戯言/雑記




2010年9月〜10月

10月29日(金)

美姫 「美姫ちゃんの〜」

ハートフルデイズ〜

美姫 「はっじまるよ〜」

<この番組は、PAINWESTの雑記コーナーより、台風が近づいてきているから気を付けて、とお送り中!>



いや、本当に火曜辺りから急に冷え込んだな。

美姫 「びっくりしたわね」

ああ。まあ、今日は少し温かさが戻った気もするがな。
にしても、火曜は本当に冷え込んだ。

美姫 「その割には嬉しそうよね」

まあな。いつも言っているように寒い方が良い。

美姫 「心配しなくても徐々に冷えていくわよ」

じゃないと可笑しいけれどな。
今年の夏は本当に暑かったからな。冬が寒くなるのか、とか思ってしまうぐらいに。

美姫 「そんな心配はないみたいだけれどね。逆に例年よりも寒くなるかもとか聞いたわよ」

おお、そうか、そうか。

美姫 「そこで喜べるアンタの気が知れないわ」

はっはっは、褒めるなよ〜。

美姫 「褒めてないからね。と、それじゃあ今週もCMいってみましょう」







「…………すまん、今何と言った?」

「だから、部活に入ろう思って」

高町家のリビング。
今そこで驚いた顔をした恭也という珍しいものが展示されていた。
その作品を作り上げた美由希は、そんな珍しい光景も気にせず、恐る恐るといった具合でもう一度尋ねる。

「どうしてもって頼まれて。駄目だったら断るけれど」

「いや、別に部活をするなとは言わない。
 ただ、お前が口にした部活名が少し意外だったんで驚いただけだ。
 と言うか、お前が誘われたという事でも二重の意味で驚いた」

「何よ、それ。でも、別に駄目って訳じゃないんだよね」

恭也の言葉に笑いながら、ようやく肩の力を抜いて美由希は言う。
それに対し、恭也はやや大仰な素振りで頷き、

「ああ、別に良いんじゃないか。新しい友人も出来たみたいだし、良い事だと思うぞ。
 まあ、これが料理部だと言うのなら全力で止めた上に、お前に声を掛けた子に小一時間程、
 自分がどれだけ危険な事をしようとしたのかと説明する所だが」

「って、何よ、それ!」

流石に今度の言葉は聞き流せるような物ではなかったのか、美由希は講義の声を上げる。
が、当然ながら恭也は平然としたまま、

「塩と砂糖を間違えるのは毎度のこと。
 なのに味見はしない、満足にレシピ通りに作れないくせにすぐにアレンジしようとする。
 時折、食材じゃないものまで気付かずに混入する。さて、これらは誰の事だろうな」

「うぅぅ……。弁解の余地もないです。
 け、けれど言い訳させてもらえるのなら、滅多にしないから……」

「だったら尚の事、変なアレンジなどしようとせずにレシピ通りに作れ」

「あう」

反論するもそれも封じられ、美由希は力なくソファーに沈む。
そんな美由希を呆れ混じりに眺めつつ、恭也は内心では少し嬉しさを感じていた。
美由希にまた新しい友人が出来た事。そして、その友人から一緒の部に誘われ、それを前向きに検討したと言う事に。
最初は聞かされた部活名に少し驚きもしたが、積極的に取り組むのは良いことだ。
恭也は一人納得すると、まあ頑張れとだけ声を掛けてやる。

「それにしても……」

その上でしみじみと選んだ部について思うのであった。



翌日の放課後、美由希は新しく友人となった少女と共に部室へと向かっていた。

「うぅぅ、緊張する〜」

「そんなに緊張しなくても大丈夫だって美由希」

「そうは言うけれど初心者なのに本当に良いのかな」

「先輩方にもそれは伝えたあるから大丈夫。
 その上で是非って言ってたし。まあ、すぐに緊張とは無縁になるとは思うけれど……」

「え、それってどういう……」

「着いたわね。それじゃあ、美由希からどうぞ」

美由希が尋ねようとするも部室の前に着いてしまい、背中を押されるままに扉の前に立たされる。

「え、でも、こういうのは先に部員である……」

「そうなんだけれど、多分先輩たちの事だから美由希が来るのを今か今かと待っていると思うの」

押されるまま美由希は扉へと近付き、ノブに手を掛ける。
このままではドアとキスしてしまいかねないと悟り、美由希は緊張したままドアノブを回す。
扉を開けて中へと一歩踏み入った瞬間、パンと乾いた音が響く。
思わず身構えた美由希であったが、すぐにその頭に紙テープが張り付き、呆然としたまま正面を見れば、
そこには先輩なのだろうか、四人の少女たちがクラッカーを手に満面の笑みを浮かべていた。
若干、一名ほどは呆れたような顔をしていたが。

「梓〜、梓はこっちこっち」

美由希をここまで連れて来た少女を呼び、五人となった少女たちは改めて美由希と向かい合う。
梓に声を掛けた少女が咳払いを一つし、せーのーの掛け声の後に声を揃える。

『ようこそ、軽音部へ』

歓迎された美由希は恐縮したように頭を下げて自己紹介をする。
既にクラスメイトである梓を除いた四人の名前を教えられ、簡単な自己紹介を終えると唯が軽く背伸びし、

「うーん、自己紹介も終わった事だし……」

「あ、練習するんですね。えっと、私は今日は見学って事で良いんでしょうか」

「違うよ、みゆにゃん」

「えっと……そのみゆにゃんっていうのは?」

「あだ名だよ。可愛いでしょう、あずにゃんと同じだよ〜」

「あ、あははは」

困ったように梓を見るも、すぐに視線を逸らされ、全身から諦めろという空気を出してくる。
どうしようもないのかと美由希は肩を落とし、あっさりと諦める事にする。
が、心の中では絶対に家の者には知られないようにしようと固く誓うのであった。

「それじゃあ、美由希ちゃんの席も用意したからここに座ってね」

言われていつの間にか座っていた梓の隣に椅子が置かれ、肩を押されるように座らされる。

「琴吹先輩、見た目以上に力が……」

「私の事はムギで良いわよ」

「あ、いえ、でも……」

「はい、呼んでみて。サンハイ」

「ム、ムギ……先輩」

「はい、よく出来ました〜。ご褒美に今日は美由希ちゃんから選んで」

「え〜、ずるいよ〜」

「そうだ、ずるいぞムギ」

美由希が目をパチクリさせている間にも事態は進み、唯や律が文句を口にする。
意味が分からずに困惑していると、それを違う風に受け取ったのか、澪が二人を注意する。

「二人ともいい加減にしないか。
 第一、今日は美由希の歓迎も含めているんだから、美由希が先に決まっているだろう」

澪の言葉に冗談だよと声を揃えて返す二人を見ながら、美由希はやはりまだ事態を飲み込めていなかった。
そんな美由希の困惑をやはり違った意味で捉えて謝ってくる澪に手を振り気にしてない事を伝えると、
テーブルの上にケーキの入った箱が置かれる。

「ふふふ、さあ好きなのをどうぞ」

「えっと……」

ようやく事態を理解するも思わず紬を見返してしまう。
が、紬はただ首を傾げ、

「もしかして嫌いな物しかなかったかしら?」

「いえ、そうじゃなくて……えっと、頂きます」

梓に助けを求めれば、気にせず選べと返される。
別にそういう事を気にした訳ではないのだがと思いつつ、歓迎会だと言っていたしとケーキを一つ選ぶ。
その後、梓たちも好きな物を選び、その日はそのまま話をして解散となった。
帰り道、唯たちと分かれて梓と二人で歩きながら今日の感想を聞かれる。

「えっと、面白い先輩たちだったかも」

「あー、うん、確かにそれは否定できないかも。
 でも、ああ見えて演奏したら……あー、律先輩はよく先走るし、唯先輩は楽譜を読めないし。
 で、でも、不思議と一つになっているというか」

「あー、うん、とりあえず落ち着こう」

「ご、ごめん」

「ううん、良いよ。先輩たちのこと好きなんだね」

「なっ! そ、そうじゃなくて、私はただ美由希がやめるとか言わないかと」

「あははは、流石に今日の今日でそれはないから安心して。
 それにあの梓にそこまで言われるんだからちょっと楽しみかも」

「うぅぅ」

美由希の言葉に顔を赤くさせて俯く梓。
それを微笑ましく見ながら、美由希は自分は何の楽器を弾くことになるんだろうと考えていた。
翌日、歓迎会が終わったにも関わらず、同じようにお茶会が開かれ、楽器は好きな物にしたら良いと言われ、
美由希は只管戸惑う事になるのだが、それはまだ少しだけ先の話である。



