、私も出るんですか!? ちょっ、プロデューサー、何も聞いてませんよ! や、やめ……」 豪華商品に目がくらんだ者、単に強いものと手合わせをしたいと考える者。 泣き落としに負けて渋々と参加を決めた者。修行の一環だと言って一緒に巻き込まれた者。 様々な思惑から多数の参加者が集まる。 ルールは至って簡単。最後まで立っていた者こそが勝者。 果たして、最強の称号は誰の手に!? 「……とりあえず、時間いっぱいまで逃げ回ろう、うん」 「弟子よ、それでは無理矢理参加させた意味がないだろう」 「そうは言うけれど恭ちゃんはなのはと戦えるの」 「……逃げるのも戦術だ」 師弟で揃って参加するもの。 「真雪さん、大丈夫なんですか。このゲームというかバトル、かなり体力が必要になりますよ」 「あほう。何も真っ向勝負するだけが能じゃないだろう。 ちったぁ、頭を使えよ」 「あははは、久しぶりの帰郷だったんだけれど、どうして私まで参加させられているんだろう」 「諦めなよ知佳。真雪にそんな理屈なんて通じないって」 女子寮からの参戦あり。普段、お玉やペンを持つ手に武器を握り、目指すは勝利の一文字。 「相変わらず賑やかデスネ」 「でも中々面白い企画じゃないか。 正面から戦わなくても良いのなら、忍者の本領発揮だしね」 「そう簡単に行くかしら?」 「にゃはは、瞳さんもやる気満々ですね。でも、唯子だって負けませんよ」 各地から海鳴へと集う強者たち。参加総人数、実に100を超えるという大規模な企画。 果たして、どうなるのか!? 「それでは、これよりスタートです!」 「お兄ちゃん、なのはを倒して良いよ。お兄ちゃんになら……」 「ぐっ。ゲームとはいえ、なのはに手を上げる訳には…………。 こうなれば、御神流裏・高町士郎口伝奥義! 戦略的撤退!」 ――逃げる事に懸命になるものあり 「ここで時間まで潰しておけば……誰っ!?」 「ふふふ、よく気付いたね。また腕を上げたんじゃないか美由希」 「え、え、えぇぇぇぇっ! お母さん!? 何で!? どうして!?」 「久しぶりの休暇で戻ってきたんだけれど、弓華に無理矢理ね。 でも丁度良いかな。どれだけ強くなったのか見せて」 「……うん」 ――再び親子の対決が幕を開けたり 「おんどりゃぁぁぁっ! この亀!」 「ほいっ。くらえぇぇぇっ! このバカサル!」 ――開始早々何処かでいつも見られるような光景が繰り広げられたり 「ノエル、ゴー!」 「了解しましたお嬢様。ファイエル!」 「ちょっ。忍にノエル! タッグを組むのはルール違反じゃない?」 「ちっちっち。ノエルは私の武器だもの。ちゃんとそうやって登録してあるわよ」 「その通りですので、観念してくださいさくら様」 「なっ!? それってありなの!?」 ――ルールの裏をつくような卑劣な作戦を使う者あり 「待つのだ、耕介ー!」 「待てと言われて誰が待つか」 「くそー、これなら最後まで勝ち残れると思ったのに、耕介が同じことをするなんて」 「それは俺の台詞でもあるんだけれどね、美緒。 まさか、武器に同じようにバイクを選ぶなんて」 「兎に角、これで逃げ切るのはあたしなのだ! そんな訳で耕介はさっさとリタイヤしろ!」 ――街中でカー(バイク?)チェイスする者あり 「もらった!」 「甘いわよ、御剣さん」 「ちっ! 流石、千堂先輩。守りに入ると堅いですね」 「うふふふ、どうもありがとう」 ――かなり真剣で戦う者あり 「あ、あのー、所であなたは何をしてらっしゃるんでしょうか」 「うん? ああ、スタッフの人ね。あたしの事は気にしなくても良いから、仕事して頂戴。 ここだって立派な海鳴市内だろう。つーぅ訳で、あたしはここで時間を潰させてもらうから」 「は、はぁ」 「ああ、因みに誰にも話すんじゃないぞ。話したら、これでも家は日門草薙流つぅ剣道道場やっててな。 丁度手頃な事に手には木刀がある」 「ご、ごゆっくり〜」 「ああ、あんがとさん」 ――開始早々隠れる者あり と、様々な様相を見せながらゲームは進んでいくのであった。 果たして、最後に笑うのは誰なのか!? 海鳴横断ウルトラハイパーバトル 近日…… ああー、色々と書きたいという衝動が。 久しぶりの衝動だな。 美姫 「だったらさっさと書きなさいよ」 いや、逆に色々と書きたくなって何からすれば良いのやら。 美姫 「駄目じゃない!」 あうちっ! この衝動に比例して手も早くならないかな。 美姫 「本当に遅いわよね、アンタ」 うっ。確かに遅い方だと思うが。 美姫 「見ないで打てないの」 無理! 美姫 「ごちゃごちゃ言う前に少しでも多く書いて慣れるしかないんじゃない」 だよな。まあ、そうやって地道な努力が。 美姫 「まあ、アンタの場合は習得するよりも忘れる方が多いから結局はマイナスなんだけれどね」 あー、なんだ、あー……。 美姫 「否定したいけれどできないって顔ね」 その通りです。う、うぅぅぅ。 美姫 「はいはい、一人で膝を抱えていじけてないの。鬱陶しいから」 ひどっ! お前、もう少し言葉を選んでくれよ。 美姫 「無理無理」 そんな朗らかな笑みで言わんでも。 うぅぅ、余計にいじけてやる。 美姫 「いじけるのなら、終わってからにしなさい。丁度、そろそろ時間なんだから」 今回、まったくフォローなしですか。 いや、普段から殆どないけれどさ。 美姫 「分かっているのなら良いじゃない」 シクシク。 う、うぅぅxy。それじゃあ今週はしょっぱい水と共にこの辺で。 美姫 「また来週ね〜」 |
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4月11日(金) | |||||||||||||
美姫 「美姫ちゃんの〜」 ハートフルデイズ〜 美姫 「はっじまるよ〜」 <この番組は、PAINWESTの雑記コーナーより、いくぜやるぜ、とお送り中!> ああ、来週が待ち遠しいな。 美姫 「ニューPCね」 おう。まあ、データの移行やら何やらは正直面倒くさいんだけれどな。 とは言え、いい加減に買い換えないとガタがきてるしな。 美姫 「もう何度も壊れ、その度にパーツ交換だったわね」 ああ。データも何度か飛んだしな。 本当はまだまだ使うつもりだったんだが、最近長時間使っていると変な音が鳴るようになってな。 おまけに、ハードディスクからカラカラと音が。 美姫 「流石のあんたも交換する事にしたのね」 うぅぅ、オニューは嬉しいけれど出費が痛い。 それに漢字変換が慣れるまで大変なんだよ。 美姫 「諦めなさい」 ハードディスクだけ交換しようかなとも思ったんだけれど……。 美姫 「式が全体的にガタがきてるって言ったのよね」 うぅぅ。最近の機械は寿命が短い気がするのは俺だけか。 美姫 「その辺りはノーコメントという事で」 って、新しくなる嬉しいニュースのはずなのに、何で俺はこんなに落ち込んでいるんでしょうか。 美姫 「そんなの知らないわよ」 ……やっぱり愛着が〜。 美姫 「しつこい!」 ぶべらっ! う、うぅぅ。そんな訳で、来週か再来週ぐらいに一日ぐらいは連絡つかなくなるかもしれませんがお許しを。 あ、投稿は受け付けてますので、気にしないで送ってきてください。 美姫 「と言う感じで連絡事項も終えた事だし、それじゃあ今週もCMいってみよ〜」 暫しの沈黙を破り、あの二人が帰ってくる―― 「た、高町空曹長が!」 それは現場からのそんな一報から始まった事件。 「恭也くん、もう飛べないかもしれないって……」 「傍にいたのに、あたしは守ってやれなかった」 医務室で眠る恭也の横で、同じ年ぐらいの少女――ヴィータが悔し涙さえ見せて拳を握り締める。 それは半日以上も前のこと。 突如現れた謎の機械が遺跡で発見され、偶々近くにいた恭也たちが現場へと向かったのだ。 何故か魔法を打ち消す能力を持った機械を前に、恭也もヴィータも奮戦した。 だが、疲労していた恭也はいつもならば避ける事ができる攻撃を避けきれず……。 真っ白な、少し濁った雪に広がる赤い染み。 恭也の身体から止まる事なく流れ出る血に、急速に冷えていく身体。 その身体を抱きながらただ叫ぶしか出来なかった無力な自分。 ひたすら自らを責めるヴィータ。 そんな医務室の扉が開き、来訪者が現れる。 その姿を見た瞬間、誰もが呼吸すら止める。 そんな周囲の様子など目に入っていないのか、入った来た女性、なのはは真っ直ぐに恭也へと向かう。 「恭也!」 だが、なのはの呼び掛けにいつものような声は、笑顔は返ってこない。 握った手を握り返してくる事もなく、暫く呆然としていたがゆっくりと立ち上がる。 ヴィータは既に自らの死さえも受け入れたのか、大人しくなのはの前に立ち、 これから起こる惨劇に覚悟を決めた目で見詰め返す。 それでも、それでもこれだけはと口から謝罪が零れる。 「すまねぇ、あたしが傍にいたのに……」 「……ここに来る前に現場の映像を見せてもらったわ。 あなたは出来る限りの事はしていた。 私が今一番許せないのは、数年前のちょっとした事件の事で犯罪者呼ばわりしてこき使う阿呆たち。 激務の連続で疲れているはやてちゃんたちを、それでも使おうとするバカ共。 そいつらの所為で、恭也は無理しちゃったんだものね」 なのはが掌を上に向けて胸の前に持ってくると、瞬時にその上に赤い宝石が現れる。 「レイジングハートも許せないでしょう」 【Yes,Boss】 「そうだよね。なら、やらないといけないよね。 あははは、今日が管理局滅亡の日だね。邪魔する者は力尽くで排除するよ」 とても良い笑顔を見せるなのはに、誰も口を挟む事ができない。 ましてや、その進行を止めようとする者など、彼女を知る者の中にはいなかった。 ――今、白い悪魔がその牙を剥く! 「こちら地上警護部隊! 本部、至急応援をお願いします! このままでは戦線が維持できな……うわっ、あ、ああああ、や、やめ、やめてく……うわぁぁぁぁぁっ!」 「どうしました! ブラボー1応答願います! ブラボー1!」 ――その日、かつてない災厄が振り降りる。 地上本部を僅か数時間で半壊させた白い悪魔は次の標的を本局へと移す。 行く手を阻む魔導師たちを叩きのめし、ひたすらその足は迷う事なく一つ場所へと向かう。 とうとう人気のない場所まで辿り着くと、目の前に聳える扉を邪魔だとばかりに吹き飛ばす。 「何故ここが!」 薄暗い部屋に入るなり、そんな声が聞こえる。 だが、人の姿は何処にもなく、あるのは幾つものコードとそれに繋がる何に使われているのか分からない各種機械。 そして、くすんだ液体で満たされた大きなシリンダーと、その中に浮かぶ脳みそのみ。 その脳を前にしてなのはは冷めた眼差しで、 「ふーん、こんな脳だけの阿呆共の所為で私の恭也が怪我をしたんだ。 くすくす。このシリンダー、皹が入ったらどうなるのかしら? 試しにどれか一つだけ皹を入れてみようか♪」 一思い壊すのではなく、徐々に壊れていくように細工して恐怖を味わわせようとするなのは。 勿論、それを黙って見ている事など出来ず、誰が発したのかは分からないが静止の声が上がる。 「ま、待て!」 「あれ? 今何か聞こえなかったような気がしたけれど……。 きっと気のせいだよね。だって人にものを頼むようような言葉じゃなかったしね」 「……ま、待ってください」 「うん? 一体なにかな? 今から忙しいから少し黙ってて欲しいんだけれど」 「よ、要求は何だ。いや、何ですか」 「そうだね……」 こうして秘密の会議が繰り広げられ、 恭也が戦線へと復活した時には、その隣に特別恭也顧問という役職についたなのはの姿があったという。 こうして、本部、本局を壊滅寸前にまで追い込んだ事件は、公式文章としては何一つ残らず、 あの無限書庫にすら残らず、ただ一部の関係者の間でのみ伝わる幻の事件としてその幕を閉じたのである。 教導官として二人の少女の前に立つ恭也。 