2009年1月〜2月
2月27日(金) |
美姫 「美姫ちゃんの〜」 ハートフルデイズ〜 美姫 「はっじまるよ〜」 <この番組は、PAINWESTの雑記コーナーより、早いもので、とお送り中!> 驚く事なかれ、なんともう二月も終わり! 美姫 「いや、別に分かっているし」 なにぃっ! 俺なんて、今日改めてカレンダーを見て、おおうとか思ったのに。 美姫 「それはそれで問題あるような気もするけれどね」 いやいや、こう改めて眺めてだよ。別に日付の感覚がないとかじゃないぞ。 美姫 「まあ、そういう事にしておいてあげるわよ」 まあ、まさ寒いけれど春らしいものもちらほら、どころか結構見かけるな。 美姫 「そういえば、鶯が鳴いていたわね」 風情があって良いな〜。 でも、俺は春を感じるよりも……。 美姫 「花粉ね」 おう。今週辺りから酷くなりつつある。 おおう、目が、鼻が! 美姫 「ああ、映像がなくて良かったわね。とてもじゃないけれど、正視できないわ」 そこまで酷くねぇよ! 美姫 「知らぬは本人ばかり……」 いや、本当にそこまで酷くないよね、ね。 美姫 「さーて、それじゃあCMいってみよ〜」 ねぇ、ねぇってば。 「タケルちゃん……」 そう呟かれた小さな声、否、声にすらならないただの思考。 全てを見詰め続けてきた悲しみを込められた声は、しかし誰の耳にも届かない。 薄暗い部屋の中、シリンダーの中に納まった脳髄ではそれも仕方のない事。 本来なら彼女の思考に変化があった事を感知できる少女は、今この場おらず、やがてその思考も徐々に薄れていく。 だが、彼女の武を求める思いはそれこそ世界を超えるほどに強いもので、恩師の死と言う現実を前に、 この世界から逃げ出したはずの武を意識してか、無意識でか、とにかくトレースしていた。 残念ながら、元の世界へと流れ落ちた因子により、武は全てを忘れて平穏な日常へと戻る事はできず、 親しい者たちから忘れられ、恩師や幼馴染に起こった悲劇に絶望し、自ら命を絶つその瞬間までを全て視ていた。 その結末に絶望を抱き、再び思考が閉ざされ、唯一つの想いだけを繰り返す。 それが再び武をループさせる事になるなど、当の脳髄の持ち主にも分かるはずもなく。 ただ、武が絶望しないで済むようにという願いのみを抱き、再び会える事をただ思うのであった。 「……」 確かに自分は死んだはず。 そんな思考を成す時点で、自分がまだ生きているのだと実感し、武は気だるげに身体を起こす。 もしくは、ここが天国、いや、地獄なのかもしれない。 そんな取り留めない事を思いつつ周囲を見渡せば、そこは地獄と言うには相応しくないほど、 とても慣れ親しんだ自分の部屋であった。 一体何が起こっているのか。そんな混乱する頭で考えるも、あれを到底夢と思う事は出来ず、 武はのろのろとした動きで私服に着替えると外へと出て言葉を無くす。 荒廃した街に、隣家へと倒れ伏す巨大な人型ロボット――戦術機。 考えたくはない思いが武の脳裏を駆け巡る。 「は、ははは……死ぬ事すら許されないのかよ」 あまりの出来事に武の声はただ笑う事しか出来ず、乾いた声でそう吐き捨てる。 思わずこの世そのものを恨みそうになるが、せめてもの救いは時間が戻っている事で、 元の世界の時間も戻っているだろうという何の根拠も確認もできない推測のみである。 どちらにせよ、またあの日に戻ったのだとしたら。 そこまで考えて武は頭を振ると廃墟の中を歩く出す。 その行き先は横浜基地とは正反対であった。 「……ここは?」 見渡す限りの闇。そこで意識を取り戻した恭也はこれが夢だと理解する。 そんな恭也の前方に小さな光が灯り、徐々にそれが闇を振り払うように大きくなっていく。 思わず目を閉じた恭也であったが、眩しさを感じる事もなくゆっくりと目を開く。 すると、目の前に一人の少女の姿が。 寝癖なのか、頭からぴょろんと飛び出た一房の髪が特徴的な大きなリボンをした少女。 恭也の記憶にはない少女の出現に、夢だと判断したはずの思考が揺らぐ。 当惑する恭也に構わず、目の前の少女は屈託ない笑顔を見せて恭也へと話しかけてくる。 「突然ですけれど、並行世界って信じますか?」 「……」 少女の問い掛けに少し考え込み、恭也は何も語る事無く背を向けると改めて周囲を見渡す。 「ちょっと、ねぇ聞いてよ。お願いだから無視しないで〜。 わぁ〜、失敗した〜。まさかタケルちゃんと同じような性格の人だったなんて!」 背を向けた恭也の肘辺りを引っ張り、注意を引くも無視され、とうとう喚き出す少女。 間違いなく褒められていないと理解しつつ、恭也は自分の態度が原因だとも理解していたので、 仕方なく少女へと向き直り、 「すみませんでした。 ちょっと突然の事態に軽く混乱してしまって、ここが何処なのか確認しようとしただけです」 「じゃあ、無視した訳じゃないんですね」 「え、ええ」 「そっか。あー、良かった。 そうだよね、タケルちゃんみたいな性格の人がそうそう居るわけないよね、うん」 言っている事の意味は多少は分かるが、とりあえず恭也は目の前の少女は人に騙され易いタイプだなと判断する。 とは言え、恭也の言葉に本当に安心している女性、それも初対面のはずの人を前に意地悪をする気もなく、 とりあえずは今、自分が置かれている状況について説明を求める。 それに対し、少女はもったいぶるでもなく、明るい口調のままで説明を始める。 「まずここが何処かという事だけれど、私にも分からない」 「……えっと」 「で、次にここにあなたを呼んだのは私」 「どうやって」 「実はお願いしたい事があったの。何であなたなのかというと……」 「ちょっと待ってくれ」 こちらが口を挟む間もなく立て続けて語られる内容に混乱しつつもストップをかける。 キョトンとした顔を見せるも、少女は恭也の言葉に口を閉ざす。 ようやくまともな会話が出来ると、恭也はもう一度質問をぶつける。 「どうやって俺を呼んだんですか」 「うーんとね、こう、こんな感じで?」 腕を降って釣り竿を引っ張り上げるようなアクションを見せるも、当然ながら納得できるはずもなく、 だが、当の少女は嘘を吐いている様子は欠片もない。 「よく分からないんだけれど、タケルちゃんを助けてくれる人を探して、 その中で一番呼びやすいのがあなただったの」 まだ納得いく説明ではないが、その辺りの説明を求めるのは諦め、大人しく少女の話を聞くことにする。 すると、少女はこれまでの態度とは打って変わり、静かな、物悲しい表情でぽつりぽつりと話し出す。 BETAという地球外生命体に襲われている世界の存在。 その世界へと呼び出し、何度もループさている異世界の幼馴染の少年の話を。 「でも、今回のループは今までと違っていてタケルちゃんも頑張ってたんだよ。 だけど……」 言い辛そうに淡々と起こった出来事を話していく。 教官が目の前で殺され、元の世界へと帰ったこと。 そこで起こった事件に事故。そして、自らの命を絶ったことを。 「でも、タケルちゃんはまたあの日に戻る事になると思うの。 だから……」 「つまり、俺にその白銀武という人物を手助けしろと」 恭也の言葉に頷く少女であったが、恭也としてはそんな事が出来るとはとても思えなかった。 とは言え、ここまで話を聞いて捨てておくと言う決断も取り辛く。 「分かりました。引き受けましょう」 「本当!?」 「ええ」 「本当の本当に?」 「そうですって」 「あ、ありがとう!」 恭也の言葉に嬉しそうな笑みを浮かべる少女。もし断られれば、他の者を探そうとしていたらしい。 とは言え、そう時間もないとの事だったが。 「とりあえず、私も大した力がある訳じゃないみたいなんで、さっさとやっちゃおう」 「いや、その前に一言家族に言っておかないと」 「それなら大丈夫。全てが終わったら、元の世界の同じ時間に戻れるから。 という訳で、もう良いよね。私の方もそろそろ時間的に余裕もないみたいだし」 「分かりました。と、その前にあっちの世界で俺はどういう立場になるんですか?」 「さあ? とりあえず香月博士に会いに行けば良いと思うけれど。 とりあえず、戸籍とかもないし……」 「……いや、そんな投げっぱなしな! あなたは忍か!」 思わず恭也をもってしても、初対面の少女にきつい言葉を投げてしまう。 が、その少女は申し訳なさそうな顔をするのみ。 「ごめんなさい。でも、私はここでの事は多分、覚えていないと思う。 向こうの私は脳髄だけの状態だし。それに戸籍やそんなのは弄れないから。 でも大丈夫だよ、香月博士ならきっと何とかしてくれるはずだから」 そう言うと、少女は信用されるためのものを幾つか教えてくれる。 「それじゃあ、もう時間だから……。タケルちゃんをお願いします」 最後はとても真摯な顔で真剣に頼み込んでくる少女を見て、恭也は仕方ないと腹を括る。 「それだけ、その白銀という者の事が好きなんだな」 「っ、あう、あぁっ、う、うん……。って、何言わせるのよ!」 思わず出たパンチの予想以上の早さにそれを喰らい、恭也は思った以上に重いパンチに少なからず驚く。 が、それに対して文句を言う前に自分の身体が光始める。 「なるほど、原理は分からないがこれで移動するのか」 怪奇現象を前に平然と返す恭也に、少女の方が逆に驚いたような顔を見せるもすぐに真剣な顔で恭也を見送る。 最後にもう一度武の事をお願いし、恭也の姿はここから消えて行く。 まさにその瞬間、 「あっ!」 「ちょっと待て、何だその何か間違えたというようなこ――」 恭也の突っ込みも間に合わず、恭也の姿は綺麗に消え去る。 さっきまで恭也の立っていた場所を気まずそうに見ていた少女であったが、 本人も言っていたように時間が来たのか、その姿が徐々に消えて行く。 「……多分、大丈夫だよね。しっかりとした人みたいだったし、うん。 タケルちゃん、さっきの人がもし遅れるような事があっても責めてあげないでね。 でもでも、私の所為でもないんだからね、本当だからね」 大人しく消えていくかと思いきや、誰もいないはずなのに必死に言い訳をする少女。 その言い訳は終いには武の過去の暴挙へと及び、いつの間にか一人で怒っている。 そんな状態のまま、少女の姿は完全に消えていった。 鬱蒼と木々が生い茂る森林の中。 このご時世、これだけの自然が残る場所は非常に珍しいが、周囲には街もなければ人の気配もまるでない。 そんな森林の奥深くに身を隠すように暮らしている一人の男がいた。 名を白銀武といい、彼は柊町からここまで逃げてきていた。 どうせ死んでもループするのだろうと自虐的に考え、せめて横浜から離れようとただ足を動かした。 その結果、こうして人気のない森林を見つけ、そこで木の実などを採ってこれまで生き延びていた。 が、既にその目には生きる意志などなく、単に日々を過ごしているという感じであった。 実際、腹が減ると起きて食事をし、また寝る。それを繰り返すばかりの日々を過ごしていた。 そんなある日、腹が鳴って目を覚ました武は適当なものを採ろうと寝床としている洞から出て森の奥へと入って行く。 流石に長い事暮らしていれば、多少入り組んだ特に目印らしきもののない森でも迷う事はなく、武の足に迷いはない。 まあ、生にそれほど執着していない武には、ここに来てすぐの頃から元々そんなものはなかったが。 僅かに覗く空を見上げ、今が夜であることを確認するもそれに大した意味はなく、 ただいつもよりも少し騒がしく感じるだけであった。 そんな武の前に一つの影が飛び出して来て、向こうは前もろくに見ないで走っていたのか、 そのまま武とぶつかり、二人して転んでしまう。 殆ど無意識の行動として、ぶつかってきた影を庇うように武は自分を下にして転ぶ。 「申し訳ございません。急いでいたもので……」 そう言ってこちらを見下ろしてくる顔を前にして、武は実に久しぶりとなる感情をその目に、顔に顕わにする。 