戯言/雑記




2012年

12月28日(金)

美姫 「美姫ちゃんの〜」

ハートフルデイズ〜

美姫 「はっじまるよ〜」

<この番組は、PAINWESTの雑記コーナーより、もう今年も後僅かだよ! とお送り中!>



一気に冷え込んだな。

美姫 「本当よね。急に寒くなった感じだわ」

まあ、俺は暑いよりも寒い方が良いからな。冬、最高!

美姫 「まあ、毎年同じような事を言っているけれどね」

あははは。にしても、今年も後僅かだよ。

美姫 「早いものね」

だよな。しみじみと感じる今日この頃。

美姫 「そんな訳で例年通りにお知らせよ」

恐らくは来年1月10日ぐらいまでは更新が出来なくなると思います。

美姫 「ちょっと今年は長いわね」

うーん、もしかすると早まる可能性はあるけれどな。

美姫 「一応は、それぐらいを目安にしてね」

これまた例により投稿自体は問題ありませんので。

美姫 「さーて、連絡はこれぐらいね」

だな。

美姫 「なら、後は今年最後のお仕置きね」

……はい?

美姫 「今年の更新の遅さというか、あまり更新できてないもの」

いやいや、色々とね、色々と。

美姫 「言い訳は後で聞いてあげるわ」

お仕置きされたくないからこその言い訳をお仕置きされた後に聞いてもらっても意味ねぇよ!

美姫 「一息に言い切ったのは良いけれど、自分で言い訳って言ってるわよ」

オウ!

美姫 「そんな訳で更に倍、ね」

う、うぅぅ。口は災いの元とは良く言ったものだよ。

美姫 「さてさて、それじゃあ、この辺で」

皆様、良いお年を!

美姫 「また来年も宜しくね〜」


8月3日(金)

美姫 「美姫ちゃんの〜」

ハートフルデイズ〜

美姫 「はっじまるよ〜」

<この番組は、PAINWESTの雑記コーナーより、熱すぎて溶けるわ! とお届け中!>



夏だー、太陽だ、暑いよ、溶ける!

美姫 「うんうん、定番の叫び……とはちょっと違うけれどまあ良いわ」

良いのかよ!

美姫 「はいはい。それにしても、久しぶりね」

ですよね。かれこそ四ヶ月ぐらいぶりかな。

美姫 「おまけに更新も遅々として進まないし」

すみません、すみません。
でもでも、「リリ恭なの」の方はようやく最終話が近づきましたよ。

美姫 「途中、色々あったものね」

だよな。と、それはさておき。

美姫 「早速だけれど、お知らせね」

おう。例年より少し早いお知らせだけれど、例によって盆の更新に関してかな。

美姫 「それと今後の更新に関してもね」

ああ。盆はまあ、いつも通りとして、肝心なのは更新態勢の変更だな。

美姫 「はぁ、情けない」

しょうがないだろう。って、俺たちだけで話してても分からないぞ。

美姫 「そうね。さて、この度色々とあってリアル方面でかなり忙しくなってきました」

そんな訳で出来る限り更新してきましたが、週末に纏めて更新する形になるかもしれません。
と言うよりも、その可能性大です。

美姫 「いつも通りに投稿してくださっても問題はありませんが、アップするのが遅くなると思います」

纏めて週末の土日辺りにアップする事になると思います。
ご迷惑をお掛けしますが、ご了承ください。

美姫 「感想に関しては、出来る限り今まで通りにしていきます」

平に平にご容赦ください。

美姫 「待ってられないという方はSS掲示板の方を利用してくださいね」

そう便利良くもないでしょうが、最初の投稿時に目次ページを作るようにして頂ければ多少は使えなくもない?

美姫 「そこは疑問系なんだ」

あ、あははは。
一応、留意事項で説明してますので、見ていただければ。

美姫 「そんな訳で取り急ぎのご連絡でした」

それでは、この辺で。

美姫 「また次回〜」


4月27日(金)

美姫 「美姫ちゃんの〜」

ハートフルデイズ〜

美姫 「はっじまるよ〜」

<この番組は、PAINWESTの雑記コーナーより、もう春かよ、とお送り中!>



久しぶりの雑記!

美姫 「はぁっ!」

ぶべらっ!

美姫 「毎週やってた頃が懐かしいわね」

おい、他に言う事はないのか。

美姫 「えっと〜、ああ、そうだったわね」

そうそう、分かれば良いのだよ。

美姫 「全然、更新してないわよね」

…………。

美姫 「ねぇ? ねぇ?」

あー、そのー、まあ色々ありまして。

美姫 「言い訳は良いんだけれど?」

あ、あははは。

美姫 「で、久しぶりの雑記だけれど時期的に見て、恒例の奴でしょう」

まあな。だが、その前に一つ重大発表が!

美姫 「なに? 一気に100本ぐらいアップするとか」

いや、無理だからそれ。
じゃなくて、ずばり……。

美姫 「なによ?」

予定では今日、『リリ恭なのTA』をアップする予定だったんだが。

美姫 「その流れから来るとしないのよね」

あははは。可笑しいんだよ。
確かにちょくちょく書いていたはずの51話のファイルがなくなってるんだよ。

美姫 「いやいや、つい一昨日も書いてたじゃない」

だろう。で、昨日は事情があって何もしてなかったんだけれど。
うぅ、何処にいったんだ。

美姫 「検索したの」

したけれど、他の51話が出てきた。
いや、本当に何処に行ったんだよ! 結構、後半まで書いてたのに!
うわぁ、本気でへこむ〜。

美姫 「いや、削除しない限りはなくならないはずでしょう」

うぅぅ、でもないし。そんな訳で今日のアップができなかった……。

美姫 「はぁ……って、あれ? それって言わなければ誰も気付かないんじゃ」

…………おおう!

美姫 「気付いてなかったの?」

消えたショックが大きすぎて、久しぶりの雑記だからついでに愚痴れみたいな感じになってたな。

美姫 「やっぱり馬鹿だわ」

うぅぅ。コホン、気を取り直して。
…………。
…………。
久しぶりの雑記!

美姫 「なかった事にならないから」

ぐふっ!
な、何故にボディに攻撃を?

美姫 「一応、お仕置きはしておかないとね」

うぅぅ、ガク。

美姫 「さて、それじゃあ本題のお知らせにいきましょか」

だな。

美姫 「はぁ、相変わらず早い復活ね」

エッヘン。
と、それじゃあ、お知らせです。

美姫 「既に皆さん分かっていると思いますけれど」

来週は更新できません。
例によって投稿は受け付けてますので問題ありませんが、アップは少しお待ち頂く事になります。

美姫 「問題なければ、再来週の月曜日5月の7日に更新しますので」

ご了承ください。
それじゃあ、この辺で。

美姫 「また次回〜」


12月22日(木)

美姫 「美姫ちゃんの〜」

ハートフルデイズ〜

美姫 「はっじまるよ〜」

<この番組は、PAINWESTの雑記コーナーより、もう年末だよ、とお届け中!>



あっという間に今年も後僅か。

美姫 「全然、更新できてないわね」

だよな。色々とあり過ぎて、遅々として進まなかった。

美姫 「もっと反省しなさい」

うぅぅ、これでもしてるっての。
ネタはできてて後は書くだけという状況なのに。

美姫 「体調不良や様々な事が連続で起こったものね」

ああ。それにしても、未だに頭痛が治まらない。

美姫 「はいはい」

軽く流すなよ〜。

美姫 「いつもの事でしょうに」

うぅぅ。優しさが欲しい。

美姫 「私の半分は優しさよ」

残りの半分が非情なんですね……ぶべらっ!

美姫 「久しぶりの雑記だというのに」

確かに、こっちも久しぶりだよな。

美姫 「ではCMに……」

いや、今回はネタはなしでただの恒例の連絡を……ぶべらっ!

美姫 「ったく、何なのよこの馬鹿は」

うぅぅ、仕方ないんや。全部、体調が悪いんや。

美姫 「はいはい。では、恒例の連絡を」

恐らくですが、今年は来週の火曜日が最終更新日になるかと思います。
で、来年は早ければ八日には始められる……かも?

美姫 「そこで疑問系なの!」

ぶべらっ! いや、色々あるんだよ。
ともあれ、その間も投稿事態は受け付けてます。
ただ、返事や更新が多分出来ないと思いますのでご了承を。

美姫 「それじゃあ、少し早いけれど今年はこの辺で」

皆さんもよいお年を……って、本当に早いな。

美姫 「仕方ないでしょうが」

ですよね〜。では、今回はこの辺で。

美姫 「また次回でね〜」


9月2日(金)

美姫 「美姫ちゃんの〜」

ハートフルデイズ〜

美姫 「はっじまるよ〜」

<この番組は、PAINWESTの雑記コーナーより、台風接近中、更に蒸し暑さも上昇中とお送り中!>



未だに残暑を感じる今日この頃。

美姫 「とは言え、今日明日と注意すべきは台風よね」

大型がゆっくりとだもんな。
皆さんも気をつけてくださいね。

美姫 「しかし、本当にムシムシするわね」

窓を開ければ雨が入ってくるしな。

美姫 「はぁ〜、そうだ、アンタが私を扇げばよいのよ」

えっと、そうなると俺はどうすれば?

美姫 「我慢しなさい」

だと思ったよ!
言いつつ、勝手に手が動いているのが余計に物悲しい……。

美姫 「ほらほら、もっと力いっぱい扇げ、扇げ」

あおげば尊し〜。って、暑いわ!

美姫 「私はそこそこ風を感じられるから問題ないわよ」

いやいや。

美姫 「手を休めない!」

ぶべらっ!