「で、どうなんだ部活は」

「楽しいよ。特にムギ先輩の持ってきてくれるお茶やお菓子はもう最高!」

「……軽音部なんだよな?」

そんな会話が兄妹間で繰り広げられる程に美由希が馴染むのも、そう遠くない未来である。



けいおんハ〜ト







うーん、気温ばかり気にしていたが、日の沈むのは結構早くなってきたな。

美姫 「言われてみればそうよね」

ついつい暑さ寒さにばかりに気が行っていたが、こうして見ると本当に秋だと思うな。

美姫 「徐々に日が短くなっていくのね」

だな。……ってしみじみしている場合じゃないな。

美姫 「そうだったわね。そろそろ締めないとね」

そういう事だ。
それじゃあ、今週はこの辺で。

美姫 「また来週〜」


10月22日(金)

美姫 「美姫ちゃんの〜」

ハートフルデイズ〜

美姫 「はっじまるよ〜」

<この番組は、PAINWESTの雑記コーナーより、来週辺りから一気に冷え込むみたい、とお届け中!>



今年中に300回突破は無理っぽいな。

美姫 「いきなりね。でも、確かに無理っぽいわね。尤も週一じゃなくせば大丈夫だけれどね」

あ、あははは。や、やっぱり五月の更新がなかったのが原因だな。

美姫 「そうよね。って、今から今年を振り返るのは流石に早いわよ」

ですね。にしても、今年中にいけると思ってたのに残念だ。

美姫 「まあ、その辺は気持ちを切り替えてやっていきましょう」

だな。それじゃあ、今週も元気にいってみよ〜。

美姫 「で、早速だけれどCMで〜す」







周囲を壁に囲まれた、まあそれは当然なのだが、つまりは一つの部屋。
そこに気が付いた時に恭也はいた。
まだ頭に重く感じる鈍痛に顔を顰めつつ、現状を把握するべく部屋を見渡す。
窓はなく、唯一の出口らしき扉が見えた。当然ながら引いても押しても開かず、鍵が掛けられていた。
どうやら外からも内からも鍵を使って締めるタイプらしく、
鍵穴はあれどもサムターン――鍵を内側から開け閉めする際に使用するツマミ――の類も見られない。
自分が眠っていたベッドは丁度、ドアのある壁際とは逆側に置かれており、残る二面には棚と机がそれぞれあった。
恭也はベッドに腰掛け、とりあえずは記憶の整理を行うことにする。
昨夜は妹二人を連れて月村邸へと遊びに行き、そこで夕食をご馳走になったまでの記憶はある。
が、綺麗にそれ以降の記憶がない事から、恭也はすぐに溜め息を吐き出す。

「忍の仕業か」

恐らくは食事に睡眠薬でも盛ったのだろうと考えつつ、とりあえずはどうしようかと考える。
と、ベッドに着いた手に僅かな違和感を覚え、シーツを捲ればそこには木で作られた星型の何かがあった。

「何だこれは」

裏返しても何もなく、恭也はすぐに興味を無くすとベッドに寝転がる。
忍の仕業だとすれば、遅かれ何らかの接触をしてくるだろうと暢気に考えて。
が、そこで本当に忍の仕業なのかという疑問を多少なりとも抱き、再びベッドに腰掛けて考え込む。
と、僅かに空間にノイズが走り、

「やっほ〜、恭也起きた?」

非常に暢気な声が恐らくは天井にでも隠されたスピーカーから聞こえてくる。
心配した自分がバカだったと思いつつ、第三者の仕業ではないと分かって安堵もする。
が、そんな恭也の気持ちに気付かず、忍は上機嫌で語り始める。

「うんうん、ちゃんと目は醒めたみたいね。それじゃあ、ルール説明といきますか。
 恭也、脱出ゲームって知ってる?」

「…………はぁ?」

行き成りの言葉に思わず聞き返せば、それを返答と受け取ったのか忍は納得声で一方的に話し出す。

「うん、知らないか。でも、無知は恥ずべきことじゃないわ。今、教えてあげるからね。
 脱出ゲームって言うのはね、早い話が言葉通りに閉じ込められた場所から脱出するゲームなのよ。
 プレイヤーは閉じ込められた場所、今回ならその部屋ね。
 その部屋に隠されたアイテムやヒントを元に最終的に扉を開けて出れば良いの。
 で、それをリアルでしてみようと思ったのよ。リアル脱出ゲームって訳。
 いやー、これを作るのに一週間ばかり頑張ったわよ。
 という訳で、恭也に美由希ちゃん、なのはちゃん、誰が早く脱出できるのか楽しみにしているからね」

「って、あの二人も巻き込んだのか」

「巻き込んだって人聞きの悪い。参加してもらったのよ」

「薬で眠らせて強制的に放り込んだのは参加とは言わないんではないか?」

「細かい事は気にしない、気にしない。二人は楽しそうに部屋の中を探し回っているわよ」

既にスタートしていると暗に言いつつ、忍は恭也に向かってゲームスタートと告げる。

「それじゃあ、楽しんでね」

最後にそう告げ、放送を終わろうとする忍に恭也が待ったと声を掛け、

「この部屋にある物は何を使っても良いんだな?」

「そうよ。
 まあ、アイテムそのものを弄ったりする場面もあるけれど、間違いなく脱出できるようになっているから。
 それじゃあ、頑張ってね〜」

告げて放送を終える忍。恭也は疲れた表情になりながらもベッドから起き上がり、先程拾った星型の何かを見る。

「つまり、これもそのアイテムとやらの一つという訳か」

呟き、扉を正面にして左手に見える壁に付いているパネルを見れば、同じような星型の穴が開いていた。
そこには他にも様々な形の穴が幾つか開いており、横には数字を入力するような物も付いていた。
恭也はまたしても出そうになる溜め息を飲み込み、そのまま扉へと向かう。

「さて、何を使っても良いという事だったんでな。俺はこれを使わせてもらう」

言うが早いか、気付いた忍が止めるよりも早く恭也の手が背中へと伸び、
次の瞬間には恭也の右手に抜き身の小太刀が握られていた。
遅れてゴトリと重たい音がしてギギーと錆びたような音が続く。
恭也は小太刀を仕舞うと、鍵部分を見事に切り抜かれて開いた扉の外へと足を踏み出す。

「ふぅ、無事に脱出できたな」

「無事じゃないわよ! 反則よ、反則!
 反則に決まっているじゃないの!」

「だが、何を使っても良いと言ったのは忍だぞ」

「確かに言ったけれど、それはこちらが予め用意していたアイテムのことで。
 というか、絶対に分かっててやっているでしょう!」

「はっはっは。よく分からんな。さて……」

棒読みでそう告げると恭也は一息吐き、ゆっくりと顔を上げる。

「悪い子はいね〜か〜」

言って忍の気配を探り当ててそちらへと向かう。

「あ、あははは〜、もしかして怒ってる?」

「まさか。これぐらいで怒っていてはお前と付き合えないだろう。
 とは言え、流石になのはに薬を使ったのはどうかと思うがな」

「やっぱり怒ってる!」

「はっはっは、何をバカな」

自業自得とはいえ、怯える忍を見て仕方なさそうに傍に控えていたノエルが口を挟む。

「恭也さま、美由希さまとなのはさまには事前にお話しをしてご自身の意志で参加して頂いております。
 強制参加させたのは恭也さまだけです」

ネタばらしという訳でもないが、ノエルはそう口にする。
薬で恭也を眠らせた後、今回のゲームを説明して二人は自ら参加したと。
それを聞いて恭也は肩を竦めると、

「まあ、そんな事だろうとは思ったがな。
 とは言え、俺になら良いという考えを改めさせる為だ。少しは懲りただろう」

「はい、充分に反省されています」

「そうか、なら良い。まあ、俺も少々大人げなかったかもしれんが。
 とりあえず、そちらに行って二人が奮闘するのを見せてもらうとするか」

恭也の言葉にノエルは念のために今居る場所を告げて放送を切る。
その隣で騙されたと知って忍が拗ねていたが、
それを直すのは恭也に任せようとノエルは恭也の飲み物を用意すると言い残して部屋を後にする。
ノエルが再び部屋に戻った時には、すっかり機嫌を直した忍と苦笑している恭也の姿があった。



月村邸脱出ゲーム







うーん、今回のネタもまた後日、SS部屋行きになるかな。

美姫 「まあ、その辺は好きにして」

ほ〜い。と、そう言えば明日か来週ぐらいから冷え込むって聞いたけれど。

美姫 「秋らしくなるとは聞いたけれどね」

既に秋らしかったが。

美姫 「夏が暑かっただけに急に冷え込んだ感じを受けるのよね」

まあな。どちらにせよ、いよいよ秋から冬だな。

美姫 「まだちょっと早くない?」

そうか? まあ、そうかもしれんが。
俺としては冬が来てずっと冬が。

美姫 「毎年聞いているわね、それ」

いや、今年は特に切実なんだよ。

美姫 「やけに力入ってるわね」

当たり前だ! ニュースを見たか?
来年の花粉は平均五倍、関西では十倍。
無理無理無理! ただでさえ、酷い症状出る俺だぞ!