「めいや……?」 思わず零れ出た言葉に、武に覆いかぶさっている女性は驚いた顔を見せる。 それを見て、武はしまったという顔をするも、すぐに取り繕い女性の下から這い出る。 「大丈夫ですか。ちょっと知り合いと間違えまして」 目の前に居る人物が冥夜ではないと分かり、 武は無難にやり過ごすためにそう口にすると女性に手を貸して立ち上がらせる。 対する女性は武の手を取り、こちらも既に表情を立て直して礼を口にする。 何か尋ねたそうにしている少女に気付くも、武はそれに気付かない振りをしてこの場を立ち去ろうとする。 「お待ちになってください」 だが女性にそう呼び止められ、武は渋々ながらも足を止める。 「そなたはここで何を」 てっきり冥夜の事を聞いてくるのかと内心で身構えていた武であったが、 正直、今のこの世界では顔を会わせてさえいないので聞かれても困るため、この質問に胸を撫で下ろす。 「単にお腹が空いたから食べ物を取りに来たんですよ」 目の前に居る女性、この国の将軍、煌武院悠陽を前に武は思わず普通に返してしまい、 その反応が新鮮だったのか、悠陽はただ可笑しそうに笑うだけであった。 ともあれ、事態がよく分からず武は無難にこの場を離れる事を決め、挨拶もそこそこに立ち去ろうとする。 そんな武を悠陽は呼び止め、 「申し訳ありませんが、ここから出口まで案内してくださいませんか。 連れの者とはぐれてしまい、道が分からないのです」 面倒な事になったと思いつつ、武はそれを隠して出来る限り丁寧な言葉遣いを心掛ける。 「出口と言われましても、どこを指しているのかが分からないので案内はできません。 お……私もこの周辺に住んでいるとは言え、この森全てを知っている訳じゃないんですよ」 「そうでしたか。それなら、そなたの住んでいる所までで構いません」 その場に置き去ろうとする武の意図に気付かず、悠陽は武の住んでいる街まで連れて行けと頼んでくる。 仕方ないと武は諦め半分に自身の住んでいる所まで案内する。 「ここがそうなんです。すみませんね、街とかじゃないんですよ。 初めに言えば良かったんですけれど、多分信じてもらえないと思ったのでこうして連れてきました」 武の言葉に驚く悠陽であったが、今度はこのような場所で暮らしているという事を謝り出す。 それを遮り、とりあえず武は気になっていた事を尋ねる。 「ところで、今日は何月何日でしょうか。なにぶん、世間と離れているので、全く分からないんですよ」 「今日は十二月五日です」 冗談めかした武の言葉に小さな笑みを浮かべ、応えた悠陽の言葉に武はクーデターを思い出す。 (つまり、今まさに帝都から抜け出してきたという事か) だとすれば、あまり長い事この場に留まらせる訳にもいかないと判断するも、悠陽に言った言葉に嘘はなく、 どちらに行けば良いのかなんて武には分からない。 道案内を出来ずに困っている武に気付いたのか、逆に悠陽が気を使って話しかけてくるという事態にまでなり、 かと言って、大した理由もなく、その話を遮る事も出来ずに時間が過ぎてしまう。 やがて、悠陽は意を決したように冥夜の事について触れてきた。 「先程そなたが口にしていた冥夜というのは、誰かの名前なのですか」 「ええ、まあ。といっても向こうは俺の事を知らないと思いますけれど」 悠陽から話し易いように話しても良いと言われた武は、本当に話し易いようにくだけた喋り方をしている。 その事にまた新鮮さを抱きつつも、悠陽は武の応えに僅かに眉を顰める。 先程の呼び方から、そんな程度ではないと思ったのだが。 今更ながらに不審そうに武を見るも、悪人には見えず、寧ろ何もかも諦めたような朽ちた印象のある目に気付く。 その目を前にして、悠陽は知らず武に近付くとその頭を抱き締め、まるで赤子をあやすかのように穏やかな声を出す。 「何か辛い事があったようですね。私で良ければ話してみませんか。 ここまでの案内のお礼に聞くぐらいなら出来ますよ」 久しぶりの温もりからか、もしくは冥夜とよく似たその人となりからか、武は実に久しぶりとある涙を零し、 誰にも話すつもりのなかった事を、気付けば話していた。 BETAの居ない世界から最初にこの世界にやって来た事から、現在に至るまでの全てを。 それを黙って聞いていた悠陽の目から涙が零れ、慰めるように武の背中を抱いて優しく擦ってやる。 「常人には経験できないような辛い事があったのですね。そなたの悲しみを理解できるとは言えません。 ですが、そなたはいつまでここに居るつもりですか。 今の話を聞く限りでは、そなたにしか出来ない事があるのではないですか」 優しくも厳しい眼差しを向ける悠陽。 その視線を受け止めるように見返すも、武は目を逸らす。 だが、悠陽は武の顔を両手で挟み、それを許さない。 「多くの衛士が仲間を失う辛さを経験しているものです。 私が偉そうな事を言えるものではない事は重々承知ですが、敢えて言わせて貰うのなら、 そなたはその者たちの死を無駄にしています」 悠陽の言葉に何の反論もできず、武はただ黙ってその言葉を聞く事しか出来ない。 だが、徐々にその言葉に瞳に力が戻り始める。 それを見て取り、悠陽はようやく武を離すと優しい笑みを投げる。 「迷いはなくなりましたか」 「多分。 幾ら、今ここでまりもちゃんが生きているからといって、やはりあれがなかった事になった訳じゃないです。 そこまで割り切れません。でも、少なくとも今、ここに居るあいつらの為にも俺はいつまでもここに居られません。 そう思えるようになりました。殿下には感謝の言葉もありません」 「良いのですよ、白銀。私もそなたの力になれたのなら喜ばしい事です。 では、これからのそなたの事について考えましょう。時間が惜しい故、移動しながらにしましょう」 立ち上がる悠陽の後を慌てて追いかけつつ、武は首を捻る。 「これからの事って何ですか? それに何処に行けば良いのか分からないんですよね」 「ええ、その通りです。ですが、同じ場所に居るよりも少しは歩いた方が良いでしょう。 その内、鎧衣が探し出してくれるでしょう」 悠陽の隣に並び、歩き出す武を一度見ると、悠陽はそのまま前を見て続ける。 「これからの事とは、文字通りですよ。 このままそなたが現れてはたちまち不審人物として捕まってしまいます。 ましてや、この世界のそなたは死んだ事になっていると申したではありませんか」 「えっと、途中で殿下と別れて横浜基地へ行こうと思うんですが」 「いえ、もっと早い手段があります。そなたをたった今から、私直属の隠密という事にします」 「ああ、そうすればこのクーデターの終結と同時に……って、殿下の直属!?」 「はい。そうすれば、データベース上の死亡しているのもその方が都合が良いからと言えるでしょう」 「いや、ですけれど、殿下に迷惑が」 「このぐらい大した事ではありません。それよりも、計画の方を宜しく頼みます」 悠陽の言葉に驚くも、武はその行為に甘える事にする。 最初にループしてから今まで何もしてこなかった所為で時間が殆どない状況なのだ。 「鎧衣の方には将軍のみが知る隠密の者が合流したと説明します。 後は全てこちらで手はずを整えましょう」 「何から何まですみません」 悠陽の厚意をありがたく受け取り、武は先程までとは打って変わり、力強く足を踏み出すのだった。 この時点でまだ武は知らない事だが、既に歴史は彼の知るものとは少し変わっていたのである。 彼を何よりも第一に思う、一人の少女によって。 「…………ここは?」 可笑しな夢を見たと思うところだが、やけに鮮明に思い出せる先程のやり取り。 それと今の自分の姿。 寝巻きではなく動きやすい服装に完全装備している状況を見て、冷静にあれが現実であったと判断する。 恭也は改めて周囲を見渡し、今まさに陽が登り始めている事に気付く。 「明け方か。しかし、最後のあの驚いた声は何だったんだ。 とてつもなく嫌な予感しかしないんだが……」 最後の少女の様子を思い出し、嫌な汗を背中に感じる。 それを打ち払い、まず恭也はここからどうするかを決める事にする。 とりあえずは横浜基地を目指さなければならないのだが。 「ここは何処だ? 確か基地の近くで目覚めると言っていたと思ったのだが……」 見渡すもそれらしき物は何も見えない。 益々嫌な予感が現実になりつつあるのを感じながら、恭也は適当に歩き出す。 それから数分後、その予感が現実となるのを知る事となるとはこの時は思いもしない事もなかった。 「どこだ、ここは。まさかとは思うが、時間まで間違えていないだろうな」 ここまで来ればもう嫌な予想が次から次に溢れてくる。 とりあえず、恭也は現状を把握すべくやはり何もない周囲を見渡した後、またしても適当に歩くしかなかった。 恭也は無事に横浜基地へと辿り着けるのか。 「というか、どこに向かっているんだろうな、これは」 果たして、人類の運命は。 muv-heart IF おおう! 鼻がむずむずしてきた。 くしゃみって、出そうで出ない時があるよね。 美姫 「いやー、横で見ていて叩きたくなるわね」 するなよ! お前は鬼かよ! 美姫 「誰が鬼よ!」 ぶべらっ! あ、相変わらず手が早いですね……。 美姫 「ったく、失礼な奴よね」 まあ、それは兎も角、今回はもう時間もないんだよな。 美姫 「いつもよりも早いわね」 まあ、CMがちょっと長くなってしまったからな。 美姫 「まあ、仕方ないわね。それじゃあ、浩」 おう。それじゃあ、今週はこの辺で。 美姫 「また来週〜」 |
2月20日(金) |
美姫 「美姫ちゃんの〜」 ハートフルデイズ〜 美姫 「はっじまるよ〜」 <この番組は、PAINWESTの雑記コーナーより、また寒くなったよね、とお届け中!> いやー、春らしくなってきたと言っていたけれど。 美姫 「ここ数日は急に冷え込んだわね」 ああ。北海道の方では流氷が接岸したらしいぞ。 美姫 「とは言え、それも例年からすれば二番目の遅さらしいわね」 まさに異常気象、なのかな。 とは言え、寒くなる分には俺は嬉しいんだけれどな。 美姫 「アンタはそうでしょうね」 はっはっは。 あまりの嬉しさにコタツで丸くなるぞ。 美姫 「そこは外を走り回る、じゃないんだ」 そんな元気はないよ〜。 美姫 「元気とかの問題なのかしら」 そりゃあ、そうだろう。元気があればそれぐらいできるだろう。……多分。 美姫 「うーん、たとえ元気が有り余っていてもアンタはしそうにもないんだけれど」 奇遇だな。俺もそんな自分を想像できなかった所だ。 美姫 「な、何かどっと力が抜けたわ」 あははは、この程度話をしただけで力が抜けるなど、鍛え方が足りないんじゃないか。 美姫 「アンタの所為でしょうが!」 ぶべらっ! 美姫 「まったくバカにつける薬が欲しいものだわ」 いや、つける薬なら幾らでもあるはず。それが効くかどうかは別として――ぶべらっ! 美姫 「細かいところを突っ込まないで!」 ぶべらっ! な、い、今のは突っ込みなのか……。 美姫 「全くもう。それじゃあ、とりあえずCMいってみよ〜」 え、えぇ! 脈絡ないよな、これ――ぶべらっ! それは久しぶりの休日のことだった。 街へと出掛けた彼女たちはそこで一つの出会いをする。 「スバル、その子が言っていた子ね」 少し先で起こった事故。 そして、レリックの入った箱を引き摺っていた小さな子。 それらの疑問を取り合えず置き、なのははその子を病院へと連れて行くのだった。 「目が覚めた? 名前は分かるかな?」 「……不破恭也」 これが後に戦いの鍵となる一人の少年と、幾多の事件を解決してきた管理局きってのエースとの出会いであった。 「うーん、お兄ちゃんと同じ名前に似た顔立ち。何か分かった事はある、フェイトちゃん」 「残念だけれど、特に何も分かっていないというのが現状かな。 