美姫 「それじゃあ、CMにいってみよ〜」

いや、それじゃあの意味が分からないです……。







歴史にもしもは存在し得ない。
しかし、もしも過去に遡る事が出来たなら。
そんなくだらない事をつい考えたくなる程に恭也は混乱しており、更に付け加えるのなら現実逃避をしたかった。
時間を遡る。そんな物語のような話があるはずはないと何度も言い聞かせようとする。
が、目の前の人物から告げられた名前は恭也の知る限りにおいては過去の人である。
同姓同名の可能性もあるのだが、続けて告げられた地名もまた過去のもの。
さて、ここで問題なのは間違っているのはどちらかという事だ。
別に自分が正しいとは言わない。幾ら歴史の授業で習ったこととは言え、それらを実際に見た者などいないのだから。
言うならば、歴史とはある意味では作られた史実とも言えるだろう。
そんな事をつらつらと考える振りをして、とどのつまりは現実逃避である。
それを承知しながらも、恭也は未だに考え事に没頭してしまう。
が、それを見て心配そうに覗き込んでくる少女の存在をうっかり失念していた。

「あ、あのー、大丈夫ですか?」

少女は行き成り考え出した恭也の顔を下から覗き込み、心配そうな顔で恭也を見詰め返す。

「いえ、大丈夫です、すみません」

忘れていた事を思い出し、まずは謝罪を口にするのだが助けてもらった事に感謝こそすれと逆に少女の方が畏まる。
そんな愛らしい仕草を見せる少女を見詰めながら、恭也はもう一度だけ名前を聞く。
出来れば自分の聞き間違いである事を願って。
だが、少女の口から出た名前は恭也に現実を突きつけるだけであった。
少女は再び、先程と同じ名を口にする。

「私の名前は劉備です」

と。それを聞き再び考え込んでしまう恭也。
恭也の知る限りにおいては劉備は男性であったはずである。
が、目の前の少女は間違いなく女性である事は自己主張する胸が証明している。
やはり歴史が間違っていたのか。だとすれば、もしかしなくても歴史を変えてしまったのでは。
悶々と悩む恭也であったが、か弱そうな少女が柄の悪い男数人に絡まれていたのだ。
再び、その場に戻ったとしてもやはり同じ選択をしたに違いない。
それに異世界という言葉もあるではないか。
そう自己を理論で武装させると無理矢理納得する事にする。
せめて、関羽たちとの出会いを邪魔したのでありませんように、と若干完璧ではない武装の仕方ではあったが。
後に恭也はここは自分たちの世界の過去によく似た異世界だと結論付ける事になるのだが、それはもう少しだけ未来。
ともあれ、恭也は何とか落ち着き、劉備を名乗った少女へと自身も名乗りを返し、そこで真名なる物を知る。
桃香という真名を許された恭也が、その旅の理由を尋ねてみれば、この乱世を何とかしたいと旅に出たらしい。
行く宛てもない上に、何処か放っておけない雰囲気の桃香を前に恭也も同行を申し出る。
こうして二人の旅が始まる。

一方、恭也が桃香と出会った数日後、恭也の居る場所よりも数百里も離れた地にても一つの出会いがあった。
後に領主の青龍刀と呼ばれることとなる関羽とドジっ娘領主と呼ばれる事になる美由希との出会いである。
この出会いがどんな物語を紡ぐのか、今はまだ分からない。

恋姫ハート〜恭也と桃香〜







さて、連絡が一つあったんだったな。

美姫 「そうそう、忘れないでよ」

いや、忘れてはなかっただろう。

美姫 「そうだったかしら? まあ、良いわ。えっと確か来週の月曜日よね」

ああ。サーバーのメンテナンスが行われるらしく、HPは繋がるけれどアップが出来なくなります。

美姫 「時間によっては、HPも見れなくなる時間もあるかもしれないとの事です」

ご了承ください。

美姫 「さて、連絡事項も済んだ事だし」

少し早いけれど、今週はこの辺で。

美姫 「また次回でね〜」


8月11日(木)

美姫 「美姫ちゃんの〜」

ハートフルデイズ〜

美姫 「はっじまるよ〜」

<この番組は、PAINWESTの雑記コーナーより、日本の夏、節電の夏とお届け中!>



本格的に暑くなって溶けてます。

美姫 「初っ端からやる気ないわね」

ぶべらっ!
うぅぅ、暑い、暑い、暑い。でも、もしかしたら去年よりはましかも。
でも、やっぱり暑い。

美姫 「あー、もう五月蝿い!」

ぶべらっ!
うぅぅ、暑い時、暑ければ、暑い!

美姫 「いい加減にしつこいわよ」

ぶろぼっ!
も、もう止めますから本気の殺気はやめて……。

美姫 「ったく、余計な労力を消費させないでよね」

まあ、何はともあれ夏真っ盛り!
暑さもひとしおでございますが、皆様はいかがお過ごしでしょうか。

美姫 「暑中お見舞い申し上げます」

って、時期的に残暑見舞いなんだがな。

美姫 「じゃあ、残暑お見舞い申し上げます」

しかし、残暑も何もまだ夏だろうと言いたくなるよな。

美姫 「まあ、そこは節や何やと関係してくるからね」

とまあ、細かい事はさておき。

美姫 「今回もCMいってみよ〜」







高町家の庭にある道場。
今、そこでは恭也が正座して目を閉じ精神統一を行っていた。
そこへ足を踏み入れるのは、恭也の弟子の美由希である。
美由希は入るなり恭也の正面で同じように正座をし、こちらは目を閉じずにただ静かに佇む。
やがて、恭也がゆっくりと目を開き、

「どうかしたのか?」

「ううん、特に何も変化はないよ。
 日本を支配したという声明が流れてからも、特に大きな変化はないし、この近所で何か起こった気配もないよ」

「そうか」

美由希の言葉に短く返し、恭也は美由希をここに呼んだ訳を切り出す。

「さて、鬼丸と名乗る者が世界征服を掲げ、その足掛かりとして日本を支配して結構経つが……」

「中々、説明的な台詞だね、って、痛っ!」

額を押さえて転がる美由希に大人しく座れと涼しい顔で告げ、恨めしい視線を流しながら恭也は続ける。

「今、鬼丸たちやその野望を砕かんとする者たちの間で、ある探し物が行われているらしい」

「え、そうなの?」

ニュースでも報道されていない事を平然と口にする恭也に美由希は驚いた顔を見せるのだが、
恭也はやはり表情一つ変えずにそうだとだけ返す。
が、その反応に美由希は過剰までに突っ込みを入れる。

「いやいや、その反応は可笑しくない!? どうして恭ちゃんがそんな事を知ってるのよ」

「色々と情報の伝手があるからだ。
 まあ、殆どは父さんの残していった物をそのまま使わせてもらっているだけだがな」

それは今は良いと言い置き、恭也は自身の横に置いてあった木箱を二人の間にそっと置き直す。

「これは何?」

「先程言った者たちが探している物だ」

「へー、って、何でそれがここに!?」

思わず聞き流しそうになるも、事の重大さに気付いて美由希が声を荒げるのを片手で制する。

「大声を出すな。下手に知られたら、それこそ攻めて来るかもしれないんだぞ」

「そんな物騒な物を平然と出さないでよ。
 しかも、よく見ればこの木箱、普通に果物屋とかで売っているちょっと高いメロンとかが入っているやつだし。
 って、木箱の下に広げられているのも布とかじゃなくて、ただの新聞紙だし!」

「だから大声を上げるな、馬鹿者。文句があるなら父さんに言え。
 こうやって仕舞ったのは父さんなのだからな。
 因みに、この高級メロンは頂き物だったそうだ。更に付け加えるのなら、俺は一口も口にしていない。
 まさか、自分一人で食べるとは思わなかったぞ、父さん」

「あ、その部分で文句を言うんだ」

美由希の言葉に恭也は咳払いを一つして誤魔化すように話を戻す。

「ともあれ、この中には龍神の玉というものが入っている」

言って蓋を開ければ、確かに掌に収まるぐらいの玉が一つ入っている。

「……重要な物のはずなのに、果物の入ってた箱の中で新聞紙やチラシを緩衝材代わりにされ、
 ビニール袋の中に放り込まれていると、あまりありがたみが出ないね、恭ちゃん」

「まあ、この際見た目は置いておけ。大事なのは、これが龍神の玉と呼ばれるもので、鬼丸たちの目的らしい。
 そもそも、この玉はかぐや姫の中にも出てきたらしいぞ」

「え、そうなの?」

「ああ。俺はまだ小さかったからよく覚えていられなかったが、確かそんな事を言ってたはずだ」

「と言うか、どうしてこんな物がここにあるの?」

当然の疑問を口にする美由希に対し、恭也は偶に父である士郎の事を語る際に見せる遠くを見るような目をし、

「昔、父さんに連れられて全国を渡り歩いていたのは知っているだろう。
 その中に富士の樹海で遭難しかけた事があってな」

「へー、ってあまりにもあっさりと言うから聞き流す所だったよ!」

「まあ、色々あって可笑しな仕掛けのある洞窟を潜り抜けて、そこで一人の武者と出会ったんだ。
 よく覚えてないが、確かかぐや姫が実在して、物語のものとはちょっと違ってたかな。
 まあ、何だかんだとあったが、意気投合した父さんがこれを預かったらしい。
 いずれ必要となった時に、しかるべき者に渡してくれってな」

「そうなんだ。でも、それがここにあるって事は、結構危険なんじゃ」

「そうだろうな。故にこれを持って暫く海鳴を離れようと思ってな。
 お前には留守を頼むのと、もしこれを求めて訪ねてきた者がいれば、俺の居場所を教えてくれ」

「それは構わないけれど、私も一緒の方がよくない?」

「それだとここが手薄になってしまう。
 そんな訳で頼むぞ」

恭也の言葉に美由希は重々しく頷く。
こうして翌日、恭也は海鳴を離れるのだが、恭也が言うような人物が現れるのは、
そこから三ヶ月以上も経ってからの事であった。
更に恭也があちこちを歩き回っていた所為で、恭也の元へと辿り着くのにも更なる日数を有するのであった。

TOR∀HA







さて、残り時間もあと僅か。

美姫 「それじゃあ、お知らせを」

明日から来週の木曜までは更新が止まると思います。

美姫 「その間も投稿はOKです」

恐らく、更新は金曜になるとは思いますがご了承ください。
もしかすれば、木曜に出来るかもしれませんけれど。

美姫 「そんな訳でよろしくお願いします」

お願いします。

美姫 「さて、それじゃあ、お知らせも終わったしそろそろ絞めましょか」

だな。
それでは、今回はこの辺で。

美姫 「また次回でね〜」


7月15日(金)

美姫 「美姫ちゃんの〜」

ハートフルデイズ〜

美姫 「はっじまるよ〜」

<この番組は、PAINWESTの雑記コーナーより、夏到来という感じだよねとお送り中!>



いや、もう本当に暑くなってしまった。

美姫 「夏本番ね」

まあ、それでも少し前は雨のお蔭か幾分は暑さもましだったんだがな。
今は暑いだけの日々。

美姫 「夏だもの」

うぅぅ、溶けるぅぅ。

美姫 「夏の名物ね」

……蚊も飛んでいるし。

美姫 「夏って感じよね」

お前の拳も飛ぶし。

美姫 「夏だもの」

年中飛んでる気がするよ!?