それをスバルは感激したように見詰め、二人は再会の言葉を交し合う。 その横で防御プログラム対策として生まれたリインフォースUがティアナの傷を治しながら話し掛ける。 「高町一等空尉の事を知っているですか」 「はい」 ティアナが恭也に関する事を言い並べていると、その前にリンフォースがやって来る。 「その通りだ。だが、恭也を語る上で外せないのはそのレアスキルだ。 お前もそれだけはよく知っておくんだ。じゃないと、絶対に後悔する事になるだろう」 「レアスキル、ですか?」 「そうです。高町一等空尉のレアスキル、お姉ちゃん召還は最強にして最凶というのは有名なんですよ。 まあ、ごく一部では、ですけれどね。はい、治療完了です」 「は、はぁ」 レアスキルという割にはあまりにも名前に加え、 今までそんな名称のスキルさえ聞いた事のないティアナは疑問顔のままで曖昧に頷く。 この時、もっと詳しく聞いておくんだったと後に後悔する事になるのだが、今はまだその時ではない。 「そっかそっか。あなたがティアナなのね。うん、よろしくね。 あははは、恭也の指導に従わなかったんだってね。一度、本当の恐怖っていうのを味わってみる?」 「……」 なのはの視線に、その纏う気迫に飲み込まれ、まるで蛇に睨まれた蛙のように身体を硬直させる。 そして、気が付いたときには何故か医務室の天井を見ていた。 「……つっ!」 両手腹部に痛みを感じつつも辛うじて上半身だけを起こしてみれば、やはりここは医務室で間違いなかった。 意識を取り戻したたティアナに気付き、シャマルが駆け寄って身体をチェックする。 「うん、もう大丈夫みたいね。とは言え、なのはさんの非殺傷能力はとっても優秀だものね。 後には全く残らず、けれどもその時点ではとてつもない痛みを受ける。 初めてなら気を失っても仕方ないわ」 シャマルの言葉を聞きながら、ティアナは気を失う前の事を思い出していた。 無謀な訓練と戦法を窘められ、それに対して喰って掛かったこと。 その後、恭也たちが任務で出掛け、シャーリが自分たちを呼びに来たが、それを遮って恭也の姉がやって来て、 鍛錬してあげると言うなり襲い掛かってきたのだ。 思い出して恐怖に震える身体を両腕で抱きしめる。 そこへシャマルの手伝いをしていたリインフォースがやって来る。 「だから言っただろう。よく知っておこないと後悔すると」 「ブラコンなんですね」 「本人曰くキョウコンだそうだがな。どちらにせよ、全てを押し通すだけの力を持っているからこそ厄介なんだ。 現に恭也に出きるだけ怪我をさせないようにと努力し続け、 結果として、提督まで上り詰めてしまった男がいるぐらいだ」 ティアナはその人に同情をし、今回の件を心に深く刻み込む。 決して忘れないようにと。 そして、それはスバルたちも同じだったらしく、揃って恐怖に身を竦め、 シャーリーによって今しがたまで恭也の過去が流されていたモニターのあった位置を虚ろに見詰めていたとか。 「機動六課設立にあたり後継人は三人。 だが、噂では評議会と密談したという噂が」 「なに!? それは本当か!?」 地上本部の一室、そこで向かい合っている男女のうち男の方が声を荒げる。 対する女の方は至って冷静に返す。 「いえ、あくまでも噂です」 「評議会は私の味方をしてくれている。 だとするのならば、その何者かは評議会の秘密を握り脅している可能性がある。 それを掴み、その脅迫の材料をこちらが押さえたのなら六課をどうにかできるかもしれんな。 何としてもその証拠と品を掴め!」 「ですが……」 「何をためらっておる! 査察などよりもそちらをメインにしろ。 勿論、気取られないために査察で奴等の目をそちらへと引け。 ああ、それとその噂で今分かっている事だけでも良いから報告しろ。 せめてそれが誰かぐらいは分かっているのだろうオーリス」 「はい。あくまでも噂ですが、高町なのは……さん」 「高町なのは? 誰だそれは。どこに所属の魔導……いや、待て。 もしかしなくても、あの高町なのは――さんか」 「はい。黒い天使を守護する白い悪魔と影で噂されている、あの高町なのはさんです」 呼び捨てからさん付けに変えた地上本部防衛長官レジアス中将に対し、オーリスも渋い顔で頷いてみせる。 暫く沈黙が横たわり、ようやくレジアス中将がその重くなった口を開く。 「あー、こほん。噂はあくまでも噂だ。そんな事に割く時間も人員もない。 査察の方を進めろ」 「了解しました。とりあえず、分かっているだけですが六課の実働隊メンバーです」 「八神はやて部隊長に、高町恭也、フェイト・T・ハラウオンか」 「フォワードは全部新人で固められており――」 その後、二人は幾つかのやり取りをやり、最後にとレジアス中将が告げる。 「査察に関してだが、どんな小さな事も見逃すな。 それと二人の隊長の周辺に関しては何があっても絶対に――」 「心得ています。絶対に手は出しません」 「分かっていれば良い」 なのはの弟である恭也は勿論のこと、恭也の周囲に近づく女性には容赦ないなのはが唯一の例外としてるフェイト。 彼女もまた妹のように可愛がられていると言うのは周知の事実である。 故にこその指示であり、受けるオーリスのほうもそれは心得ているとばかりに頷くのであった。 ナンバーズたちの罠に掛かり、一人で三人を相手にしなくなったティアナ。 奮闘するも足をやられ、とりあえずは隠れる事は成功する。 「やっぱりもう駄目なのかな。……でも恐怖は感じないわね。 ううん、感じているけれどあの人とやり合うよりもましなんだわ。 そうよ、さっさとここを脱出してちゃんと与えられた任務を成功させないと、きっとあの人がまた……」 ふーん、そんなに恭也の邪魔がしたいんだ〜。 今迫る命の危機に対する恐怖ではなく、聞こえてきた幻聴に対する恐怖に身体を震わせると、 気合を入れるように頬を叩く。 「大丈夫、あの人とやる事に比べたら。そうよね、クロスミラーージュ」 デバイスから返ってくる肯定の声にティアナは頷き返すとどう切り抜けるか考え始めるのであった。 『リリカルIF StrikerS 〜逆転兄妹〜』 白い悪魔が再び降り立つ…… そう言えば、ちょっと前までは寒かったのに最近は本当に温くなったよな。 美姫 「偶に朝とか夜は寒かったりするけれどね」 もう殆どそんな日もないな。 美姫 「春って感じよね」 はぁぁ。暑さの苦手な俺は既に日中の温度でも嫌気がしているよ。 美姫 「いや、幾ら何でもそれは早すぎでしょう」 二十度を越えれば灼熱だろう。 美姫 「違うからね、それ」 まあ、これから暑くなる日々を思って鬱になってても仕方ないがな。 楽しい事でも考えようじゃないか。 美姫 「そうそう、前向きに考えないとね」 うーん、暑くなるとクーラーが使える! 美姫 「前向きなのかしら? 既に負け思考のような気もするわ」 だが、残念な事に俺はクーラーが苦手だ! 美姫 「つくづく文明に適してない奴ね。あ、自然にも適してないわね」 まあ、ここまではまだ序の口だ。俺が前向きに考えた結果……雨乞いならぬ冬乞いってのはどうだ! 美姫 「あ、もう時間だわ」 おおい、せめて、せめて突っ込んでくれよ。 美姫 「ごめん、流石に突っ込む気力もなくなったわ」 寂しい事言うなよ〜。 美姫 「はいはい、なんでやねん!」 ぶべらっ! ……う、うぅぅ。これは突っ込みですか? 美姫 「もう立派な突込みじゃない。アンタが軟弱すぎるのよ」 へいへい。 と、本当にそろそろ時間だな。 美姫 「でしょう」 それじゃあ、今週はこの辺で。 美姫 「また来週ね〜」 |
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4月4日(金) | |||||||||||||
美姫 「美姫ちゃんの〜」 ハートフルデイズ〜 美姫 「はっじまるよ〜」 <この番組は、PAINWESTの雑記コーナーより、もう4月だよ、とお届け中!> いよいよ4月。 出会いの時期であり、新たな生活を始める人たちもいるんじゃないかな。 美姫 「そういう人たちも含め、皆がんばれ〜」 俺は相も変わらずにダラダラと……ぶべらっ! 美姫 「PAINWESTは新生活を応援してます」 いや、そんなどこぞのCMでありそうな事を言われても。 美姫 「おはようからおやすみまでよ」 いや、意味わからないから! 美姫 「とりあえず、アンタは書け! とそれだけよ」 やっぱりですね、はいはい分かってましたよ。 それはそうと、ようやく温かくなってきたかな。 美姫 「確かにね。つい最近まではかなり寒かったものね」 だよな。あーあ、この調子で温かくなっていくのか。 そして暑くなるんだよな。はぁぁ。 美姫 「温かくて良いじゃない」 暑くなるのが嫌なんだ。まあ、夏! って感じも嫌いじゃない、嫌いじゃないんだよ。 でも暑いのは嫌だよ。 美姫 「我侭ね。暑いからこそ夏なんじゃない」 そうかもしれないけれどさ。いや、まだ夏じゃないんだからこの話題はよそう。 これ以上、暑くなったら堪らないし。 美姫 「いや、話しているだけじゃならないから」 それはそれとして、最近色々と書いてみたいんだよ。 ただ時間とかが取れなくて。 美姫 「言い訳は良いわよ」 いやいや、本当に書きたいという欲求はあるんだよ! と叫ぶのはこれぐらいにして、長編の続きを書こう。 美姫 「そうそう、さっさと書き上げなさいよ」 おう! 今年中にどれか一つは完結させてみせる! 美姫 「私としては書いてくれるのなら文句ないわ」 という事で、とりあえずは英気を養うために……。 美姫 「寝るな!」 ぶべらっ! じょ、冗談もおちおち言えないのかよ。 美姫 「今、思いっきり床に横になったじゃない」 ……はて、記憶にございませんな。 美姫 「そう言う場合は2、3度叩けば直るかしら?」 お、思い出しました! それはもうはっきりくっきりばっちりと! という事で、そろそろ今週もCMへぶべらっ! 美姫 「人の台詞を取らないの!」 す、すみましぇーん。 美姫 「それじゃあ、CMよ〜」 クレアを付けて後を追う恭也。 その行き先は当然ながら城であり、当然徒歩という訳ではない。 途中、何処かに待たせていたのであろう馬車に乗り込み、それで城へと帰ろうとしたのである。 恭也は場所の向かう先へと先回り、御者に気付かれないように馬車の下に潜り込んでしがみ付く。 祟りのお陰か、恭也の身体能力は以前とは比べ物にならない程に高くなっており、 そのまま城への道中、ずっと不安定な状態で揺られるのであった。 Dark Savior 第二話 馬車が止まり人が降りた気配がする。 それでもすぐに恭也は動き出さず、馬車にその間もしがみ付いたままでいる。 やがて幾つかの気配が遠ざかると、馬車は再び動き出す。 とりあえず城の中まで入れたので良しとし、行動を起こすのは夜になってからにしようと判断する。 馬が外され、まずは馬の世話をするためにだろう男が遠ざかって行くのを感じ、 周囲に他に誰もいない事を探るとようやく恭也は馬車の下から抜け出し、とりあえずは近くの茂みに隠れる。 その上で改めて見える範囲を見渡せば、背後には聳えるような大きな壁。 向かって右側は厩舎らしく馬が数頭見えている。左はずっと続いており、正面はこれまた壁となっている。 ただ背後にある壁と違うのは、それは建物の壁であるという事だろうか。 厩舎の近くには中へと入るための扉があり、周囲に人はいない。 ただ厩舎の中には人がいるらしく、気付かれないとも限らないが。 他の入り口を探すかどうか悩んだが、結局はその場で夜が来るのを待つことにする。 今、下手に動き回るよりも暗くなってからの方が良いと判断して。 夜、いや最早夜中とも呼べる時刻、ようやく恭也は動き出す。 闇に紛れ、まずは中ではなく外を見て周る。 場所によっては光の全くない本当に暗闇と呼ばれる場所もあるが、恭也の足取りは全く乱れる事がない。 