つまり、身内も判明していないって事」 「そっか。それじゃあ、私があの子を保護しようかな」 「それは構わないと思うけれど、恭也くんは何て言っているの?」 「言うも何もまだ何も話してないって。今、フェイトちゃんに話したのが最初なんだから」 「そうだったね」 二人して病院へと向かう途中、そんな話を繰り返す。 ともあれ、こうして迷子の少年恭也はなのはとフェイトの二人を保護者とする事となるのであった。 「不破恭也、五歳です。ご面倒をお掛けしますが、宜しくお願いします」 異世界からの迷子人、不破恭也 「え、えっと、こちらこそ宜しくお願いします。 あの、出来ればお母さんとかママと呼んでくれると嬉しいんだけれど」 恭也を引き取った管理局のエース・オブ・エース、高町なのは 「ご丁寧にありがとうございます。こちらこそ宜しくお願いします恭也。 それにしても、恭也はしっかりしているね」 同じく恭也の保護者となった執務官、フェイト・T・ハラオウン これはそんな親子が繰り広げるちょっとドタバタした日常のお話である。 魔法少女リリカルなのはIf 〜それはちょっとしたエピソード〜 「……はぁ、レリックを埋め込まれて大きくなった恭也を見たでしょう、フェイトちゃん」 「見たけれど……。なのは、何を考えているの?」 「ほら、私たちの世界に源氏物語ってあったじゃない」 「……もしかして」 「そ、そんな目で見ないでフェイトちゃん! だって管理局のそれも教導隊なんて勤めていると出会いがないんだよ」 「出会いなら私よりもあると思うけれど」 「あ、あははは、ほらそれは生徒さんたちだし」 「生徒に手を出す方が、子供に手を出すよりはましなんじゃ……」 「落ち着きい、二人とも。どっちもどっちやから」 将来、こんな会話がされるとか、されないとか。 それにしても、本当に冷え込むな。 美姫 「何よ、嬉しいんじゃなかったの」 いや、勿論俺は嬉しいさ。 と、まあそれはさておき、今月もあと一週間。 美姫 「唐突な話題ね」 いやいや、意味のある話題なんだよ。 最後まで聞いてくれ。 美姫 「そこまで言うのなら聞いてあげましょう」 えっ!? 美姫 「どうしてそこで驚くのかしら?」 いや、いつもなら問答無用とか言い出す――ぶべらっ! 美姫 「本当に失礼な奴よね」 や、やっぱり殴られた。 美姫 「良いから、さっさと言いなさいよ。 うぅぅ、実は……。 美姫 「実は?」 …………どうせ問答無用で却下されると思って何も考えてませんでした! ぶべらぼげろっ! 美姫 「ったく、アンタという奴は」 うぅぅ、ず、ずみまぜん〜〜。 美姫 「何か本当に疲れてきたわ」 またまた〜。 美姫 「誰の所為だと思っているのよ!」 ぶべらっ! お、俺の所為です、はい。 美姫 「ったく、アンタの所為で無駄に時間は使ったわ、無駄な力は使ったわ」 ちょっとした冗談じゃないか。 美姫 「その所為で、もう時間がなくなっているのよ!」 ぶべらっ! あ、あれぐらいで時間がなくなる方がおかし――ぶべらっ! いや、今のは俺が正しいよね――ごばぁっ! だ、だから、お前の突込みとかで必要以上に時間を――ぶぎゃっはっ! 美姫 「他に言う事は?」 あ、ありません。 全て私の責任でした……。 美姫 「ったく、本当にアンタの所為よ。ほら、さっさと締めなさい」 は、はぁい。 それじゃあ、今週はこの辺で。 美姫 「また来週〜」 |
2月13日(金) |
美姫 「美姫ちゃんの〜」 ハートフルデイズ〜 美姫 「はっじまるよ〜」 <この番組は、PAINWESTの雑記コーナーより、暑いような寒いような、とお送り中!> 段々と春らしくここ数日は昼間は暖かい日が続いたな。 美姫 「本当よね」 せめてもの救いは朝夜がまだ寒いことぐらいか。 ぐしゅぐしゅ。 美姫 「いや、春が来たからって泣かれても」 いや、これ花粉――ぶべらっ! 美姫 「紛らわしいのよ!」 そ、そんな事を言っても仕方ないべぇよ。 二、三日前から既に鼻が。昨日ぐらいから目が痒く。 おおう! そんな殺生な。もう少し花粉よ、待って! 美姫 「それで本当に花粉が止まったらえらいことだわ」 昨日なんか、マスクにサングラスという怪しい格好で外に出たんだぞ。 美姫 「本当に怪しいわね」 しかも、偶々警察官とすれ違うという場面があって、何故か無意味にドキドキしてしまった。 美姫 「やましい事があるからじゃないの」 んな訳あるか。 とは言え、花粉はこれから本格的になっていくんだよな。 美姫 「でも、まだ症状的にはましな方よね、今の所は」 まあな。何の慰めにもならないが。 そうそう、花粉と言えば花粉症に効くツボがあると聞いたんだよ。 美姫 「押したの?」 ああ。まあ、いきなり効くわけでもないし、これを聞いた奴が言うには痛いぐらいに押すらしい。 美姫 「そもそも、その押している箇所が正確かどうかも分からないわよね」 まあな。ここと言われても、数ミリや数センチでずれている可能性もあるし。 因みに、そいつが言うには悶絶するぐらいに強く押すと。 美姫 「で、押すのを止めたのね」 いや、正直悩んだけれどな。 痛みに耐えてでも花粉がましになるのなら、と思ったが。 さっきも言ったように正確な場所かどうかも分からないからな。 という訳で、諦めました。 情報そのものはありがたかったんだが、せめてもう少し詳しいツボの位置が分かってれば。 美姫 「って、花粉の話はそろそろお終いにしましょうか」 だな。話しているだけでも、むず痒く感じる。 美姫 「流石にそれは気のせいでしょう……。えい!」 おおう、目が! 美姫 「はいはい、大変ね花粉も」 って、今のはお前の指だろうが! おまっ、何て危ない事を。 美姫 「花粉と指を見間違えるなんて……」 いやいや、幾ら俺でもそこまで間抜けじゃありませんよ。 そもそも花粉を肉眼で確認って、どれだけ精度の高い眼球やねん! 更に言えば、さっきえい! って声上げてたよな! 美姫 「しらな〜い、記憶にな〜い」 ほう、そんな事を言いますか。 美姫 「やろうっての? 今のアンタなら、いつもよりも簡単に平伏させれるわよ」 面白い。いつまでも変わらないと思うなよ! 下克上という言葉の意味を思い知れ! 美姫 「外に出て部屋に戻ったら、アンタの傍でパタパタと服をはたくわよ」 えへえへえへへへへ。ああ、もう美姫さんったら、こんなに肩が凝っているじゃありませんか。 もみもみ、このぐらいの強さでどうでしょうか。 美姫 「あー、いい感じよ。所で、下克上がどうとか聞こえたんだけれど?」 いや、もうきっと気のせいですよ、はい。 ああ、腕もお揉みいたします。 いや、毎日大変ですね〜。 美姫 「うん、バカの所為でね」 …………そ、それは本当にご苦労さまです。もみもみ。 美姫 「さて、それじゃあ恒例のCMにいってみようかな」 そうですね。いきましょうか。 美姫 「あ、CMの間、肩を揉んでなさいよ」 …………も、勿論ですよ。 美姫 「それじゃあ、CMで〜す」 「アレフ、起きなさいアレフ」 窓から差し込む光に目を細め、母親に起こされた少年はゆっくりと目を開ける。 寝起きは悪くないのか、すぐさま身体を起こす少年へと母親は更に続けて言葉を投げ掛けていた。 「お前も今日で十六歳になるのね」 母親の言葉通り、アレフはこの日十六歳となり、同時にそれは勇者と崇められる父親オルテガの後を継ぎ、 アレフもまた旅に出る事を意味する日でもあった。 アレフは身支度を済ませると城へと赴き、王との謁見を済ませると共に旅立つ仲間を求めるべくルイーダの酒場へ。 だが、その途中、城を出てすぐの所でアレフを待っていた一人の少女がいた。 「アレフ、遅い」 「ごめん……って、何かサラと約束していた?」 「うん。魔王バラモス退治の旅の約束」 「…………えぇ!? 付いて来る気なの!?」 城門近くで待ち伏せていた幼馴染の魔法使いを危険だからと説得するのだが、 「大体、買い物も一人でろくにした事ないくせに、アレフ一人で旅になんて出れるはずないでしょ。 本当は面倒くさくて嫌なんだけれど、の垂れ死んだら目覚めが悪いから、仕方なく付いて行ってあげるわよ。 可愛い幼馴染に感謝するのよ!」 そう言われて、結局は押し切られてしまうのであった。 「で、早速北にある……」 「あ、待ってよサラ。その前に仲間を集めるためにルイーダの酒場に行くんだ」 「仲間? 一人で行くんじゃなかったの?」 「違うよ。だから、サラは心配しなくても」 「煩いわね。一度言った事を今更取り消せる訳ないでしょう! それだったら、もっと早く言いなさいよ。ああ、本当に面倒くさいわ〜。 でも約束しちゃったから仕方ないわね、うん」 アレフに何か言わせる暇も与えず、サラはアレフの腕を掴むと引き摺るようにして酒場へと向かって行く。 そこで新たな仲間と出会う事となる。 結局、バラモスという名を聞いて仲間として加わったのは二人だけであった。 それでもこれで充分だと満足そうな顔を見せるアレフに対し、サラはどこか不機嫌な顔をしたまま告げる。 「それじゃあ、改めて北にある村に行きましょうか」 サラの言葉に頷いて返すのは戦士のマチルダだった。 背中に自分の身長と変わらない大剣を背負い、残るもう一人の仲間、僧侶のクレアを見遣れば、 クレアは一人空を見上げて首を傾げていた。 「北……ですか?」 「おおい、どうして空を見上げるんだ?」 「ですから、北」 言って再び空を見上げたクレアに、疲れたような顔を隠そうともせずマチルダはとある方角を指差す。 「北はあっちだ。決して、真上じゃない」 「まあ、そうだったんですか。昔、旅人の方に北は上だと教えられたもので、てっきり」 「どんな旅人だ、それは」 思わず幸先に不安を感じつつ、マチルダはアレフへと視線を投げる。 早く行こうと無言で促しているのだが、それに気付かずアレフはクレアの話を面白そうに聞いている。 「アレフ、いつまでも話してないでさっさと行くわよ!」 二人の間に割り込み、強引にアレフを引き摺って行く。 引き摺られながら、 「待って、サラ。自分で歩くから引き摺らないでよ!」 「って、勇者殿、サラ、二人だけで行こうとするな」 「アレフ様、サラさん、置いていかないでください」 慌てて二人の後を追うマチルダとクレア。 少々不安な旅立ちであったが、これが後に世界を魔王より救うパーティーの旅立ちの日である。 「うわー、ねぇねぇサラ、あれって、なに?」 「キョロキョロしないの! 田舎者かと思われるでしょう!」 ――ちょっと世間知らずな勇者アレフ 「私、他の街に来たのは初めてなんです。 あら、これは見たこともない食べ物ですね」 「って、勝手に食べるな! お金を払わないと駄目だろうクレア!」 「お金?」 ――箱入り僧侶クレア 「アレフのバカ! もう知らないわよ。勝手にしなさい!」 「お、怒らないでよサラ〜」 ――すぐに怒る幼馴染の魔法使いサラ 「くっくっく。まだよ、まだまだ。 怖くないからさっさと掛かってきなさい、魔物ちゃんたち。お姉さんが可愛がってあげるわ」 「……マ、マチルダさん? ゆ、勇者様、マチルダさんが混乱してます!」 ――戦闘になると性格が変わる戦士マチルダ 後の歴史に詳しく記される事のなかったとっても可笑しな勇者たちの冒険は果たしてどんな物語を紡ぐのか。 「大変です、勇者様。この地図、何も書かれていません!」 「クレア、裏表が逆だよ。ほら」 「わぁ、流石勇者様です。所で、地図ってどうやって使うんですか?」 「さあ、僕もよく分からないかな。でも多分、僕たちが居る場所がここだから……」 「アレフ、そこは海だから。地図ぐらいはちゃんと読みなさいよね! 今、私たちが居るのは……って、私たちは三日前からこの森で迷子よ! 詳しい場所なんて分からないっての!」 「…………うん、私がしっかりしないとな」 「マチルダ、今、自分だけがまともだって考えなかった? あなたも充分、変なんだって自覚した方が良いわよ。寧ろ、私が一番まともだと思うわ」 「勇者様、見てください、見たこともないきのこが」 「ああ、本当だ。ねぇサラ、これって食べられるのかな?」 「「……」」 「と、とりあえず二人で頑張ろうサラ」 「ええ、そうね」 果たして、無事に目的を達成できるのか。 ドラゴンクエストV 〜ちょっと愉快な勇者ご一行〜 今日は雨が降ったりやんだりだな。 美姫 「そうね。そういえば、雨の日は花粉が飛ばないって言うわよね」 言うねぇ。けれど、次の日に倍飛ぶともな。 でも、俺は雨の日でも関係なく痒くなるけれどな。 うーん、それでも雨の日の方がましなのかな。よく分からないな。 美姫 「春が来て、ずっと雨だったらどうかしら」 うん、そんな事が起これば異常気象だとまず騒ぐよね。 まずあり得ない。 美姫 「そんなのは分かっているわよ!」 ぶべらっ! ひ、酷いじゃないか。ちょっと突っ込んだだけなのに。 美姫 「じゃあ、私のも突っ込みよ」 いやいや、ボケてないし、突っ込みにしても強いな、おい。 美姫 「あ、もう時間だわ」 って、早いだろう明らかに。 美姫 「今日はいつもより早くお送りしています」 いやいや。って、本当に時間かよ! 美姫 「だからそう言ったじゃない。信じないなんて酷い!」 ぶべらっ! いや、これだけ見たら酷い目にあっているのは俺だよね? 美姫 「そんな事はないわよ。ほら、それよりもさっさとしなさいよ」 へいへい。 それじゃあ、今週はこの辺で。 美姫 「また来週〜」 |