美姫 「夏ね」

って、実際の所、俺の話を聞いてないだろう。

美姫 「夏だしね」

いや、夏関係ないから!

美姫 「さて、冗談はさておき」

本当に冗談だったのか?

美姫 「それより!」

な、何だよ。

美姫 「この暑さを何とかしなさいよね!」

そんな無茶な。
第一、今俺はお前を団扇で扇いであげているんだが?

美姫 「それは当然の労働として、もっとこう涼しくなるように」

シクシク……。

美姫 「駄目よ、その程度の水気じゃ涼しくならないわよ」

いや、別に涼しくしようとした訳じゃないし。

美姫 「もっと根性を見せない」

根性でどうにかなる事じゃないよな!
以前に、そんな事が根性でどうにかなるんなら、この暑さにも耐えれる気がするんだが!?

美姫 「なに? 一人だけ暑さ対策があるの!?」

いやいや、どう解釈した!?

美姫 「アンタにお仕置きする理由ができるように解釈したのよ♪」

いい笑顔でとんでもない事を言ってる!?

美姫 「という訳で、吹っ飛べ!」

ぶべらっ!

美姫 「あ、ちょっと吹っ飛びながらでもちゃんと仰ぎなさいよね!」

無茶言い過ぎだーー!

美姫 「ったく、余計な運動した所為で更に暑くなったじゃない」

うぅぅ、オレゼッタイニワルクナイ……。

美姫 「はいはい、口よりも手を動かす」

全て暑いのが悪いんだ。

美姫 「うーん、暑くなくてもあまり変わらないような気もするけれどね」

それをお前が言うなよ!
と言うか、自覚あったのかよ!

美姫 「さて、それじゃあCMいってみよ〜」

で、当然の如く無視なんですね……。







結界とは、二つの領域を分けて区切る事であり、大抵は清浄な領域と他の領域を区切るものである。
神社の鳥居や注連縄というのは、目に見える境界線を示すために用いられている。
が、時に中の者を守護する為のものとしても用いられたりもする。
少なくとも、退魔に関わる者にとっては結界と一言で言っても様々な意味合いを持つのである。
ああ、そう言えばどこぞの眼鏡を掛けた特技、何もない所で転ぶを習得した読書好きが言っていたか。
茶道においても結界がうんたらかんたらと。
話半分だった所為か、いまいちはっきりと思い出せないが。
そんな事をついつらつらと考えながら、恭也は大の字に寝転がりぼんやりと頭上を見遣る。
いや、この表現は正しくはないか。
正確には寝転がっているつもりで、頭上と思われる所を見ている、だろうか。
何せ、背中に地面の感覚はなく、水に浮いているかのように体全体がふわふわとしている。
おまけにあたり一面暗く、何も見えない。
真っ暗とまではいかないが、周囲に何もないのだから結局は意味を成さないだろう。
そんな真っ只中に居ながら、恭也は平然と自分が空だと決めた方へと視線を向けて考え込んでいる。

「ねぇ、そろそろ良いかしら?」

そんな恭也の顔を覗き込むように一人の女性の顔が思ったよりも間近から現れる。
慌てて距離を開けようにも思うように動けずに、仕方なしにやや視線を逸らして一つ頷く。
恭也が見ていた方向を空だと決めた最も大きな理由は、この女性が何もない空間に座るようにして傍に居たからだ。
故に女性の頭を頭上と決め、こうして寝転がったつもりで考え事というよりも心を落ち着かせていたのである。

「で、良かったら早速だけれど、ここから出るわよ」

「ええ。元の場所に戻れない以上、それしかないみたいですし」

今まで女性から説明された事柄をどうにか自分なりに整理して心の準備を終えた恭也は身体を起こす。
実際、何度も言うが上下の感覚もなく、先程までとあまり違いが感じられず、
自分が立っているのかどうかもあやふやなのだが。

「貴方も災難だったわね、としか言えないわ。
 でも、その原因の一旦であるあの子にちゃんと責任を持って面倒をみてもらうからその辺は安心なさいな」

言いながら扇子をパチリパチリと開いたり閉じたりして妖艶な笑みを浮かべる。
その仕草や態度が恭也の本能レベルに刻まれた何かに訴えかけてくる。
あれは悪戯を思いついた桃子やティオレと同じ生き物だと。
とは言え、この変な空間から恭也が戻れる手段はその女性に頼る以外しかない以上、礼の言葉と共に頭を下げる。
幾分か機嫌をよくした様子で女性が腕を軽く降るとそこに人一人が簡単に通れるぐらいの穴が開く。

「それじゃあ、行きましょうか」

言って躊躇いなくその穴の中へと入っていく女性の後を、恭也は多少躊躇いつつも追う。
着いた先は見た事もない、けれども似たような物なら何度となく見ている場所、

「ここは、神社ですか?」

恐らくは間違いないだろと思わせる造りの建物。
その前には賽銭箱もあれば、少し離れた所には鳥居も見える。
先程まで考えていた物が現れ、思わず苦笑を浮かべる恭也の後ろから少し怒ったような声が聞こえてくる。

「紫! アンタ、今まで何処ほっつき歩いていたのよ。
 ちょっと聞きたい事が……って、誰よ、それ?」

言って恭也をここに連れてきた女性、紫の元へとやって来るのは、
デザインは違うものの巫女だと思われる格好をした少女である。

「はいはい、霊夢の言いたい事は分かっているから、二、三日待って頂戴。
 そういう訳だから、その間、この子の事を宜しくね」

言って立ち去ろうとする紫の髪を引っ張り、自分の方へと引き寄せる霊夢。

「どういう訳よ。大体、何で二、三日も待たないと」

「はい、スト〜ップ。そもそもの原因って程でもないけれど、一因は間違いなく霊夢、貴女自身なのよ」

言って紫が話し出した事の殆どは恭也にはよく分からない事であり、分かる部分で要約するなら、
異変と呼ばれる恭也が知る所の霊障のようなものが起こり、ドンパチが始まったと。
で、その際に何の不幸か結界が弛んでいた事や、恭也の本来済んでいる世界である外界との境界が少し開いた。
それだけならすぐに修復して後日、結界を張り直すで良かったのだが、運悪く開いた先でもドンパチが。
そのドンパチ、力の強い霊と那美、久遠の戦いの場の傍にいた恭也が見事に巻き込まれ、二つの世界の狭間へ。
それに気付いた紫が恭也を自分の中に入れてくれて事なきを得たのだが、結界が戻り帰れない事になってしまった。
恭也が分かったのはその程度である。
紫なら戻せるという霊夢の言葉に、何故か今はそれが無理だと返しており、
それも異変が絡んでいるからぐらいしか恭也には理解できない。
霊夢としても自分が少し怠けてて結界が弛んだ事と、その傍で大きな術を使った事が恭也に影響したと言われ、
無下に行く当てもない人間を放り出すのも忍びない。
そんな訳で、紫の提案を最終的に受け入れる形となったのであった。
霊夢が納得するなり姿を消した紫に変わり、霊夢は恭也へとこの世界の説明をしてくれた。
幻想郷と呼ばれる人と人外が暮らす、外界と隔たれたもう一つの世界の事を。
それらを思い返しながら、恭也は慌しい一日を終えようとしていた。



「霊夢、どうやら大結界事態に可笑しな影響が出ているみたいだわ」

「ほら、見なさいよ。決して私がさぼっていた所為じゃないでしょう」

「そんな事を言ってられる状況でもないわよ。
 というよりも、貴女が怠けなれば、もっと早くに事態が発覚するか、ここまで広がらなかった可能性もあるわね」

「起きてしまった事を言っても始まらないわ! 今は犯人を見つける事が先決よ!」

――現実と幻想の境界が弛む時、一つの事件が幕を開ける。

「という訳で、恭也にも手伝ってもらうから、覚悟するように」

「居候の身の上だ、嫌だからと断る事も出来ないな」

「嬉しそうにスペルカードを準備しながら言っても、あまり説得力ないわよ」

「で、何かあてはあるのか? 無闇に探し回っていても時間を無駄に浪費するぞ」

「それは大丈夫よ。結界という事ならまずは竹林ね。で、駄目なら館、地底と順に」

「それはあてがあると言うのか?」

「良いから行くわよ!」

――それは同時に新たな出会いを生み出す。

「甘いわよ。私の新スペルで全て防いであげるわ。
 霊符・恭也結界!」

「って、背中を押すな!」

「……霊夢、勝つ為には手段を選ばないとは言え、流石にそれは人としてどうなの?」

「言いつつ、あなたも容赦ない攻撃を!」

果たして、恭也は霊夢に協力して異変を解決できるのか。
それ以前に戦力としてちゃんと働く事が出来るのか。
そして、無事に戻れるのだろうか。

東方三角奇譚 〜外界の剣士〜







うぅぅ、腕が疲れました。

美姫 「もう? 本当に体力ないわね」

それ以前にどうして俺が仰がないと――ぶべらっ!

美姫 「文句は後にしてよ」

後にしたら意味がないような……。
イエ、ナンデモアリマセン!

美姫 「分かれば宜しい。って、そろそろ良い時間みたいよ」

そうか、じゃあ締めるか。

美姫 「そうしましょう、って手は動かしてなさいよ」

うぅぅ、汗と涙で水分が抜けていくよ。

美姫 「良いからさっさとしなさい」

へいへい。
それじゃあ、今週はこの辺で。

美姫 「また次回でね〜」


6月24日(金)

美姫 「美姫ちゃんの〜」

ハートフルデイズ〜

美姫 「はっじまるよ〜」

<この番組は、PAINWESTの雑記コーナーより、かなり暑くなってきたな〜とお届け中!>



ここ最近で急に暑くなったよな。

美姫 「真夏日の所もあったみたいだしね」

湿度も60を超えたりして、本当に蒸し暑い。
うぅぅ、これから益々暑くなっていくんだよな……。

美姫 「本当に暑さには弱いわよね」

まあな。もう早くも溶けるよ。

美姫 「暑さに負けずに気合で乗り切るぐらいの事は言えないのかしらね」

気合で何でも出来ると思うなよ。

美姫 「根性なしよね」

はははは、照れるな。

美姫 「褒めてないからね!」

ぶべらっ! こ、この程度でこの突っ込みですか。
容赦なしですね。

美姫 「暑くてイライラしてたからね」

って、八つ当たり!?

美姫 「違うわよ。単にストレス発散よ」

その発散の仕方はどうよ!?

美姫 「さて、それじゃあCMのいってみよ〜」

って、お願いだから聞いてよ!







