『真雪サバイバル』
〜 6 〜
酒を飲みつつ、モニターで観戦している真雪は持っていたグラスを机の上に置く。
「だぁー。皆、警戒しやがって。さっさと出会ってゲームをしないと、見ているこっちは全然面白くないぞ〜」
「まあまあ、真雪さん落ち着いて下さい」
何とか真雪を宥める耕介だったが、自分もまた同じような事を考えていたりする。
そんな二人を見ながら、理恵は楽しそうに言う。
「ほら、あそこでは勝負が始まったみたいですよ」
理恵の指差すモニターを見ると、確かに二人の人物が対峙していた。
真雪はやっと肴が出来たとばかりに、その画面を大画面へと映し出す。
「さーて、誰と誰だ〜」
楽しそうに一口酒を啜り、真雪はモニターへと注視し、耕介と理恵もまたそちらへと視線を向けるのだった。
◆◇ ◆◇
「ふん。こんな所で会うとは、つくづく腐れ縁やな」
「確かにな。でも、その縁もここまでだ。お前の負けによってな」
「はっ!おもろい事を言うな、おサルのくせに。
せやけど、ここまで言うんは確かなようやな」
「けっ!何とでも言いやがれ」
二人は勝負方法を決める事もなく、お互いに戦う態勢に入る。
晶は拳を、レンは身長ほどもある棒──棍を構える。
(悪いが、今回は絶対に負けるわけには行かないんだ)
いつもの様に真っ直ぐに突っ込んでいかず、レンの動きをじっと待つ。
そんな晶を見て、レンもいつもと違うと感じたのか、慎重に棍を構える。
二人は無言で構えあったまま対峙する。
◆◇ ◆◇
「はぁー。真雪さんにも困ったもんだな」
森の中を歩きながら、恭也はそう一人ごちる。
そのまま歩いていると、少し開けた場所へと出る。
恭也がその場所に出るのと殆ど同じぐらいに、丁度向い側からも一人姿を現す。
「恭也くん……?」
「薫さん」
その人物を見て、恭也はとりあえず挨拶をする。
「お久し振りです」
「そうだね。それにしても、今回は仁村さんが迷惑を掛けたみたいで」
まるで自分の事のように謝る薫に、恭也は苦笑を浮かべる。
「まあ、いつもの事ですから」
お互いに嫌と言うほど身に覚えがあるのだろう。
笑みを交し合う。
「とりあえず、会ったからには勝負せんとね」
薫の言葉に恭也も頷く。
「そうですね。では、何で勝負します?」
恭也の問い掛けに、薫は軽く笑みさえ浮かべ、
「うちらなら、これしかないだろう」
そう言って、薫は腰に差してあった十六夜をそっと撫でる。
それを見て、恭也も薄っすらと笑みを浮かべる。
「それもそうですね」
そして、両足を肩幅に開き、腰に差した小太刀のうち一刀を抜き放つ。
薫も恭也と対峙し、ゆっくりと十六夜を抜く。
初めて見る訳ではないが、それでも薄暗い森の中にあってなお、微かな光を反射するその刀身に恭也は暫し見惚れる。
しかし、すぐに頭を振ると、思考を戦闘用に切り替える。
薫も同じように、すっと腰を落としいつでも動ける態勢へと変わる。
全く微動せずにお互いを牽制しあう二人。
動いてはいないが、かなりの攻防が二人の間では行われる。
そんな二人の間を、一陣の風が舞う。
それでも両者は動かない。
静かに、だが確実に高まりつつある空気に、次第に風も吹くことを止め、辺りは本当に静寂だけが支配する。
◆◇ ◆◇
「うぅ〜。ここは何処?私は誰…って、古いかな?でも、本当にここ、何処〜〜」
広く辺りには何もない平野に、美由希の叫び声だけが響き渡る。
地図を片手に持ちつつも、自分の現在位置さえ分からず、適当な方向に目処をつけてただ歩き続ける。
果たして、美由希が自分の居場所を特定するのはいつになる事やら…。
【残り 33名】
〜 つづく 〜