美姫 「あー、ニュースで言ってたわね。まあ、でも仕方ないでしょう。自然が相手なんだし」

うぅぅ、来年の春、俺は一歩も外に出ないかもしれない。

美姫 「五月病ならぬ、花粉症で閉じ篭りね」

もう考えるだけで今から憂鬱なんだよ。

美姫 「まあ、まだ先なんだし今は違う事を考えなさいよ」

そうなんだが。うぅぅ、確実に来ると分かっているのに対処がないなんて。

美姫 「はいはい。来年の事よりも今年の事よ」

へいへい。
しかし、今年と言っても……もう後半だな。

美姫 「頑張って色々と更新して欲しいものだわ」

あ、あははは……が、頑張ります。

美姫 「本当に頼むわよ」

っと、そろそろ時間みたいだな。

美姫 「そうね。それじゃあ、そろそろ締めましょうか」

だな。それじゃあ、今週はこの辺で。

美姫 「また来週〜」


10月15日(金)

美姫 「美姫ちゃんの〜」

ハートフルデイズ〜

美姫 「はっじまるよ〜」

<この番組は、PAINWESTの雑記コーナーより、秋深し、とお送り中!>



いや、先週はすみませんでした!

美姫 「開始早々の謝罪ね」

いや、本当にびっくりだ。木曜辺りにネットの接続が可笑しくなって色々調べたら……。

美姫 「LANケーブルそのものが原因だものね」

繋がってたと思ったら行き成り切れたりで困惑したがな。
まあ、新しいケーブルになって無事に繋がりました。

美姫 「でも、お蔭で先週は殆ど接続できず……」

あ、あははは。いや、申し訳ない。

美姫 「まあ、こうして無事に繋がるようになったし、今週も元気にCMいってみよ〜」







それはいつものように何にもない日常の放課後の事であった。
これまた、いつものように部室に集まった俺たちがそれぞれに活動していると、我らが団長様がやおら立ち上がり、

「あー、もう本当に暇よ!」

何に腹を立てたのかは知らないが不機嫌さを隠そうともせずに机の上であぐらをかく始末。
そもそも暇ならばいつものようにネットサーフィンでもしていれば良いだろうに。

「それも飽きたから言っているんじゃないの」

左様ですか。そんな俺の知ったこっちゃない、そう言えたらどんなに嬉しい事だろう。
ハルヒの様子を呆れ混じりに眺め、そのまま知らん振りできればどれだけ良かっただろうか。
しかし、とある事情によりそれは出来なかった。
まあ、早い話がハルヒを覗く全員が俺を見てきているのだ。
久しぶりに原点に戻ろうという事で引っ張り出してきたオセ……と、リバーシの方が良いのか。
まあ、それをやる為に向かい合って座っている古泉もにやけ顔を少し引き攣らせてこちらを見てくる。
見るんじゃない。俺には男と見詰め合う趣味なんぞない。
かと言って、分厚いハードカバーの本から視線を上げ、こちらを無表情に見てくる長門と見詰め合いたい訳でもなく、
編み物を中断し、おろおろとしつつ涙目で見上げてくる朝比奈さんと見詰め合いたい……合いたい……。
朝比奈さんとなら見詰め合っていても良いかもしれんが、それはこんな状況でなければだ。
まあ、何が言いたいかというと、皆が俺に一つの事を求めているという事だろう。
はて、いつの間にそんな役割になっちまったんだろうな。
そんな愚痴を飲み込み、俺は仕方なしに、そう本当に仕方なし二仏頂面のハルヒに話し掛ける。

「で、暇だから叫んだのは良いが、また何か企んでいるのか」

「企んでいるって失礼ね。考えているでしょう。
 まったく、平団員が何も考えずに日々を怠惰に過ごすから変わりに団長の私が考えてあげているというのに」

今のはもしかして笑う所なのだろうか。
本当に考えるだけで雑用は全部押し付けやがってと怒鳴る所か。
それとも皮肉を込めて礼でも言うべきなのだろうか。
割と真剣にどうでも良い事を考えつつ、もう一度ハルヒへと何を考えているのかと形を変えて尋ねる。
勿論、出来れば何も考えてくれるなという思いを込めてだが。
それを団長様が読み取ってくれるかどうかははっきりといって無駄以外の何者でもないのだが。
何せ思いついたらすぐに動くという奴なのだ。
が、どうやら今回はそうでもなかったようで、ハルヒの奴は別にとアヒル口で詰まらなさそうに頭を掻く。
どうでも良いが、スカートであぐらはどうかと思うぞ、うん。
そんな俺の心の言葉が通じるはずもなく、ハルヒの奴は本当につまらなさそうな顔で天井を見上げる。
ふと周りを見れば、長門は既に興味をなくしたのか再び本へと視線を落とし、
朝比奈さんは明らかにほっとした様子で胸を撫で下ろしていた。
が、古泉だけは小難しい顔を崩しておらず、考え込むように指先を顎に当てる。
次の手にそんない悩んでいるのだろうか。

「いえ、別の事を考えていまして。
 何も思いついていないというのが、逆に危険な状況にならないかと危惧したまでで。
 知っての通り閉鎖空間の発生条件には涼宮さんの心情が反映されます。このまま退屈さを感じ続けるとなると……」

近い内に何とかしなければいけませんね、といつもの笑みを見せて言う。
まあ、その辺りは任せる。出来れば俺は不参加の方向で頼む。

「またまたご冗談を」

冗談などであるか。偶には休ませて欲しいと思ってもバチは当たらんと思うがね。
ハルヒの今の状況を多少不味いと思いつつ、今の所はどうする事も出来ないと俺たちはいつもの日常に戻る。
いや、戻るつもりだったのだ。
不意にハルヒが机から飛び降り、両手を上げて叫ばなければ。

「あーもう、本当に退屈だわ!
 未来人、宇宙人、超能力者、いい加減に私の所に来なさいよね!
 この際、異世界からでも大歓迎よ!」

その言葉にまたしても三人が緊張した面持ちでハルヒを見る。
かくいう俺もやや緊張した顔をしていたのだろうがハルヒを見詰める。
にしても、また無茶苦茶な事をいう女である。異世界から来たらそれは異世界人だろうに。

「いえ、それは少し論点がずれてませんか」

古泉が呆れたように言うが、その顔はこれ以上はないというぐらいに緊張したものである。
朝比奈さんなどは手を組んでまるで祈るようしているではないか。
長門は正直、いつもと変わらないようにも見えるが、やや視線が鋭い。
思わず固まった俺たちをハルヒは不思議そうに見るも、すぐに興味を無くしたのか鞄を手にすると、

「今日は帰るわ。あんたたちも適当に解散していいからね」

などと勝手な宣言をして部室を後にする。
知らず緊迫した空気となった部室の中で、真っ先に俺が大きな息を吐いて力なく椅子に座り込む。

「はぁー、特に何も問題なかったようだな」

「そうですね。閉鎖空間も今の所は発生していないようですし」

携帯電話を取り出し、そこに何の連絡も入っていない事を確認する古泉。
その言葉に朝比奈さんは腰が抜けたように座り込み、そのまま机に突っ伏す。
長門も再び読書に戻るかと思ったのだが、本に落とした視線をすぐに上げ、

「……あ」

小さな声を上げる。珍しくそこには困惑のようなものが見て取れた気もするのだが。
何はともあれ、長門のその小さな一言に全員が再び緊張を走らせて身構える。
一体、何が起こったのか。それとも起こっていないのか。
知らず手を握り締め、長門の言葉を待つ。
さほど間をおかずに長門は喋り出す。

「さっき、中国の喀什(カシュガル)に宇宙から飛来した物がある」

おいおい、宇宙人が本当に来たって事か。
俺の言葉に長門は首を縦に振り、続けて横に振る。どういう事だ?
あ、宇宙から何かが落ちてきたってだけで宇宙人ではないという事か。

「違う。あなたたちの言葉で言うのなら宇宙人で間違いない。
 ただし、違う次元世界からの来訪」

えっと、それはつまりあれか。ハルヒの奴が言っていた異世界から宇宙人って事か。
俺の言葉にコクリと頷いてくれる長門。って、とんでもない事態じゃないのか。
しかし、何故に中国に?

