『真雪サバイバル』
〜 5 〜
美沙斗は本部と呼ばれる建物を出ると、すぐに身を茂みの中へと隠す。
そして、鞄の中からカードを取り出して確認をする。
「戦闘に鬼ごっこにじゃんけん…。成る程、勝ち残るには運も必要という訳か」
美沙斗はそれだけを確認すると、それらをしまい込む。
次いでこの島の地図を取り出し、大まかな施設の場所や島の地形を頭へと叩き込む。
「結構、険しい場所もあるみたいだな。……東に広がる森はかなりの広さみたいだな」
美沙斗は何事かを考え始め、暫らくすると立ち上がる。
そして、慎重に東側へと歩き始めるのだった。
◆◇ ◆◇
一方、本部では。
「う、う〜〜ん。あ、愛さん、美由希ちゃん、それだけは!
そ、それだけは許してくれ〜。い、いやだ〜、た、助けて……。
い、幾ら俺でも芳香剤は……」
ガバッと音を立てそうな勢いで耕介は寝ていたソファーから身を起こす。
そして、急いで周りを見渡し、今のが夢だと知って大きな安堵を漏らす。
「ゆ、夢か…」
呟きつつ額に滲んでいた汗を拭い取る。
そこへ真雪が声を掛ける。
「やっと目が覚めたか。いやー、思いっきりうなされていたな。
まあ、夢の内容は大体分かるが…」
苦笑しつつ告げる真雪に、耕介は何がどうなったのか尋ねる。
事情を聞き、耕介は肩を落とす。
「そ、そんな……。あんまりですよ〜」
流石に悪いと思いつつも、ルールだからと言い切る真雪。
そんな真雪を怨めしそうに眺めていた耕介の肩を真雪が軽く叩く。
「まあ、そんなに落ち込むな。運が悪かったと思ってな。
それに、喜べ。二人目の敗者という事でブービー賞だぞ。あの中から好きな商品を選べ」
真雪が親指で自分の後ろを指差す。
「まあ、優勝商品よりは大した事はないかもしれないが、それでもかなり良い物が揃っているぞ」
耕介は真雪の肩越しにそちらを見詰め、途端に目を輝かす。
「ま、マジですか!」
「ああ。まあ、運が悪かったが、一応ブービーとは言え商品があるんだ。
そんなに悪くもないだろう」
真雪の言葉に耕介は嬉しそうに頷き、その商品の中から一つを選ぶ。
「じゃあ、これで」
それを見て、真雪はやっぱりなと笑う。
「お前ならそれを選ぶと思ってたよ」
「当たり前じゃないですか。新潟産、幻の銘酒。これが目の前にあるのに、みすみす見逃すなんて…」
「酒飲みには出来ないわな。さて、それを飲みながら他の連中の様子でも伺うか」
既に耕介の相伴に預かる事を決め、真雪はモニター前の席へと向う。
耕介も何も言わずに後に続く。
そんな耕介を振り返りつつ見遣り、
「そうだ。何かツマミも頼む。そっちがキッチンになってるから」
モニター正面のソファーに座りながら、真雪は向って右側を指差す。
そこにはキッチンが添えつけられていた。
これにも文句を言わず、耕介は嬉々としてツマミを作り出す。
「そうだ。理恵の嬢ちゃんにも何か作ってやってくれ」
「ほいな」
耕介は簡単に後4、5品ほど作り上げると、それらを持って真雪の横へと移動する。
「さて、それじゃあ、乾杯といきますか」
「何に乾杯するんですか、真雪さん」
耕介の言葉に、真雪は唇を上げつつ答える。
「そりゃあ、頑張っているあいつらにだろ?」
画面に映る参加者たちを眺めつつ、耕介と真雪はコップを合わせると、それを口へと運ぶのだった。
◆◇ ◆◇
「西側の小さな森を抜けると湖があるのね」
弓華は地図を片手に持ちながら、方向を確認しつつ歩く。
「湖……。長期戦になったら、水は結構大事になってくるね。
だったら、その近辺に罠を仕掛けて…。って、罠を仕掛けるのは良いのかな」
あくまでもゲームであり、戦闘訓練ではないと思い出した弓華は首を傾げる。
「うーん。小さい子もいたし、真雪もゲームで対戦方法は自分たちで決めろと言ってたから、やっぱり罠は駄目か」
弓華は小さく息を零しつつ、次の行動を考える。
「私が貰ったカード…」
手元のカードを眺めつつ、弓華はもう一度息を吐き出す。
「出来れば、私のカードで勝負方法を決めるのは避けたい…」
ぼやきつつ弓華はとりあえず西へと向うのだった。
【残り 33名】
〜 つづく 〜