転生。言葉だけを取り上げれば、二度目の人生と言えなくもない。
ただし、そこに前世の記憶が丸々残っているかどうかは別としてだが。
更に性別まで変わってしまったり、そもそもの原因が天使に殺された事だったりすれば笑い話にもならない。
ましてや、赤ん坊として新たな生を受けるまでは良いとして、果たしてその時点で記憶は邪魔ではないのか?
そんな事をつらつらと、前世、高町恭也、転生先では高町恭子はおしめを変えられながら考えてみる。
如何せん、暇としか言えない状況。筋肉は殆どなくとも、立とうと思えば立てなくもない。
が、流石に二ヶ月も経たない赤子が普通に喋って歩き回る訳にもいかず、恭也、もとい恭子は只管寝転がる毎日。
見慣れてきた天井をぼんやりと眺めつつ、どの程度で歩けるようになれば良いのかと思案する。
そんな退屈な日々を過ごしていると、ふと開けられた窓から一匹の猫が入り込んでくる。
真っ白な毛並みはきちんと手入れされているのか、艶も見事に整っており、丸い目で恭子を見詰めてくる。
まだ子猫と呼べる大きさのその白猫は、真っ直ぐに恭子の下へと向かってくるとその隣に座り込み見下ろしてくる。
にゃーと可愛らしい一言を漏らした次の瞬間、恭子の脳裏に直接声が響いてくる。

「久しぶりになるのかしら?」

「その声はまさか、あの天使か?」

「正解よ。全くとんだとばっちりで神様にこんな姿にされちゃったのよ」

「何か仕出かしたとかではないのか?」

思わず呟いた言葉に天使は抗議の声を上げる。
呟くといっても実際に赤ん坊が喋る訳にもいかず、あくまでも脳内でのイメージではある。
が、それで充分に会話できるらしく猫も同じように口を動かしてはいない。

「別にあれから何かした訳じゃないわよ。
 どうも貴方への対処が御気に召さなかったらしく、フォローするように言われたのよ」

「間に合ってます」

「そんな事言わないでよ! このままだと私ずっとトイレ掃除させられるかもしれないのよ!」

泣きついてくる天使にどうしたものかと頭を悩ませるも、流石に見捨てるまでは出来ないらしく、

「はぁ、とりあえずはペットとして飼えば良いんですね」

「って、ペット!? い、いや、何をするつもりなの!?
 ましてや、今の貴方は女性だって言うのに!」

本気でこいつを見捨てようかと思った恭子に気付いたのか、天使は必死に謝ってくる。
もうどうにかしてくれという疲れた思いと共に溜め息を吐き出し、恭子は目を閉じる。

「ねぇ、お願いだから置いてください!」

懇願してくる天使に恭子は目を再び開け、疲れた口調で返す。

「分かった、分かった。で、何て呼べば良いんだ?」

「あ、そうね。これから長い付き合いになるんだから名前を教えておかないと不便よね。
 でも、私の高貴なる名前を猫の姿で呼ばれるなんて」

「なら、猫用の名前をつけてやろう。……ふむ、白いからシロでどうだ」

「……因みに、もし私が黒猫だったらどうしたの?」

「その場合はヤマトだな」

「それって、絶対に宅配便から取ったわね! しかも、そっちの方がまだ捻ってあるし!?」

いつの間にか恭子は眠っており、二人は今夢の中で対峙していた。
その所為もあってか、天使は恭也の襟首を掴むという暴挙に出ることが出来ており、
寧ろ、その為に恭子を眠らせた可能性もあるのだが、既にこの天使に対する遠慮が殆どなくなっていた恭子は、
前世の恭也としての姿形をしている事からあっさりと手首を掴み、そのまま転がす。

「うきゅぅっ!」

あっさりと地面に転がされ、涙目で見上げてくる天使を静かに見下ろす。

「で、さっさと話を進めようか」

「そうね、くだらない事で時間を使ってられないものね」

何事もなかったかのように立ち上がり髪を掻き揚げると、天使は改めて名乗る。

「私の名前はナノハ……うぎゅっ! な、何で殴るのよ!」

「すまん、名前を聞いてついな。俺のイメージが壊れそうだったから、無意識に防衛本能が働いたんだろう」

「何気に失礼な事を言ってない?」

「そんな事はないぞ。で、何て名前だって?」

「だから、ナノ……その拳は何?」

再び名乗りかけた天使であったが、握られた恭也の拳に途中で止める。
どうやらまたしても無意識だったのか、恭也はゆっくりと拳を開くのだが、天使は警戒して距離を開ける。

「改めて、私はナノハエルハンナ。長いからナノハって呼んでもぷぎゅ!」

「ふむ、これが気による遠距離攻撃か」

「って、さり気なく気を使ってまで叩かないでよ! 何か気に障る事でも言った!?」

「すまん、すまん、ハンナ」

「って、望んでない略し方されてる!?」

「さて、そろそろ起きるか」

「おまけに無視されてるし!?」

ぎゃーぎゃーと喚く天使の言葉を聞き流し、恭也はどうやって夢から覚めるのかを探し始めるのであった。
そんなこんなで猫へと姿を変えられた天使も加わり、恭也の第二の人生が始まる。



「はぁ、やっぱり縁側にお茶、猫とくれば日向ぼっこが一番だな」

「にゃ〜(そうね〜)」

日本家屋と呼べる造りの家にある庭、そこでは小さな女の子が猫を膝に乗せお茶を片手に寛いでいる。
そんな少女を眺めるのは廊下の角から顔を覗かせた両親。

「益々、恭子が老成していく……」

「あなた、最近あの子が盆栽やゲートボールに興味を示しているみたいなんだけれど……」

「…………」

妻の台詞に夫は思わず縁側で幸せそうにしている我が娘を見詰め、次いで妻と目を合わせる。

「同年代の子供が周囲にいないのが原因だろうか。
 なら、少しの間恭子を預けてみるか」

「そんな! あの子はまだ小さいんですよ」

「それは分かっているけれど、このままだと……」

「なら私も行きますからね」

「おいおい、なら私はどうなるんだ。仕事の関係上、一年は引越しなんて……」

夫婦がそんな事を話し合っているとも知らず、恭子はのんびりとお茶を啜るのであった。



高町恭也の転生黙示録3







にしても、本当に暑いよな。

美姫 「そればっかりね」

事実だから仕方ないだろう。

美姫 「まあ、そうなんだけれどね。でも、本当に夏になったらどうするのよ」

……どうしようもないけれどな。

美姫 「いや、確かにそうでしょうけど。はぁ」

うぅぅ、夏が来て、すぐに冬になれば良いのに。

美姫 「秋を飛ばしてるわよ」

うぅぅ、ってもう時間みたいだな。

美姫 「アンタがだれている間に無駄にしてしまったわね」

あ、あははは〜、反省してますから拳を納めてください。

美姫 「ったく、ほらさっさと締めるわよ」

へいへい。
それじゃあ、今週はこの辺で。

美姫 「また次回でね〜」


5月27日(金)

美姫 「美姫ちゃんの〜」

ハートフルデイズ〜

美姫 「はっじまるよ〜」

<この番組は、PAINWESTの雑記コーナーより、暑かったり寒かったりとお送り中!>



ここ最近、冷え込んでるよな。

美姫 「その前はちょっと汗ばむ感じだったのにね」

しかも、気付けば梅雨入りしそうな感じだし。
春はどこにいった!?

美姫 「アンタの頭の中ね」

いやいや! 明らかに悪意込めてるよね!

美姫 「冗談よ、冗談。さて、それじゃあ、今週もそろそろCMにいってみよ〜」







遠くの方から男女の声が聞こえてくる。
が、すぐにそれは遠くではなく、割と近くで話しているのであろうと気付く事が出来た。
未だにぼんやりとする頭の片隅で、ついさっきまで眠っていたのだと理解する。
故にこそ、話している声も何処か遠くからの声に聞こえたのだろう。
眠気を覚えつつも、恭也は体を起こそうとして思うように動かない事に気付く。
が、それを不思議と思うこともなかった。
元より昔のように自由に動けぬこの身である。それでも今日は調子が良いと感じられる。
果たして、枕元に居るのは一体誰なのか。心配したなのはが様子でも見に来たのかと思いつつ目を開ける。
可笑しな夢を見たものだ。
目の前の光景に思わず、再び目を閉じて先程まで見ていた夢を思い返す。
人はそれを現実逃避と呼ぶのだが、それを指摘するものもおらず、恭也は思う存分に夢の内容を反芻する。
落ちこぼれのドジな死神志望の見習い天使に出会い、自らの死因や転生だのと話された挙句、
平穏な世界はつまらないとのたまってくれたなぁ、としみじみ感じ入る。
最終的に恭也の意見は聞かれず、それどころか事故みたいな感じで強制的に意識が途切れたんだった。
夢の出来事だったはずなのに、やけにはっきりと覚えているもんだと感心しつつ、改めて目を開ける。
見慣れない天井、いや、部屋。
自分から少し離れた所で幸せそうな顔で話し合っている一組の男女。
そして、視界にちらほらと映る明らかに小さな手は、どうも自分の思うように動くみたいで。

「あら、起きたのかしら」

「ははは、元気に手を動かしているよ」

こちらに気付いた二人が楽しげに笑いながら覗き込んでくる。
やはり見た事のない顔をしており、恭也はぼんやりと見上げる。

「んー、まだ眠たいのかな?」

言って女性に抱きかかえられ、軽く背中を叩かれる。
恥ずかしさよりもある種の確信が恭也の中に膨れ上がる。
こうも軽々と抱え上げられるほどには恭也も衰えてはおらず、
となれば、自身が小さくなっていると認めなければならない。
何てこった、死して尚、不可思議な目にあうとは。
己の悲劇を嘆きつつ、恭也は再び目を閉じる。
と、脳裏に夢で会ったあの天使の姿が浮かび上がる。