「その異なる次元世界から来た生命体はその世界ではBETAと名付けられた生命体で、
 大よそ人類にとって友好な存在ではない。その世界の未来で人類は滅亡への未知を歩みつつある」

って、何気にとんでもない事じゃないか。
見れば古泉の顔もはっきりと分かるぐらいに引き攣っており、朝比奈さんに至っては真っ青を通り越し、
いつ倒れてもおかしくないぐらいだ。
そんな俺たちに構わず、長門は淡々とその知的生命体について説明してくれる。
……聞けば聞くほど絶望を感じずには居られないのだが。
幸い、ハルヒの現実主義的な部分もあってか今は休眠状態になっているのが幸いらしいが。
それもいつかは目覚めるらしい。
その間に中国がそれを滅ぼしてくれれば良いのだが、どうも周囲にも気付かれないようになっているらしい。
落ち着いて語る長門が今ばかりは恨めしいんだが。とは言え、悪いのは長門じゃない。
長門は単に事実を述べているだけだからな。とは言え、これは機関でどうにかできるのか。
何となく古泉を見れば、困ったように肩を竦める。となると頼りは長門となるのだが。

「……今度はここに来る」

長門を見ればそんな事を口にする。
まさか、そのBETAとかが来るのか。少々腰が引けながらも尋ねれば、長門は首を横に振る。
とりあえずは胸を撫で下ろすか、と思った矢先、ハルヒの机の引き出しが勢い良く開く。

「ただいま、のび太くん……? あれ?」

今度は青い喋る狸が登場した。って、何故に机の引き出しから?

「僕は狸じゃない! こう見えても未来のネコ型ロボットなんだ!」

こう見えてと自分で言っている辺り、多少は猫に見られないという自覚があるのだろう。
とは言え、聞き逃せない単語があったぞ。思い長門を見れば、小さく首肯する。

「別次元の未来人」

正確にはロボットなんだが、そんな細かい事はどうでも良い。
本当に勘弁してくれという気持ちで困惑を見せるロボットに今事情を説明するからと落ち着いてもらう。
正直、言って信じてもらえるかどうか。
いざ、説明をと思ったところでいつの間にか立ち上がっていた朝比奈さんがお茶とお茶請けを差し出す。
ロボットなのに食べれるのかという心配も、お茶請けのドラ焼きを出した途端にあっさりと解消した。
当の本人、いや、本ロボットか、この場合。しかし、可笑しな言葉だな。うん、ここは本人で良いか。
まあ、ロボット自身が自分から好物だと手に取り、その大きな口に放り込んでくれた。
思わずまじまじと見詰めて居ると、古泉が小難しい顔をして口を開く。

「見事に宇宙人、未来人が来ましたね。となれば、次は……」

超能力者という訳か。幾ら俺でもここまで来ればそれぐらいは分かる。
だから、その良く出来ましたと親が子供を見るような顔は止めろ。
そして、その予想通り、目の前の何もないはずの空間から行き成り男女二人が現れる。
一人は全身をやや暗めの服装で身を包んだ同じか少し年上ぐらいの男。
もう人は女性でこちらは白を基調とした服装に流れる金髪の美しい女性。
普段、朝比奈さんを見ている俺でも思わず魅入ってしまうぐらいに綺麗な女性である。
が、その背中にはよく絵などに描かれる天使のような白い翼が生えていた。

「……えっと、ここは何処かな?」

戸惑い気味に女性が言葉を発し、続けて男性の方が女性を庇うように前に立つ。
思ったよりも鋭い視線で部室を見渡し、

「ここは何処でしょうか?」

女性と同じ事を聞いてくる。
あー、説明する手間が省けて助かったと取るべきか、こうも続けて呼び込むなと文句を言うべきか。
勿論、後者をハルヒに出来るはずもなく。俺はとりあえずは三人(?)に事情を説明するのであった。



で、話を聞いて分かった事は、女性の名前はフィアッセさんと言い、男性が高町さんという事だ。
超能力というか、正確にいうと病気らしいのだがハルヒが呼んだのは間違いなくフィアッセさんだな。
と俺一人が納得していると、古泉の奴が疲れた顔をしつつも何故か笑みを見せ、

「これはこれは。どうやら異世界からあなたと同じく一般人の方も来たようですね。
 これはあれですかね、あなたのポジションも呼び込んだと見るべきか、単に異世界人を呼んだと見るべきか。
 中々に興味深いものです」

古泉も相当この事態に疲れているのだろう。言葉の端々に疲れが滲んで見える。
が、異世界人という時点で一般人と称して良いのかは疑問だ。まあ、古泉の言いたい事は分かるがな。
つまり、おまえたちみたいな変な能力がないという事だろう。
……そんな事を思っていた時期が私にも確かにありました。
いや、寧ろハルヒに関係なく鍛錬のみでそこまでやるこの人の方を、
思わず異常だと思ってしまった俺を果たして誰が責められようか、いや責められまい。
まあ、かくして可笑しな事態に俺たちはまたしても見事に遭遇する事となったのであった。

涼宮ハルヒの異世界からいらっしゃい







うーん、今週は日中はそこそこ気温が上がった日もあったな。

美姫 「でも、やっぱり全体的に下がっているわね」

だな。これから寒くなるし、本当に体調だけは気を付けないとな。

美姫 「そうよね。さーて、今週はここまでみたいね」

だな。それじゃあ、今週はこの辺で。

美姫 「また来週〜」


10月1日(金)

美姫 「美姫ちゃんの〜」

ハートフルデイズ〜

美姫 「はっじまるよ〜」

<この番組は、PAINWESTの雑記コーナーより、とうとう十月に突入、とお届け中!>



とうとう十月ですよ。

美姫 「本当よね。あっという間に秋ね」

しっかし、本当に急に気温が下がったものだ。

美姫 「少し前までは暑かったのにね」

だな。でも、過ごし易くなったのは良い事だよ。

美姫 「確かにね」

やっぱり暑いよりは良いな〜。

美姫 「さて、それじゃあ今週も元気にCMからいってみましょう」







「はぁ、暇だな」

「暇、じゃな」

「暇ですね〜」

広々とした広間、天井までの高さは優に十メートルを超え、
左右にずらりと等間隔に大きな柱が入り口まで並ぶ様は威圧感さえ感じられる。
ステンドグラスのような物は一切ないが、それでも大聖堂と言われれば納得してしまう荘厳さがここにはあった。
が、ここに居る恭也たちにとってはそれがどうしたという気分であった。

「恭也〜、暇じゃし余と良い事をしようぞ」

「あら、暇潰しにされるのでしたらお止めになった方が宜しいですわよ、アルシェラさん。
 沙夜はそのような暇潰しではなく恭也様の為に」

広間とも呼ぶべき場所の最奥にあり、背後には上へと続く長い階段。
その数段上の段に腰を下ろす恭也を間に置いて、アルシェラと沙夜が火花を散らす。
最早、ここに辿り着いて何度、何十度となるやり取りにそっと溜め息を吐き、
それでも止めずにはおけないという事で恭也は二人を止める。

「はぁ、何でこんな事に」

「何でも願いを叶えるという世界樹でも流石に世界を超えるのは容易ではなかったようじゃな」

「だからと言って、このような場所に飛ばされた沙夜たちからすれば納得しかねますけれどね」

目を閉じ、今度こそ元の世界へと希望と願いを胸に抱いたのは何ヶ月前だっただろうか。
半年は経っていないはずだと思いながら、変わり映えしない景色に日数を数えるのを止めた事を少し後悔する。
まあ、数えていたとしても現状が打破される訳でもないので意味がないが。
ともあれ、数ヶ月前に閉じていた目を開けばそこは一面の白銀の世界だった。
軽装だった恭也たちが目に付く位置にこの建物を発見できたのは運が良かった。
神殿の様な建物に入り、今腰を下ろしている長い階段を上れば、
そこにはこの神殿で何かを待っているという二人の巫女に出会い、こうして滞在の許可まで得られたのだ。
ただし、その際にこの場所には他に町も村もなく、島である事。
この島を出るには船しか交通手段はないのだが、前者から当然船があるはずもない事を聞かされた。
早い話、恭也たちはこの島に閉じ込められたのである。
幸い食料だけは豊富に存在おり、食べる事には困らないのだが。
自力で船を作ろうにも、周囲は雪しかなく、また近い大陸でも数十キロと離れていて、
とても筏で渡り切るのは無理であったが。
つまりは自力で脱出する術がないのである。
絶望しかける恭也に、二人の巫女が希望を与えなければ流石に暫くは落ち込んでいたかもしれない。
その希望こそが勇者と呼ばれる存在であった。
どうやら、この世界は魔王が世界を支配しており、それを倒すべく勇者が旅に出ているらしい。
いずれ世界中に散らばるオーブを集めて、ここに来るはずだと聞かされたのだが。

