『とらいあんぐるハート 〜Another story〜』






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恭也は翠屋を前に佇む。

「どうしたの、お兄ちゃん」

「いや、少し雰囲気が変わったなと」

「まあ、何回か改装しましたから。でも、古くなった所を直したりとかですから、そんなに変わってないと思いますよ」

「ああ」

恭也は幾分、緊張した面持ちで扉を開ける。

「お兄ちゃんはここで待っててね」

そう言うと、なのはは恭也を席に座らせ奥へと入って行く。
その対面にクロノは座ると、

「この時間なら、お義母さんと、美沙斗さん、美由希さんがいますね」

「美沙斗さんが?」

「ええ。大分前に前の仕事辞められて、翠屋を手伝ってもらっています。美由希さんも同じですね」

「美由希は料理が出来るようになったのか」

恭也は本当に驚いたような顔で答える。

「ええ。まあ、好きな人に自分の手料理を食べさせたいって頑張ってましたから」

「そうか。で、美由希たちは何処に住んでいるんだ?」

「美由希さんは、丁度、高町家の向かい側の家で、美沙斗さんと一緒に住んでいますよ。
 ちゃんと道場もあって、美由希さんの子供たちも剣をやっています」

「そうか。美由希の子供か。手合わせをしてみたいな」

恭也は嬉しそうに笑う。
自分が教えた剣を、美由希がその子供に伝えている事が嬉しいのだろう。
そんな恭也を見ながら、クロノは言葉を続ける。

「晶さんは、明心館で師範をやっていて、たまに高町家に来ます。
 レンさんは、同じ商店街で中華飯店を開いてます。レンさんも、たまに高町家を訪れてますよ。
 忍さんも遊びに来ますし、那美さんは滅多に来れませんけど、近くに来たら必ず寄ってくれます」

「そうか。皆、元気そうで何よりだ」

穏やかに話をしていると、急に奥から騒がしい声が聞こえてくる。

「あいた!ちょ、美由希、足踏んでる」

「ごめん、かーさん」

「すいません、先に行きます」

「あ、美沙斗さん、ま、待って」

「母さん、待ってよ」

「あ、お姉ちゃん、そこ!」

「え、あ、きゃぁ!」

何かが倒れる音を聞きながら、恭也とクロノは顔を合わせて苦笑する。
やがて、奥から美沙斗が現われる。

「恭也……。本当に恭也かい」

「ええ。この場合、お久しぶりになるんですかね、美沙斗さん」

「そうだね。少なくとも、私たちにとっては20年振りだからね」

「お元気そうで何よりです」

「そうでもないさ。流石に、剣士としてはもうね」

「ご謙遜を…」

恭也は美沙斗を見て、確かに現役時代よりは劣るであろうがそれでも尚、その実力の高さを感じる。
そんな美沙斗の後ろから、美由希が顔を出し、

「恭ちゃん〜。良かった〜、無事だったんだ。うぅぅぅ」

恭也を見て、突然泣き出す美由希の頭を恭也はそっと撫でる。

「まあ、よくは分からんが心配をかけたな」

「う、ううん」

「恭也!」

そこへ桃子が駆けつける。

「本当に恭也なのね。なのはから話を聞いて、まさかとは思ったけど…。
 本当にあの時のままの姿だわ。アンタが生きてるって、母さんはずっと信じてたわ。
 だから、お葬式もあげなかったし。本当に良かった」

恭也は桃子の喜び様に、驚いてただ立ち尽くす。
そんな恭也に向って、

「何よ、何か言いなさいよ〜」

桃子は涙目になりながら、恭也の胸に抱きつく。
恭也は少し照れくさそうにしながら、

「そうだな。では、一言だけ」

そう言って、桃子の肩を掴み、そっと離す。

「かなり年取ったな」

「…………へっ?」

「俺の認識では、ついさっきの出来事なんでな。
 その差がよく分かる。やはりクロノの言う通り、年月が流れたという事なんだろうな」

しみじみと呟く恭也に、桃子は肩を振るわせる。

「あ、アンタって子は、何年経っても変わらないんだから!」

そう怒鳴って頭を叩くが、その顔はやはり笑顔だった。
そんな二人を見ながら、しょうがないという顔をする美由希たちの顔もまた、笑顔だった。







 〜 つづく 〜








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