『真雪サバイバル』
〜 1 〜
8月に入ったばかりの夏。一通の封筒が各所へと届けられた。
その差出人を見て、受け取った者たちは揃って、参加したくないがしないと後が恐ろしいだろうと考えていた。
更に今回の件に関しては、事前に予定を空けておくように言われていたので、下手な言い訳もできない。
恐らくこの手紙もその件に関してだろうと思いながら、封を開け中に目を通していく。
─── 『 やあ、皆元気か?あたしは元気だぞ。で、だ。
前から言ってたと思うが、8月2日〜12日までの10日間の予定は空けてるな。
じゃあ、別紙にある地図の場所まで来てくれ。 以上
仁村 真雪
追伸 来なかった場合は……。言わなくても分かってるよな 』
その内容どおり、手紙とは別にもう一枚用紙が入っており、そこには地名とその場所の簡単な地図が入ってあった。
それを見ながら、関係者たちは溜め息を吐きながらも、出かける準備を始めるのだった。
◆◇ ◆◇
手紙を受け取った翌日、全員は一つの島へと来ていた。
その島のほぼ中心となる場所に一つの建物があり、手紙はその建物を指していた。
その為、招待客たちはその建物の外で一同に会していた。
「やあ、恭也くん」
「あ、耕介さん。こんにんちわ」
「こんにちわ。今回はまた真雪さんが何か企んだみたいで悪いね」
耕介は寮生が起こしたという事で、自分の事の様に謝ってくる。
「いえ、事前に聞いてましたし、それに耕介さんの所為じゃないですから」
ざっと周りを見ると、全員がお互いに顔見知りばかりだった。
まあ、真雪が主催しているのだから、あってもおかしくはないのだが。
逆に言えば、全員が真雪を知っており、皆が皆諦めにも似た笑みを浮かべている。
と、突然スピーカーから真雪の声がする。
「おう、よく来たな。とりあえず、中に入れ」
その言葉に全員が中に入る。
突き当たりにある扉を開けると、そこは全員が入れるぐらいの大きさを持った部屋だった。
そこで真雪はニヤニヤを笑いながら、入って来た面々を見て楽しげに声を掛けた。
「おう、ご苦労さん。さて、じゃあ早速説明しようか」
全員が頷いたのを見て、真雪は説明を始めた。
「まあ、簡単に言えばゲームだよ。ゲーム。勝ち残り戦だな」
この言葉に耕介が小さな声を上げる。
が、誰も気付かず、真雪もそのまま説明を続ける。
「で、だ。とりあえず、お前たちにはこの島に散ってもらう。で、開始の合図と同時に、各自自由に動いてくれ。
そして、その行った先で誰かとあったら勝負する。勝負する内容は何でも良い。当事者同士で決めてくれ。
決められない場合は、後で渡すカードに勝負内容を書いてあるから、それを引いて決めろ。
で、負けた奴はここに戻ってくる。以上だ。ちなみにずるは無しだからな。島のいたるところにカメラを取り付けてあるからな」
「まさか、この間いなくなってたのって」
「ああ、この準備だ。妹のお友達であるお嬢様に話したら、面白いって資金を出してくれてな」
真雪の言葉に絶句する一同を余所に、真雪の横に一人の女性が姿を見せる。
「今回のスポンサーでもある佐伯理恵嬢だ」
「よろしくお願いしますね」
真雪の紹介に優雅に一礼する理恵。
「この理恵嬢の計らいで、優勝者以外にも最優秀選手など、様々な賞を用意してあるぞ。
勿論、それぞれに豪華賞品もあるぞ」
この言葉に俄然やる気を出す者たちが現われる。
「以上だ。じゃあ、スタートする前に渡すもんがあるから、渡すか」
真雪はそう言うと、その部屋を出る。
入り口の所で振り返ると、
「今から名前を呼ぶから、呼ばれた奴から隣の部屋に来いよ」
そう言うと真雪と理恵は部屋から出て行った。
ここに、生き残りを掛けた勝負が幕を開けるのだった。
〜 つづく 〜