「もうやっと見つけたよ。あなたの所為でまた神様に怒られるし、本当についてないよ」

「……自業自得という言葉を辞書で調べてみてはどうでしょうか?
 そのページに付箋を貼っていつでもすぐに見れるようにする事をお勧めしますよ」

「そんな事を言っても良いのかな? あんまり酷い事を言うと説明してあげないわよ」

「どうぞご自由に。それで俺も困るかもしれないが、そっちはもっと困った事になるんだろう。
 寧ろ、もう聞く気もないぐらいだ」

最早、敬語もいらないだろうと恭也は憮然と言い返すと耳を押さえるふりまでしてみせる。
これには天使の方が慌てて、恭也の足にしがみ付いて来る。

「ごめんなさい、ごめんなさい、お願いだから聞いてください。
 うぅぅ、お願いします、お願いします!」

「わ、分かったから足を離してくれ」

恭也の言葉に天使は何事もなかったかのように立ち上がると笑顔を振りまき、

「さて、それじゃあ説明しますね」

そんな様子に恭也は悟られないようにこっそりと溜め息を吐く。
天使はそれに全く気付かずに嬉々として説明を始めていた。

「まずこの世界ですが喜んでください。選択次第では貴方の望んだように平穏に生活できる……はずです」

「今、最後に何か小さく呟いた気がするが?」

「小さな事は気にしないでください」

「小さくないと思うんだが?」

「もう堅いですね。正真正銘、生まれ変わったんですから少しぐらい性格も変りましょうよ」

「記憶がある以上、すぐには無理だろう。まあ、良い。それで?」

「はい、お気付きかと思いますが、このまま普通に行けば剣戟が響き、魔法が飛び交う世界へとウェルカムです」

「何で嬉しそうなんだ!」

思わず大声で突っ込んでしまうが、天使はやはり気にした様子も見せずに嬉しそうに続ける。

「私としてはこちらを推奨しますが、嫌なら全力で回避してください」

「平穏な生活の為に全力って……」

既に疲れきった顔で呟くも、天使はやはりに気にも留めない。

「さてさて、恭也さんに授けた能力ですが……」

言ってまた端末らしき物を何処からか取り出して操作し、

「あれ? あれれ? 可笑しいな〜。私、こんなの付けてないんだけれど。
 やっぱり転んだ時に色々と変っちゃったのかな」

何となく嫌な予感を感じつつ、恭也が覚悟を決めて尋ねれば、

「えっと、怒りませんか?」

上目遣いに涙目という顔で弱々しく聞いてくる天使。
普段なら怒らないと答えるであろうが、今回はもう最初から色々あった事に加え相手が相手である。
ましてや、こっそりと隠したつもりなのだろうが、背中へと回した手に目薬がちらりと見えている。
よって、恭也は珍しく笑顔を浮かべ、

「それは聞いてから考えます。因みに答えるのを拒否するのなら、以降の説明は一切聞かないからそのつもりで」

「えー! なにそれ! 酷い、鬼! 鬼畜!」

涙目が一転し、恭也に食って掛かって来る天使の頭をむんずと掴み、恭也はこれの扱いは美由希並み、
もしくはそれよりも酷くても良いと自らの中で定義し、それに従って力を込める。

「っ! いた、痛い、痛い! は、話しなさい、天使にこんな事をするなんて、この悪魔!」

「……天使にも脳があるのだろうか。あったとして、人と同じなのか興味深いな。
 試しに脳へと直接ダメージを与えてみるか」

「うわーん、ごめんなさい、言い過ぎました、調子に乗ってました!
 お願いだからやめて〜! 私は貴方の弟子兼妹さんとは違って繊細なんです!」

謝りつつも何気に美由希に失礼な事を口にする天使に呆れつつ、恭也は頭を離してやる。

「次は躊躇なくいくんで」

「イエッサー!」

恭也の言葉に敬礼までして返してくる天使に自身の想像していた何かを汚された思いを抱きつつ、改めて尋ねる。

「えっとですねー、うん、こういういのは勢いが大事! よし、言うぞ!
 ずばり、間違えて女の子に転生させちゃいました」

「そうか、そんな事……って、おい」

「許して♪」

両手を軽く合わせて首を傾げながら可愛らしく舌まで出してみせる天使。
確かに可愛いと言えなくもないかもしれないが、恭也の返答はたった一つ。
無言でその額にデコピンを放つ事だった。
ごろごろと額を押さえながら転がる天使を見下ろし、恭也はこいつを役職に付けない方が良いんではないかと考え、
同時にああ、だから未だに見習いの身分なんだと幾分かの安堵も抱く。
まあ、何故か自分の担当がコレになったのは不幸過ぎて笑えない話ではあるが。

「えっとうん、大丈夫!
 記憶は消せないけれど、男としての意識は多少は消せるから着替えや入浴で恥じる事はなくなるよ」

「それはそれでどうなんだ」

「で、肝心の能力についてだけれど……」

恭也の突込みを聞き流し天使は続ける。

「気と呼ばれる霊力のような物を使えるようになっているから頑張って訓練してね」

「……それは生前と同じでは?」

多少なりとも気というものを扱っていた恭也の言葉にしかし天使はちっちっちと指を降る。
どうでも良いが何となく腹が立つなと思いつつ、恭也は大人しく説明を聞く。

「単純に以前よりも扱える量が違うって事だよ。これで身体能力をアップする事もできるんだから。
 貴方が生前に扱っていた気配を探ったり消したりというレベルを超えているのよ」

「はぁ、よく分からんが、まあ鍛錬次第で色々できるで良いのか」

「うんうん、それで良いよ、全部説明するのは面倒だし、適当に扱える人を探して教えてもらえば良いし」

うん、全部聞き終えたらとりあえずこいつにはデコピンの一つもしておこう。
そう心に固く誓い、顔には出さずに大人しく頷いておく。

「さて、以上でお終い」

「……はい?」

「他に色々と付ける前に転生しちゃったしね。
 でも、それだと可哀相だから幾つかオプションを付けてあげましょう。感謝しなさいよ。
 で、どれが良い?」

別に能力が欲しくて疑問を口にしたのではなかったのだが、天使は続け様にそんな事を言ってくる。
まあ、弥が上にももう一度人生を送る事になったのだから、もらえる物はもらっておくかと何があるのか尋ねる。

「うんとね、切れ味の良い剣とか。もう本当に凄いよ。
 切れない物はなしで、鞘にさえ納まらない所か誤って落としでもしたら大変よ。地球の裏側まで行くから」

「誤って落として人の魂を刈り取る事になるかもしれないしな」

「ぐっ、い、意外と根に持つタイプ?」

「いやいや、ただ天使に殺されるなんて貴重な経験を思い返していただけだ」

恭也の言葉に天使は若干引き攣った笑みを浮かべつつ、さっさと終わらせるべく再開させる。

「えっと、これはどうかな? 魔法の杖。ただし、魔法は自力で覚えてください」

「……できれば、平穏に過ごす事の出来る道具が欲しいんだが、青狸」

「だれが便利道具ポケットの保有者よ! この可憐な姿が見えないの!」

「おー、夢の中なのに綺麗な青空が広がっているな〜」

「うぅぅ、私天使なのにこんな扱い初めて……」

崩れ落ちる天使を横目に見遣りつつも、恭也はここで話しかけたら負けな気がして沈黙を貫く。
すると天使の方が耐え切れなくなり、何事もなかったかのように立ち上がるとポンポンとスカートの裾を払い、

「さて、冗談はこれぐらいにしておきましょうか」

「初めから頼む」

「そうね、それじゃあ、コレで良いでしょう。
 縁側に必須なアイテム、湯飲みと猫のセット!」

「よし、それで」

「え!? あ、いや、えっと本当に?」

まさか冗談でしたと続けるつもりがこうなるとは思ってもいなかったのか、天使は若干慌てる。
が、恭也としては平穏に過ごすつもりなのだ。
貰える物は貰おうと思ったが、さっきの説明に出てきたような変な物をもらっても困る。
故に害のなさそうな物をさっさと選ぶ事にする。

「さあ、それを早くくれ」

「うー、良いわ、二言はないもの。
 人、魔物、悪魔を問わずに全て吸い込む封印の湯飲みとちょっと強い力を持った外見は猫のセットね」

「ちょっと待て!」

「何よ、今からこっそりと封印された倉から引っ張り出すんだから静かにしてよ」

「って、封印されている物を渡す気か!」

駄目だ、早くこいつを誰か何とかしないと。
そんな思いを強く抱きながら、恭也は他に何かないのかと尋ねていく。

「うーん、あ、この人や物の死が見えるようになる眼鏡とかは?」

「物騒過ぎる、却下」

「えっと、衛星軌道から命令一つでレーザーを放出する……」

「却下」

「塵も残さずに消滅させる炎を召喚できるライター」

「却下、というか何故にライター?」

「悪魔召喚の本」

「却下って、天使がそんな物を持っていて良いのか?」

「使わないから問題ないのよ。と言うか、これは昔人間が作り上げたのを危険だから取り上げたのよ。
 それよりも、これならどう? 全身に武器を内蔵した半永久に動く自動殺戮人形。
 注意点として敵とみなした者には容赦なく攻撃するから初対面の人には気をつけてね」

「いらん」

「じゃあじゃあ、世界中の電子制御された物なら意のままに操れるモバイル」

「パス」

「……あー、もう! あれも駄目、これも駄目じゃないの!」

「と言うか、何故に物騒なものばかりなんだ!」

切れる天使に対して恭也が至極真っ当な事を返す。
その上でやや強い口調で、自分は平穏な生活を望んでいると強調するのだが、何故か天使は目を反らす。

「そういえば、平穏に過ごすには全力を尽くせとか言ってたな。何があるんだ?」

「ナ、ナニモナイヨ」

「素直に白状するのなら今の内だぞ」

「えーっと……」

恭也の再度の問い詰めに天使は目を忙しなくさ迷わせ、とうとう観念したように口を開く。

「あ、あはははー。このまま行けば十中八九、間違いなく物騒な世界に関わる事になっちゃったり?
 寧ろ、そんな家系の子供として転生してたりして〜」

さて、と呟いて恭也はキョロキョロと周囲を見渡せば、天使は恐る恐るといった感じで恭也に尋ねる。

「何かお探しでしょうか?」

何気に丁寧な物言いになっていたのは、先程正直に話した際に喰らったデコピンの所為であろうか。
くらくらする頭を押さえて尋ねてくる天使に恭也は淡々と返す。

「何、穴を掘る道具がないかと探しているだけだ」

「穴、ですか?」

「ああ。とんでもない事ばかりしてくれる自称天使を埋めるぐらいの穴だ」

「自称じゃなくて本当の天使よ!」

「まだ元気が有り余っているみたいだな?」

「うぅぅ、反省してます」

正座して項垂れる天使を見て、本当に反省していると思ったのか恭也は話を切り替えるというか戻す。

「で、実際問題どれぐらい危ないんだ?」

「分かりません。でも、下手をすると成人前にさようならする可能性があるぐらい?
 ってのは冗談だとしても、本当に分かりませんよ。幾ら天使でも未来まで見える訳じゃないんですから。
 貴方がどう行動するかにも寄るし。私はただ、転生先を一般人じゃない家にしただけだし」