恐らくは奥だろうとあたりをつけ、時折出会う見回りから身を隠して城の奥へと進んで行く。 それらしき場所を見つけては中へと入る。 既に何度目かになる工程を繰り返し行うも、未だにクレアの部屋は見つかっていない。 警備の厳重な方へと進み、更に数度同じような事を繰り返し、いい加減出直すかと考えた頃、 最後にするつもりで忍び込んだ部屋の中でようやく目当ての人物を見つける。 「……さて、見つけたは良いがここからどうするか」 起こすべきか朝まで待つべきか。 数秒黙考し、起こす事に決めて近づく。 が、それよりも先に部屋の主が突然の侵入者に気付いたのか、閉じていた目を開け、 「なっ……んふぐぅぬう」 大声を上げそうになったので咄嗟に口を塞ぎ、小さな声でクレアに言い聞かせるように告げる。 「大きな声を出すな。こちらは別に君に危害を加えるつもりはない。 ただ少し話したいことがあっただけだ。俺の事を覚えているか」 恭也の言葉にクレアは目の前の男の顔を改めて眺め、口を塞がれているので首肯する。 「今から手を離すが、できれば大声を出さないで欲しい」 再び頷いたのを見て、恭也はゆっくりと手を離す。 クレアは約束通りに声をあげず、ベッドの上に腰を下ろすようにしっかりと座り直すと、 改めて恭也を見遣る。 「それで一体何用じゃ。……ま、まさか私の身体が」 「俺自身は特に用があった訳じゃない」 何か言いかけたクレアの言葉をぴしゃりと遮り、恭也は腰に差してあった菜乃葉を手にする。 突然武器を取り出した恭也にクレアは身を引くが、恭也は気にせずそれを少しだけ鞘から抜く。 「菜乃葉がお前に力を貸せと言うから、こうして夜分遅くにだがやってきた」 「菜乃葉……まさか、その剣は召還器なのか!?」 「違う。これは元々俺が持っていたものだ」 「意思を持つ武器なのか」 「……どうなんだろうな。ただ、俺はこの刀にはなのはの、妹の魂が宿っていると信じたい」 淋しげに呟かれた言葉、それはクレアに聞かせるものではなく自分に言い聞かせるように放たれたのであろう。 だからこそ、そこには珍しく感情が篭っており、クレアはそれを感じ取れた。 感じ取り、その言葉を聞き、何も言わずにただ恭也が話し出すのを待つ。 「……今は関係ないことだったな。 ともあれ、この刀――菜乃葉がお前に力を貸せと言っているようだったんだ」 「私にか? 学園や救世主になれではなく」 クレアの疑問に恭也は頷き、菜乃葉もまた一度光る。 クレアは驚いたような顔をするが、恭也は既に慣れたのか菜乃葉の柄を優しく撫でる。 「ほらな。まるで意思があるみたいだろう」 苦笑を見せながら言った言葉にまた光って応える。 暫し放心していたクレアだったが、すぐに気を取り直すと恭也と向かい合う。 「私に協力してくれるということは、救世主になってくれるのか」 「それとこれとは別だ。それに、俺はその召還器とやらを持っていない。 まあ戦えというのなら戦うがな。壊したり殺したりは得意だからな」 自嘲を浮かべながらそう言い切る恭也をどこか悲しげな瞳で見ながら、クレアはすぐに頭を回転させる。 「お主を信用しても良いのか」 「どうだろうな。俺はあくまでも菜乃葉の頼みだからやろうと思っただけだ。 菜乃葉がもういいと言えば、その時点でいなくなるかもしれないし、敵対するかもしれん」 「そうか。……菜乃葉、お主はどうなんじゃ。 私に協力してくれるみたいじゃが、それは何か目的があってなのか?」 菜乃葉は否定するかのように二度光る。 「ならば何故じゃ」 今度は一度だけ光るが、それが何を意味するのかは当然ながら分からない。 言葉を発する事が出来ない故に細かいコミュニケーションまで取れず、クレアはそれ以上の質問は止める。 「ならば、私は菜乃葉を、そしてお主を信じよう。 裏切られたのなら、その時は信じた私自身の責任だしの」 幼い外見ながらもそう断言するクレアの目に恭也は何となく菜乃葉が協力させようとした理由を思い描く。 「お前はなのはに似ているな。勿論、外見が、という意味じゃない。 その目がよく似ているんだ。やるべき事を見据えたなのはや美由希に。 初めて会ったとき、久しぶりになのはを思い出した理由もようやく分かった。 そして、菜乃葉がお前に協力しろといったのもな」 酷く懐かしそうに目を細める恭也にクレアはそうか、とだけ返す。 暫し沈黙が漂い、クレアはそれを破るように静かに口を開く。 「とりあえず、お主には私の傍にいてもらう。専属の護衛としてな。 もし他にやってもらう事ができれば、その時はまた頼むとしよう」 「分かった。こちらからも一つ良いか」 「なんじゃ、言ってみろ」 「王女が相手で悪いが、口調はこのままで良いか。 というよりも、誰が相手であろうと、長らく人と喋っていなかった故に、どうも話すのが上手くいかない」 恭也のあまりと言えばあまりな理由にクレアは少し言葉が出てこなかったが、すぐにそれを認める。 「気にするな。お主も色々とあったのであろう。 それを詮索する気はない。では改めて頼む。私に力を貸してくれ」 「ああ」 恭也に続き、菜乃葉もまた光を放ち応える。 そんな恭也と菜乃葉に礼を言おうとして、クレアは今更のように思い出して小さく笑う。 「そう言えば、まだ名前を聞いておらんかったな。 改めて私も名乗ろう。クレシーダ・バーンフリートだ」 「不破恭也だ。そして、菜乃葉」 自分の名を紹介され、小さく一度光る菜乃葉。 今、ここに一人の賢者と剣士、そして一振りの刀が出会う。 これが後にどんな影響を与える事になるのか、それはまだ誰も知らない。 あははは、またしても続きを書いてしまった。 ついついネタが出てきて困る。 美姫 「はぁぁ、他のもこの調子だと良いのに」 それは言わない約束だよ、おっ母さん。 美姫 「誰がよ!」 ぶべらっ! 美姫 「まったく何を言うのかしら、このバカは」 痛い、痛いよ。 美姫 「バカな事ばっかり言ってるんじゃないわよ。そんな暇があるのなら……」 おおっと! もう時間だ! 美姫 「ちょっ、何を行き成り」 それでは今週はこの辺で! はい、美姫! 締めの台詞! 美姫 「あ、それじゃあ、また来週〜」 美姫 「……後でちょっとお話しましょうね」 ……あ、あははは〜。 |
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3月28日(金) | |||||||||||||
美姫 「美姫ちゃんの〜」 ハートフルデイズ〜 美姫 「はっじまるよ〜」 <この番組は、PAINWESTの雑記コーナーより、おニュ〜のアドレスだよ、とお送り中!> 皆さん、こんにちは。 今日も今日とてこの時間がやって来てしまいました。 美姫 「いきなりだけれど、お詫びと訂正をしなさい」 はい! 先週の番組内でおニューのアドレスは『.com』か『.co.jp』になると言っておきながら……。 美姫 「実際には『.net』になったのよね」 その通りです。本当に申し訳ございません。 ……だが、だがしかぁぁしぃぃ! 一つ、一つ言わせてくれ! 美姫 「なによ」 始めは『.com』で取ろうとしたんだよ。 なのに、既に取得されているって……。な、なんでだぁっ! 美姫 「はいはい、済んだ事を言っても仕方ないでしょう」 まあ、そうなんだがな。 ともあれ、新しいアドレスになり、メールアドレスの方も変わりましたので改めてここにご報告を。 そして、これからも宜しくお願いします。 美姫 「馬車馬のように働くのよ!」 が、頑張ります。 にしても、ふと思ったんだが、かなり急に変更したから知らない人もいる可能性があるんだよな。 とは言え、前のアドレスは既に使えないからお知らせする方法もないし。 美姫 「……このバカ!」 ぶべらっ! 美姫 「もっと長期間を置いて変更しなさいよ」 いや、だって俺だって急に知らされたんだぞ。 イエ、ナンデモナイデス、ゴメンナサイ。 今まで来てくださった方たちには、お手数ですが検索してもらうしかないか。 いや、本当に申し訳ないな。 美姫 「もっと反省しなさいよ」 シュン……。 美姫 「さて、バカが反省している間にCMいってみよ〜」 あ目が覚めた恭也はまだ自分が生きている事に我ながらしぶといなと呟き、その身を起こす。 だが、周囲の状況が意識を手放す前と違うと気付き、拉致されたのかと用心する。 自分の身体を確認し、何処も怪我をしてないこと、装備を一切奪われていない事に疑問を抱きながら、 近付いてくる気配に構える。恭也の前に現れたのは数人の女と一人の男。 恭也を前に訳の分からない事を喚いたかと思えば、女の一人が男と喧嘩を始める。 それをただ黙って見詰めていた恭也へと、この中で一番年上と見える女が話し掛けてくるのだった。 「とりあえず、ようこそアヴァターへ」 Dark Savior 第一話 「アヴァター?」 謎の女性から、これまた意味不明の言葉を投げられて戸惑う恭也をダリアと名乗ったその女が別の部屋へと連れて行く。 その間にここが王立の学園である事や、恭也のいた世界とは異なるという事を聞かされる。 自らも教師だと名乗ったダリアの後に続きながら、自分の後を付いてくる救世主候補という生徒を一瞥する。 この世界にやがて来る破滅と戦うという者たちを。 だがすぐに興味なさそうに恭也は前を向いてダリアの後に続く。 後ろから投げられる強い視線を感じながらも、それに何も感じずただ黙ったままで。 途中で生徒たちは別行動を言い渡され、恭也は一人学園長と名乗る女の前に連れてこられる そこで学園長ミュリエルから更なる詳しい話を聞かされるが、恭也の胸中はずっと凪いだままである。 世界の危機や、それを救う力が恭也にあるかもしれないなどという話にも、恭也は特に思う事もない。 寧ろ、いつまでこのような話を聞かされるのかといささかうんざりとした様子で、 まだ続きそうな話を止めるべく口を挟む。 「それで?」 まだ説明を続けようとするミュリエルの言葉を遮り、放たれた言葉は短く、殆ど感情らしきものが込められていない、 あくまでも淡々としたものであったためか、何を問われたのか分からなかったといった様子を見せるミュリエルに、 恭也は言葉が足りなかったかと更に付け足す。 「それで、それがどうかしたのか」 それでも多くを語る訳でもなかったが、今度はちゃんとミュリエルにもその意味が通じたらしく、 「どうかって。ちゃんと私の話を聞いてましたか?」 逆にそう問い返す。 それに対して恭也は変わらず淡々と、 「聞いてたな。世界が滅ぶというんだろう。それがどうした。 俺以外にも世界を救うという大層な力を持った奴らが居るのだろう。 だったら、そいつらが何とかすれば良い。俺には関係ない」 本当にどうでも良さそうにそう言い切る。 その言葉に、いや、今までの会話の間もずっと感情を出さずに淡々とした恭也の様子にミュリエルも言葉を無くす。 その言葉の真偽を確かめるように恭也の目を覗き込み、その何も写していないかのような、 全てを飲み込むかのような平坦な瞳に再び言葉を無くしてしまう。 この男は危険だと――理由などなく、ただ本能が今までの経験が警鐘を鳴らすのを――感じたミュリエルは、 下手に監視の届かない場所に行かれて万が一にでも破滅に組み込まれてはと学園に留まらせようとする。 「本を見たかもしれないという事でしたが、何の説明も受けていないとの事ですね。 だとすれば、イレギュラーだという可能性が大きいです。 そうだとするならば、元の世界にすぐには戻れませんが」 まずは元の世界には戻れないかも知らないという不安を抱かせるべく切り出す。 帰るべき場所に帰れないという、ここは誰も頼る者がない世界、ましてや異世界であると意識させるべく、 元の世界を少し強調する。 だが、恭也は一瞬たりとも不安を覗かせる事なく、いや、感情さえ変化させず、淡々と変わらずに答える。 