『リリアンには内緒』
とある休日の事。
山百合会メンバーは、皆で遊園地まで来ていた。
皆でお昼ご飯を食べた後も、あちこちと遊び周っていたまでは良かったのだが…。
「駄目、こっちにも祐巳ちゃんはいなかったよ」
「そう」
志摩子と一緒に戻って来た聖を見ながら、蓉子は答える。
すると、それぞれ別の方向から、祥子、江利子組と、令、由乃組が戻って来る。
しかし、四人はほぼ同時に首を横に振ると、祐巳はいなかったと話す。
「仕方ないわね、放送で呼んでもらいましょう」
蓉子の言葉に全員が頷き、歩き始めた所で、放送が鳴り響く。
「まさか…」
過去に同じ様な経験をした蓉子がぼそっと呟く。
しかし、放送は止まる事なく、始まるのだった。
『お呼び出しを申し上げます。
紅薔薇さま(ロサ・キネンシス)、紅薔薇さま(ロサ・キネンシス・アン・ブゥトン)、
白薔薇さま(ロサ・ギガンティア)、白薔薇さまのつぼみ(ロサ・ギガンティア・アン・ブゥトン)
黄薔薇さま(ロサ・フェテイダ)、黄薔薇のつぼみ(ロサ・フェテイダ・アン・ブゥトン)、
黄薔薇のつぼみの妹(ロサ・フェテイダ・アン・ブゥトン・プチスール )、お連れの方がお待ちですので、……』
「祐巳ね」
祥子の呟きに全員が頷く。
聖は一人、お腹を抱えて笑っていたが。
その放送を聞きながら、祥子たちは祐巳の待つ場所へと向うのだった。
途中、由乃がボソと呟いた言葉は、生憎と誰の耳にも届かなかったようだが。
「このアナウンスの人、結構やるわね。初めて聞いたはずなのに、こうもスラスラと言うなんて……」