途中で恭也が拳骨を握ったのを見て慌てて真面目に言い直すも、結局の所は天使にしてみても分からないのだ。
故に準備だけはしておきましょうとさっきまでの調子を取り戻して端末を弄り出す。
切り替えが早いと言うか何と言うか。複雑な胸中を表情に表しつつ、恭也は少し真面目に考える。

「とりあえず、何処でも武器が持ち運べるようにしておきたい。
 得物は言わなくても分かっていると思うが、生前と同じ物が欲しい。この世界でそれは手に入るか?」

「この世界も基本は前と同じなので手に入りますよ。でも、サービスでたくさん付けときましょう。
 というか、品切れにならないようにしちゃいますよ、もう旦那♪」

「誰が旦那だ。で、持ち運びの方は?」

「そうですね。なら異次元の倉庫はどうですか?
 ただし武器限定になっちゃいますが。この中に武器を入れておけば任意で取り出し出来るし。
 飛針、鋼糸、小刀に関しては使った分補充がされるようにしちゃいます」

どうだとばかりに胸を張る天使を一瞥し、恭也は頷く。
まずは自分の安全を確保するのが第一となると、武器は欠かせない。
と、ここでふと気付く。

「さっさとやられたら面倒な人生二回目をしなくても」

「それは止めて! 天寿を全うされないと私が困るんだから。
 寧ろ、その場合はまたやり直しになるだけだからね」

良い考えかと思ったんだがと呟き、仕方ないとばかりに恭也は肩を竦める。

「それじゃあ、伝えることも伝えたし、良い人生を送ってくださいね」

「ドジな天使に会わないように気を付けるとしよう」

「そんな天使が居る訳ないじゃないですか。居たら会ってみたいですよ」

「……鏡を見た事はあるか?」

「そんなのあるに決まっているじゃないですか。毎朝、出かける前には見てますよ。
 天使と言っても私も女の子なんだから、って何か言いたそうですね?」

「いや、何でもない」

ぐっと恭也は言葉を飲み込み、もう疲れたと言わんばかりに肩を落とす。
それを気にする事もなく、天使はふーんとだけ呟くと、お役目ごめんとばかりに恭也の額にそっと触れ、

「それじゃあ、頑張ってくださいね」

そう言葉を掛けた。それに答える間もなく恭也の意識は再び遠ざかり、その世界には天使一人だけが残される。

「さーって、これでようやく私も戻れるわ。って、神様?
 見ててくれましたか? 私、やり遂げましたよ! って、え、説明不足?
 おまけに大きなミスって、性別ぐらい、いえ、何でもないです。
 特典が少ないと言われても、本人がいらないって言ってましたし……。
 いえ、違うんです! 決して封印を解こうなんて事はしてません。って、ごめんなさい嘘つきました!
 正直に言うから許してください、って、え、もう罰が決定しているって?
 え、はい? あの人のサポート? え、何でですか! そもそも天使が個人に付くなんて……。
 だから、動物に変化させる? い、いや、それだけは許してください。お願いします。
 決定事項って何ですか、決定事項って! ああ、いや、ごめんなさい。
 これから五千年間、トイレ掃除だけなんて許してください! やります、やりますとも!
 ええ、女は度胸です、もうずばりとやっちゃってください。華麗にサポートしてみせますとも!
 ああ、でもせめて孔雀とかの優雅な動物にって、孔雀は雄が綺麗なんですか。い、いやだな、知ってましたよ。
 じゃあ、フェニックスとかペガサスとか。嘘です、ごめんなさい、街中で幻獣なんてありえません、はい。
 だから団子虫はやめてください。っていうか、そんな姿じゃサポートできませんって。
 知恵を貸すだけって、団子虫なんて飼ってすらもらえないかもしれなんですよ!
 いやー、ミジンコはもっと嫌ー! っていうか、絶対にサポートできませんよ! って、冗談ですか?
 もうやだな、神様ってば、そんな顔してお茶目なんだから。
 って、どうして怒っているんですか? あれれ?
 黒くて素早くて飛ぶ虫になんかなったらサポート以前に住人に叩き潰される可能性ありますよね?
 うわぁぁーん、ごめんなさい、本当に本当にごめんなさいぃぃぃ! それだけは許してください。
 はい、何にされても文句は言いませんから! あ、でも聞く前にちょっとだけ心の準備を……。
 って、聞いてます、神様!? え、何? もう相手するのも疲れたからさっさと行けって酷くないですか!?
 って、せめて何にされるか教えてくださいよ! すぐに分かるじゃなくて、ちょっ、ちょっと待っ……あー!
 わ、私に何にされるんですかー!」

独り言を叫びまくった後、天使の姿も消える。
後には静寂だけが支配する空間が残るも、ここもやがては消えて行く。
こうして、恭也の二度目の人生は色々と初っ端から躓いた感じで始まる上に、
元凶となった天使とも再会する事になるのであった。



高町恭也の転生黙示録2







うーん、今回もCMがちょっと長引いた感じだな。

美姫 「でも、丁度良い時間ね」

だな。それじゃあ、締めるとするか。

美姫 「そうね。締めましょうか」

それじゃあ、今週はこの辺で。

美姫 「また次回でね〜」


5月13日(金)

美姫 「美姫ちゃんの〜」

ハートフルデイズ〜

美姫 「はっじまるよ〜」

<この番組は、PAINWESTの雑記コーナーより、祝三百回とお届け中!>



記念すべき三百回目についに到達!

美姫 「まあ、本来の日に地震があって、暫くはお休みしていたけれど」

まだまだ大変でしょうが、こうして更新しました。

美姫 「まあ、お祝いの言葉を並べるのは止めて、早速だけれどCMいってみよ〜」







未開の地と呼ばれる大陸がある。
恭也の知る限りにおいては、そのような場所は記憶にはなかったが。
もしかすれば世界は広いのだから、あっても可笑しくはないぐらいには考えていた時期もあった。
が、それが大陸と言う規模になるとやはりここが異世界なのだと痛感せざるを得ない。

「恭也、そろそろ現実に戻って来い」

「恭也様のお気持ちも分かりますが、今までの経験も既に可笑しな事だらけでしたよ」

「そうだったな。ついつい、自分の世界との違いに現実逃避をする所だった。
 よくよく考えてみれば、既に異世界を渡り歩くと言う非現実を目下体験中だしな」

「そういう事じゃ。元の世界に似た世界、異世界の魔界、魔王が存在する世界。
 これらに比べれば、未開の大陸があるぐらい、どうという事もあるまい」

「そうですよ、恭也様。そもそも魔王と呼ばれる存在と戦い、救出されれば十年もの歳月が流れていたらしい。
 この世界に来て行き成り遭遇したこのような事態も、行き成り戦中に放り込まれた事に比べれば」

「そうだな。
 そもそも、行き成りダンジョンに現れた俺たちにしてみれば、世間で時が流れていようと問題にはならないしな」

恭也を間に挟み、三人仲良く話している中、その話の腰を折るように第三者の声が割って入ってくる。

「貴方たちのこれまでの冒険譚には少々興味を惹かれますが、とりあえずはこれからの話をしても宜しいでしょうか」

そう話し掛けてきた声の主は金髪を短く纏め眼鏡を掛けた一人の女性であった。
特徴的な外見の一つにその尖った耳が上げられるが、エルフと呼ばれる種を見るのは初めてではなく、
ましてやここは異世界である。この程度で驚いたりする事は当に通り過ぎてしまっている恭也である。
そもそもが両側に居る二人からして人ではないのだから、恭也にしてみれば大した事でもない。

「ええ、すみません。つい物思いに耽ってしまいました」

言って軽く頭を下げる恭也に対し、エルフの女性――名をベネット・コジュールと言う――は、
軽くこれまでの経緯を聞いてその心情を察しつつ、話を再開させる。

「先程も言ったように異世界に関する研究と言うのはありません。
 が、先程述べた未開の地、コルウェイドにならあるかもしれません。
 昔の生徒が異世界という単語の出てくる書物を見つけたと言ってしましたし。
 ただし、そこへの渡り方やそのような世界が実在すると明記された物ではなかったようですが」

「いえ、それだけでも充分です」

「じゃな。過去の状況と比べても初っ端から僅かとは言え手掛かりらしきものがあるのは珍しい事じゃ」

「それでは、早速……」

アルシェラに続き沙夜が早く手掛かりを求めて旅立とうとするのを制し、ベネットは話を続ける。

「ですが、コルウェイドを探索する為には冒険者にならないといけません。
 そして、残念ですがおいそれとその資格を与える事は私には出来ません」

言ってベネットはこの世界の簡単な説明をしてくれる。
大よそは現れたダンジョン内で、魔王を倒した後にそこで知り合ったカイトとミューゼルからは聞いていたが。
早い話が恭也たちの目的の為には冒険者になる必要があり、その為には学校へと通う必要がある。
そんな感じの話である。が、ここで問題となるのは恭也たちの身元である。
当然ながらこの世界に恭也たちの身元を保証するものなどなく、入学などできるはずもない。
逆に真実を話せば研究と称して監禁される事さえ考えないといけない。
そんな風に困っている恭也たちに、ベネットは自らの学園長と言う立場を利用して、三人の入学を許可する旨を伝える。
恭也たちにとってはありがたい事ではあるが、ベネットの立場を危うくしないかと心配する恭也に対し、

「貴方たちの事を相羽くんたちからお願いされてしまいましたからね。
 あの子達に何も出来なかった代わりと言う訳ではないですが、あの子達を助けて頂いたお礼だと思ってください」

そう微笑を浮かべて言われるに辺り、恭也もその言葉に甘える事にした。
これにより、保証人としてベネット自らになってもらい恭也たちの冒険学校の日々が始まる事になるのだが。

「流石に三年間というのはな」

「そうですか? 沙夜は恭也様と学園生活を送れるというのは嬉しいですけれど」

「まあ、確かにその気持ちは分からんでもないの。余もその意見には概ね賛成じゃ」

「何とか一ヶ月になりませんか?」

「それは無理ですね。どうしてもというのなら三年生への編入と言う形で捻じ込めますが、
 それでも約一年は我慢してもらう事になります」

本来、一、二年で教える知識に関しては必要になれば教えるか、追々覚えるという事にし、
どうにか三年からのスタートとなったのは嬉しい事である。
ともあれ、こうして恭也の冒険者を目指す日々が本当に始まるのであった。



恭也と剣の放浪記 〜響く鐘の音Continue〜







300回という事で過去を振り返ってみれば……。

美姫 「色々あったわね〜」

うん、過去ばかり見ても仕方ない。
先を見据えよう。

美姫 「まあ、その言葉にも一理はあるけれど、どうして泣きながらなのかしら?」

自分の胸に手を当てて考えてみると良いと思うな。

美姫 「セクハラで訴えるわよ!」

ぶべらっ!
い、今のはセクハラでも何でもないよね?
ついでに言うと、訴えられる前に殴られているんですけれど?
これに関しては?