「別にどうでも良い。帰った所で、誰かが待っている訳でもないしな」 「なら、この世界でどうやって生きていくつもりですか。 先ほども言いましたが、破滅がもうすぐ来るんですよ。それがなくても、見知らぬ土地、いえ世界のはず」 「どうにでもなるだろう。もう良いか」 もう一度不安を煽るように似たような言葉を紡ぐも、やはり恭也の感情に変化は全く見られず、 むしろ飽き飽きとした感じでそう告げてくる恭也に、ミュリエルはそれでもなお続ける。 「救世主になれば、何でも願いが叶いますがそれでも出て行きますか」 ある意味、とっておきの条件である。 ただし、救世主になれるかどうかは分からないという部分もあるが。 それにミュリエル自身は救世主を誕生させる気もない。 そこを隠してそう尋ねるミュリエルに、恭也は初めて反応を見せる。 「何でも?」 「ええ。富、名声、何でも貴方の望むものが」 ようやく見せた反応、それも物欲を見せた恭也に、さっきの瞳を覗いた雰囲気は気のせいだったかと思い直しつつ、 ミュリエルはそう言い切る。 「魔法と言うのは何でも出来るのか。時を戻したり、大きな怪我や古傷を治したり」 だが、恭也から返ってきたのは質問であり、ミュリエルは急な事に戸惑いつつも答える。 「魔法とは言え、何でもかんでも出来る訳ではありません。 時間を操るのは無理ですし、怪我は治せますが、古傷は難しいですね。 勿論、死者を生き返らせたりも出来ません。万能ではないんです」 「そうか」 それきっり口を噤む恭也に、先ほどの答えをもう一度聞く。 返ってきた答えは、感情も何もなく。 「やはり興味ないな」 ただ短い、先程までと変わらぬ言葉であった。 何にも興味を示さない恭也に、ミュリエルも引き止める手立てを無くして押し黙るしかなかった。 他に何か手はないかと考えるミュリエルと、面倒だから勝手に出て行こうかと算段する恭也。 その両者を牽制するかのようにノックの音が響き、考え事をしていたミュリエルは深く考えずに反射的に返事する。 それを了承と受け取り開けられた扉から一人の少女が入ってくる。 「久しいな、ミュリエル。……ふむ、来客中であったか」 「殿下!?」 突然の訪問者にミュリエルは慌てて席から立ち上がるも、咄嗟に口にしてしまった言葉に唇をかみ締める。 正体不明の人物の前で重要な情報を漏らしてしまったのだ。 横目で恭也の様子を窺うが、やはりそこには何の感情も浮いていな――、 ミュリエルが期待したような今までの反応とは違い、恭也が珍しく表情に感情を見せていた。 だが、それは幾つもの感情が混じり合い、ミュリエルを持ってしてもその真意までは見抜けない。 それでも、殿下という言葉に反応した可能性を考慮していつでも動けるように僅かに身構える。 だが、恭也はそれにも反応を見せず、ただ僅かに唇を動かす。 それを注視し、僅かでも聞き逃さないとばかりに耳を澄ませるミュリエル。 「なの――」 本当に小さく、僅かな動きだけで囁かれた言葉を全て拾う事は出来なかった。 だが、それが誰のか名前なのではないかとミュリエルは見当をつける。 その間に恭也はすぐに頭を振り、自虐めいた笑みを浮かべるとまた無表情に戻る。 どうやら目の前の少女をどうこうするつもりはないらしい態度に、 ミュリエルはそれでも恭也から少女を少しでも引き離すべく話し掛ける。 「殿下、それで今日はどのような用件でしょうか」 「うむ、その事なんだが……。そちらの方は良いのか? 先客はそちらではないのか」 殿下――この世界で唯一の王国、その頂きに座する王女クレアが恭也へと視線を向ければ、 恭也は否定するように小さく首を振って返す。 「こちらの用はもう済んだ。今、出て行くところだ」 口の利き方について注意しようとするミュリエルだが、今までのやり取りからそれが無意味だと分かり、 それでもやはり注意する。その上でまだ話は終わっていないと告げる。 だが告げられた恭也はうんざりしたようにミュリエルに向き直ると、やはり変わらぬ答えを示す。 「何度も言わせるな。破滅や救世主などに興味はない。 勝手にやれば良いだろう」 恭也の言葉にミュリエルが何か言うよりも早く、クレアが恭也を見上げ、次いでミュリエルへと視線を戻す。 「ミュリエル、この者はもしや救世主候補なのか」 「その可能性があります。大河君同様、男性ですが間違いなく召還されて来た者です。 尤も、先の事件で召還の塔にあった魔法陣が壊され、 急遽修復した状態でしたのであの時よりも更にイレギュラーと言えますが」 「ふむ、なれば説明はしたのか」 「はい。ですが、ご覧のように拒否されています」 クレアは改めて恭也を見上げ、救世主候補へと誘う。 だがやはり恭也はそれをにべもなく断るともう用は済んだとばかりに扉へと向かう。 その足が不意に止まったのは、ひとえにクレアがその腕を掴んだからであろう。 これが他の者であったのなら躊躇なく振りほどく所だろうが、 その外見と先程思い出してしまったなのはとの面影が重なり、無下に振り解けずにいた。 「私はお主が羨ましい。私も召還の儀を受けた事があったが、私には召還器は呼べなんだ。 もし呼べていたのなら民を守る事を他の者に任せずとも良かったのに。 お主にはその可能性があるのであろう。なのに、何故受けぬ」 「……では逆に尋ねるが、何故その可能性があるというだけでその道を強要されなければならない。 俺意外にも救世主候補はいるのだろう。だったら、そっちに任せれば良い。 全てを守るなんて、救えるなんて事は在り得ないという事を、俺は嫌という程知っている。 少なくともそんな考えを持つ者は救世主にはなれないだろう。他をあたれ」 ミュリエルに対するよりは丁寧に答える恭也であったが、その物言いにミュリエルは顔を顰める。 「殿下相手になんて口のきき方を」 「それこそ知ったことか」 「たか――」 ミュリエルが尚も嗜めようとするも、クレア自身がそれを止める。 その上で恭也を見上げ、真摯な瞳で真っ直ぐに恭也を見詰める。 「せめて召還の儀だけでも受けてはくれぬか。 それで召還器を得ようと得られなかろうと、何も言わないし干渉しない」 「殿下、それは――」 その条件にミュリエルは異を唱える。 もし召還器を得たのならば、余計に学園内に留まってもらわなければならなくなると。 だがクレアはミュリエルに対しても同じような瞳で見詰め返し、それ以上の言葉を封じる。 その上でどうだろうかと恭也に問う。 本来ならそれさえも無視して出て行くことに、何ら躊躇もないのだがやはり過去を思い出してしまった所為か、 本当に仕方なくといった様子ながらも渋々と了承する。 それさえ受ければ、結果がどうなろうと干渉しないと念押しをして。 ◇ ◇ ◇ 条件が条件だけに召還の儀を行う競技場には恭也以外にはミュリエルとクレアのみであった。 未だに渋い顔をするミュリエルを促し、クレアは召還の儀を始めさせる。 円形の闘技場、そのほぼ中央に立っている恭也の視線の先、闘技場の壁に開いた穴を塞ぐ形となっている鉄製の格子。 それが静かに上へとスライドし、そこかた一匹の魔獣が姿を見せる。 白い毛並みに赤い瞳。人の口よりも突き出たそれにはずらりと鋭い牙が覗く。 口元から涎を垂らしながら、久しぶりの獲物を狙うかのように凶暴な眼差しを恭也へと向け、喉の奥で唸る。 それが四本足として歩行しているのであれば、狼だと言えるかもしれない風貌でありながら、 実際には後ろ足二本で立ち、前足に当たる腕とでも呼べば良いのか部位には、これまた鋭い爪が。 ワーウルフと呼ばれ、その凶暴さや素早さは一介の戦士でも注意が必要と言われる魔獣である。 しかも、白い毛並みは通常のワーウルフよりも上位とされ、より手強い魔獣である。 それを相手に選んだミュリエルにクレアが文句を言うが、ミュリエル自身はそれを軽く受け流す。 「召還器を呼ぶぐらいの窮地に立たせるのであれば、あれぐらいでなければ恐らく無理です。 それほどまでに彼は強い。そして、もしかすると私以上に戦闘経験があるでしょう」 ミュリエルの言葉にクレアは信じられないように恭也を見る。 精々が二十過ぎという風貌の恭也から、そんな戦闘経験があるのかと疑ってしまう。 実際には恭也は既にミュリエルなどよりも年を経ており、祟りによる呪いで年を取らなくなっているだけなのだが、 それをこの二人が知るはずもない。 そんな外野の事など気にも止めず、恭也は目の前の敵に意識を集中させ、思考を身体を、 その全てを戦闘用へと切り替える。途端、纏う空気が僅かに変化する。 元よりどこか影を感じさせる雰囲気が更に濃くなり、深い闇へと。 思わず両腕で身体を抱き、クレアはそれでも恭也から目を離さない。 どのような力を見せてくれるのか、どこか期待するように見詰める。 そして、ミュリエルもまた恭也から目を離せなくなっていた。 単純な好奇心から来るクレアとは違い、ミュリエルの場合は恐怖や警戒など戦闘者として、 自分が敵対しているわけではないのに、目を逸らしては駄目だと本能が警戒してくるが故に。 敵意も害意も、ましてや殺気さえも微塵も零さずただそこに立つ恭也にワーウルフもまた何か感じ取ったのか、 獲物に襲い掛かるというよりも、何かに急かされるように恭也へと襲い掛かる。 一直線に恭也へと向かうワーウルフ。 交差は殆ど一瞬の事で、すれ違うように背後へと走り抜けたワーウルフはそのまま地面へと倒れ伏す。 遅れるように今気付いたとばかりに、ワーウルフの首と右腕がその体から落ち、腹と右足から大量の出血が。 対する恭也は最初に立っていた所よりも僅かに前と左に動いただけの位置で特に振り返る事もなく立っている。 興味もなさそうにミュリエルへと顔を向けると、未だに呆然としている事など気にも止めずに、 「これで良いな」 淡々とそう口にする。 話し掛けられ、ようやく我に返ったミュリエルであったが、一体何が起こったのかよく分かっていなかった。 すれ違う瞬間に恭也がワーウルフの攻撃を避けるように動き、直後その右腕がぶれるように動いたという事しか。 獲物は刃物。これはワーウルフの死体から判断できる。 その獲物が腰に吊るされている短い剣だという事も、これは恭也を見れば分かる。 だが、いつの間に、どうやって、どの順番でワーウルフを斬ったのかが見えなかった。 いや、微かに四つの斬撃を見たという認識はある。 ただそれがいつの間に抜かれ、いつの間にまた戻されたのか。それが全く目で追えなかったのだ。 それはクレアも同じで、だがこちらはミュリエルとは違い純粋に恭也の腕に感心している。 「……まだもう一体います。それで最後です」 辛うじてそう口にしたミュリエルは、クレアからの視線から逃げるように顔を逸らし、 再びモンスターを解き放つレバーに手を掛ける。 恐らくはこれでも恭也を倒せないだろうと思いながらも、何とか恭也の攻撃手段だけでも見ようとあがくように。 次に出てきたのは、恭也よりも遥かに大きな石で作られた人形であった。 ごつごつとした外見通りに、その装甲はかなり硬く刃が簡単には通らないであろうと思わせる。 ゴーレムと呼ばれるその巨体とパワー、頑丈さが非常に厄介な魔物である。 これならば、すぐに決着はつかないだろうとミュリエルは改めて恭也の仕草を見逃さないように見詰める。 クレアもまた口を閉ざし、事の成り行きを見守る事にしたのか、再び闘技場へと視線を戻していた。 開始の合図も何もないのは先程と同様。 ただし、今度は恭也から先に動き出している。 自分に向かってくる小さな愚か者へとゴーレムがその拳を打ち下ろす。 今まで敵対したものは、その拳に潰されるか慌てて避けるかのどちらかであった。 偶に異様な力を持つ者などは全身で受け止めたりもしたが、そんなのは少数である。 故にゴーレムはその二つのどちらかの結果になると信じて疑わない。 