『とらハ学園』






第20話





恭也たちが二日酔い状態で学校に行った後の御神不破家の恭也の部屋で、一人の女性が微睡んでいた。

【アルシェラ】
「う〜ん、昨日は騒がしかったが、楽しかったのー」

アルシェラは主のいない部屋でそう一人ごちる。

【アルシェラ】
「やはり恭也の言う通り、一人よりも大勢の方が騒がしいが楽しいのー」

アルシェラは昔の事を思い出しながら、そう零し、同時に昨日の事も思い出しその顔に笑みを浮かべる。

【アルシェラ】
「恭也のあの時の顔は珍しく面白かったの」

昨日のちょっとした出来事を思い出すかのように、目を閉じる。







翠屋での恭也の隣の席争奪バトルに見事勝ったなのは。
それを見て他の面々も大人しく席に着く…………かと思われたが、今度は恭也の対面の席を巡るバトルへと発展する事になる。
それらを見ながら、恭也は盛大な溜め息を吐き、なのはとなんとなしに顔を見合わせ、苦笑いを浮かべる。

【恭也】
「あいつらは一体、何がやりたいんだろうな」

【なのは】
「あ、あははははは」

晶やレンの喧嘩なら、すぐに止めるなのはだが、流石にこの大人数では何もせずにただ、大人しく座っている。
手持ち無沙汰な恭也はなのはにコップを差し出し、それをなのはが受け取るとそこにジュースを注ぐ。

【なのは】
「ありがとう、お兄ちゃん」

【恭也】
「うむ」

なのはの礼に短く答えると、恭也は適当に食べ物を幾つか皿に乗せ、なのはと自分の分を取る。

【恭也】
「あいつらは放っておいて、さっさと食べよう。俺は腹が減った」

【なのは】
「うん!」

恭也となのはは周りを放置し、食事を始める。
今日は殆ど恭也の近くにいれた事に喜びを隠せないなのはと、それをどこか嬉しそうに見る恭也。
それを眺めながら、なのはへと周りから羨望の眼差しが突き刺さる。
恭也はそれらを無視し、なのはの横にいた久遠に呼びかける。

【恭也】
「久遠、そこに座れば良い」

恭也は自分の対面を指差し、久遠もそれに従う。
と、周りから悲鳴にも似た声が幾つか上がる。
それらも気にかける事なく、恭也は席に着いた久遠にもジュースを手渡す。

【久遠】
「ありがとう、恭也♪」

それを笑顔で受け取る久遠。
そして、他の面々は恭也の近くの席へと座っていく。
久遠の横に座ったアルシェラはコップを恭也に差し出すと、

【アルシェラ】
「恭也、余にも何か入れてくれ」

恭也はアルシェラの差し出してきたコップへと、同じくジュースを注ぐ。
それに満足したのか、アルシェラは笑顔で大仰に頷く。
と、恭也の後ろから抱きつくような形で伸ばされてきた手にもコップが握られていた。
その手の主は恭也の顔のすぐ横に自らの顔を出し、その耳元で囁くように話す。

【沙夜】
「恭也様、沙夜にもお願い致します」

【恭也】
「分かったから、少し離れてくれ」

【沙夜】
「お気になさらないで下さい」

【恭也】
「いや、ちょっと入れ辛い」

【沙夜】
「それは残念ですけど、仕方がありませんね」

沙夜が恭也から離れるよりも早く、アルシェラが沙夜に言い放つ。

【アルシェラ】
「沙夜!さっさと離れぬか」

それを聞いた沙夜は口元に笑みを浮かべると、前に回していた手を恭也の首に巻きつけ、恭也の背中にしな垂れかかる。
それを見たアルシェラの目が釣りあがるが、沙夜は露にも気にかけず、

【沙夜】
「あら、私が恭也様に抱きつこうがアルシェラさんには関係ないと思いますけど?」

【アルシェラ】
「大いにあるわっ!恭也は余のものだぞ!」

その言葉に対し、沙夜は軽く笑い飛ばす。
その沙夜の態度にますます激昂するアルシェラ。
二人の間に再び火花が散るという瞬間、それまで黙っていた恭也が口を開く。

【恭也】
「ほら、二人とも大人しくしろ。沙夜もいい加減、離れろ」

【沙夜】
「分かりましたわ」

恭也の言葉に渋々従い、沙夜は抱きついていた手を離す。
と、なのはがアルシェラに尋ねる。

【なのは】
「アルシェラさん。前から聞きたかったんだけど……」

【アルシェラ】
「なんじゃ、なのは?何でも聞いていいぞ」

恭也の妹という事もあるが、アルシェラも結構なのはには甘い。
そのアルシェラの言葉になのはは前から不思議に思っていた事を聞く。

【なのは】
「何で、お兄ちゃんがアルシェラさんのものなんですか?」

そのなのはの言葉に全員が興味を抱き、一斉に数度頷く。
アルシェラはそれを受け、少し踏ん反り返ると、

【アルシェラ】
「そうじゃな。少し昔話をしようか」

そう言って、ゆっくりと語り出した。







……………あれは、確か今から5年程前の事じゃ。
目が覚めた余の前に恭也がおっての。
そして、話をしているうちに恭也が余を欲しいと言ってきたんじゃ。
だから、余は恭也のもので、恭也は余のものという訳じゃ。







アルシェラの簡単すぎる説明に皆はただ、呆然となり、ただ恭也一人だけが頷いている。

【恭也】
「そういえば、そんな事もあったな……。懐かしい話だ」

【なのは】
「お兄ちゃんは当事者だから、今の説明で充分だけど、なのはたちには全く分かりません。
 そもそも、何でお兄ちゃんはアルシェラさんの所へ行ったんですか?」

【耕介】
「うーん、今の説明では確かに分かり辛いな」

【真一郎】
「どうして恭也はアルシェラの事を知ったんだ?それに、アルシェラ程の剣なら、他にも取りに来た奴とかいなかったの?」

【恭也】
「うむ、そうだな……。なら、始めから話すか。いいか………」

今度は恭也とアルシェラの二人からその時の事が話されていく。
皆もこれなら分かるだろうと思い、話を聞く態勢になる。
そして、恭也の口からゆっくりと昔の話が語り出された。






つづく




<あとがき>

おお、20話だな。
美姫 「本当よね〜。長編でここまで書いたのって初めてじゃない?」
おう。
で、今回は恭也Xアルシェラの過去導入編って所だな。
美姫 「次は過去編ね」
そうでおます。過去編第一弾はアルシェラです。
美姫 「次の過去編は?」
それは、まだ言えません。
美姫 「単に考えていないだけでしょ」
はっはっは。でも、エピソードは大体考えているんだぞ。
美姫 「威張る事でもないと思うけどね」
仰る通りで。と、兎に角、次は過去編で!
美姫 「またね♪」








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