2月6日(金) |
美姫 「美姫ちゃんの〜」 ハートフルデイズ〜 美姫 「はっじまるよ〜」 <この番組は、PAINWESTの雑記コーナーより、昼は結構暖かくなってきたな、とお届け中!> うーん、最近はちょっと昼間は暖かく感じるよな。 美姫 「本当よね。まあ、まだ朝夜は冷え込むけれどね」 俺としてはそっちの方が良いな。 美姫 「世の中、思い通りにはいかないのよ」 いや、まあ、確かにこれに関してはそうですけれどね。 ああ、春が怖い。 美姫 「また始まったわね」 いや、もう毎年思う事なんだから嘆くぐらい許してくれよ。 美姫 「はいはい、好きなだけ嘆くがいいわ。その間にCMに行くとするわ」 よし、思いっきり嘆くぞ! のぉぉ、春よ怖い! と言うよりも花粉が怖い! 冬を永遠に! 美姫 「……って、鬱陶しいわ!」 ぶべらっ! じ、自分がやれって言っておいて……。 美姫 「CMの間にしろって言ったでしょう! この馬鹿が!」 ぶべらっ! や、やっぱりこのパターンなのか……。 美姫 「それじゃあ、CMよ〜」 「…………」 目の前に広がるのは、人の造りし建築物の一つも見えないただただどこまでも広がる平原と遠くに見える裾野。 先程まで居た場所と比較してみても、あり得ない光景に、いや、事態に恭也たちは呆然とするしかなかった。 数秒程そうして呆けていただろうか、やがて一斉に我に返ったように動き出した一同は、 まず最初に一人の女性、月村忍へと視線を向ける。 その目は悪戯を咎めるような視線から、今抱いている疑問を解決してくれるように願う視線と色々である。 「忍、怒らないから素直に白状しろ」 その中から全員を代表するように恭也がそう台詞を吐き出せば、忍はきょとんとした顔を見せた後、 すぐに言葉の意味を理解したのか、怒ったように頬を膨らませる。 「恭也ってば、これが私の所為だって言うのね! と言うか、皆もそこで頷かない! 幾ら私でも一瞬で移動させるなんて無理に決まっているでしょう! 普通に考えれば、フィアッセさんの能力が一番最初にくるでしょう!」 「わ、私にはそこまで大きな力はないよ」 「それにフィアッセの羽は出ていないからな。 だとすれば、こんな事を出来るのはお前だけだと思ったんだが……」 「そもそも悪戯をするのは忍さんというイメージがありますから」 那美の言葉に鋭い視線を向ければ、那美は失言に気付いて美由希の後ろへと隠れてしまう。 「まあ、流石に忍の仕業というのは冗談だとして、ここは何処だ?」 改めて周囲を見渡し、当然の疑問を口にする。 その間、携帯電話を取り出していたレンが液晶画面を見て声を上げる。 「お師匠、ここ携帯電話が通じませんけど」 「あ、本当だ。お兄ちゃん、ここ何処なんだろう」 「くぅ〜ん」 不安そうに近付いてくるなのはと久遠を撫でてやり、恭也は首を捻る。 「見渡す限り、本当に何も見えないな」 「山が見えるぐらいだもんね。本当にここ何処なんだろうね、恭ちゃん これからどうするのかと相談するも、この場に居ても仕方ないというぐらいしか出てこない。 かと言って、どちらに向かうのが良いのかも分からない状況下にあって、忍はそれまで黙っていた従者へと話し掛ける。 「ノエル、どう? 衛星とデータリンクできた?」 「いえ、それがお嬢さま、先程から試しているのですが……」 「うーん、やっぱりハッキングは難しいか」 「いえ、そもそも衛星どころか中継点すら存在していないようです」 忍から零れ出た言葉に深く突っ込まず、恭也はノエルへと更なる説明を求める。 しかし、ノエル自身もよく分からないとしか答えられなかった。 「はぁ、仕方ないか。こうなったら恭也がどっちに行くか決めてよ。 皆もそれで良いわよね」 忍の言葉に恭也以外からは反論はなく、仕方なく恭也は適当な方向を指差す。 「なら、こっちの方に行こう」 「師匠、ちなみにどうしてこっちに?」 「特に理由はないな。敢えて言うのなら勘、か」 ともあれ、こうして一行はようやく動き始めるのだった。 「本当に助かったよ。行く宛てもなく、途方に暮れていた所だったから」 「いえ、困った時はお互い様ですから」 「それよりも、何であんな所を何の荷物も持たずに歩いていたのよ。 それこそ自殺行為みたいなもんよ。偶々ボクたちが傍を通りかかったから良かったものの」 「それが私たちにも良く分かってないんだよ。 今、恭也と忍が街を回って調べてくるって言ってたけれど」 ここに来るまでに見た風景と実際に通った街の様子を見て、誰もが驚きに言葉をなくしたものだ。 そんな中、恭也と忍は先に我に返り、今は情報を求めて街へと繰り出している。 夜に恭也に貸し与えられた部屋に一度集まる事になっているが、何か分かると良いのだが。 少女二人と話をしながら、フィアッセは二人の安否を気にするのだった。 「ずばり、ここは異世界ね」 夜、忍から齎された言葉を聞いても誰も特に驚きを露わにしない。 流石に大よその予想は出来ていたようである。 それを忍も理解しているのだが、それを確信するに至った街の様子や文化レベルなどを話す。 「そして、もう一つ言えば、皆も気付いているとは思うけれど、ここは三国志に限りなく近い世界と考えられるわ。 何せ、私たちが出会った二人からして有名な人物だものね。 けれど、そのお蔭で異世界だと分かったんだけれどね。私たちの知る歴史上の人物は男性。 けれどもここで出会ったのは女性だった。つまり、三国志と非常に酷似した世界って事ね」 忍の言葉に誰もが納得したのを見て、ようやく恭也が口を開く。 「それを理解した上で俺たちはこれからどうするか、という話になるんだが」 「恭也と少し話し合ったんだけれど、この世界の歴史が私たちの知る歴史と似たような流れを辿るとすると……」 「あ、聞いた話から推測すると、今は黄布の乱が終息に向かっている頃だよね。 だとすると、この後……」 本から得た知識で美由希はすぐにこの後に起こるであろう出来事を理解し、恭也を見遣る。 「そういう事だ。とは言え、俺たちの知る歴史通りに進むかは分からないがな。 実際、あの二人がそんな事をするとも思えないし」 「でも、周辺の状況から考えると大きな争いが来るのは間違いないよね」 美由希の言葉に恭也は頷くと、改めてこれからどうするかと問いただす。 「とは言え師匠、俺らには他に行くあてなんてないですよ」 「それにこれだけ恩を受けて何もせんというのも……」 「月さんたち、歴史通りだとどうなっちゃうの?」 そんな感じで話し合った結果、恭也たちはこのままここで世話になるという事になるのだった。 「洛陽に行くのか?」 「はい。要請された以上、このまま放っておく訳にもいきませんから」 「心配しなくても何があっても月だけはボクが護るわ!」 「そうか。月がそう決めたのなら、俺たちは従うだけだ。 ただし、何かあれば真っ先に逃げるんだぞ。詠、もしもの時は月となのはを頼む」 「アンタなんかに言われなくても分かっているわよ。 そもそも始めに月はボクが護るってちゃんと言ったでしょう! まあ、なのはの事はちゃんと任されてあげるわよ」 「恭也さんも無理はしないでくださいね。 それに今回は人助けするだけだから、そんなに心配いらないと思うけれど……」 違う世界である自分たちの世界の出来事と照らし合わせ、これから起こる事を知っている恭也は素直には頷けない。 そもそも、知っている人物と目の前の少女二人が全く結びつかない時点で、今回の件は杞憂かとも思うのだが。 それでも嫌な予感だけは拭えないでいた。 「まあ、それなら良いんだがな。俺はただ菫卓軍の将軍として出来る事をするだけだ。 さて、それじゃあ忍たちにもこの事を話してくる」 そう言い置くと恭也は立ち上がり出て行く。 これからの事を相談するため、忍たちの下へと。 「ふっふっふ。菫卓軍きっての軍師、この忍ちゃんに任せなさい。 さあ、なのはちゃん、フィアッセさん、一緒に策を考えましょう」 「忍が絡むと、途端に策と言うよりも悪巧みと感じられるのは何でだろうか」 「あ、あははは。まあ、私たちは前線で戦うしか出来ないけれどね」 「面倒くさい事は抜きにして、突撃して敵を蹴散らせば良いだけじゃないんですかね、師匠」 「これやから直情馬鹿おサルは。 真っ正直に正面からぶつかったら、おサルは頑丈から問題ないとしても付いて行く兵士がただですまんやろう」 「んだと、てめぇ」 「ああ、晶ちゃん落ち着いて! でもでも、レンちゃんの言うとおりだよ」 騒がしい面々を見ながら、恭也は改めて守るという誓いを胸に抱くのだった。 真・とらいあんぐる無双 うーん、またしても恋姫ネタをしてしまった。 美姫 「本当よね」 始めはなのはかフィアッセを王として乱世を生き抜くために中立国を立ち上げる恭也たちとかいうネタだったのに。 美姫 「その面影のないネタになったわね」 はっはっは。いや、もうびっくりだ。 美姫 「まあ、国を創るなんてそう簡単じゃないしね」 うーん、来週は恋姫から離れよう、うん。 美姫 「果たして、その通りになるかしらね」 まあ、なんせ俺だしな! 美姫 「そうそうアンタだしね」 言った通りになるかなんて分からない! 美姫 「って、自分で言うな!」 ぶべらっ! 美姫 「全く、バカも変わらずよね」 それが取り得です。 美姫 「取り得じゃないわよ!」 ぶべらっ! 美姫 「はぁ、何かどっと疲れたわ」 おお、それはいけない。さあさあ、横になって。 そして、これに着替えて……。 美姫 「って、どさくさにまぎれてメイド服着せようとするな!」 ぶべらっ! うぅぅ、ちょっとしたお茶目じゃないか。 冗談ぐらい理解しようよ。という訳で、ほら着替えて……。 美姫 「って、関係ないでしょうがっ!」 ぶべらっ! 美姫 「何が、という訳、よ!」 ぶべらぼげぇっ! 美姫 「全く、本当にバカだわ、バカ」 じょ、冗談……ぶべらっ! 美姫 「何か言った?」 ご、ごめんなさい。 美姫 「ったく。って、ちょっともう時間が来たじゃない」 おお! 本当に時間というのは過ぎてしまえば早いものだな。 美姫 「アンタがくだらない事ばかりするからでしょうが」 ぶべらっ! 美姫 「後半なんて、メイドの話しかしてないじゃない!」 ぶべらっ! い、いや、俺から言わせればメイドの話なんてしてなくて、寧ろ、俺が殴られてばっかりだったような……。 美姫 「口答えするな!」 ぶべらっ! う、うぅぅ、そんなバカな……。 美姫 「誰がバカよ!」 ぶべらっ! って、待て待て、流石に連続はきついぞ! 美姫 「良いから、さっさと締めなさい」 何か釈然としないが、これ以上痛いのは嫌だから分かったよ。 それじゃあ、今週はこの辺で。 美姫 「また来週〜」 |