「はぁ、ただ待つだけというのは本当に暇だな」

「鍛錬ばかりという訳にもいかんしのぉ」

「早く、その勇者さんとやらが来てくれないと困りますわね」

早い話、聞かされた勇者とやらが来るまで恭也たちは何もする事がないのだ。
ここがどういう世界かは聞かされたが、元の世界に戻る手掛かりは全く掴めていない。
それもまた恭也を焦らせる事の要因となっているのだが、何とか気を落ち着ける。
もう一つの気がかりとして、来たとしてもここから連れて行ってくれるかどうか。
魔王退治の途中で構わないから、適当な所に降ろしてくれるだけでも良いのだが。
そんな事を考えながら、階段を見上げる。
ここからでは最上階は全く見えないが、そこでは今も待ち続ける二人の巫女がおり、
滞在中に何度とその姿を目にして、今では簡単に思い描く事が出来る。
何せこの二人、日中はずっと同じ格好で祈を捧げているのである。
失礼な話だが、よく飽きないなと時間を持て余している今は痛感する。
と、その恭也の頬が右から引っ張られ、左腕にはチクリと小さな痛みが走る。
見れば、それぞれアルシェラと沙夜が恭也の頬を引っ張り、腕を抓っていた。

「すぐ近くにこのように良い女が居ると言うのに他の女の事を考えるとはな」

「恭也様、あまりにも無情でございます」

すっかりご機嫌が斜めになってしまった二人を宥めつつ、恭也は心底勇者の到来を待ち望むのであった。



恭也と剣の放浪記 〜そして伝説のお手伝い〜







冒頭に気温の話をしたけれど、流石に日中に走ると薄っすらと汗掻くな。

美姫 「まあ、冬場だって走れば汗は出るしね」

おおう、言われてみればそうだった。
あははは、全く思いつかなかったよ。

美姫 「うん、つくづくアンタがバカだって実感したわ」

褒めるな、褒めるな。

美姫 「ねぇ、しんどいから突っ込まなくても良いわよね」

うっ、スルーが一番辛いんだよ〜。

美姫 「アンタの苦しみは私の喜びなのよ」

いやいや、もっと違う喜びを作れよ。

美姫 「失礼ね、他にも喜びはあるわよ」

ほう、例えば?

美姫 「アンタを殴ったり、アンタを刺したり、アンタが悶えていたりしたら最高よね」

やっぱりかよ!
って、俺も突っ込まないからな!

美姫 「もう既に突っ込んだと思うけれど、まあ良いわ。後はアンタを切り刻んだり、燃やしたり♪」

う、うぅぅ。突っ込みません、勝つまでは。

美姫 「他には吹っ飛ばした時なんかはもう最高よね。苦痛に悶える浩に更なる苦痛を与える……ああ、楽しい♪」

想像しているだけなのに楽しそうだな。って、突っ込まないぞ……。

美姫 「そうそう、最近やってみたいのは、アンタの爪と肉の間にこう針をゆっくりと刺していて……」

って、もう止めてあげて!
想像の中とは言え、俺が不憫すぎる!

美姫 「はい、突っ込んだわね。アンタの負け〜」

いやいや、突っ込むだろう流石に。っていうか、やってみたいって。

美姫 「アンタが変な事を言うからついつい私もむきになったじゃない」

そ、そうか、そうですよね。
俺に突っ込みをさせるためにわざと言ったんだよね。あぁ、本当に怖かった。

美姫 「当たり前じゃないの。半分ぐらいは冗談よ」

おい、半分は本気なのかよ。
と言うか、最後の部分は是非とも冗談であって欲しいんだけれど。

美姫 「どうかしらね〜」

いやいや、そこははっきりとしておこうよ、ねぇ!

美姫 「あ、もう時間だわ」

って、またしてもスルー!? 否定してくれよ!

美姫 「はいはい、拗ねてないで締めるわよ」

拗ねているんじゃなくて嘆いているんだが……。

美姫 「私が締めても良いの?」

うぅぅ、締めますよ。
それじゃあ、今週はこの辺で。

美姫 「また来週〜」



ねぇ、最後のは冗談だよね、ね。

美姫 「〜〜♪」

冗談だと言ってくれ〜!

美姫 (うん、やっぱり虐めると楽しいわ♪)

シクシク……。


9月24日(金)

美姫 「美姫ちゃんの〜」

ハートフルデイズ〜

美姫 「はっじまるよ〜」

<この番組は、PAINWESTの雑記コーナーより、急に冷え込んだな、とお送り中!>



いや、急に冷え込んだな。

美姫 「びっくりしたわね」

このまま寒くなるのか、また暖かくなるのか。

美姫 「どっちかしらね」

にしても、本当に急だったな。

美姫 「お蔭で少し調子が狂うわ」

ああ、鬼の霍乱ってやつだな。ぶべらっ!

美姫 「ごめん、よく聞こえなかったわ」

う、うぅぅ、何も言ってないよ。

美姫 「そう。てっきりまた悪口でも口にしたのかと思ったわ」

滅相もない!
そげな恐ろし……もとい、そんな事しませんよ〜。

美姫 「はいはい。特に話題もないみたいだし、今日はこのままCMに行くわよ」

どうぞどうぞ〜。

美姫 「それじゃあ、今週もCMいってみよ〜」

……ほっ、助かった。

美姫 「さて、それじゃあその間にちょっと裏に行こうか。少しお話しましょう」

……あ、あははは。某魔法少女とお前のお話しようは受けない事にして――って、無理矢理引っ張っていくな〜。







「なんちゃってみかみりゅう〜、ざん!」

道場内に可愛らしい声が響く。
が、そんな声とは裏腹に繰り出された攻撃は中々に鋭く、対戦していた美由希は後ろへと跳び退る。
三十センチ足らずの身長から繰り出される攻撃は予想以上に受け止め難い。
故に殆どの攻撃を躱す事でやり過ごす。
が、これまたフェイにゃんの予想以上に素早い攻撃と的の小ささ故に反撃し辛い。

「ぬき〜」

「残念だけれど、それは貫になってないね」

言いながら後ろへと下がる美由希に向かい、高町家の新たな居候、フェイにゃんは動きをピタリと止め、
両手を口元に当てて潤んだ瞳でじっと見上げると、

「美由希お姉ちゃん、抱っこして」

甘えた声に思わず美由希が抱き付いて来ようとした所へ右手を振るう。

「ふぎゃっ!」

左手の甲に感じた痛みに思わず声を上げて持っていた木刀を手放してしまう。
痛みで正気に戻った時には、既にその喉元に木刀が突きつけられていた。

「う、うぅぅ、あううぅぅぅ」

背後から感じる呆れと批難混じりの視線に冷や汗が知らず流れる。
怖くて振り向く事が出来ない美由希の目の前でフェイにゃんは勝利の喜びを全身を使って素直に現す。

「なのはに教えてもらった、なんちゃってみかみりゅう、ぬきもどきはすごいよ〜♪」

くるくると踊るように舞うフェイにゃんの頬を緩めそうになりつつ、美由希は覚悟を決めてゆっくりと振り返り、

「あれは卑怯だよ! 誰だって引っ掛かるよ!」

恭也が何か言うよりも先に言い訳を始める。

「恭ちゃんだってきっと同じ結果になるはず!」

力説する美由希の視界の隅で、桃子から買い与えられた携帯電話を取り出し、フェイにゃんはなのはへと電話する。

「なのは、なのは! なのはの言ったとおりにしたら美由希さんに勝ったよ。
 恭也さんには通じなかったけれど、なのはの言うとおり美由希さんには通じたよ」

策を授けてくれたなのはに嬉しそうに報告する。
その内容を聞いて美由希は恭也をじっと見詰める。

「恭ちゃん、あれをやられても普通に攻撃したんだ。
 鬼畜だね。って、いたっ!」

「たわけ。引っ掛かるお前の方が可笑しいんだ。
 そもそも鍛錬をして欲しいといってきたのはフェイにゃんなんだ。
 だったら、ちゃんとやらないと困るのはフェイにゃんだろうが」

「それはそうなんだけれど」

普段はなのはと同じようにフェイにゃんにも甘いくせに鍛錬になると容赦がない。
理由は勿論分かっているのだが、それでもあの攻撃に平然と反撃できるのが信じられないと恭也を見るのだが、

「寧ろ、俺は今までお前を甘やかしてしまったのではないかと思ってしまったんだが」

「あ、あははは。そんな事はないよ、うん、絶対にない」

恭也の言葉にあっさりと恭也を責めるのを止め、何とか宥めようと必死になる。
その傍らで、フェイにゃんは大きな達成感を感じながらふ〜、と一息つくように汗を拭い満足そうな顔をしていた。
それを視界の隅に捉えて頬が緩む美由希の額に鋭い痛みが走るのはすぐ後の事である。
こうして、恭也や美由希に時折鍛えられ、フェイにゃんは目的の為に日々努力しているのであった。



フェイにゃん 〜とある鍛錬の風景〜







美姫 「さて、久しぶりにまたこのネタなのね」

…………。

美姫 「やりたかったの、そう。まあ、それは良いんだけれどね」

…………。

美姫 「にしても、先週、今週と更新できてないんだから来週こそはちゃんとしてよ」

…………。

美姫 「まかせておけって? え、何、来週は五十話は更新してやるって。頑張るわね」

って、そこまで言ってねぇ!