美姫 「いつもの事じゃない♪」

ですよね〜。
って、いやいや、色々と可笑しいからね!

美姫 「さて、今回はもう一丁CMいってみよ〜」

って、だから俺の話も聞いてくれ〜。







見渡す限りに広がる荒野。
文明が存在するのか疑わせる程に見通しが良い。
だが、確かに文明は存在するのだろう。いや、したというのだろうか。
荒野よりも廃墟と呼ぶのが相応しいような。
恐らくは、建物の残骸と思われる瓦礫が辺りにぽつりぽつりと存在している。
長らく放置されたのか、既に風化している元コンクリートらしき物体。
何よりも恐ろしいぐらいに静寂に包まれている。
人の、いや、生物の息吹と言うべきものも感じられない、見渡す限り何もない世界。

「……さて、学生生活一年、旅を続ける事一年。
 ようやく見つけた異世界へと渡れるかもしれない道具」

「それをろくに調べようともせずに馬鹿魔力を流し込んで無理矢理動かした所為でしょうかね、これは」

「な、何じゃ二人とも。その言い方ではまるで余が悪いみたいではないか」

二人に責めるように言われ、さしものアルシェラも言い淀むのだが、すぐに胸を張って強気に言い放つ。

「別に余が魔力を込め過ぎた所為ではないぞ。
 ちゃんと別の世界に繋がったのは間違いないのじゃからな!
 元よりこのような世界じゃったのであって、余がこのようにしたわけではない!」

「ですが、もう少しきちんと調べれば任意の世界を渡れたかもしれませんのに」

「いいや、それはなかったはずじゃ。
 余が魔力を注ぎ込んだ瞬間、寧ろこの世界から入り口を開けたような感じじゃったしな」

言い争う二人の間に割って入り、悲しいかな、こういう事ばかり上手くなっているような気もするが、
恭也は改めて周囲を見渡し、

「それにしても見渡す限り紅いな」

「そうですわね。夕暮れともまた少し違う感じがします」

「生き物は愚か、植物の気配すら感じぬしな。可笑しな世界に来てしもうたか」

「まあ、じっとしていても仕方ない。とりあえずは歩いてみよう」

言って恭也は偶々向いていた方へと歩き出す。
何せ、目印になるものさえないのだから仕方ない。
本当に生物を感じられない廃墟を歩き、恭也は思わず呟きを漏らす。

「こうまで人もいなければ、何も残っていない状況からどうやって戻る手掛かりを探すかだな」

「とりあえずはこの光景が変るまで歩いてみるしかないだろうの」

「いずれ誰かに会うかもしれませんしね」

言って歩き続ける事、半時程だろうか。
ようやく風景に変化が見え始める。
地面ばかり続いたその光景に動くものが見え始める。
三人は誰ともなく足を早め、その動くものが波だと分かる。

「海か?」

恭也が疑問を口にしたのも仕方ない事で、目の前に広がる波打つ水面。
時さえも流れていないかのように、空はただただ赤く、目の前の恐らくは海と思われる広大な水の塊も紅く、
空と海の境界線は当然のように赤であった。
そして、その海の沖のほうではこの世界で初めてとも言える人の存在があった。

「……人なのだろうか?」

「だとすれば、巨人族かもしれんの」

「もしくは、この世界の人は皆、あの大きさなのかもしれませんよ。
 もしかして食糧不足で滅びたとか」

冗談にも聞こえない沙夜の呟きに何とも言えず、恭也は海に顔の半分だけ出している少女らしき物を見遣る。
顔だけで十メートルは超えるのではないかと思われる巨体を横たわらせ、しかし生きている様相でもない。
全体的に白一色で、瞳もなく呼吸もしている気配はない。
生者特有の気配も感じられず、寧ろオブジェと言われた方がしっくりくるぐらいである。
赤が占める世界にあって、やけにその白さが目立つがそれだけである。

「どちらにせよ、何かあるかもしれないし行ってみるか」

恭也の言葉に二人は頷き、当面の目的地として巨大な少女を目指す事にする。

暫く進み、恭也は足を止める。

「……人の気配?」

呟いた恭也の言葉を肯定するかのように、アルシェラと沙夜も何かを感じ取ったように足を止めており、
三人の視線は知らず前方の辛うじて残っていると言った感じの高さ数メートルの壁に向かう。
微弱ながらも人の気配がその向こう側から感じられる。
隣にある、これまた赤い作業着も久しぶりに見た文明を感じさせる物であった。
逸る気持ちを押さえ、恭也たち三人は壁の向こう側へと回りこみ、
そこで膝を抱え込んで顔を伏せている少年を見つける。
少年の方も音に気が付いたのか、やや緩慢な動作で顔を上げ、恭也たちの姿を見るなり泣きそうな表情を見せ、
次いで嬉しそうに笑みを見せ、泣き笑いの表情になる。
が、すぐに怯えた様子を見せ始め、けれども逃げようとはせずにまた顔を伏せてしまう。
恭也たちは顔を見合わせ、できるだけ怖がらせないように恭也が話し掛ける。

「あー、少し話を聞いても良いだろうか?」

恭也の言葉に少年は良いとも悪いとも答えず、ただ怖がるように顔を上げ、視線を逸らす。
完全に怖がっていると理解しつつも、恭也たちとしても初めて会った人である。
申し訳なく思いながらも、情報を聞き出す事にする。

「この世界について少し聞きたいんですか?」

恭也がそう質問した瞬間、少年はビクリと体を震わせ、ただごめんなさいと繰り返す。
怯え、許しを請う少年の前に膝を着き、恭也は幼子をあやすようにその背中を撫でてやる。
触れた瞬間にまた怯えたように体を振るわせる少年であったが、すぐに大人しくされるがままになる。
やがて、徐々に落ち着きだしたのか、少年はゆっくりと話し始める。
この世界は恭也たちの居る世界と非常に似た歴史を辿って来た世界であり、
ただ違うのはセカンドインパクトと呼ばれる地軸さえも狂わせた現象である。
少年は自らを碇シンジと名乗り、この世界に起こった事を話し始める。
使徒と呼ばれる存在と、それを倒す為の決戦兵器エヴァンゲリオンを有する組織ネルフに纏わる話を。
全てを話し終えた少年は疲れたのか今は寝息を立てている。
時折、悪夢でも見ているのか魘されているようで、知らず握った恭也の手を強く握り締めてくる。

「とんでもない話だったな」

「そうじゃの。
 守るべきはずの組織の長が自らの計画の為にインパクトを企み、その上の組織に至っては端からそれが目的とは」

「それらの思惑が絡んだ結果がこの世界という訳ですね」

沙夜の言葉に改めて周りを見渡す。
生きる者のない、ただ赤い世界。こんな世界に取り残されたたった一人の少年。
シンジ自身もどのぐらいこうしていたのか分からないらしい。
変化しない気候では日数や時間など分かるはずもないし、空腹も不思議と感じないとなれば余計にだろう。
もしかすると、時間からも解放されたかもしれない世界。
ある意味、これも不老と言える状況かもしれないが、たった一人だと思えば羨ましくも何ともない。

「その点、異世界に飛ばされまくっている状況でもお前たちがいる俺は幸せかもな」

「……そ、そうじゃぞ。もっと感謝しても良いぞ」

「あらあら、そのような嬉しいお言葉を頂けるなんてどうしましょう」

不意打ちのような恭也の言葉に思わず照れる二人を微笑ましく見つめながら、恭也はどうしたものかと思う。
今の話が事実なら、人はシンジ一人。他に調べようにも、書物もコンピュータも使い物にはならない。
世界中が恐らくはこうだろうとシンジは語ったが、それに間違いはないだろう。
ここに来て帰る手筈が全くつかめない状況に置かれるとは。
そんな事を考えていると、シンジが目を覚ます。
そして、恭也たちの姿を見ると本当に嬉しそうな顔を見せる。夢でなかった事が嬉しいらしく、
恭也たちが存在するという事はいつかは他の人も戻ってくるのだと希望が出てきたからだが。
それに対し、恭也は申し訳ないと思いつつも、自分たちが異世界から来た事や、帰る手段を探している事を伝えると、
また沈んだ表情を見せる。が、この世界の状況を思い出し、申し訳なさそうになる。

「だとしたら、帰る方法は……」

暫し沈黙が落ちる中、アルシェラは何かに気付いたかのようにシンジを見つめ、
逆にシンジは照れたように視線を逸らす。

「ふむ」

「あらあら、アルシェラさんは恭也様から乗りか……」

全て言い終わらない内に沙夜が先程まで座っていた場所の地面が弾け飛ぶ。
一早く察した沙夜は飛び退いており事なきを得たが、すぐさま反撃するべく掌をアルシェラへと向け、

「そこまでにしておけ」

恭也が二人の間に割って入って止める。

「しかし、そ奴が……」

「アルシェラ」

「うっ、分かったのじゃ。今回は大人しく引いておこう」

「沙夜も」

「……申し訳ございません、恭也様、アルシェラさん」

突然の事態に目を丸くしているシンジに軽く詫びてから、恭也はアルシェラに改めてどうしたのか尋ねる。

「ふむ、気のせいではないみたいじゃな」

恭也に問われ、改めてシンジを値踏みするように眺めると、アルシェラはシンジを指差し、

「こ奴の中には相当量の力が詰まっておるぞ。
 仮にこの世界の住人と余の世界の人が同じであると仮定すれば、人の器では収まりきれん程の力がな」

「だとして原因はやっぱり……」

「恐らくはそうでしょうね。
 依り代にされ、選択を迫られたと仰られていましたが、何らかの儀式の中枢となっていたみたいですし」

「その際に力を溜めておくタンクとなったのか、
 儀式を遂行する上で必要なエネルギーが中途半端に儀式が行われた事で使い切れずに残ったのか」

詳しくは分からないが、とりあえずシンジの中には相当量の力が溜め込まれていると告げる。
その力を使えば、もしかしたら異世界へと渡れるかもしれないと。

「だが、そうするとまたこんな世界でシンジ君は一人に」

気にするなとシンジは言うものの、その顔はやはり寂しそうであった。
どうしたものかと考え込む一同であったが、すぐに答えを出す事も出来ずとりあえずは休む事にする。
と言うよりも、シンジが考え込むうちに眠ってしまったのである。
久しぶりに人に会えて話したからか、ともあれ眠るシンジを見守るように三人は他に何か案がないか考える事にする。
と、不意にシンジが目を開け、