1月30日(金) |
美姫 「美姫ちゃんの〜」 ハートフルデイズ〜 美姫 「はっじまるよ〜」 <この番組は、PAINWESTの雑記コーナーより、ちょっと奥さん雪ですよ、とお送り中!> いやー、先週あんな事を言ったのに、まさか雪を見る事になるとは。 美姫 「まあ30分も降ってなかったけれどね」 だな。先週の放送の翌日にちらりと一、二分ほどそれも本当にぱらぱらって感じで降って、 これは雪を見たになるのか、とか悩んだのも束の間。 その翌日には結構、降ったなからな。 とは言え、時間にしてはさっき美姫が言ったように30分もなかったけれど。 美姫 「これまた週の頭に頂いたお便りには、雪が積もったというものもあったわね」 ああ。こっちでは積もってなかったけれど。 でも、まあ雪は見れたかな。 美姫 「そうね。まあ、始めに言ったようにそんなに量は降ってないけれどね」 まあ、何はともあれ見たという事で。 しかし、日が落ちるのも少し遅くなったのかな。 何か暗くなるのが少し遅くなったような気がするんだけれど。 美姫 「そりゃあ、少しは遅くなっているんじゃない」 かな、やっぱり。 ああ、冬が終わるかと思うと残念だよ。 次に来るのが春というのが怖い。 美姫 「春が、じゃなくて花粉が、でしょう」 正確に言うとそうなるな。 うぅぅ、今年は花粉が多いとか噂されているんだが。 もう勘弁してください! 美姫 「いや、私に言われてもね」 そりゃあ、草木にとって花粉を飛ばすのが大事なのは分かるが。 うぅぅ、この話も止めよう。何か鼻がむずむずしてきた。 美姫 「話しただけで!?」 ほら、想像花粉症って言うだろう。 美姫 「聞いた事ないわよ」 うぅ、でも本当に鼻が。 美姫 「はいはい。話題を変えるためにも、ここはそろそろいっておきましょうか」 おねげぇしますだ、お姫さま〜。 美姫 「うむ、よきにはからえ! それじゃあ、今週もCMなのじゃ〜」 永全不動八門。 古より存在する武術を伝える家系である。 まだ剣術と言う形態が生まれるよりも昔、守る為に戦う事を起源として長き歴史の狭間に技を磨き上げた一族たち。 その内、暗殺術、一刀、ニ刀、無手、退魔、権謀術数、護術、隠密をそれぞれお極めんと別れし同門たち。 しからば、その護るものとは何だったのか。 それこそが、八門へと分かれた後もその根底として残されしもの。 即ち、永き時を経ても変わる事無く不動の者を護る者たち――それこそが永全不動八門。 永全不動八門一派・御神真刀流、小太刀二刀術。 時間の流れと共に既に衰退し、消滅した八門の中で唯一残った最後の流派。 だが、御神もまた滅びたとされており、生き残りが居る事を知る者はごく少数だけであった。 その少数の一人として、また永全不動の起こりからすれば当然その事を知る者から秘密裏に連絡が来たのが数日前。 恭也は今、一つの屋敷を訪れていた。 その屋敷の主人を前にし、恭也は一枚の写真を渡される。 そこには一人の青年が写っており、暫くそれを眺めた後、恭也は写真を再びテーブルに戻すと目の前の主人を見る。 「この方がどうかしましたか?」 「越小路博嗣。娘の元婚約者だ。先日、色々あって婚約は解消となったのだが……」 そう言うと主人はその経緯について軽く話して聞かせる。 早い話、娘の如耶に好きな人ができ、その人物と博嗣は剣道で勝負して負けた。 その腹いせに集団で如耶と一緒の所を報復に現れるも如耶により撃退されたのだと。 「つまり、今度は標的がその如耶お嬢様の想い人である早坂からお嬢様そのものに行く可能性があると」 「ああ。まさか、我が不動家の者に対してそのような事をするとは思わなくもないが、万が一という事もある。 暫くの間で良いので頼めんか」 そう言われて恭也は首を縦に振るのだった。 数日後、お嬢様が通う事で有名な聖フランチェスカ学園に恭也と美由希の姿があった。 「はぁ〜、最近まではお嬢様だけが通う学園と聞いていたけれど、本当にこんな学園があるんだね」 「確かにな。しかし、本当に広い学園だな」 「うぅ、迷子になりそう」 二人して学園内にある公園を見渡し、何とも言えない表情をする。 そこへ待ち人たる如耶と章仁の二人がやって来る。 「お久しぶりです、如耶さん」 「久しぶりでござるな、恭也殿と美由希殿もお変わりないようで」 挨拶を交わした後、初対面となる章仁へと簡単に自己紹介を済ませると、本題へと入る。 「既に聞いているかもしれませんが……」 「それがしの護衛と聞いてはいるが、正直そこまで必要なのかと思わんでもない。 少々、過保護過ぎるのではないでござろうか」 「まあ、万が一という事もありますから。 とりあえず、俺は三年、美由希は二年として編入しますので、授業などの間は俺が。 寮では主に美由希が護衛を担当します。早坂さんに関しては丁度、その逆となります」 章仁もそこまでするのかと思ったものの、万が一が起こって如耶が傷付くかもしれないと考えると、 この護衛をされる件を素直に引き受ける事にする。 「でも、なにも俺までしなくても大丈夫じゃ……」 「駄目ですよ。早坂さんは如耶さんの大事な人なんですから。 狙われる可能性もなくはないんですから」 そう言って美由希に注意され、了解した所で後ろから不意に抱き付かれる。 「章仁様〜」 「璃々香ちゃん?」 驚く如耶と章仁とは違い、気配で気付いていた二人は特に驚く様子を見せなかったが、 彼女が誰か尋ねようとして、それが如耶の親戚の真宮璃々香だと気付く。 恭也たちは彼女とは会った事はないが、事前に資料として貰っていた中にあった。 とは言え、そのまま触れずに居るのも可笑しいので紹介をお願いするのだった。 こうして恭也と美由希の護衛の日々が始まるのだが、事態は二人が思っている以上に可笑しな方向へと進んでいく。 「ここは誰、私はどこ? 恭ちゃん、助けて〜。可愛い妹が困ってますよ〜」 見渡す限り何もない荒野で目覚めた美由希はとりあえず叫んで見るが、虚しく声が響くのみ。 幾ら待っても突っ込みも、誰かの返事も返っては来ない。 仕方なく適当に歩き始める美由希であったが、これが間違いだと気付くのにはもう少しの時間を必要とする。 日も暮れ始め、辺りが紅染まる中、美由希は森の中を一人さ迷い続ける。 「う、うぅぅ、お腹も空いてきたし、このまま遭難したらどうしよう。 どうして、森なんかに入ろうなんて思ったんだよ、私のバカ……」 ぼやくも後の祭りである。音を立てるお腹を押さえ、美由希は一人森の中を歩いて行く。 「このきのこ食べれるかな? …………し、素人が下手に手を出すのはやっぱりまずいよね」 偶々見つけたきのこを前に悩むも、食べるのを諦めて再び歩き出す美由希。 と、その前方の茂みがガサゴソと音を立てて揺れ、そこから一匹の犬が飛び出してくる。 「びっくりした。熊かと思った。でも、犬が居ると言う事は近くに人がいるかも」 近付いてきた犬を抱き上げ、僅かな期待を胸に犬のやって来た先を歩けば、 暫くすると恐らくはその犬の名前であろう、それを呼ぶ声が聞こえてくる。 「セキト、どこ」 叫ぶと言うよりも、本当に近くに居るのを呼んでいるような声であったが、美由希はその声の元へと向かうのだった。 「え〜と、呂布ってあの呂布だよね。 あ、あははは、ここは三国志? タイムスリップなんて本当にあるんだ……。 じゃなくて、女の子!? え、ちょ、どうなっているの。と言うか、家に帰してー!」 「落ち着く、美由希。これでも食べる」 「あ、ありがとう。って、もしかして私、ペット扱い!?」 呂布と名乗る少女に拾われた美由希。 当然ながら行く宛てなどもなく、呂布の世話になるのだった。 「……夢ならどれぐらい良かったか」 「残念ながら現実じゃよ。さて、高町といったか。 それでは、朝方に話したようにお主の尋問といこうかの。策殿」 「ええ。それじゃあ、早速だけれど、どうしてあんな所に居たのかしら?」 「あんな所と言われましても、気が付けばここに居たんですが? そもそも俺は何処に居たんですか」 質問に質問で返す形となったが、それには周瑜と名乗る女性が答えてくれた。 ただし、出てきた言葉の殆どが分からないものではあったが。 こうして、恭也もまた自分の居る場所が異世界だと悟る。 それも、自分たちの世界の三国志とよく似た、ただし登場人物が女性となっている世界だと。 「……可能性として考えるのなら俺以外にもこの世界に来ている可能性があるな。 とりあえず、美由希と合流できれば良いのだが。後は、如耶さんと早坂との合流が先だな」 自分のすべき事を考えるも、見知らぬ世界でそれを成すのは簡単な事ではなく、 恭也は孫策の提案を受け入れ、暫くは客将としてその元に滞在する。 「章仁殿、一体何があったのでござるか」 「いや、俺にもさっぱり。と言うか、璃々香ちゃん、そんなに引っ付かないで」 「そんな、私こんなにも心細くて不安なのに。ほら、感じてみてください。 鼓動がこんなにも早く……」 「璃々香殿、何をなさっている!?」 「お姉さま、何も見ての通り、私の不安で揺れる鼓動を章仁様に感じて頂こうと、手を胸に」 「ええい、止めぬかこのような時に!」 三人纏めて同じ場所に居た事に安堵しつつも、章仁はこの騒動に少しだけ、本当に少しだけ疲れた顔を見せる。 二人が言い争っている間に、章仁は落ち着きを取り戻したのか改めて周囲を見渡し、立ち並ぶ家々を見遣る。 「ちょっと変わった建物だな。ここは何処かの町なのか?」 困惑する章仁たちの前に、槍などで武装した兵士たちがやって来る。 どうやら如耶と璃々香の喧嘩を聞きつけてやってきたらしいのだが、そんな事を章仁たちが知るよしもなく、 突然囲まれて武器を突きつけられて戸惑う。 それでも二人を庇うように背中へと隠し、章仁は兵士たちを睨みつける。 「ほら、急にそんな風に武器を突きつけたら怖がるでしょう。 ただの痴話喧嘩のようだし、武器を下ろしなさい」 兵士たちの後ろから女性の声が聞こえ、それに応えるように兵士たちが得物を下ろす。 そうして、三人の前に一人の女性が姿を見せる。 「驚かしてごめんなさいね。私の名前は黄忠。 まずあなたたちの言い分を聞かせてもらえるかしら」 三人の前に現れた女性。 黄忠と話している間に、三人もまた自分の置かれた立場を理解し始めるのだった。 「章仁様、この世界でなら妾が居てもそう可笑しくはないようです。 ですから、是非!」 「うわわっ! ちょっと待って。この世界ではそうかもしれなくても、俺はこの世界の住人じゃなくて……」 「郷に入ては郷にしたがえですわ」 「ええい、おぬし等やめぬか! 今はそれよりも恭也殿たちと合流する事を――」 「それは勿論考えます。とは言え、私たちだけではそうそう街の外に出て探すというのは無理。 なら、私たちは待つしかないではありませんか。 その間に、こうして章仁様との仲を縮めようとしているのです。邪魔はしないでください」 「だからといって、何もしなくてどうする」 「でしたら、お姉さま一人で考えてくださいな。 章仁様は私一人で満足させてみせますから」 「ちょっ、だからやめ……」 「章仁殿!」 黄忠に拾われた三人はとりあえずは平穏な日々を過ごせていた。 「……えっと君たちは」 目覚めた一刀の前に立つ三人の少女たち。 その中の一人が一刀を天の御遣いと言い出す。 こうして、新たな物語が幕を開ける。 