美姫 「あ、もう復活した」

ったく、何て事をするかな。間違いなくトラウマになるぞ、普通は。

美姫 「うん、だから他の人にはしないのよ」

そうか。いや、もう何か諦めたよ色々と。

美姫 「言い方が少し気になるけれど、まあ良いわ」

さて、特に連絡事項もないし。

美姫 「それじゃあ、この辺にしておきましょうか」

だな。

美姫 「皆さん、急に寒くなった事もあり体調にはくれぐれも気を付けてくださいね」

それじゃあ、今週はこの辺で。

美姫 「また来週〜」


9月17日(金)

美姫 「美姫ちゃんの〜」

ハートフルデイズ〜

美姫 「はっじまるよ〜」

<この番組は、PAINWESTの雑記コーナーより、うぅぅ体がだるい、とお届け中!>



あうぅぅ……まだ体調がおかしい。

美姫 「夏風邪?」

分からん。未だに頭がぼ〜っとする。今週初めからずっとこの調子だ。
という訳で、申し訳ないが今回は短めにいくぞ。

美姫 「うん、却下」

何故に!?

美姫 「アンタの都合なんて知らないわよ」

うぅぅ、何て酷い仕打ち。
って、もう駄目……。

美姫 「って、こんな所で倒れないでよ!」

いや、もう本当に辛いんだって。

美姫 「はぁ、仕方ないわね。短めにいけば良いのね」

お願いします。

美姫 「それじゃあ、また来……」

って、幾らなんでも短すぎだろう!

美姫 「何よ、人が親切に切り上げてあげたのに」

いや、まあ確かにありがたいんだが。

美姫 「だったら、締めるわよ」

おう。ついでにメイド服で看病など――ぶべらっ!

美姫 「よく聞こえなかったわ」

うぅぅ、弱っていても容赦なしなのな、おまえ。

美姫 「弱っててもアンタはアンタね」

はっはっは。

美姫 「ほほほほ」

はぁ、無駄な言い合いは止めよう。

美姫 「そうね。本当に顔色悪そうだし」

まあな。という訳で、申し訳ありませんが今週はこの辺で。

美姫 「また来週〜」


9月10日(金)

美姫 「美姫ちゃんの〜」

ハートフルデイズ〜

美姫 「はっじまるよ〜」

<この番組は、PAINWESTの雑記コーナーより、暑さも少しはましに……? とお送り中!>



美姫 「ずばり、犯人はアンタよ!」

ぶべらっ!
い、行き成り何を。しかも、先週と同じような入り方。

美姫 「私がとっておいたケーキを食べたでしょう」

……いやいや、食べてませんよ!

美姫 「嘘言いなさいよ! じゃあ、どうしてないのよ!」

そんな事を言われても知る訳ないだろう。

美姫 「昨日、多めに買って来て、今日の分を残しておいたのに」

だから知らないって……って、お前、夜にもケーキ食べてたよな。

美姫 「美味しかったわ〜」

で、とっていたケーキは何個?

美姫 「一個よ」

夜に食べたケーキは何処から?

美姫 「そんなのとっておいた……あ」

ほれほれ、言ってみ〜。

美姫 「あー、誰にでも間違いはあるわ。それを寛大に許す心が大事なのよ」

今更、何を言っているかな。人の所為にして、どうしてくれるんですかね〜。
あ〜、許すにしても一言欲しいよな〜。
ほらほらほら〜。

美姫 「う〜、何を偉そうに!」

ぶべらっ!

美姫 「ちょっとした勘違い、もとい物忘れしただけでアンタにそこまで言われる謂われはないわ!」

あべべべべっ!

美姫 「ほらほらほら!」

ぶべらっ!
ぼげぇごはっ!

美姫 「まだまだ!」

びゅぎょがばべぶぎゃぁ!

美姫 「何か言う事はある?」

ご、ごめんなさい。

美姫 「分かれば良いのよ」

うぅぅ、って、何か可笑しいですよね!?

美姫 「そう? どこが?」

いや、どこも何も。

美姫 「いつもと同じじゃない」

ん? 言われてみればそうだよね。じゃあ、問題ないか。
って、いやいや、やっぱり何か可笑しいよね。って、俺も既に慣れてしまっている!?

美姫 「気にしない、気にしない」

そうだな、って、お前が言うな!

美姫 「それじゃあ、今週も元気にCMいってみよ〜」

おーい、人の話を聞けよ頼むから。







結界。魔法が存在しない世界においても、この言葉を知る者は意外と多い。
古来より存在する言葉であるからだが、それが目に見える形ではっきりと認識できるのは数限られて者だけである。
ましてや、この世界に存在しないはずの系統となれば更に数は減り、
その中で何が起こっているかなどは当事者たちにしか分からない。
事実、少し前までは恭也も知る事のない方に分類されるはずであったのだ。
あの日、一人の使い魔と出会いデバイスを貰わなければ。
そんなくだらない事を思いつつ、恭也はグラキアフィンを手に目の前に立つ炎のような女性を見遣る。
鋭い眼差しは敵を射抜き、纏う空気は歴戦の戦士を思わせる。
手にしたデバイスは剣の形をしており、その振る舞いもまた騎士を名乗るのに相応しい。
純粋に剣術のみならば恐らくは恭也が上回る。が、そこに魔法が加わるとよくて五分。
これは恭也が全く魔法の運用をしておらず、グラキアフィンに頼っているからこそだ。
寧ろ、ここまで勝率を引き上げているグラキアフィンを褒めるべきなのだが。
実戦の経験もこれまた相手の方が上回っているだろうから、更に勝率は下がるだろう。
それが恭也が導き出した結論である。
事の起こりは突如発生した結界にあった。
その中になのはが閉じ込められたとの報告を受け、急遽、近くに来ていたアースラの局員と合流。
フェイトたちと共に結界へと飛び込み、襲われているなのはを助けに入ったのだ。
実際に敵の攻撃を受け止めたのはフェイトで、恭也は周囲を警戒していた。
そこに引っ掛かったのが目の前の騎士を名乗るシグナムである。
他にも守護獣を名乗る狼も居たが、そちらはアルフが対応している。
フェイトはなのはを襲った少女を相手取り、件のなのははバリアジャケットを再生する余力もないようなので、
今現在、近くのビルの屋上で休ませている。
改めて現状を確認していると、ユーノから結界を解除するまでの時間稼ぎを要求される。
長くは無理だと返し、少しでも時間を稼ぐために恭也は口を開こうとしたその時、胸に不意に腕が生える。

「……これは何だ」

【主様、そこはもう少し大き目のリアクションをしないといけないのでは。腕が生えてきたんですよ!】

グラキアフィンの方が恭也よりも慌てて告げる。
何せ主の胸から腕が生えてきているのだ。対する恭也は痛みも何も感じないために平然としているが。
故にこそ、グラキアフィンも慌てつつもある程度は落ち着いていられるのかもしれない。

「それでは改めて……なんじゃこりゃぁぁ! で、良いのか?」

【恐らくはそれで宜しいかと。確か、昔のドラマの台詞でしたよね】

「ああ、先日かーさんが懐かしいと借りてきたDVDでは確かこんな感じだったと思うが」

【流石、主様です。迫真の演技でした】

「あれで迫真の演技だったのか? 表情一つ変わってなかったように思うが」

思わず敵対しているシグナムがそう口に出すと、恭也は改めてグラキアフィンを構えてシグナムと対峙する。

「さて、それでは続きと行こうか」

「こちらとしては異存はないのだが……。その、お前は何ともないのか?」

腕を生やしつつ、それを気にしない恭也に思わず問いかけてしまう。
それに対し、やはり恭也は平然とした様子のまま、

「まあ魔法があるんだからこれも魔法の一つなんだろうな、と認識した。
 で、特に問題もないので続行しようと考えたのだが、やはり問題があるのだろうか。
 とは言え、この攻撃の意図を見出せない。確かに驚かせるという点では効果があるかもしれないが」

やせ我慢とかではなく、本当に何ともない様子の恭也にシグナムは念話で腕の持ち主へと話し掛ける。

≪シャマル、早くリンカーコアから魔力を抜き出せ。流石にこれ以上の引き伸ばしは無理だ≫

≪ご、ごめんなさい。あまりのやり取りに少し呆けていたわ。すぐに魔力を抜き出すからもう少し時間を稼いで≫

恭也と同じ分析を相手にしていたシグナムの僅かに焦りが見える念話に、こちらは幾分間の抜けた感じでそう返すと、
シャマルは取り出した恭也のリンカーコアから魔力を抜き出すために集中し、