だが、それは今回に限っては正解しなかった。 何故なら、振り下ろされた拳が粉々に砕け散るという光景が起こったからである。 今まで拳で砕いてきた地面のように、今度は自分の拳が粉々に砕け飛んでいる。 そして、それを成した人物は砕けた拳の先で十字に重ねた小さな剣を手にし、止まる事なく距離を詰めてくる。 左腕から見間違えようもなく闇が噴出し、それはそのまま右手に握られた剣――小太刀に絡みつく。 闇を纏った小太刀が一瞬だけ僅かな光を発し、受け入れるように刀身を黒く染める。 ゴーレムの股下を走り抜け、手にした小太刀を振るう。 それはまるで紙でも切るかのように容易くゴーレムの膝らしき部位へと突き刺さり、そのままあっさりと抜けていく。 両膝から下を切断され、ゴーレムはその巨体を支えるものを無くして、 直前の攻撃による慣性に従い前のめりに倒れていく。 その背中にいつの間にか飛び乗った恭也がその首筋に闇の刃により刀身が伸びた小太刀を振り下ろし、 ゴーレムの首を跳ね飛ばす。 残された身体は何の反応も見せずに地面へと落ち、埃を巻き上げる。 そんな中、恭也は特に疲れた様子も見せずに元に戻った小太刀を再び鞘へと戻しミュリエルたちの下にやってくる。 「これで終わりですね」 それに対し、ミュリエルは無言のままである。 故に恭也は次にクレアへと視線を向ければ、クレアは肯定するように一つ頷く。 「そうじゃな。どうやら召還器も手に入らなかったようだしの。 ミュリエル、恭也は救世主候補ではなかったようだな」 「……そうですね。ですが、その戦力は――」 「ミュリエル」 何か言いかけるミュリエルを制するようにクレアが静かにその名を呼ぶ。 幼い外見はしていても、そこはやはり王族か。 その威厳の前にミュリエルも反論せず、ただ小さく頭を下げる。 それを見届け、恭也は学園の外へと通じる道を聞くと振り返らずに立ち去っていく。 何か言いたそうな二人の事など、既に忘れてしまったかのように。 ◇ ◇ ◇ 闘技場から門へと通じる道を歩く恭也の腰に吊るした小太刀が僅かに光を放ったのは門を前にした時であった。 恭也は小太刀を鞘ごと腰から外し、少しだけ鞘から抜く。 僅かに除いた刀身が何か伝えるように数度だけ瞬き、また沈黙するように普通の刀身になる。 「……やはり菜乃葉にはなのはの魂が宿っているのか」 だが恭也の問い掛けに何も反応はない。 やはり違うのかと落胆したように溜め息を吐き、再び歩き出せば再び刀身が光る。 「俺に行くなと言いたいのか」 そう問い掛ければ、先程とは違い刀身が一度だけ光る。 「……なのはは俺に残れと言うのか」 なのはの名を出して問い掛けてみれば、数度光って反応する菜乃葉。 やはり霊剣のようになのはの魂がと再び思うも、とりあえずは何を言いたいのか判読しようとする。 もし本当になのはの魂か意思が宿っているのなら、そしてそれが願う事なら何でもしてやりたいと。 「俺に学園に残って戦えと言っているのか」 数度光る。何となく違うと言われたようで、恭也は他の事を口にする。 他人から見れば異様な光景かもしれないが、周りの事など気にならないとばかりに恭也は繰り返す。 幸い、夕暮れ時のお陰か周囲に人は見当たらなかったが。 「……もしかして、あのクレアとかいう少女に力を貸せと言いたいのか」 何度目かで口にしたその言葉に菜乃葉は強く一度だけ輝く。 どうやらそれが正解らしい。 何故、なのはがそんな事を願うのか分からないが、まだ菜乃葉になのはが宿っているとも分かっていないが、 それでも恭也はそれを菜乃葉が求めているのならと一つ頷くと菜乃葉を腰に戻す。 その上でクレアと接触する方法に考えを巡らせ、クレアが王女だという事を思い出す。 恭也はそのまま門から外へと出ると見つかりにくく、逆にこちらからは門付近を監視し易い場所を見つけ、 そこに身を隠す。そうしてクレアが出てくるまで息を潜めていると、ようやくクレアらしき人物を見つける。 既に日も暮れ、門限を越えたのか閉ざされていた門が僅かに開き、そこから数人の男女が姿を見せる。 周囲を警戒し街の方へと向かっていく一団の中に、一際小さな人物を見つける。 すっぽりと顔を隠すように頭からフードを目深に被り、周囲の大人に守られるようにしている人物を。 僅かに除いた横顔からクレア本人であると確認すると、恭也は気付かれないようにその後を付けるのであった。 …………。 美姫 「ほら、いつまで反省しているのよ。CM明けたわよ。 反省したのなら、次からはちゃんとしなさいよ。という訳で、ほら早く喋りなさい」 ……ZZZ。 むにゃむにゃ……もう食べれないよ〜。 美姫 「何をベタな寝言付きで寝てるのよ!」 ぶべらっ! 食べられてばかりいるかとケーキの逆襲か!? 美姫 「お・は・よ・う」 あ、あははは。え、笑顔がとっても素敵ですね。 美姫 「そう、ありがとう。で、アンタは何してたのかな?」 え、えっと反省? 美姫 「寝言付きの反省なんて聞いたことないけれど?」 いや、本当にすみません! でも、ちゃんと反省はしてるんですよ、いや本当に! 美姫 「はぁぁ。何か疲れたわ」 とか何とか言っているうちに時間だよ。 美姫 「はいはい。それじゃあ……」 今週はこの辺で。 美姫 「また来週〜」 |
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3月21日(金) | |||||||||||||
美姫 「美姫ちゃんの〜」 ハートフルデイズ〜 美姫 「はっじまるよ〜」 <この番組は、PAINWESTの雑記コーナーより、もうすぐ春〜いやもう春、とお届け中!> いきなりだが、今回は重要な告知が。 美姫 「その内容は後でね♪」 後なのかよ! 今で良いじゃないか。 美姫 「冗談よ、冗談。それはそうと、既に相当辛そうね」 まあな。もう目が鼻が。 俺にとっては辛い日々の始まりだよ。 美姫 「まあ、私には関係ないんだけれどね。という訳で、頑張ってガンガン更新してね」 うわ〜い。いや、まあ分かっている事だけれどな。 言われなくても書くよ! 美姫 「頑張れ若造♪」 それ、絶対に応援してないだろう。 美姫 「そんな事ないわよ。いや〜ね〜、どうしてこうも捻くれちゃったのかしら」 誰の所為だよ、誰の! 美姫 「はいはい。さ〜て、それじゃあCMいってみよ〜」 って、告知が後回しにされた!? 「じゃじゃーん」 そう言って自慢気に忍が恭也たちに見せたのは一台の大型コンピュータであった。 月村邸は地下の一室。 遊びに来ないと誘われ、恭也たちが出向いた先で行き成り地下へと連れて行かれ、 前述の台詞と共に2メートルを越える布が取り払われ、中から出てきたコンピュータ。それを前に忍は胸を逸らし、 その際に恭也は目を天井を向け、数名がその手を自らの胸に当てて憂鬱そうな顔を見せる中、尚も続ける。 「人工AI、HIR−0よ!」 自慢の玩具を見せびらかす子供の如く、その瞳を輝かせる。 それに対し、一同はそれが何なのかも、どう凄いのかも分からずにただ反応に困る。 「あの……忍さん」 遠慮がちに那美がおずおずと手を上げれば、待ってましたとばかりに那美を指名する。 「はい、那美! 何かな、何かな? 質問があるんでしょう」 「えっと、はい。そのHIR−0というのは?」 「いい質問だわ。正式名、Higth-Intelligence-Reckoningプロトタイプゼロ。 高処理演算知能機のプロトタイプよ!」 「だから、それがどうかしたのかという事だ」 恭也が補足するようにそう付け足せば、忍は笑みを更に深めて机の下から何かを引っ張り出す。 目を覆うゴーグルのような物と手に付ける感じのグローブ。 グローブの方には幾つかの細かいスイッチやボタンなども見受けられる。 その二つの内、ゴーグルの方にこれまた何処からか引っ張ってきたコードを付ける。 「これで準備はオッケーよ。これはね、はい恭也被って」 ろくな説明もせずに恭也にゴーグルとグローブを装着させると、自分も同じように身に付ける。 「全員の分もあるからね」 言って他の面々にそれらを一式配ると装着させる。 それらの準備が全て終わると、 「百聞は一見ってね。まずは実際に体験して頂戴。それじゃあ、スイッチオン! あ、ゴーグルに右耳のツル部分にスイッチがあるからそれを入れてね」 言って自分の分のスイッチを入れる。すると反対側の左耳のツルから口元へと何かが伸びる。 恐らくはマイクなのだろうか。 ともあれ、それを見て爆発はしないと安堵して恭也もまたスイッチを入れ、他のメンバーも同じように入れる。 瞬間、世界が暗転する。 思わず目を閉じた一同が次に目を開けると、そこは既に地下とは全く違う景色が広がっていた。 目の前に広がるのは広々とした平原。さっきまで室内であったというのに、肌に風を感じる。 「これは……」 呆然と呟いた恭也に答えるように、忍が胸を張って説明を始める。 「ここはヴァーチャルの世界よ。さっき見たHIR−0の中ね。 で、ここはゲームの中。オンラインゲームってあるでしょう。 言うならばそれよ。という訳で、皆でゲームしよう♪」 そう言って楽しげに忍は笑う。 まだ困惑する恭也たちにノエルがオンラインゲームの説明をしてあげる。 ようやく理解した恭也や美由希とは違い、なのはや晶たちは既に好き勝手に動いていた。 「はいはい、はしゃぐのはそこまでにして聞いてね。 まずは職業を皆には決めてもらうから。因みに、このゲームは個人レベルと職業レベルが存在するの。 操作に関しては、移動や会話などは普段と変わらないでしょう。 で、細かい作業、メニュー画面を開いたりとかは左手にあるスイッチを押せば開くから」 順次説明をしていく忍の言葉に合わせ、揃って操作をして声を上げるメンバー。 「それじゃあ、まずは職業を決めちゃいましょう。かなり数があるから、慎重に選んでね。 その職業に関する説明は表示されるから。で、操作の方だけれど」 忍の説明に従い操作していく恭也たち。 なのはや晶、レンなどはすいすいと作業を進めていくが、 やはり普段からあまりこういう事に慣れていない恭也たちは少し戸惑いつつも何とか作業をしていく。 「この上級職というのは選べないのか?」 「それは一般職のレベルを上げると自動的にチェンジできるものと、そこから転職しないといけないものとがあるのよ。 その辺りも説明にあるわ」 「なるほど」 恭也は頷くと暫く考えた後、職業を決める。 「因みに皆のデータは既にHIR−0に入れてあるから、現実世界の能力がある程度は反映されるわよ。 選んだ職種によって後で修正がかかるけれど。 今の所、殆どのキャラはNPCだけれど、さくらやその友達が前にプレイしているはずだから、もしかしたら会えるかもね」 そんな事を話しながら、忍は自分のキャラを作っていく。 こうして全員が自分のキャラを作り終える。 「さてさて、それじゃあ皆のステータスを見せてもらおうかな。 とりあえずは、全員同じパーティーという事にして……」 忍だけがそこから更に幾つかの操作を行い、全員の頭上にステータスが表示される。