真・乙女無双 真・恋姫でネタを考えていて、変わったパターンとしては恭也が南蛮の孟獲の所からスタート、 とかいうのも面白いかなとか思ったんだが。 美姫 「美以の所ね」 ああ。ただ、それだとどうやって大陸に出て行くかなんだよな。 美姫 「まあ、今回は春恋乙女ともクロスさせたしね」 美由希の初期位置を魏にするのも面白いかもとか。 美姫 「そんなこんなでネタを考えている内にこうなったのね」 ああ。さて、CMネタの小話はこれぐらいで。 美姫 「そうね。さて、それじゃあアンタの尋問を」 いきなりだな、おい。しかも、意味分かりませんが。 美姫 「いや、ぶっちゃけると単に私がやりたいだけ」 うわーい、本当にぶっちゃけてるよ。 と言うか、せめて建前はないのか。 美姫 「アンタがぶっ飛ぶところがみたいとか?」 それ、建前じゃなくて本音だよね! 美姫 「いやいや、本音は私が殴りたい、なのよ」 変わらないよ! 美姫 「全然、違うわよ。ほら、主に主語が私かアンタでも違ってるし」 いやいや。 美姫 「そんな訳で、ぶっ飛べ!」 ぶべらっ! こ、今回はかつて無いほどにあまりにも理不尽すぎる。 美姫 「いや、恒例としてやっぱりやっておかないといけないと血が騒いで」 嫌な血だな、おい! 美姫 「さて、これで気も済んだし」 お前だけがな! ったく、って、あれ? もしかして、もう時間とか? 美姫 「その通りよ」 いやいや、後半に関しては納得いかねぇ! 時間ないのなら、余計にぶっ飛ばすなよ! 美姫 「良いから、さっさと締めなさい!」 ぶべらっ! 美姫 「あ、やっぱり普通にトークしていると無理しなくても自然にぶっ飛ばすタイミングあるのね」 つ、つまり、最初の一発は喰らい損……? と言うか、普通にトークしててぶっ飛ばすなんてないよ! 美姫 「良いから、もう時間ないんだって!」 ぶべらっ! ぐぬぬ、そ、それじゃあ、今週はこの辺で。 美姫 「それじゃあ、また来週〜」 |
1月23日(金) |
美姫 「美姫ちゃんの〜」 ハートフルデイズ〜 美姫 「はっじまるよ〜」 <この番組は、PAINWESTの雑記コーナーより、今週末からまた冷え込むよ、とお届け中!> うーん、ここ最近天気が降ったり止んだりだな。 美姫 「アンタは病んだり」 うへへへへ、雨、雨だよ……。って、勝手に人を病んだ人にするな! 美姫 「うーん、病んだでそっちを迷わず口にするアンタもどうなのよ。 普通に病気という選択肢もあるでしょうに」 普通には用はありません! 美姫 「はいはい。さて、今週もこの時間がやってまいりました」 うぅぅ、ちゃんと構ってくれないとウサギは寂しくて死んじゃうんだぞ。 美姫 「誰がウサギよ。まあ、非力な所とか、狩られる立場という意味では……」 うおーい、何気に怖い事を言ってませんか? 美姫 「ふふふ、半狂乱で逃げ回るアンタを追い詰める私……」 うおーい、本当に怖いよ! しかも、半狂乱って、俺は何をされたんだ!? 美姫 「愚かにも浅ましい考えで首と体、それぞれ別方向に逃げるんだけれど、二兎追う者は何て甘いわ。 両方とも捕まえて、それはもう逃げた罰を……」 うぎゃー! 逃げる前に既に首と体はバイバイしている状況ですか!? そりゃあ、半狂乱にもなって死に物狂いで逃げるわ! と言うか、逃げた罰って……、そこに行くまでに何があったんだよ! 美姫 「と、思わず考え込んでしまったわ」 いや、考え込むと言うよりも妄想だよ――ぶべらっ! 美姫 「さて、おしゃべりも良いけれど……」 う、うぅぅ、こ、今週も……。 美姫 「CMで〜す」 スカートの裾を気にしつつ、校舎へと続く道を殊更ゆっくりと歩く一人の少女。 開校は明治にまで遡るというN県で最も古い歴史を持ち、お嬢様が通う事で有名な青美女学院での朝のひとコマ。 ただし、その歩く少女は校内でも有名な少女の一人であるというだけ。 「若光の君」 「舞姫さま」 朝の挨拶を掛けてくる生徒たちにぎこちないながらも何とかそつなく返し、 若光の君という別名でも呼ばれる淡谷舞姫は、やや早足とも取れる速度で校舎ではなく中庭へと向かう。 周囲に人がいなくなったのを確認し、舞姫はようやく一息入れるのだが、そこへ音もなく背後に立つ一人の少女。 「雪国さま」 「ふぇあっ!」 気配も感じさせず、いきなり背後から、それも気を抜いた瞬間に声を掛けられて舞姫、 いや、雪国と呼ばれた少女は胸を押さえながら後ろを振り返り、そこに知った顔を見つけて再び安堵の息を零す。 「な、何だ久我原さんか。驚かさないでよ」 「私ですみませんでした。後、驚かせてしまったようで」 「ああ、そういう意味じゃなくて……」 「冗談です」 表情一つ変える事無くそう言い放つ久我原さゆねに雪国は何とも言えない顔を見せるも、 すぐに気を取り直してさゆねに尋ねる。 「それよりも、何かあったの?」 「いえ、特に何という訳ではないのですが。 舞姫さまと学校を入れ替わり早数日。そろそろお慣れになられた様子」 「うん、まあ流石に少しはね。 とは言え、やっぱり体育とかはまだ慣れないというか、慣れたら終わりのような……」 「私が申し上げたいのは、慣れた頃が一番危ないという事です。 くれぐれも気を付けて下さい。もし、あなたが舞姫さまではなく双子の弟の雪国さまだとばれたら……」 「分かっているよ。僕だけじゃなくて舞ちゃんもただではすまないもんね」 「分かっていらっしゃるのであれば、私からはこれ以上は何も言いません。それではこれで」 そう告げるなり姿を消すさゆねにももう慣れたもので、雪国はただ肩を竦めて空を仰ぎ見る。 舞姫の忍だと自ら言っていたさゆりは、そう宣言したように舞姫第一であるらしい。 そんな事を思いつつ、最早慣れつつあるスカートの裾を掴み、雪国は溜め息を一つ零すのだった。 空舟を騒がす一つの事件があった。 『S・ザ・リッパー』ともあだ名されるソレは、通り魔事件である。 その通り魔事件に一人の少女が遭遇した。 幸いにして一緒に歩いていた婚約者である男性が撃退したお蔭で無事だったと言われているが……。 「……」 恭也は客間へと案内されるまでの屋敷、庭も含めての大きさに多少の驚きを見せつつ、 やはり仕事でこれまでにも似たような屋敷を何件か見た事もあってか、すぐに気を取り戻すと客間へと入る。 程なくして、この屋敷の主人とその娘が部屋にやって来て、今回の仕事の話となる。 「最近、巷を騒がせている通り魔事件。それに娘が出くわした」 主人の言葉に娘はその時の恐怖を思い出したのか、 僅かに身震いするも恭也の視線に気付いてすぐに背筋を伸ばして、何でもないように装う。 その事に触れず、恭也は話の続きを促せば、幸いにして誰かが助けに入って無事だったとの事。 その際、一緒に居た婚約者は真っ先に逃げ出し、その事を思い出したのか娘は激怒しだす。 「まあ、あのような殿方ではあたくしには不釣合いでしたから、丁度良いと言えば良かったですわ。 それを期に婚約解消できましたし」 そう告げる少女の言葉に曖昧に返し、恭也は仕事の内容を尋ねる。 「暗闇で顔もしっかりとは見てはいなかったのだが、向こうがそれを分かっているとも限らないだろう。 あれから似顔絵が公表されたりしていない事から、顔を見られていないと判断してくれれば良いが……」 「そうでなかった場合、娘さんがまた狙われる可能性もあるという事ですね」 「その通りだ」 恭也の言葉に鷹揚に頷き返し、男は改めて恭也に娘の護衛を依頼してくる。 詳細を話し合う二人を、主に恭也を見遣る娘の目には不安と不審の混じった色があった。 恭也の外見から元婚約者の事例もあり、その不安を父親へと伝える。 「心配するのも分かるが、彼はその世界では有名な人物らしい。 信用できる人からの紹介だからな」 父親の言葉に半信半疑ならも納得し、恭也は逆に照れた様子で大げさな言葉を否定する。 ともあれ、こうして恭也はご令嬢の護衛と言う仕事に就く事となったのである。 守るべき令嬢は、名を蝶間林典子といった。 「あれ、校門の前に居る人ってもしかして……」 「淡谷さんか? 久しぶりだな。淡谷先生は元気か?」 「うん、おばあちゃんもいつも通りだよ」 「……もしかして、雪国の方か?」 ――懐かしき再会を果たすも、一人は女装中でもう一人は仕事中 「ユキグニから聞いたけれど、本当に恭也さんこっちに来てたんだ」 「まあな。大よその事は雪国から聞いたけれど、本当に無茶な事を……」 「あ、この事はおばあちゃんには」 「分かっている。と言うか、今回は護衛の仕事で来ているからな。 果たして会う事があるかどうか」 ――もう一つの再会は、男装中と仕事中 「蜜が何故か通り魔事件に関して聞いてくるのです、恭也さん」 「友達が被害にあったからと聞いてますが、確かに危険ですね」 恭也は少し考え、雪国から注意するようにしてもらおうかと考える。 そんな感じで依頼主に迫る影もないまま日々が平穏に流れる中、 「今度の文化祭は青美女学院との合同コンパを開催する!」 先生や生徒会のやる気のなさに切れた舞姫によるとんでもない企画が持ち上がる。 そんな折、再び通り魔事件が起こる。 だが、そんな事とは関係なく、雪国たちは文化祭の企画に忙しくなり、それに伴い、典子もまた忙しさを増していく。 そして、遂に文化祭の幕が開かれる。 「流石にこんな日中から出ないとは思うが……」 人で溢れかえる校内で、できる限り企画の邪魔をしないように付かず離れずで護衛をする恭也。 果たして、どんな結末が待っているのか。 SH@PPLE HEART 早いもので、もう一月経つんだな。 美姫 「まあ、実際には後一週間はあるけれどね」 まあな。しかし、この調子だとあっという間に一年なんて過ぎるな。 美姫 「だからこそ、しっかりとしなさいよ」 あははは。耳に痛いお言葉です。 美姫 「ったく、本当にアンタは」 ところで、最近雪見た? 美姫 「いきなり話を変えるわね」 いや、先週も雪の話をしていたけれど、何人かの方が雪が降って積もったとかお便りをくれてな。 それでふと思ったんだけれど、積もるまでいかなくても雪事態一年ぐらい見てないかなと。 雹と言うか、ちょっとだけ固まっているみたいな雪とも言えない雨なら降ったけどな。 美姫 「言われてみれば、この冬は雪見てないわね」 だろう。まあ、実際に降って積もると面倒だったりするんだけれどな。 とは言え、こうも見てないと見てみたいとも思ってしまうし。 美姫 「でも、天気予報でも降るという予報は出てなかったわね」 今週末からは冷え込むみたいだけれど、雪の情報はなかったな。 まあ、こればっかりは仕方ないけれど。 美姫 「降ったら降ったで文句言いそうよね」 そりゃあ、滑るし交通機関は程度にもよるが、場合によっては狂ったりするからな。 家の中に居て見る分なら良いかな、と。 美姫 「何処までもインドアね」 はっはっは。 昔、偶には太陽の下で遊べと言われて、携帯ゲーム機で野球ゲームを外でやった奴だぞ、俺は。 美姫 「因みに、それを話して聞かせた時に貰った感想は?」 バカか? だったな。 勿論、冗談でやったに決まっているだろうに。 美姫 「冗談とは言え、実際にやるアンタは間違いなくバカだと思うわ。変な所で行動的ね」 おおう、それはつまり俺は行動派、つまりは意外にもアウトドア派だと言う事に? 美姫 「ならないわよ!」 ぶべらっ! お前は行動派云々よりも、攻撃的過ぎるな。 美姫 「つまり行動派って事よ」 いや、何か違う気がするんだが……。 もう少し慎ましくだな。 美姫 「お許しください、ご主人様」 うん、許す。が、メイド服で言うのならなお良し! 美姫 「時々、アンタを凄いと思うわ」 褒めるなよ〜。 美姫 「いや、決して褒め言葉で言ってないからね、この煩悩の塊!」 ぶべらっ! う、うぅぅ、ちょっとメイドさんと口にしただけでこの仕打ち。酷い。 美姫 「戦闘メイドで良ければやってあげても」 つまり、主を護衛すると。 美姫 「ううん。主を攻撃するの♪」 メイドの意味を調べて出直して来い! でも、メイド服を着るのなら……って、悩むな俺! しかし、メイドが傍に。だが、それはメイドと言うよりも美姫であって。 ぐぬぬ……。 美姫 「はいはい。とりあえず、ちょっと落ち着こうね」 ぶべらっ! ……い、今のはなんで? 美姫 「邪魔」 何だその理由! 最初の落ち着く云々は何処に!? 美姫 「聞こえていたのなら、聞き返すな!」 ぶべらっ! ええっ、今のも俺が悪いの!? 美姫 「いや、吹き飛びながら突っ込まれても。と言うか、最近益々復活が早くなったような」 それは気のせいだ! だから、もっと優しくしてください! 美姫 「そんな綺麗なジャンピング土下座を見せられても」 じゃあ、どうしろと! 美姫 「いや、私別に何も頼んでないわよね」 おおう! 頭の下げ損かよ! 美姫 「下げ損って何よ!」 ぶべらっ! い、いや、今の俺、間違ってないよね。 美姫 「アンタが私に頭を下げるのは当たり前の事でしょう」 って、お前何様!? 美姫 「なにか文句でも?」 全くありませんです、はい。ふかぶか〜。 美姫 「分かれば良いのよ」 はは〜。 美姫 「って、そろそろ時間ね」 だな。さて、それじゃあ、今週はこの辺で。 美姫 「また来週〜」 |