「……えっと」

何か言いたそうにしているので黙って促してやる。
やがて、シンジの口から信じられない言葉が出てくる。
異世界を繋ぐ方法があり、その為のエネルギーは今の自分で足りないと。
サードインパクト、その力を利用すればあるいはという物であった。
何故、そんな事が分かったのかと尋ねる恭也たちの目の前にシンジは掌を差し出すと、そこに赤い小さな球が現れる。

「これは?」

「僕の話の中に出てきた綾波の残滓のようなものらしいです。
 サードインパクトの瞬間、綾波の一部が僕の中に入ってきていたらしくて、さっき夢で会いました。
 そこで綾波が言っていたんです」

俄かには信じ難い話ではあるが、それは自分たちがこの世界に居る異常は言わぬが華である。
恭也は詳しい話をシンジに頼む、それに答えてシンジも話し始める。
所々、怪しい所もあったが総合すると、
サードインパクトを利用すれば恭也たちなら世界を渡れるかもしれない。
これは恭也たちが既に何度も渡っている為、他とは違う感覚を感じ取れるだろうかららしいが。
次にその為にはサードインパクトを起こさないといけないが、その為の問題が二つ。
一つはシンジ自身が起こそうと思って起こせる物ではない事。
もう一つは仮に起こせば、またこの世界がどうなるのか分からないという事。
が、これに関しては解決策があるらしく、シンジはやや自信なさそうにだが語る。
シンジの中のエネルギーを利用して、過去に戻る。
正確には世界を再構成するらしい。
これにより、記憶を持たない者たちは同じ行動を取る事となり、サードインパクトを起こそうとするだろうと。
そして、二つ目の問題に関しては、エネルギーは全て恭也たちが使うので今回のようにはならないだろうと。
その上でシンジも流されるばかりだった状況を少しでも変えようと頑張ろうと思うと口にし、
良いかどうか聞いてきたのだが、

「俺たちとしても可能性があるのなら願ったり叶ったりだ」

「そうじゃな。じゃが、そう簡単に上手くいくかの?」

「その辺りは沙夜たちで少し鍛えてあげれば宜しいのでは?」

沙夜の言葉に恭也とアルシェラはそうだなと頷き、逆にシンジは遠慮なのか嫌なのか言葉を濁す。
が、結果として三人から少しとは言え鍛錬を受ける事となるのだが。
こうして、恭也たちは新たな仲間を一人、いや二人加え、元の世界へと戻る為の計画を練るのであった。



恭也と剣の放浪記 〜福音を呼ぶ者〜







さて、CMに連続で時間も良い感じに。

美姫 「それじゃあ、締めましょうか」

だな。それじゃあ、今週はこの辺で。

美姫 「また次回でね〜」


3月11日(金)

美姫 「美姫ちゃんの〜」

ハートフルデイズ〜

美姫 「はっじまるよ〜」

<この番組は、PAINWESTの雑記コーナーより、後一回、とお送り中!>



何だかな、もう。だよ本当に。
今年早々、ついてない。

美姫 「まさかの二度目のPCクラッシュね」

グラフィックボードが異常みたいだったよ。
それで約一週間の修理。戻ってきてみれば、セキュリティソフトのアップデートができなくなっていて。
その件であっちこっちに電話を回され、最終的に再び修理に。

美姫 「でも異常はなし。後はOSの再インストールしてくれだもんね」

なら自分でしますよ。っての。
まあ、悪あがきして色々と調べて弄って、再インストールしなくても良かったけれど。
あの一週間近い時間は一体……。

美姫 「まあ、ここで落ち込んでも仕方ないわよ」

ですよね。と言うか、その間にPCじゃなくて俺にウイルスが。

美姫 「普通の風邪なんて本当に久しぶりじゃない?」

まあな。普通よりも少々、喉が酷いみたいだが。
と言うか、未だに咳だけが止まらない。既に一週間も経つというのに。

美姫 「そこは根性よ」

うぅぅ、PC不調に続き、体調不良。もうヤダ……。
花粉症も出てきているし。うぅぅ。

美姫 「まさに泣きっ面に蜂ね」

よし、杉の木を切りに行こう!

美姫 「そんな簡単に言うけれど、そうもいかないでしょうね」

まあ、良いよと言われても近付きたくはないな。

美姫 「とりあえず、来週から無事に行くように祈りつつ、CMいってみよ〜」







あまり着慣れないスーツに身を包み、ネクタイを締める。
ざっと鏡に映った格好に可笑しな所がない事を確認し、恭也は部屋を出る。
一応、家族にチェックしてもらおうとリビングに顔を出し、

「どこか可笑しな所はないか?」

「はぁぁ、お師匠なかなか様になってますよ」

「うんうん、師匠格好良いですよ」

二人の妹分に賞賛の声を頂き、恭也はそうかと安堵混じりの声で返す。
桃子も恭也の全身をそれこそ後ろまできっちりとチェックして、

「段々と士郎さんに似てくるわね。そういう格好をしていると初めて会った頃の士郎さんを思い出すわ」

思い出に浸りつつ嬉々として告げられた言葉に恭也は若干顔を顰めつつ、変な所がないようだと納得する。
一方、美由希は唇を吊り上げ、楽しそうに話し掛けてくる。

「馬子にも衣装だね、アイタッ!」

既に何を言われるのか分かっていた恭也は、美由希が口を開くなりとりあえず軽くデコピンをお見舞いしておく。
額を押さえつつ文句を言いながらも、美由希は新ためて恭也の姿を見て、

「うーん、少し左の内ポケットが気になるけれど……」

「やっぱり気付かれるか? もう二、三本減らした方が良いか」

「逆に右にも入れれば左右のバランスが取れて気付かれないかも」

「だが、そうすると全体的に膨らんで逆に怪しまれる」

「ちょっと恭也、貴方まさかとは思うけれど、何か物騒なものを入れているんじゃないでしょうね」

「いや、ただの護身道具……」

言いきる前に桃子が軽く恭也の頭を叩く。

「貴方たちの護身の道具は世間一般で言う物騒な物になるの!
 そんな物いらないでしょう。全部置いておきなさい」

「何を言う、高町母よ。最低限の装備は必須だろう。これぐらい常識だと思うが」

少しずれた答えを返す恭也に、美由希以外がどこの常識だと突っ込みたそうな顔を見せる。
最早、こればかりは仕方ないと諦める辺り、桃子も相当に染まっていたりするのだが。
そんな中、一人なのははにこにこと恭也を見ており、本当にご機嫌な様子である。

「それにしても、恭ちゃんが実習とは言え先生なんてね。それも小学校の」

美由希がしみじみと呟けば、なのはは更ににこにこと笑う。
何せ、恭也の実習先というのは他でもない、

「お兄ちゃんは何処のクラスになるのかな?
 なのはのクラスの担当かな、かな?」

「さあな。担当する事になるクラスまでは聞いてなかったからな」

「どっちにしても楽しみだな〜」

これがなのはが朝からニコニコしている原因であった。
そんななのはの様子を家族たちも微笑ましく見守る中、恭也は時計を見てそろそろ出る時間だと鞄を手にする。

「まだ早いよ?」

「なのはたち学生にとってはまだ余裕だろうが、俺は事前に言って色々と手続きとかがあるんだ。
 という訳で、いってきます」

言って玄関へと向かう。背中に見送りの言葉を聞きながら、多少の緊張を覚えつつ恭也は家を出るのだった。



「なのちゃん、どうしたの? 何か機嫌が良いわね」

「えへへへ、分かるクロちゃん」

教室に着いてもニコニコ顔のなのはにクラスメイトが声を掛けてくる。
殊更隠す事でもないので、なのははニコニコ顔のままその理由を口にすると、

「なのはちゃんはお兄ちゃん子だもんね」

「そ、そんな事ないよ、美々ちゃん!」

眼鏡の少女が笑いながらそう口にすれば否定するものの、なのはを知る者からすればそれこそないと言い切るだろう。
一緒にやってきた最後の一人はそう思いつつも口にはせず、ただ大げさに肩を竦めて見せるだけに留める。
が、あからさまなその行為からは簡単に言いたい事を察せられ、なのはは頬を膨らませる。

「うー、りんちゃんまで」

「あははは、ごめんごめん」

軽く謝罪しつつもまだからかう気満々の様子になのはは更に拗ねつつも、何処か楽しそうであった。
この顔が驚きに変わるのは後十数分後の事であるが。



「とまあ、以上の事を注意してくれれば良いから。何かあれば、遠慮せずに聞いてくれ」

「はい、ありがとうございます青木先生」

必要な書類を渡し、注意すべき事などを聞き終えて恭也は自分が付く事になる教師に頭を下げる。
眼鏡を掛けた人の良さそうな青木は恭也の言葉に遠慮するなと返しつつ、改めて名簿を見て一つ唸る。

「それにしても、実習先の学校のみならずクラスまで妹と同じになるなんて凄い偶然だな」

「ええ。多少、やり辛いような気もしますが、頑張ります」

「ああ、頼むよ。さて、そろそろ朝礼の時間だな。改めてよろしく」

「こちらこそよろしくお願いします」

こうして、恭也はなのはのクラスで実習を行う事となり、
またこのクラスの児童に青木共々引っ張りまわされる事となるのだが、この時点ではまだそれを知るはずもなかった。



なのはのじかん







しかし、本当に咳が止まらないのは思った以上に苦しいな。

美姫 「ずっとだもんね。体力も意外と使うし」

頭がフラフラしてくるよ。
何とか週末の内に治さなければ。

美姫 「そうそう、頑張ってもらわないとね。来週からはビシバシとしてもらわないと」

が、頑張りますが、お手柔らかに。

美姫 「じゃあ、飴と鞭と鞭と鞭と鞭と鞭、ぐらいな感じで」

鞭が多すぎませんか?

美姫 「気のせいよ〜。今までなら鞭はこの倍だもの」

…………あー、空が青い。

美姫 「ここから空は見えないわよ」

現実逃避だよ!

美姫 「うん、知っているからこそ引き戻してあげたのよ」

…………。

美姫 「さ〜て、それじゃあ今週はこの辺にしておこうかしら」

ですね。
それじゃあ、今週はこの辺で。

美姫 「また来週〜」










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