「恭也の盗賊っていうのは、上級職を見据えた選択なのね」 「ニ刀に暗器で探したら、これが一番近かったんでな。 にしても、巫女やメイドまであったのか」 「ふふん、ざっと職種だけでも100近く作ったからね」 何故か自慢げに胸をそらす忍に、なのはが当然のように尋ねる。 「だとしたら、忍さんは何をどうすれば良いのか全部知っているという事ですか?」 「そうでもないわよ。そこで、この人工知能AI、HIR−0の出番なのよ。 私は基本的な部分だけを作って、後は勝手にこのコンピュータがやってくれているの。 だから、どんなイベントがあるとか、どんなアイテムがあるのかとかも分からないわ。 自己進化するAIだから、職種とかも増えていくかもしれないしね。 現に私はメイドという職種は作ったけれど、見習いメイドなんて作ってないもの」 無意味に高度な技術に感心する一同の中、それをゲームに使っているというのが忍らしいと恭也は一人苦笑を見せる。 それに構わず、忍は次の操作に移る。 「それじゃあ、早速プレイしましょう。 ここはプレイ前の場面でモンスターも出ないから、ここで一通り操作に慣れてもらって、 それが終わったら最初の街にワープしましょう。あそこの装置に入れば、自動的にワープするから」 言って忍が示す先にあるのは、直径が二メートルの円形で高さが数センチ程の台座であった。 僅かに燐光を発しているそのワープ装置を確認し、それぞれにキャラを動かしていく。 「忍お嬢様」 「なに?」 既にテストプレイで操作に慣れているノエルが忍に話しかけた途端、高らかにファンファーレが鳴り響く。
「えっと……」 「……恐らく、主人を決めたということでレベルがあがったのではないかと推測します」 「にしても、これはパラメータがあがりすぎじゃない!?」 「それは私に言われましても……」 忍の叫びにノエルは困惑顔で返す。 そこにまたしてもBGMが流れる。 「えっ!? モンスター? ここでは出ないはずなのに。 ううん、これはモンスターの音楽じゃないわね。恭也、ちょっと周囲を調べてみて。 この中では盗賊が一番探索範囲が広いから。操作は……」 忍に言われた通りに操作し、周囲のマップを映し出す。 現実世界で恭也が付けているゴーグルに周辺の地図が映し出され、幾つかの光点が点滅をする。 しかし、それは全て仲間を示すものばかりで他には何も見当たらない。 それを忍に伝えたと同時、ノエルのすぐ後ろに一人の人影が現れる。 「ああ、そのように警戒しないでください。私はメイド協会からやってきました、メイドのサファリと申します。 この度は新たな仲間の誕生を祝いに参ったのです」 「……クラスチェンジの度にこんなイベントが起こるの?」 「他のクラスまでは分かりかねますが、我がメイド協会では新たにメイドとなられた方に装備一式をお渡しするために、 こうして協会の者がその元を訪れます」 「周囲探索に引っ掛からなかったんだが」 思わず恭也がそう漏らした言葉をしっかりと聞きとどめ、メイドはにっこりと微笑んでみせる。 「盗賊の探索能力に引っ掛かるようではメイドは務まりません。 ご主人様とお屋敷を守るのもメイドのお仕事ですから。それはそうと、ノエルさんおめでとうございます。 これからもメイドとして恥じない働きを期待してますわ。 こちらはメイドとなられたノエルさんへのプレゼントとなります」
ノエルに装備品を渡し終えると、メイドはあっという間に姿を消す。 やや呆然と見送りつつ、忍は気を取り直すように告げる。 「まあ、作成者の私もこんな風に全く何が起こるのか分からないぐらいに進化しているのよ。 とりあえず、そろそろ街に出ましょう。あ、ノエルはちゃっちゃと装備しちゃいなさい」 忍の言葉に従い、ノエルはメニュー画面を開いて手に入れたばかりの装備品を装備する。
「忍お嬢様、このメイド服、防御力がかなり高いです。 お嬢様が普段やられているゲームで言うなら、中盤以降に手に入る防具並みに」 「あ、そうなの。ま、まあ、特典としてもらっておけば良いんじゃなかな。 防具が良いって事は、他のステータスが低いとか、使える技術が少ないとかじゃないのかな」 「かもしれませんね」 職種レベルのアップによってあがった数値を見る限り、 ステータスに関しては低くはないと思いつつもそう纏めると本格的にプレイするために街へと向かうのであった。 「ポーションを一つください」 「はいよ。お使いかい、メイドのお姉ちゃん。本当にご苦労さん。 こいつはサービスだ、持っていきな」
「……何で実際に買った物よりも、おまけの方が多いのよ! しかも、値段的に見てもおかしいじゃない!」 「と言うよりも、メイドだけやけに優遇されているような……」 忍の叫びに晶も思わずそう漏らさずにはいられない。 「まあまあ、落ち着いてください。同じ仲間なんですから、助かるじゃないですか」 「そうですよ、那美さんの言うとおりですよ忍さん。 これから買い物はノエルさんにしてもらえば、かなり助かると思って」 「サーバーのAIの名前が悪かったんじゃないか……」 ぽつりと呟いた恭也の言葉は誰にも聞かれる事はなかった。 SO(シノブオンライン) 近日発売! 酷いよ、美姫……。 美姫 「うっかりしてたわ。でも、まあ良いじゃない。ここで告知をちゃんとするんだから」 まあ、忘れていないだけ良いけれどな。 美姫 「で、何よ告知って」 うん、ずばりPAINWEST閉鎖! ……というのは冗談でぶべらっ! 美姫 「で、本当は?」 ほ、本当はアドレスが変更されるという告知です。 美姫 「また変わるの」 まあ、色々とあってな。 次のアドレスは独自ドメインを取る! 美姫 「おおー」 とKが言っていた。 美姫 「でも、そうするとメールのアドレスとかも変わるんじゃ」 ああ。しかも、変わった後はそれを伝える手段がないという。 故に事前にお知らせをしておこうと。 美姫 「で、何に変わるの」 それはまた今度にでも。 美姫 「まだ決まってないんだ」 いやいや、単純に『painwest.com』か『co.jp』だな。 詳細はまだ分からないけれど、決まり次第またお知らせしますので。 美姫 「皆さんにはお手数をお掛けしますが、よろしくお願いします」 いや、これって俺もかなり手間なんだぞ。 メールアドレスの設定やり直しから、サーバーのデータ移管とか諸々。 どうせ、Kは言うだけだろうし。 美姫 「間違いなく言うだけね。もしくは、来週辺りいきなりドメイン取ったから後は宜しく、とか」 うわー、自然に目に浮かぶよ。 全く違和感ないのが恐ろしい。 美姫 「ともあれ、それってすぐに作業終わるの」 どうだろう。もしかすると二、三日はHPが見れなかったり、メールが繋がらなかったりするのかも。 これも含めて、新たな進展があり次第ご報告させて頂きますので。 美姫 「早めにHPでも告知がいるわね」 だな。普通の掲示板の方は影響受けないから、そちらの方にお気に入り登録しといてもらうというのも手かも。 どちらにせよ、早めにお伝えできるようにしますので。 美姫 「これからもPAINWESTをよろしくお願いしますね」 お願いします! 美姫 「と、告知はここまでで良いわね」 多分。それにしても、本当にKの思いつきは疲れるな。 美姫 「年始か年末だかに言ってた、今年企んでいる事ってこれだったのかしら」 じゃないのか。というか、毎回作業が俺のなのはどうよ? 美姫 「それは私には関係ないもの」 へいへい。ともあれ、春という事で心機一転、益々がんばろう! 美姫 「と気合を入れつつも、翌日にはまたサボり始める浩であったとさ……」 正解! 美姫 「って、威張るな!」 ぶべらっ! 美姫 「まったく、このバカだけは。年中、相変わらずなんだから」 褒め―― 美姫 「褒めてないからね」 ……あ、あー、今週はそろそろ時間だな〜。 美姫 「本当ね」 シクシク。 こ、今週はこの辺で〜。 美姫 「また来週ね〜」 |
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3月14日(金) | |||||||||||||
美姫 「美姫ちゃんの〜」 ハートフルデイズ〜 美姫 「はっじまるよ〜」 <この番組は、PAINWESTの雑記コーナーより、雨でも鼻が目が〜、とお送り中!> さてさて、今回はなんと、なんと〜。 美姫 「久しぶりにあの人がゲストに来てくれちゃいました」 という訳で、早速ですがゲストさん、いらっしゃ〜い。 蓉子 「手土産片手に狐火と共にお邪魔します」 美姫 「いらっしゃい、蓉子ちゃん」 蓉子 「お邪魔します。ところで、これどうしたら良いかしら」 いやいや、消せないのなら出すなよ! 美姫 「ああ、その辺にいる奴に適当にぶつけて消せば良いわよ」 ……この辺って俺とお前しかいませんよね! 蓉子 「了解」 って、アンタも何で了解して……ぎゃぁっ! あちっ、熱いよ、って燃える、燃えてる! 蓉子 「……一応、熱いとか感じる間もなく、あっという間にローストになるぐらいの温度はあったんだけれど。 相変わらず、弱いのに耐久力だけは無茶苦茶ね」 美姫 「でしょう。でも、だからこそ嬲り甲斐もあるし、こういう時には便利なのよ」 蓉子 「ああ」 って、呑気に話してないで火を消してくれよ! ったく、死ぬかと思った。 蓉子 「……本当に無駄に丈夫ね」 ありがとう! 美姫 「一応突っ込んでおくけれど、全然褒めてないからね」 なにぃっ! 美姫 「はいはい、バカは放っておいて」 蓉子 「そうね。はい、これお土産」 美姫 「ありがとう」 安藤さん、ありがとうございますだ〜。 美姫 「それじゃあ、早速……」 蓉子 「CMに行きましょう」 ――気が付けば、そこは異世界だった。 そんな、物語ではありふれた展開に生身で遭遇した時、人は何を思うのだろう。 例えば、大学からの帰り道、所用で少し遅くなったことを除けば、普段と何ら変わらないはずの家路に、 一冊の本が紛れ込んでいたとしよう。 歴史を感じさせる重厚な造りの赤い表紙に、詳しくないものの目にもそれが基調な物であると分かる本。 挿絵などのイラストを描くことで、本の製作に携わることもあるわたしには、 それが無造作に道の真ん中に捨て置かれていることがどうにも我慢ならなかった。 特に警戒も無く歩み寄り、それを拾おうと本へと手を伸ばす。 後にして思えば、これがすべての始まりだったのだ。 原稿の締め切りに追われての連日の徹夜に加え、日中は大学での講義と彼の実家の喫茶店でのアルバイト。 明らかなオーバーワークに、普段であれば気づいて当然の違和感を見落としてしまった。 そして、突然光り出した本に驚く暇も無く、わたしはその光に呑まれ、気が付けば、 見知らぬ部屋の中央に倒れていたのだった。 「ようこそ、根の国アヴァターへ!」 そんな言葉と共に、始まった教師を名乗る女性の説明。 その言葉を信じるのなら、ここはどうもわたしのいた世界とは違うらしい。 そして、このアヴァターを根幹とする世界は今、破滅なる軍勢の脅威に曝され、 滅亡の危機に瀕しているのだそうだ。 それにしても……。 「……救世主、ね」 ダリア先生の口から出たその言葉に、わたしは思わず内心で溜息を吐いた。 この世界の人々はまだ、そういう特別な何かに縋らなければ、絶望を耐えることも出来ないのだ。 いや、他の世界と比べても仕方のないことだとは分かっているけれど、 わたし自身がそういう感情の対象とされるのかと思うと、溜息の一つも吐きたくなる。 わたしの呟きが聞こえたのか、こちらを振り返るダリア先生に、何でもないと首を振ってみせると、 学園長室に案内するという彼女を促して歩き出す。 ――本当、面倒なことにならなければ良いんだけど。 内心でそう呟きつつ、わたし、神代咲耶は自称教師のダリア先生の後に付いて学園長室へと向かうのだった。 DUELSAVER〜アヴァターに降り立った天使〜 近日…… * * * * * 「……ウィスパード、ですか?」 渡された資料にざっと目を通しながら、わたしは目の前に立つ人物へとそう尋ねる。 「ええ、詳しくはその資料を見てもらえれば分かると思いますが」 決まり文句のようにそう言って、面倒な説明を省こうとしてくれるのは、 わたしの直属の上司であるエミリア=クロフォード。 2000年前、戦争によって滅びた世界を一から立て直した偉大な創始者として、誰もが知っている女性だ。 「軍事関連限定で情報サーキットに接続可能な人間、というわけですか。なるほど、確かに危険ですね」 わたしはわたしで、彼女のそんな態度を気にするでも無く、資料から得た情報を頭の中で整理すると、 そう言って視線で先を促す。