1月16日(金) |
美姫 「美姫ちゃんの〜」 ハートフルデイズ〜 美姫 「はっじまるよ〜」 <この番組は、PAINWESTの雑記コーナーより、ここ最近は特に寒いよね、とお送り中!> いや、本当にさむっ! 美姫 「本当よね。ここに来て急に冷え込んだわね」 ああ。各地で雪が降ったり、滝が凍ったりしているみたいだぞ。 美姫 「まあ、この辺では雪も降ってないけれどね」 まあな。でも、寒いのは本当だしな。 うぅぅ、朝のあの寒さは堪えるよな。布団から出たくなくなる。 美姫 「まあね。あの誘惑は強いわよね」 ああ。という訳で、今から一眠り――ぶべらっ! 美姫 「許すわけないでしょうが」 で、ですよね。 美姫 「さて、寒さも気合で吹き飛ばして今週も元気に行くわよ」 気合で何とかなれば、暖房器具は――ぶべらっ! き、気合は大事だよね! 美姫 「分かれば良いのよ。それじゃあ、今週もCMいってみよ〜」 「きゃぁぁー!」 絹を引き裂くような悲鳴が上がる。 急ぎその場へと駆けつけた恭也が見たものは、無残にも転がった死体。 「ま、まだ生きているよ恭ちゃん……」 最後の力を振り絞って突っ込みを入れると地面に倒れ伏す美由希。 慌てて駆け寄ろうとする恭也たちを止める鋭い声が届く。 「現場を荒らさないでください」 恭也たちを掻き分け、倒れている美由希の元に屈みこむと鋭い眼差しで周囲を見渡す一人の少女。 「それで、第一発見者は那美さんですね」 美由希や現場の現状を見渡した後、少女――なのはは悲鳴を上げた那美へと向き直り、その時の様子を聞きだす。 「……恐らくこれが凶器」 美由希の傍に転がる一つの鍋を掴み上げ、なのははそう断言する。 「ふむ、その可能性は高いな。しかし、見事にへこんでしまっているな。 まあ、へこんだのは横側だし、穴が開いた訳でもないからまだ使えそうだから良しとするか。 美由希の石頭に感謝だな」 「うぅぅ、恭ちゃん妹の心配をしてよ」 強く打たれた頭をさすりつつ呟く美由希の言葉を無視し、恭也はなのはから受け取った鍋をテーブルに置く。 「念のため、病院には行った方が良いかもな。 美由希の頭が心配だ。頭は大丈夫か」 「絶対わざと言ってるでしょう恭ちゃん」 「まさか。それで、何があったんだ?」 「えっと……、それがよく覚えてないんだよ。 キッチンに来たまでは覚えているんだけれど、その後気が付いたら恭ちゃんが可愛い妹に暴言を吐いてて……」 「どうやら本格的に頭に問題があるみたいだな。 急いでフィリス先生に見てもらおう。レン、悪いが付き添ってやってくれ」 「ちょっと、だからその言い方は……」 「まあ、冗談はさておき、記憶がなくなる程に強打されたのなら本当に病院に行っておけ」 「うぅぅ、分かったよ。ごめんね、レン」 「良いって、気にせんと。それじゃあ、お師匠、美由希ちゃんの事はうちに任せてください」 恭也にそう言うとレンは美由希を連れてリビングを出て行く。 それを見送り、恭也は美由希が倒れるときに回りも巻き込んだのか、 おたまやまな板などが散らばるキッチンを見渡す。 「幸い、包丁などが出ていなくて良かったな。 とは言え、結構散らかっているから片付けないとな」 「ああ、待って。まだ写真を撮り終えてないから。 犯人は必ずず暴いて見せます、お父さんの名に掛けて!」」 現場の写真をデジカメで撮るなのはに苦笑しつつ、恭也は晶に後片付けを手伝ってくれるように頼むのだった。 「なのは、どうして兄は折角の休日に手を引かれて外に連れ出されているんだ?」 「勿論、昨日起きた事件を調査するためだよ。 もし犯人に狙われたらどうするの」 「いや、それは別に構わないんだが、何故外に出る必要が? 事件は家の中だろう」 「聞き込みです」 「ほう。聞き込みに来たのに、何故、公園でタイヤキ片手にお茶などしているんだろうな」 「ちょっと休憩」 「はぁ、別に良いんだが……」 盆栽の手入れをしたかったと小さく呟き、恭也は自身もタイヤキに噛り付く。 「ああ、そうそう後一つだけ良いですか?」 去り際になのはは人差し指を立て、今まで事情を聞いていた那美へともう一度近付く。 「ええ、良いですけれどなにかな?」 「那美さんがお姉ちゃんを発見した時……」 恭也を助手として犯人探しを始めるなのは。 だが、犯人の魔の手が…………。 「とまあ、普通なら犯人が襲撃したりとかもあるかもしれへんねんけど……」 「師匠がずっと付いているから、その点は安心だな。 寧ろ、襲い掛かってきた方がその場で捕まえられて早いかもな」 犯人の魔の手がなのはに迫るような事態もなく、なのはは思うが侭に調査を進める。 「……そういう事ですか。全ての謎は全部解けました。 お兄ちゃん、お手柄です」 「そうなのか? まあよく分からないが役に立ったのなら何よりだ」 「うん。お兄ちゃんの言葉のお蔭で犯人が誰か分かったよ。 今からあの時家に居た人全員を集めて! 犯人のやったことは、するっとまるっとリリカルにお見通しです」 関係者が集まったリビングで、なのはの推理が始まる。 誰もが息を呑んでなのはの言葉に耳を傾ける。 果たして、犯人は誰なのか。 「美由希お姉ちゃんを殺した犯人は…………あなたです!」 「えっと、なのは? お姉ちゃん、死んでいないんだけれど?」 遂になのはの口から犯人と事件の真相が語られる。 魔法探偵なのは 近日…………? 日本各地で雪が降っているみたいだな。 美姫 「冒頭にもそんな事を言ってたわね」 ああ。雪が降らなくても路面が凍ったりしている所もあったりするだろうし、皆さんも気をつけてくださいね。 美姫 「幸い、こっちはそういう事なくて助かるわね」 ああ。まあ、それはそれとして、もう今年も半月過ぎた訳だが。 美姫 「本当に早いものね」 ついこないだまでお正月だった気がするのにな。 美姫 「そうよね。で、いい加減本題に入らない?」 あ、あはははは。な、何のことかな? 美姫 「あれ〜、分からないの?」 えっとですね、色々とありましてですね。 美姫 「まだ、今年長編の更新がないわよね?」 あ、あはははは。 け、決してサボっていたりはしないんですよ。 美姫 「ほうほう。とりあえず……」 にゅぎょらぼげぇえええぇっ! ぶべらっ! 美姫 「ったく、相変わらず遅いわね」 うぅぅ、相変わらず手が早いですね。 美姫 「ええ、アンタとは違うもの」 って、意味的にお前と俺の手の速さは違うだろう! 美姫 「知らな〜い、聞こえな〜い」 うぅぅ、やっぱり今年もこのパターンなのかよ! 美姫 「今頃気付いたの?」 って、まだ今年は三回目だっての! なのに、それなのに……。 美姫 「まあまあ、今年一年まだまだあるんだから、早々に壊したりしないわよ」 だよな。って、それって逆に怖い宣言だよな!? 壊さずジワジワかよ! 怖いよ! 恐怖だよ! 美姫 「落ち着きなさいよ。ただ去年と一緒ってだけよ」 おお、そう言われれば。……って、納得している自分が怖いよ! 何で俺も順応してるんだよ! 美姫 「まあ人間は慣れる生物だしね」 そんなのに慣れたくもない! と言うか、全然慣れてないよな、俺! 美姫 「まあ、慣れてないから毎回、怖がっているとも解釈できるわね」 それ以外にどう解釈を!? 美姫 「単なる怖がりとか」 誰だって怖がるわっ! 美姫 「ひ、酷い……よよよ」 嘘泣きにそう何度も引っ掛かると思うなよ、バ〜カ――ぶべらっ! ぼげらっ! ぐげぇっ! 美姫 「誰がバカの暴力女、狂犬ですって?」 そ、そこまで言ってませんよね。 美姫 「問答無用よ!」 ぶべらっ! え、冤罪だ! 俺は無実だ! 美姫 「往生際が悪いわよ!」 のぉぉぉ! 理不尽過ぎますよー! ぶべらっ! 美姫 「ったく、浩の分際で生意気な」 うぅぅ、つくづく、つくづく……。 美姫 「何よ」 ナンデモナイヨウンナンデモナイ。 美姫 「ったく。って、あー!」 な、何でしょうか? 美姫 「アンタが馬鹿な事ばっかりやっているから、時間がなくなったじゃない」 俺の所為かよ! と言うか、寧ろこんな時間誰も好き好んで取ってないっての! 美姫 「何か言った〜?」 な、何も言ってないであります、サー! 私が悪かったです! 美姫 「分かれば良いのよ」 うぅぅ、やっぱり今年もこうなるのね……。 美姫 「ほら、ぶつぶつ言ってないで挨拶しなさい」 へいへい。それじゃあ、今週はこの辺で。 美姫 「また来週〜」 |
1月9日(金) |
美姫 「美姫ちゃんの〜」 ハートフルデイズ〜 美姫 「はっじまるよ〜」 <この番組は、PAINWESTの雑記コーナーより、まだ正月気分が抜けないよ、とお届け中!> あっという間に一週間。 美姫 「本当に早いわね」 世間では既にお正月気分も抜けて日常へと戻っているはずなのに、何故、私はまだ抜けていないのでしょう。 美姫 「いや、単にアンタが怠け者ってだけじゃないの」 はい、正解! という訳で、ゴロゴロ〜。 う〜ん、だらだら。それじゃあ、また来――ぶべらっ! 改め、へみゃっ! 美姫 「ほうほう、吹っ飛ばされている割には中々余裕があるみたいね」 いえ、ないです、はい。今のは偶々ですよ、うん。 美姫 「今度から二割増しで殴る事にするわ」 ひ、酷い……。 美姫 「そう言えば明日辺りからまた冷え込むみたいな事を言ってたわね」 どうでも良いが、話題が急に変わりますな。 美姫 「いつもの事じゃない」 うん? そうでもないような、その通りのような……。 美姫 「気にしない、気にしない」 ですね。さて、今年もはや一週間も過ぎ、いい加減エンジンを掛けていかなければとか思う訳ですが。 美姫 「って、急に話題変えないでよね! それと、エンジン掛けるの遅すぎよ!」 ぶべらっ! おおう、い、今まで以上の威力……。 と言うか、話題変わるのは気にしないんだろう。 美姫 「アンタがやると思わず突っ込みたくなるのよ」 いやいや、今年も理不尽全開ですか!? 美姫 「失礼ね。理不尽でも何でもないでしょう」 うぅぅ、今年こそは地位向上を願うばかり。 美姫 「願われてもアンタと私の二人なんだから、上位が私で下位がアンタというのは変わらないでしょう」 おう、とんだ盲点だ! 美姫 「いやいや。もっと早く気付きなさいよ」 うぅぅ、下克上なんて儚い、もとい敵わない夢は捨ててしまおうほととぎす。 美姫 「ほととぎすは関係ないでしょう」 いや、何となく言いたかっただけです、はい。 