≪へっ?≫

思わず間抜けな声を出してしまう。
当然、それはシグナムにも聞こえており、シグナムは恭也と対峙しながらシャマルに何かあったのか尋ねる。

≪その、魔力の抜き出しが終わったんだけれど≫

≪もう終わったのか? 随分と上達したじゃないか≫

≪そうじゃなくて、死なないように限界まで搾り取ったのに、
 一ページも埋まらないどころか、一行にすらならないのよ!
 たったの二文字しかないの! 何か細工している様子もないし、そっちの様子はどう?≫

≪至って普通だな。平然としている。魔力を行使した形跡もなければ、何か細工した様子もない。
 そもそもリンカーコアに細工のしようなどないと思うが。失敗したのではないか?≫

≪そんな事ないわよ。念のためにもう一度調べてみたけれど、確かに魔力が抜かれた状態になっているわ≫

≪だが、現に奴は空に浮いているぞ≫

≪それも信じられないけれど、見ていた限り魔力量は少なく見積もってもAAに匹敵する程だったのよ。
 でも、この量だと下手をしたらFすらないわよ。魔力なしとしか言えないわよ≫

FとはそもそもEランクにすら届かないランクという事である。
つまり、魔力が僅かでもあればそれはFランクになる。が、あまりにも少ない場合は、魔力反応なしとなる。
下手をすれば、その魔力なしの状態だと告げるのだが、当然シグナムとしては信じられる訳がない。
とは言え、どんなからくりだとしても、リンカーコアから魔力を抜き取ったのだ。
つまりはシャマルの言の方が正しく、それを読み違えると思えないぐらい長い付き合いだしシャマルを信頼している。
困惑するシグナムに構わず、恭也は慎重に様子を伺い、

≪主様、目の前の敵よりも先にこの腕の持ち主を何とかした方が良いかもしれませんね。
 分析の結果、この腕の主はリンカーコアを抜き取ったようです。
 これは今まで魔導師が襲われて昏倒した事件の元凶ではないかと推測できます≫

グラキアフィンの言葉を受け、恭也はすぐに行動に移る。
とは言え、単に胸から生えた腕を両手で掴んだだけだが。

「掴まえた、と言えるかどうか分からんがこれで良いか」

慌てて暴れ出す腕を押さえ込む恭也に、シグナムが襲い掛かる。
その攻撃を辛うじてかわしながら、恭也は腕を掴む手に力を込める。
と、その頭上にふと影が射し、

「おまえら、何を遊んでいるんだー!」

叫ぶなりハンマーを振り下ろす少女。しかし、恭也は既に気配からそれを察しており、大きくその場を跳び退く。
が、シグナムとヴィータ二人がかりの攻撃に流石に腕を掴む手の力が緩み、一瞬の隙を付かれて腕が消える。

「逃がしてしまったか」

悔しそうに呟く恭也の前で、シグナムとヴィータが慎重に距離を計りながらデバイスを構える。

「おめぇー、一体何者だ。
 リンカーコアから魔力を取られてピンピンしているだけじゃなく、未だに魔法を行使しやがって。
 非常識にも程があるだろう」

「敵対する者にまで非常識などと言われるとは。しかも、当たり前のように空を飛んでいる子に言われるとは。
 俺から言わせれば、そっちの方が非常識だと言うのに。
 そもそも、ピンピンしているというのは語弊がある。何故か分からないが、若干とはいえ疲労を感じているんだ。
 まあ、動けないほどではないがな」

「ふざけてるのか? って、邪魔するなシグナム」

恭也の言葉に激昂するヴィータを片手で制し、シグナムは恭也へとレヴァンティンの切っ先を向ける。

「落ち着け、ヴィータ。彼の者は自身を剣士と言った。ならば、それが答えなのだろう」

「言葉遊びしている訳じゃねーだろうが」

「そうだな。だが、現実として目の前で魔力を抜かれたにも関わらずに宙に足場を作り、そこに居る。
 ならば、後は何の問題もない。全ては叩きのめしてから調べるなり何なりすれば良いだけだ」

「そう簡単にさせると思うか?」

「簡単にはいかないかもしれないが、こちらとしても負けるつもりはないんでな」

不適な笑みをわざとらしく浮かべグラキアフィンを構えれば、シグナムもまたレヴァンティンを構えて笑みを見せる。
ヴィータのバトルジャンキー共がという呟きを流し、二人は互いの得物を振るう最善のタイミングを計る。
が、不意にシグナムの脳裏にシャマルの警告の念話が届く。
直後、結界を破壊する大きな砲撃が放たれる。見れば、この混戦の発端となった少女が屋上でデバイスを構えている。
つまり、自分たちは完全に少女――なのはの事を忘れていたという事である。
確かにダメージを与えてはいたが、これは失策と言えるだろう。
シャマルにしても恭也の件で驚き、目をつけていた魔力の多いなのはのリンカーコアを蒐集できなかったのは痛い。
なのはに匹敵すると思った恭也の魔力の蒐集も出来たらと欲をかいたのが失敗だった。
だが、それも仕方なかったかもしれない。片やいつでも抜ける程度には痛みつけられて動きの鈍い少女。
片やシグナムと剣術においては互角に渡り合う自称、剣士が動きを止めて隙を見せている。
両方の魔力を欲した時どちらを先にするかなど相談するまでもない事だ。
とは言え、今回はそれが裏目に出てしまったのは確かである。後悔するにしても後にするべきだろう。
シャマルはすぐに探索魔法に対する処置を施し、全員に撤退を提案する。
それはリーダーであるシグナムの了承によりすみやかに行われる。若干一名は多少文句を言いつつも従う。

「剣士よ、再び合間見えたその時は」

「ああ、思う存分にやりあおう」

逃げるシグナムたちを見送り、恭也は結界を破壊して疲労からか倒れたなのはの元へと向かう。
こうして、恭也たちとヴォルケンリッターたちの最初の邂逅は引き分けというような形で幕を閉じたのだった。



リリカル恭也&なのはA's 嘘予告







流石に9月に入って、少しは暑さも和らいだかな。

美姫 「まだ充分に暑いけれどね」

まあな。日中は暑いよな。でも、少しはましになってきたと思う。

美姫 「これから徐々に下がっていくのかどうかよね」

徐々に涼しくなって、段々と寒くなるか、逆に一気に寒くなるか。

美姫 「四季をゆっくりと感じたいわね」

確かにな。
去年みたいに紅葉の時期が少ないとかは情緒がないというか。

美姫 「そういえば、去年は秋がちょっと可笑しかったのよね」

来年は冬が可笑しくなるか、それとも春か。

美姫 「また気の早い話で。でも、春といえば来年の花粉はこの猛暑の所為で五倍とか十倍とか言ってたわね」

それは本当か!?
もしそうなら益々俺は暑さが嫌いになった!

美姫 「アンタに嫌われても痛くも痒くもないでしょうけれどね」

うぅぅ、冬が来てずっと冬だったわ良いのに。

美姫 「それはそれで異常気象なんだけれどね」

って、まだ来ても居ない春の事でここまで憂鬱になるとは。

美姫 「まあ、来年の事はその時考えなさい」

んなお気楽な、と言いたいが今回は結構先の話しだしな。
どうせ、春になったら嫌というほど花粉の話をするだろうし。

美姫 「そうそう。今は夏から秋に変わる事を考えれば良いのよ」

だな。とは言え、連日の猛暑がましになったとは言え、未だに三十度は超すみたいだしな。
皆さんも、まだまだ熱中症などには気を付けて下さいね。

美姫 「それじゃあ、キリも良い感じだし、今週はここまでにしましょうか」

だな。それじゃあ、今週はこの辺で。

美姫 「また来週〜」


9月3日(金)

美姫 「美姫ちゃんの〜」

ハートフルデイズ〜

美姫 「はっじまるよ〜」

<この番組は、PAINWESTの雑記コーナーより、9月に突入、とお届け中!>



ずばり、犯人はあなたです!

美姫 「いや、いきなり言われても意味が分からないから」

とぼけないでください。
この部屋は鍵が掛かってました。そして、たった今、私が鍵を使って開けたんです。
スペアキーは貴女しか持っていません。

美姫 「だから、推理する前に他に説明する事があるでしょう」

そして、開けたばかりの部屋に入り、私が楽しみに取って置いた饅頭を食べようと戸棚を開けたら……。

美姫 「あ、饅頭ならもらったわよ」

なかった……って、あっさりと自白!?
今までの前フリ全て無視ですか!?