この人とも旧世界からの付き合いなので、 大抵のことは言葉を交わさなくても分かるのだ。なので、このやり取り事態、ミッション前の儀礼以上の意味は無い。 「今回は対象が人間なので、極力穏便に事を運びたいわ。 そこで、あなたには現在所在が判明しているウィスパードの中で、 最も危険と思われる人物の護衛に着いてもらいます」 「装備と人員は?」 「いつも通り、そちらの判断に任せます。それから……」 * * * 今、世界は再び滅亡の危機に瀕している。 だが、それは戦争や食糧難などと言った内的要因によるものではなかった。 オーバーテクノロジーによる異次元世界からの干渉。 それによって次元間に歪みが生じ、周辺の世界を呑み込もうとしている。 先の大戦で異次元世界の一つから訪れたメッセンジャーによってそのことを知らされ、 それが事実であると確認された現在、わたしたちはそれらの原因を独自に調査し、除去して回っているのだった。 最低限の装備と数人の部下を連れて、わたしは異世界に渡るための転送ポートの前に立つ。 さて、今度はどんな世界が待っているのかしら。 フルメタルエンジェル〜ウィスパード抹殺指令!?〜 遠日…… * * * * * ――夜の森に響き渡る剣撃音。 自身の身の丈ほどもある長大な太刀を振るい、異界より呼ばれたものどもをまた一体、元いた世界へと還す。 そうして何体の異形を葬っただろうか。 わたしこと、桜咲刹那はここ、麻帆良学園の警備員として、その一角の警備を任され、 今宵もその務めを果たそうとしていた。 時折一緒に仕事をする銃使いのパートナーの姿は今は無い。 学園都市の外周を覆う探知結界に引っかかった数はそれなりに多かったが、 わたしの担当する区画はそれほどでもなかったため、一人でも大丈夫だと判断されたのだった。 実際、こうして戦ってみても、相手は有象無象ばかりでまるで歯ごたえがない。 一対多数の戦闘技術を磨く上ではちょうど良いが、それだけだ。 そんな中、わたしは敵の中に一体だけ毛色の違うものが存在していることに気づいた。 人に召還され、使役される存在とは明らかに違う。巨大な狼のような姿をしたそれは、 闇に溶け込むようにして、ずっとわたしの動きを見ていた。 こちらの隙を伺っていたのだろう。危機感を覚えたわたしは、早々に他のザコどもを一掃してしまおうと、 大技を放とうとして、見事にその隙を衝かれることになった。 剣を振り下ろした瞬間、そいつは巨体に似合わぬ俊敏さでわたしへと迫り、鋭い爪を振るってきたのだ。 技を放った直後の硬直状態を狙って振るわれた爪は、衣服諸共、気で強化されたわたしの身体を切り裂き、 攻撃をまともに受けたわたしは近くの木に背中から叩きつけられる。 「かはっ!?」 血を吐き、咳き込むわたしに、怪物は容赦無く追撃を加えようとする。 その動きがやけに遅く感じられ、ああ、わたしは死ぬのだなと、漠然とそんなことを思ったときだった。 はるか上空から降り注いだ無数の光矢が怪物の身体を貫き、瞬く間にその姿を隠してしまう。 爆音も、着弾の衝撃さえも無い。 そして、光が消えた時、そこにいたのはわたしとそう変らない年に見える一人の少女だった。 鳥篭の中の少女たち〜結界都市麻帆良〜 2008年…… 何と今回は三本立て。 蓉子 「一本辺りの量ではなく数で勝負、って事らしいわ」 美姫 「なら、こっちは量で勝負よ。ページにして5000枚を越える大作を」 いや、既にそこまでいくと普通に長編だよな! 蓉子 「まさか、CMのネタでそこまでやるなんて」 いや、まだやるなんて一言も言ってないし! 時間的に無理だろう! そんな短時間で書けたら記録だよ! 美姫 「新記録への挑戦、いってみよう!」 って、絶対に無理だから! 蓉子 「それじゃあ、CMで〜す」 勝手にCMにいかない! 美姫 「まったくチャレンジ精神が足りない奴ね」 蓉子 「本当につまらないわ」 美姫 「はぁ」 何でそこで、「やれやれ仕方ないな、こいつは」って空気になっているんだよ! 俺か!? 俺が間違っているのか!? 美姫 「書かないバカはただのバカよ」 それって書いても書くバカになるだけで、バカの称号は取れないんじゃ……。 美姫 「よく分かったわね」 蓉子 「まあ、バカというのは事実だから仕方ないんじゃないの?」 うぅぅ、左右からステレオで毒舌が。これ、何て地獄だよ……。 うがぁぁぁっ! もうもうもう! 美姫 「煩いわね」 蓉子 「本当に迷惑ね」 う、うぅぅうわぁぁん! 美姫 「散々弄り倒したことだし」 蓉子 「まだまだ物足りないけれど、そろそろ」 美姫&蓉子 「CMにいってみよ〜う」 フィアッセ・クリステラとティオレ・クリステラが夢であった親子競演をしたコンサートから四年。 それは世間に公表されていない、なかった事件からも四年経過した事を意味する。 そして、事件は再び待ち構えていたかのように幕を開ける。 「ティオレ・クリステラ最後の遺産」を巡る事件が……。 一通の脅迫状がCSS校長となったフィアッセの元に届いたのは、夕刻も差し迫ろうかというそんな時刻であった。 要求として抱えている最後の遺産に心当たりのないフィアッセは、 幼馴染にしてマクガーレンセキュリティ社のエリスへと連絡を入れる。 同時にもう二人の幼馴染にも。 香港警防隊――法の番人、非合法ギリギリの実力主義の団体として裏では有名な組織。 その組織が訓練場所として利用している廃墟に今、一人の少女が目を閉じて立っている。 辺りは薄暗く、少し埃臭いがそれを意に返さず、まるで見えない手を周囲に伸ばすかのように、ただじっと。 元がどんな事に使われていたのかも分からない、剥き出しの壁に床の部屋の中で外の様子を窺う。 気配を感じ取り、扉の前に男が四人立った事を感じ取ると、少女は手にしていた反りのある剣を静かに抜き放つ。 日本刀と類される刀を手に持ち、タイミングを計るかのように小さく身体を上下させる。 扉の向こう側で一人の男がドアノブに手を掛け、静かにゆっくりと回そうとした瞬間に少女は駆け出す。 最初の一歩目から既に早く、あっという間に扉の前に辿り付くとまだ開いてもいない扉へと力いっぱい蹴り放つ。 扉を開けようとしていた男は、内側から急に勢いよく開いた扉に鼻柱を強打されて思わずのけぞる。 その喉元に少女の手にした刀の柄が叩きつけられ、そのまま地面に倒れる。 それをろくに見ることもせず、少女はすぐに次の行動へと移っており、 ようやく獲物が飛び出してきて攻撃してきたのだと認識した他の男たちが銃を構えて発砲する。 だが、すでに少女はその身を低くして銃弾の軌跡からは身を引いており、弾は誰もいない空間をただ穿つのみ。 慌てて照準を合わせ直す男の懐に潜り込み、柄頭で脇腹とあばらの間を痛打し、 同時に襟元を掴んで他の二人の銃弾から身を守る盾にする。 引き金を躊躇う男たちへと掴んだ男を投げ飛ばし、その陰から残った二人に斬りかかる。 一撃の下に残る男たちの意識も刈り取ると、少女はようやく小さな吐息を零す。 首の後ろで一つに纏められた髪がそれに合わせて小さく揺れる。 ふと息を抜いた少女の視線の片隅、階下へと続く階段に動く影を見つけてそちらへと身体を向ける。 同時に飛び出してくる四人の男たち。既に照準は少女を捉えており、 少女は覚悟を決めたように前進をしようと足に力を込め、そのままその場に立ち尽くす。 男たちの背後から新たな影が現れ、それに男たちが気付く間もなくその合間を縫うように影が動く。 僅かに差し込む光に反射し、綺麗なプラチナブロンドが一筋の線を描く。 目を奪われるような光景にそぐわず、影が通過した後男たちは地面へと倒れていた。 それを成した目の前で長刀を手にした人物を見て、少女は詰めていた息をもう一度吐き出す。 「油断大敵だよ、悠花」 「す、すみませんリノアさん」 少女――悠花は助けてもらった礼を言いつつリノアと合流する。 「これでこちらに来た人たちは最後ですよね」 「ああ。後は恭也と美由希が隠れた方に向かったから――」 言いかけたリノアの言葉を遮るように、二人が持っていた無線が音を立て、 そこから美由希の声で本部を制圧した旨が伝えられる。 「どうやら、私たちの勝利みたいだな」 「やっと終わった〜」 リノアの言葉に悠花はようやく本当に気を緩ませ、疲れたように首を軽く回す。 その様子に苦笑を浮かべ、リノアが恭也たちと合流するべく歩き出すのを見て、慌てて悠花もその後を追うのだった。 「フィアッセからイギリスへの招待が来ているんだが……」 「わー、良いんじゃない恭ちゃん。今日で鍛錬も終了なんだし日本に帰る前に久しぶりにフィアッセに会おうよ」 ホテルの恭也の部屋に集まり、雑談などをしていた時、会話が途切れた頃に恭也が口にした話題。 それに真っ先に反応したのは美由希で、純粋に嬉しそうな顔をする。 悠花も控え目ながら、姉のように可愛がってくれたフィアッセと会いたそうにしているのは態度でバレバレである。 何でもないように装い、他の者の意見に任せるとばかりに腕を組んでいるものの、リノアも反対する様子などない。 三人ともが久しぶりの再会を楽しみにしている中、恭也は水を差すようで申し訳ないがと続ける。 「俺たちがここで鍛錬している事を、それが今日終わる事もしった上で、装備一式も一緒にという事だ」 恭也の言葉に三人の目付きが変化する。 戸惑うように、けれども不安な顔で見詰める悠花と強張った表情を見せる美由希。 対し、リノアは目を僅かに細めただけで何も口にしない二人に代わって発言する。 「それは何かあったという事か」 「分からない。詳しくは向こうについてからとしか言わなかったからな。 だが、声の調子からすると何かあったと見て良いだろう。その上で俺たちを頼ってくれた」 「まさか、また四年前みたいに」 「そらはまだ分からない。ただ、一応は用心するに越した事はないだろうな。 そして、もしもその通りの事が起こっているのだとしたら……」 それ以上は言わずとも、とばかりに三人は強く頷いて見せる。 大事な家族を守るのに理由はいらない。 闇が再び迫るというのならば、全力でそれを阻むだけ。 無言ながらも四人は共通した思いを胸に秘め、イギリスへと旅立つのであった。 「これだけは言っておく。私たちの仕事の邪魔はしないでくれ」 久しぶりに再会した幼馴染エリスから浴びせられる強烈な言葉。 だが、恭也たちは独自にフィアッセを守るために動き出す。 その行動に腹を立て、両者の溝は広がっていく。 それに胸を痛めるフィアッセを他所に、事態は更に大きく発展していく。 「最後の遺産に加え、コンサートの中止だと!?」 更なる要求に人員を増やして対応に当たるエリス。 だが、それをあざ笑うかのように警備の隙を突いて直に届けられる脅迫状。 そして、背後に見え隠れする組織の影。 観客全てを人質とした更なる脅迫。 「美沙斗さんと架雅人の二人が助っ人として来てくれるらしい。 とは言え、一人一人に付いて全員を守るという手段は取れない」 「となれば、私たちのやるべき事一つだな」 「ああ。守るために攻勢に出る!」 果たして、無事にコンサートは終了するのか。 そして、残された最後の遺産とは。 とらいあんぐるハート〜Sweet Songs Forever〜 X マリアさまはとらいあんぐる〜2nd〜 『双翼と双銃の戦歌』 近日? エリスはかなりツンツンというパターンで! 美姫 「単にそれが書きたかっただけじゃない」 蓉子 「その割には全然、恭也とエリスが絡んでないわね」 ……おおうっ! しまった! せめて、せめてエリスに「うるさい、うるさい、うるさい!」とか言わせるんだった。 美姫 「それ何か違うから」 いや、イメージ的にそれぐらい反発しているという事で。 蓉子 「それは兎も角として、時間は大丈夫なの?」 おう、まだまだ大丈夫……だよ? 美姫 「何で疑問系なのよ」 いやいや、思ったよりも時間がないなと。 まあ、話になるようなネタも特に今のところはないしな。 延々と花粉症について愚痴れというのなら、話は別だが。 美姫 「誰も聞きたくないって」 そうか。なら―― 蓉子 「メイドの話もいらないわよ」 ……お、俺に何を話せと。 美姫 「いや、無理に話さなくても良いから」 蓉子 「早々、黙っていれば良いのよ」 美姫 「そうすれば、私と蓉子ちゃんで作者にするお仕置き百選をしてあげるから」 や、やめれ! 聞いているだけで震えが収まらないような気がするから。 蓉子 「なら、萌える作者へのお仕置きとか」 いやいや、萌えれませんから! 美姫 「昨今風にしてあげたのに、本当に我侭ね」 蓉子 「本当に美姫さんも苦労しますね」 美姫 「分かってくれる? もう本当に大変なのよ」 いや、むしろ大変のは俺の方じゃ……。 蓉子 「美姫さんの頑張りあればこそですね」 美姫 「そうなのよ。なのに、このバカときたら感謝どころか文句ばかりで」 蓉子 「何て酷い奴なのかしら」 う、うぅぅ、泣いても良いですか? というか、やめやめやめい! ほらほら、もう時間時間! さっさと終わるよ、もう! 美姫 「本当に横暴ね」 蓉子 「か弱い私たちを力尽くで黙らせるなんて」 はぁ!? どこの誰がか弱い!? 俺の聞き間違いですか? それとも言い間違い? 美姫 「本当に学習能力のないバカだこと」 蓉子 「ええ、本当に」 ……あは、あはははは。 やっぱりこうなるのかよ! ぶべらぼげぇっ! 蓉子 「でも、本当にそろそろ時間みたいですよ」 美姫 「みたいね。それじゃあ、今週は――」 こ、この辺で……。 美姫&蓉子 「また来週〜」 |