美姫 「全く、今年もまたバカに付き合わないといけないのね」 うぅぅ、せめて待遇の改善を願うばかりです、はい。 美姫 「まあ、アンタの態度次第では考えてあげなくもないわよ」 また言い回しが何と言うか……。 美姫 「文句でも?」 ないであります! 美姫 「分かれば良いのよ。さて、それじゃあ今週も……」 はい、いくであります! 美姫 「それじゃあ、CMよ〜」 本来なら交わるはずのない物が、例え僅かとは言え交じり合ってしまった事が事の発端だったのかもしれない。 世界は異物を受け入れる事ができず、結果として二つの異なる世界は互いの妥協点を見つけ出す。 異物を異物として認識せず、あたかも初めから存在していたかのように昇華する事で崩壊する事を食い止める。 だが、近い文明を持つ世界同士なら問題はなかったそれも、全く異なる文明を、 文化を持っていた世界同士であったが為、それは更なる悲劇を呼ぶ事となる。 寧ろ、人の愚かさとも言うべきかもしれないが。 二つの世界の融合により、可笑しな力を突如として手に入れる者。 二つの世界の知識が合わさり、更なる進化を遂げる技術力。 どちらも平和をもたらす為に振るわれれば問題はなかったであろうソレは、 力を持つものと持たないものを生み出し、また互いの世界を制する為の力として振るわれることとなる。 科学の発達した世界、魔法が発達した世界。 この二つの世界の融合がもたらしたものは決して小さなものではなかった……。 「今まで異世界より漂流してきた生物を研究してきた成果と、 異世界との僅かな融合により力を得た者を研究してきた成果」 「その二つの研究結果、ここに新たな人類の誕生を!」 「被験者No.1834582、被験者固体名……」 自分を取り囲む数人の白衣を着た男たちへと焦点の合わない瞳を向ける。 だが、それは男たちを見ているようで見ておらず、また男たちの話の内容すらよく理解していないようである。 どこか酩酊した様子を見せる青年の事など意にも返さず、男たちは手に器具を持つ。 医療器具らしき物、工具のような物、何に使うのか分からないような器具まで、 男たちは様々な器具を手に取り、取り囲んだ青年へとそれらを伸ばしていく。 「……ここは? 俺は……誰だ?」 気が付くと古びた建物の一室だった。 何があったのか思い出そうとするも、靄が掛かったように記憶が思い出せない。 だが、周囲を歩き回っている内に男は徐々に記憶を取り戻していく。 「そうか、過ぎた力を制御しきれず、この周辺もろとも消し飛んだか」 自身の身体にメスを入れられ、弄られた記憶を思い返して恭也は顔を顰める。 あれからどうなったのか、どれぐらいの時間が過ぎたのかも分からず恭也はとりあえず歩き出す。 目的地などもなく、ただ思う方へと。 人の手により造りだされた魔神――高町恭也 既に恭也が生きていた時代は先史文明と呼ばれ、その世界も既に滅びているらしいと知る。 それでも、もしかしたら家族や友人が自分と同じように生きているかもしれないという可能性に掛け、 恭也は世界を旅する事にするのだった。 とらいあんぐるハ〜トZERO おお、明日は十日恵比寿だな。 美姫 「そういえばそうね。でも、何で十日なのかしら」 言われてみれば。うーん、そういうのは式に聞くべきだな、うん。 おしえて〜、式先生〜。 美姫 「とは言え、すぐに連絡付かないわよ」 だな。という訳で、これは次に会った時に覚えていたら聞こう、うん。 美姫 「何よりも、アンタの記憶力が一番心配だわ」 はっはっは。言われるまでもなく、俺自身が心配しておるわ! 美姫 「威張るな!」 ぶべらっ! うぅぅ、酷いよ美姫ちゃん。 美姫 「ったく、疲れるわね」 まあまあ、落ち着いてくださいよ。 美姫 「アンタが言うなっての!」 ぶべらっ! うぅぅ、酷いですね美姫さん。 美姫 「本当に疲れるわ」 まあ落ち着きなよ。 美姫 「アンタが言うな!」 ぶべらっ! うぅぅ、酷いな美姫。 美姫 「全く疲れるったらないわね」 落ち着けって。 美姫 「アンタが言うか!」 ぶべらっ! ……って、いい加減に勘弁してください。 こんなパターンは嫌です。 美姫 「もう一回ぐらいやっても良いじゃない」 身が持ちません。 美姫 「私は楽しいのに」 俺は楽しくないの! ったく、やっぱり今年もこんな調子かよ……。 美姫 「諦めなさい。と、そろそろ良い頃合ね」 だな。それじゃあ今週はこの辺で。 美姫 「また来週〜」 |
1月3日(土) |
美姫 「美姫ちゃんの〜」 ハートフルデイズ〜 美姫 「はっじまるよ〜」 <この番組は、PAINWESTの雑記コーナーより、新年だな、とお送り中!> 明けましておめでとうございます。 美姫 「今年も宜しくお願いします」 とは言え、まさか三日にやるなんて……。 美姫 「来週と言ったんだから、ちゃんと約束は守らないとね♪」 いや、お前が一方的に言ったんだよな? 美姫 「なによ、昨日にしなかった分だけありがたいと思いなさいよ」 単に昨日はお前が酒を飲みたかっただけ――ぶべらっ! 美姫 「さあ、今年も元気にいってみよう!」 ――この番組は、より良い暮らしを提供する紅コーポレーションの提供でお送りします。―― って、こらこら勝手に提供とか作らない。 ともあれ、美姫の言うように今年も元気にいくぞー! 美姫 「その意気よ! という訳で、早速だけれどCMいってみよ〜」 それは一本の電話から始まった。 進学や進級などが無事に決まり、春休みも半ばを過ぎた日の昼下がりに高町家へと届いた連絡。 それは誰もが予想をしていない内容であった。 「恭ちゃんが行方不明?」 実の母親であり、現在は香港に居る美沙斗からの連絡。 それを聞いての美由希の第一声はよく事態を飲み込めておらず、ただ言われた事をそのまま口にしたようなもの。 だが、自らが口にしたその言葉の意味を理解するなり、その声に険しさが含まれだす。 ともすれば叫び出しそうな美由希を電話の前で察したのか、美由希が混乱するまえに鋭く静かな声で娘の名を呼ぶ。 「落ち着いて美由希。今、詳しく説明をするから」 「う、うん」 逸る気持ちを落ち着け、美由希は美沙斗からの説明に静かに耳を傾けるのだった。 美沙斗の元を訪れて練習に参加していた恭也。 だが、彼は練習で組んでいたチームのメンバー諸共音信不通となり、そのまま姿を眩ましてしまう。 一方で、恭也たちの行方を捜す美沙斗たちの元に一つの連絡が届く。 「恭也君によく似た人物を日本で見たという情報が入っています」 同僚の弓華からもたらされた情報に、美沙斗は一縷の望みを掛けて日本へと飛ぶ。 現地で美由希と合流し、二人は恭也の後を追って行く。 日本政府に届けられた一通の犯行声明文。 内容は規定期日までに政府を解体し、統治権を自分たちのリーダーに委ねるように要求するという無茶苦茶なもの。 要求を呑まなければ実力行使もじさないというもので、事実、その証拠として自衛隊の基地の一部が爆破される。 当然ながら政府はこの事を公にはせず、可及的速やかに解決するように各省庁へと通達する。 「そんな訳で、悪いけれど僕は今、力になれないんだ、すまないね」 「いや、構わない。しかし……」 リスティから本来なら機密とも言うべき事を聞かされ、美沙斗は考え込む。 美沙斗が何を考えているのか分かったのか、リスティはこちらも苦虫を潰したような顔をする。 「ああ、あまりにもタイミングがね……。 恭也らしき人物が見られた場所と、今回爆破された基地とでは目と鼻の先だ。 しかも、時期まで重なっている」 「偶然である事を願うばかりだね」 「だね。けれど、神様ってのはかなり残酷だからね。もしも、という事も考えておかないと――」 「そんな事あるはずないじゃないですか!」 二人の会話に割って入ってくる美由希。 いつになく激昂した様子に二人は落ち着かせようとするが、それでも最悪の事態を考えるように言い置く。 納得はしないながらも、美由希は何とか口を噤むと祈るような目をして空を見上げる。 何処に居るのかは分からない恭也へと祈りが届くように。 「この顔の傷を刻み込んだ男の息子、か」 男はその言葉が指す額から左目を通り左頬にまで伸びている細長い傷を指先でなぞり、 どこか楽しげな口調でポツリと漏らす。 「古く、今では殆ど廃れた武器を執拗なまでに振い続けるサムライボーイ。 彼はこの状況でどう動くかな。実に楽しみだよ。 こんなにワクワクするのは、シロウタカマチと遣り合って以来、久しくなかったことだ」 男が見詰める先に移るのは、望遠で撮られたと思しき恭也の写真であった。 その写真を男は本当に楽しそうに、そして獲物を狙う猛禽類のような目で射抜く。 「実行犯の一人として恭也の名前が挙がった。 けれど、公表は確認が取れるまで待ってもらえたよ。 彼や彼の親父さんの実績を知る者が警察上層部に少なくなかったお蔭でね。 とは言え、それでも限度はある。 とりあえず、警察は恭也に事情を聞くために重要参考人として恭也を探しているよ」 「ありがとうございます、リスティさん。でも、これって情報漏洩にならないんですか」 「その辺りは気にしなくても良いさ。僕にも色々と権限が与えられているからね。 恭也が本当に奴らの仲間なのかどうかは兎も角、話を聞くために身柄をなんとしてでも確保しないといけない。 となれば、君らにこの情報を教えるのは決して悪い事ばかりではないからね」 「なるほどね。確かに恭也が大人しくするのなら良いが、実力行使となれば私たちの方が適任だろうしね。 それで、他の人間は恭也の協力者を当たっているという所かな」 「協力者?」 「ああ、美沙斗の言うとおりだよ。美由希、協力者というのは、そのまんまだ。 幾らなんでも恭也の目撃情報が少な過ぎると思わないかい? 寝所にせよ、食料調達にせよ、そして移動手段にせよね。もう少し目撃情報があっても可笑しくない」 そんなものなのかなと首を傾げる美由希に苦笑を零しつつ、美沙斗は美由希の背中を軽く押す。 「そっちはリスティたちに任せておけば良い。 私たちは私たちの方法で恭也の後を追うよ」 「うん」 美沙斗に促され、美由希は足を動かす。 そんな二人に軽く手を振り、リスティもまた二人に背を向けて歩き出す。 「準備は整った。さあ、いよいよ日本を舞台にした喜劇の幕開けだ。 精々、楽しませてくれ!」 新春劇場版 とらいあんぐるハ〜ト3 20009年4月 開幕 年も明けて、今年も頑張るぞと気合も入れた。 美姫 「そうね、後は今年の目標かしら」 うーん、目標か。 美姫 「やっぱり一日一本とか」 うん、無理! 美姫 「分かっていたけれど、速い返事をありがとうね」 いやいや。 美姫 「褒めてないわよ!」 ぶべらっ! わ、分かってるよ……。 とは言え、毎度、毎度殴られるのも辛い。 よし、今年の目標は美姫が手を出さないようにするとかはどうだ。 美姫 「良いわよ」 えっ!? 本当に!? 美姫 「ええ。手じゃなくて足とか剣とか色々あるしね♪」 意味ねぇ! 美姫 「さて、アンタの言う通りにしてあげるんだから、アンタも私の言うとおりに――」 ごめんなさいでした! 美姫 「まだ何も言ってないでしょう」 言わなくても分かるっての! どうせ、無茶な事しか言わないんだし……。 美姫 「ったく、変な所だけ鋭くなったわね」 まあ、あれだけ殴られればね! 美姫 「いや、そんなに褒めないでよ。私のお蔭で鋭くなっているのね」 皮肉だよ! 美姫 「分かってるわよ!」 ぶべらっ! おおう、新年早々空を舞ってるぜー! って、勘弁してください! 美姫 「ったく、今年もバカのままみたいね」 うぅぅ、今年もこれなのか……。 美姫 「何はともあれ、今年も宜しくお願いしますね」 宜しくお願いいたします。 ……と、新年の挨拶をもう一度した所で、今週はこの辺で。 美姫 「それじゃあ、また来週〜」 |