『風と刃の聖痕』
第3話
海鳴へと向う電車の中、綾乃は和麻の友達について色々と聞いていた。
「で、その恭也さんって人はどんな術者なの?アンタと同じ風術師とか?」
「うーん。そんなんじゃないな。ほら、なんつーったか、九州に本家がある退魔の一族がいただろ」
「神咲家の事?」
「そうそう。あれと同じで、風術師とかいったやつじゃない」
「じゃあ、霊力をそのまま放出したり、呪符を使ったりするの?」
「いや。どちらかと言うと、術は殆ど使えないはずだ。ただ、刃や拳などに魔力を纏わりつけてぶん殴る」
「はい?それをどうやったら、私よりも強いって言えるのよ!」
「あのな、そいつはそれで火の玉や風の刃を斬るんだぞ」
「でも、それぐらいで」
「はー、それぐらいね。まあ、聞くよりも見る方が早いだろ。実際に自分の目で見て、確かめてみろ」
「良いわよ。これから会うんだから、じっくりと見せてもらうわ。
ついでに手合わせをしてもらって、実力を確かめてあげるわ」
「はぁ〜。好きにしてくれ」
「何よその言い草は。ちょっとは期待とかしなさいよね」
「期待?俺がお前に何を期待するんだ?」
「だから、アンタが認めるその恭也さんに勝つ事をよ」
綾乃の言葉に、和麻はまじまじと綾乃の顔を見詰め、本気と分かると首を振る。
それを見た綾乃の眉が釣り上がるが、何とか怒鳴り声を上げることを堪える。
「何よ。やってみる前にその態度は」
「無駄だ。やめておけ」
その言葉に綾乃は益々ヒートアップすると、宣言するように和麻に人差し指を突きつける。
「良いわ。そこまで言うんなら、絶対に勝ってやるんだから!」
「へいへい。楽しみにしてます」
投げやりな返事を聞き、益々不機嫌な顔になる綾乃。
そんな綾乃を見ながら、面白そうに唇を歪め、面倒臭そうに話を打ち切る。
それを面白くなさそうに眺めつつも、何も言わずに黙る綾乃。
煉はそんな二人を余所に、和麻に凭れ掛るようにして眠っていた。
そんな三人を乗せ、電車は一路海鳴へと向かい走って行った。
つづく