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3月7日(金) | |||||||||||||
美姫 「美姫ちゃんの〜」 ハートフルデイズ〜 美姫 「はっじまるよ〜」 <この番組は、PAINWESTの雑記コーナーより、寒くなったりならなかったり、とお届け中!> という訳で今週も例によって例の如く始まってしまった訳だが。 美姫 「何よ、その不満そうな口ぶりは」 いえいえ、何でもないですよ。 美姫 「早いものでもう三月ね」 だな。もう既に鼻と目に花粉症らしき症状が。 とうとう今年も始まるんだな、魔の時期。 美姫 「本当に大変ね」 あはははは〜。もう笑うしかできないよ。 はぁぁぁ、憂鬱だ。 美姫 「本当にご愁傷さま」 にしても、気温はまだまだ寒かったりするよな。 まあ、俺としてはその方が嬉しいから良いんだけれど。 美姫 「でも、段々と温かくなっていくでしょうね」 はぁ、冬ももう終わりか。 さらば、冬。約一年後にまた会おう! 美姫 「そして、ようこそ春」 いや、そこは歓迎してないんだけれどね。 美姫 「春を歓迎しないのって、珍しいんじゃないの」 花粉がなければな〜。 美姫 「アンタの場合、冬以外は駄目じゃない」 はっはっは。まあ、この話題はいい加減もう良いとして。 美姫 「SSは進んでないしね」 失礼な。ちょこちょことちゃんと書いているぞ。 と言うか、書きたいという気持ちはあるんだよ。ただ時間が、時間が〜。 美姫 「はいはい、それはもう聞き飽きたわ」 本当なのに……。 美姫 「それじゃあ、そろそろCMに行こうかしら」 へいへい。それでは、 美姫 「CMで〜す」 一日の授業が全て終了し、恭也は鞄を手にすると帰宅するために立ち上がる。 教室の扉を開けた恭也の後ろから、忍が同じく鞄を手に持ち追いかけて来ながら話し掛ける。 「恭也〜」 「どうかしたのか?」 「この後――」 「恭ちゃん」 忍が言いかけた言葉を遮り、廊下側から開いた扉に手が伸ばされ恭也の腕を掴むと教室から引っ張り出す。 蹈鞴を踏みつつも廊下へと出た恭也は、腕を突然引っ張った相手、美由希を見下ろす。 「行き成り何をする」 「だって恭ちゃんが教室から出てこようとしているのが見えたから」 つまり、美由希は恭也が教室に出ようとするよりも前に廊下にいたと言うことだが。 ともあれ、美由希は恭也の腕を、自身の胸の形が服の上からも歪んでいるのが分かるぐらいに強く抱きしめ、 おねだりするように逆に恭也を見上げる。 「恭ちゃん、今日家に帰ったら一本付き合って。何となく貫のイメージが掴めそうなの」 「ほう、意識して貫を」 感慨深そうにそう零すと、先程から恭也の隣にいた忍を思い出して声をかける。 「そう言えば、忍は何か用か? さっき何か言いかけていたようだが」 「あ、ううん、何でもないわよ。それよりも、美由希ちゃんと鍛錬するんでしょう。 早く帰った方が良いんじゃない? 私は少し寄り道してから帰るわ」 「そうだな。途中まで一緒に帰るか?」 恭也が忍にそう言うと、美由希は恭也の腕を更に強く抱き寄せる。 その一瞬だけ美由希の表情から感情が全て消えて仮面のような顔を覗かせるが、それには誰も気付かなかった。 「それじゃあ、途中まで一緒に」 「ああ。と、美由希、そろそろ腕を離せ」 「えー、良いじゃない。早く帰ろうよ、ほらほら」 恭也の腕を引っ張り、下駄箱へと向かう美由希。 尚も離すように言うが、美由希は聞く気はないとばかりに強引に引っ張っていくのだった。 鍛錬を終えた美由希は風呂から上がるとキッチンに顔を出す。 だが気配は消し、夕飯の支度をするレンの後ろ姿をじっと見詰めたまま動かないし声を掛ける素振りもない。 何処となく虚ろにも見える目で作業をしているレンの背中をただただ黙って見詰める。 「恭ちゃんのお世話は私がするのに……。でも料理はまだ勉強中だから仕方ないよね。 恭ちゃんのためだもの、我慢しないと。……そうだ、恭ちゃんの背中を流してあげよう。 きっと喜んでくれるよね恭ちゃん」 レンから視線を外すと、美由希は自分と入れ替わりに風呂に入っている恭也の元へと向かう。 その顔は既にいつもの美由希と変わらず、先程キッチンで見せていたのが見間違いではないかと思うほどである。 脱衣場で服を脱ぎ始める美由希に気付き、恭也が風呂場から話し掛けてくる。 「どうかしたのか、美由希」 「何でもないよ」 恭也が気付いて上がる前にと素早く衣服を脱ぎ捨て、衣類をそのままに戸を開け放つ。 慌てて顔を背ける恭也に構わず、美由希は平然と言う。 「恭ちゃん、背中を流してあげるよ。ほら、こっちに来て」 「いい、いらん」 「遠慮しなくても良いんだよ」 「そうじゃなくて。ああ、もう俺はあがるから」 「あ、待って」 素早く美由希の腕をすり抜けて風呂場を後にする。 残された美由希は恭也の出て行った扉を呆然と見詰め、 「酷いよ恭ちゃん。こんなにも恭ちゃんの事が好きなのに。 ……そうか、皆がいるから恥ずかしいんだね。だったら夜中なら良いよね。 それなら恭ちゃんも喜んでくれるよね」 自己完結すると美由希もまた風呂場を後にするのであった。 夕食の席でも美由希は何かと恭也に話し掛け、恭也が少しでも他の子と話すと途端に剥れたような顔を見せる。 尤もそれに気付いているのは恭也だけだが、恭也は恭也で何故そんな顔をするのか分からずに首を傾げる。 様子が可笑しい美由希に話し掛けると、途端にさっきまでの態度が嘘のように嬉しそうに言葉を返してくる。 故に段々と気のせいかと思い始めるのだが、晶やレン、なのはと話をするとやはり拗ねたような顔になる。 食後は食後で、話の流れから恭也がなのはを褒めて頭を撫でれば、 「恭ちゃん! 私にもやって」 「……お前の何を褒めろと」 「うぅぅ、なのはばっかりずるいよ!」 言って怒りながら恭也の腕にしがみ付く。 「やっぱり邪魔だよね」 そう小さく呟かれた言葉を恭也は偶々聞いてしまう。 その一瞬に見せた美由希の光の灯らない瞳を見て、恭也は背筋に悪寒を感じる。 「美由希?」 「うん、何々?」 だが、恭也がやや強張った表情で声を掛ければ、嬉しそうにいつものような顔で見返してくる。 さっきのがまるで嘘だったかのように。 実際、こうして今見ている限りではおかしな所はなく、きっと気のせいであったのだろうと恭也は納得する。 だが、その直後、恭也に甘えるように抱きついたなのはを見る美由希の視線に再び悪寒を感じる。 それは妹に向けるようなものではなく、まるで親の仇を見るような眼であった。 恭也が見ていると感じたのか、美由希はなのはから恭也へと視線を変える。 「どうかしたの、恭ちゃん。そんなにじっと見られたら恥ずかしいよ。 あ、勿論、見てくれるのは嬉しいんだけれどね♪」 またしても気のせいかと思う程に普通の目に戻っている。 だが、何かがおかしいと恭也は感じる。 ただ、それが何かと聞かれれば言葉には出来ず、上手く表現できないのだが。 とりあえず、当分は美由希から目を離さない方が良いかもしれないと考えるのであった。 あれから恭也は何かあれば、いやなくとも美由希の近くに居るようにした。 結果として、やはり気のせいだったかと恭也は思うようになっていた。 本当に殆ど一緒に過ごしていたのだが、美由希はその間はやたらと機嫌が良く、 あのおかしな目も一度として見ていないのだ。 ただ、他の子、特に女性と話していると拗ねたような怒っているような表情を見せるぐらいである。 恭也は気付いていなかったが、その際相手の女性を見る美由希の眼はやはりどこか薄暗いものと化しており、 それらは大抵、俯き気味で相手を見ているために前髪で隠れて恭也からは見えなかっただけなのだが。 恭也としては何も心配ないと判断して、前のように行動し始める。 それを感じ取り、美由希は何かと恭也に近づくのだが、今日は翠屋で手伝いをするからと引き離されてしまっていた。 一人家に帰って部屋に戻ると、美由希は床に座り込み、何をするでもなくただぶつぶつと何事かを漏らす。 「どうして、恭ちゃん……。急になんで冷たくするの。 ……あははは、もしかして浮気してるのかな。そんな事ないよね。 だって、私はこんなにも恭ちゃんの事を愛しているんだもん」 いつの間にか手にした小太刀の手入れをしながら、 美由希はここではないどこかを見ているかのように虚空に視線を向ける。 薄暗い部屋の中、窓から差し込んだ光に反射する刃に己の顔を映し込み、美由希は暗く哭う。 「恭ちゃん、恭ちゃん……」 その声を聞く者は幸いにも誰もいなかった。 美由希の狂想歌 うーん、ヤンデレは難しいな。 美姫 「ヤンデレになってるのかしら」 むむ。うーん、どうだろう。やっぱり難しいや。 さて、それはそうと最近、迷惑メールが増えてきているんだよ。 美姫 「そう言えばそうね」 だろう。で、この間、式がメールしてきたんだけれど、俺は受け取った覚えがない。 美姫 「ああ、間違って削除したのね」 まあ結論を言うとそうなんだが。 だけどな、アドレスを変更して、それを知らせるメールの件名を英文で書くってのはどうよ。 迷惑メールと思っても仕方ないべ? 美姫 「ま、まあ、それはそうかもしれないけれど。何でもまた英文で?」 いや、実際は英分じゃなくて日本語入力になってなかっただけみたいでな。 まあ、本文の方はちゃんと日本語だったらしいんだが。 美姫 「運が悪いというか、それは本当にご愁傷さまね」 いや、もう英語を見るだけで拒絶反応が出る俺にそんなのを送ったのがミスだな。 美姫 「つまり、頭の悪いアンタが悪いと」 あ、そういう結論になるんですか。 美姫 「何か違う?」 う、うぅぅ。うわぁぁ〜ん。 美姫のオタンコナス! 美姫 「何ですって!」 ぶべらっ! 美姫 「まったく、このバカは」 ご、ごめんなさい……。 美姫 「ほら、アンタのつまらない話で時間がなくなったじゃない」 オウ、ジーザス。 美姫 「はいはい、バカな事はもう良いって」 分かりましたよ! それじゃあ、今週はこの辺で。 美姫 「また来週〜」 |