美姫 「私としてはこしあんも良いけれど、今日は粒あんって気分だったんだけれどね。
    まあ、そこは我慢してあげたわ」

あ、ああ、ありがとう。って、何で礼を言ってるんだ俺!
じゃなくて、勝手に食べるなよ!

美姫 「良いじゃないの。私は気にしない。だから、アンタも気にしない。オッケ〜♪」

いやいやいや。

美姫 「もうしつこいわね」

よく考えてみてくれ。例えばお前が楽しみにケーキをとっておいたとしよう。
よ〜し、帰ったら食べるぞと思って帰ってみたら、そこには既に食べられたケーキと俺――ぶべらっ!

美姫 「人のケーキを勝手に食べてるんじゃないわよ! すぐに買いなおしてきなさい!」

は、はい! って、待て待て待て!
今のはあくまでも例えであって、本当には食べてないよね。

美姫 「ああ、そういえばそうだったわね」

しかも、ただの想像でこの仕打ち。よーく考えてみような、美姫。
まず、お前の目の前にある皿は何だ?

美姫 「饅頭の置いてあった皿ね」

で、その饅頭は誰のだ?

美姫 「私の」

うん、よし。まずはそこから見直そうか。
美姫は自分の分はもう食べ終えたよな。

美姫 「ええ、たった今ね」

いやいや、違うでしょう!
美姫が食べ終えたのはもっと前! ほら、よ〜く思い出してみようか。
その皿にあった饅頭は俺がとっておいた物だよね。

美姫 「そんな記憶があるわね」

だろう。つまり、そこにあった饅頭は、

美姫 「私のね」

何でやねん!
よし、もう一度説明しよう。お前の分は。

美姫 「はいはい、一万歩譲ってアンタのにしてあげるわよ」

それはどうも。って、譲ってもらわないといけないのか?
ま、まあ、良い。その俺の饅頭をお前は食べたよね?

美姫 「??」

何でそこで不思議そうな顔をするの!?
うぅぅ、もう良いです。

美姫 「あー、やっぱりアンタの楽しみを奪うと余計に美味しく感じるわ」

って、認識してたのかよ!

美姫 「それじゃあ、今週もCMいってみよ〜」

シクシク。







「…………」

無言でじっとこちらを見上げてくる視線。
無愛想と表現するのが一番相応しい表情で、ただただじっと見上げてくる。
つられた訳ではないが、同じように表情を変えずにじっと見返す恭也。
その身長は優に一メートル以上はあり、普通なら泣き出しても可笑しくはない。
が、見詰められた者はやはり表情を変えず、ただじっと恭也を見上げてくるだけである。
暫し無言で睨み合い――当人たちにしてみればただ普通に見詰め合っているだけだが――、
このままでは埒が明かないと思ったのか、美由希が苦笑めいたものを浮かべて恭也たちの間に割って入る。

「二人して無言にならないでよ」

「で?」

美由希の言葉に返答というよりも明らかにそれは何だという視線を向ける。
それを受けて美由希は事も無げに返す。

「よく分からないけれど拾ってきたの」

「拾……いや、そこは良い。あー、一応、それは人、なのか?」

いまいち目の前に居る者が信じられないとばかりに尋ねる恭也。
何せ、目の前には五十センチ程の身長をし、両手両足をしっかりと持つ人の姿をしているものの、
その等身が明らかに二頭身であり、全体的にちょっと丸みを帯びて見える。
故に出た言葉であったが、美由希はそれに対して、

「うーん、よく分からない。まあ、細かい事は良いじゃない。
 それよりも何となく恭ちゃんに似ていると思わない? 全身黒だし。
 という訳で、キョーと名付けてみました」

「勝手に名付けるな!」

「えー、でもキョーって呼ぶと反応するし」

美由希の言う通りらしく、キョーと呼ぶと無言ながら反応を返す。
どうもそれを自分の名前として認識してしまったらしい。
頭を抱えそうになるのを堪え、恭也は改めて目の前のキョーをじっと見る。
やはり人とは思いにくいのだが子供でも通るかもしれない。
まあ、最初に恭也が入って来た時の信じられない速度を見ていなければ、だが。

「キョーは素早く動くのが得意みたいなんだよ。
 おまけに壁だろうが天井だろうが忍者みたいに普通に走れるし」

ああ、やっぱり最初のあれは見間違いではなかったのかと一人納得し、次いで心当たりに連絡しようとする。

「忍の可笑しな発明品だろう、どうせ」

「所が今回はそうじゃないのよね」

普通に背後から声を掛けられ、恭也が疲れた顔で振り返れば、そこには今電話しようとした忍の姿があった。

「ほら、私もこの子拾ったんだけれど、眼鏡にみつあみで美由希ちゃんに似てない?
 だからみゆみゆと名付けたのよ。で、この子、意外と凄いのよ。
 どうも自分だけじゃなくて触れている人の気配までも完全に消せるらしくてね」

忍の言葉に背後にいて気付かなかった理由が分かるも、それはそれで信じがたい話ではあった。
やはりお前の可笑しな発明じゃないのか。そう疑いの目を向けるも、忍は天地神明に誓ってそれを否定する。
それでも尚、疑わしそうに見る恭也に大げさに忍が嘆いて見せると、
腕の中で抱かれていたみゆみゆが忍の前にたんと飛び降り、精一杯両手を広げて忍を守ろうとする。
凛々しいというよりも愛くるしいその姿に、襲撃者たる恭也ではなく守護するべき忍に後ろから抱き付かれる。

「ああ〜ん、もう可愛い♪ 疑っているけれど本当に違うわよ。
 だって、この子は自動人形とかじゃないもの。ちゃんと中身も生物よ」

諦めてこういう種族が居るんだと納得しろと忍は付け加える。
流石に目の前に居るのに否定したりするつもりはなく、恭也も忍の仕業じゃないと判断するとあっさりと受け入れる。
それはそれでどうなんだろうと思わなくもないが、これこそが高町クオリティーだと忍は思うのであった。
みゆみゆは忍の抱擁から何とか抜け出すと、キョーの前までトテトテとやって来て恥ずかしげに頭を下げる。

「みゅーみゅー」

どうやら挨拶しているのだろう。
対するキョーはやはり無言のまま、小さく頭を上下に動かして応え、それに気を悪くした様子も見せないみゆみゆ。
そんなやり取りを頬を緩めながら見守る忍と美由希を置いて、恭也はリビングの入り口へと振り返る。
丁度、リビングへと入ってきたなのはは恭也と目が合い、慌てた様子で誤魔化すように笑う。
何となく感じるものがあったのか、恭也は牽制するように言う。

「うちでペットは飼えないぞ」

「分かっているよ。でも、それに近いかも。あのね、お兄ちゃん」

そこまで口にして、リビングにいるキョーとみゆみゆに気付く。
顔を綻ばせつつも困ったようなという複雑な表情を作り上げ、なのははおずおずと後ろ手に隠したものを出す。
見れば、四十センチ程の慎重に金髪の小さな女の子が抱きかかえられている。

「藤見台の所で一人で歌っていたの。帰る所とかもないみたいだし連れて来たんだけれど……」

声を小さくしながら言うなのは。
と、その腕の中にいた女の子は背中から小さな白い羽根を生やし、ふよふよと恭也の元へと飛んでくる。
真っ直ぐに飛ぶのは難しいのか、少し左右に蛇行しながらも何とか辿り着くと、そのまま恭也の胸に抱き付く。
どうやら気に入られたらしいのだが、恭也としては思わず姉を思い出してしまう。
そんな思考に嵌っている内に満足したのか、女の子はそのまま恭也の腕を伝い肩に登り、
そのまま頭の上にちょこんと身体を乗せると、そこが定位置だとばかりに鼻歌まで歌い出す。

「フィアちゃん、こっちにおいで」

今付けたのか、初めから付けていたのか、兎も角なのはがそう呼ぶも嫌々と首を横に振る。
拗ねたように恭也を見るも、恭也にしてみれば俺が悪いのかという心境である。
やがて、なのはも諦めたのか今度はキョーとみゆみゆに興味を示してそちらへと視線を向ける。
なのはも加わって三人でキョーとみゆみゆと遊び出すのを見ながら、恭也は疲れた溜め息をそっと吐く。
だが、この時はまだ思ってもいなかった。
これから更にこの不思議な生き物が増えるだなんて。



ぷちとらハ







うぅぅ〜。今日はもうお終い!

美姫 「良いわよ、別に」

へっ!?
本当に良いの?

美姫 「ええ。だって、元々時間がなかったもの」

…………うぅぅ。

美姫 「良いから、さっさと締めなさい」

納得いかねぇ! ぶべらっ!

美姫 「五月蝿いわよ」

す、すみません……。

美姫 「ほら、早くしなさい」

へいへい。
それじゃあ、今週はこの辺で。

美姫 「また来週〜」










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