『天に星 風に歌 そして天使は舞い降りる 11』






秋らしさも鳴りを潜め始め、いよいよ冬の到来を思わせるような寒い風が吹き始めたある日のこと。
最早、当たり前のように学校から戻った恭也は家に荷物を置くと、さざなみへと向かう。
これは、なのはをさざなみの面々、主に耕介が面倒を見てくれているという事もあるにはあったが、
高町家の人たちにとっても、既にさざなみ寮がもう一つの家といった風に感じているという事もあった。
兎も角、今日も恭也はさざなみを訪れていた。

「お邪魔します」

「ああ、いらっしゃい」

リビングで恭也を迎えたのは、この寮の管理人にして料理人の槙原耕介その人だった。
耕介は、なのはに毛布を掛け終えると、恭也へと体ごと振り返る。

「丁度、良かったよ。実は、なのはちゃんが寝てしまって、おまけに、今は俺以外に誰も居ないという状況だったからね」

「ああ、何処かに出掛けられるんですね。でしたら、俺が留守番をしておきますので」

「そうかい? それは助かるよ。夕飯の買出しに行く序でに、知佳を迎えに行く約束をしてたからね」

「ああ、今日は検査の日でしたね」

「うん。と、そろそろ出かける準備をしないと。あ、おやつはそこに作ってあるから」

そう言って、耕介はキッチンのテーブルの上を指差す。

「もうすぐ、遊びに出ている美緒と美由希ちゃんも戻ってくるだろうし。
 薫も戻ってくるだろうから、少しの間だけ頼むよ」

「はい、分かりました」

耕介にそう答えると、恭也は寝ているなのはを起こさないように、静かにソファーへと腰掛けると、
持って来ていた文庫本を開く。
それを見ながら、出かける準備を終えた耕介は、寮を後にするのだった。



  ◆ ◆ ◆



病院へとやって来た耕介は、丁度、そこから出てきた知佳を見つける。
知佳の方も耕介に気付いたらしく、少し早足で耕介の元へとやって来る。

「ありがとー、お兄ちゃん」

「どう致しまして。可愛い妹の為だ。これぐらい、どうって事ないよ」

そう返す耕介に笑いかけながら、知佳は今日あった事を話していく。
そのうち、今日の検査の話になり、

「そういえば、矢沢先生が言ってたんだけれど、あの病院に今度、遺伝子障害の研究機関が設立されるんだって」

「へー。それで、色々な事が解明されて、治療法が見つかると良いな」

「うん。海鳴大学病院は、遺伝子治療施設がある数少ない病院だから、近くには、私と同じ病気の子たちも何人かいるしね」

そんな話をしながら、耕介は寮へと戻って行く。
それから数日後、ふいに電話が鳴り、愛が耕介を制して立ち上がると、電話を取る。
暫らくやり取りをした後、愛が受話器を押さえながら耕介に聞いてくる。

「耕介さん、矢沢先生からなんですけれど、話があるそうなんです。
 明日、少し良いですか?」

「ええ、別に構いませんよ。それよりも、知佳に何かあったんですか」

少し慌てたように尋ねてくる耕介に、愛は笑みを見せながら首を振って、それを否定すると、電話先の矢沢へと了承の旨を伝える。
知佳に何もないと分かり、ほっと胸を撫で下ろしつつも、それだったら、何の用事だろうと首を傾げる。
が、結局、ここで考えた所で分からない上に、明日になれば分かるとあって、
耕介はそれ以上考えるのを止めると、今晩のメニューを考えるのだった。



翌日、耕介と愛は病院を訪れる。
病院の前で矢沢に迎えられた二人は、そのまま矢沢の案内で、中へと入って行く。
矢沢に連れられた部屋に入ると、そこには、ベッドで本を呼んでいる知佳と、その傍らで何かを食べている真雪がいた。

「あ、お兄ちゃんと愛お姉ちゃん」

「よー」

二人に挨拶を交わした後、五人は暫し雑談を交わす。
と、不意に出来た会話の隙間に、耕介が矢沢へと本日の本題を切り出す。

「それで、お話というのは…」

耕介の言葉を切っ掛けに、矢沢は真剣な顔付きに変わると、咳払いを一つして、ゆっくりと話し始める。

「知佳ちゃんと真雪さんには既にお話したんですが、知佳ちゃんの病気、遺伝子病はまだ研究中の病気なんです。
 各地で研究が進められていて、患者自身が臨床例になって、協力してくれています」

矢沢の言葉に、この場にいる全員が黙って頷く。
それを一瞥してから、矢沢は話を続けるために口を開く。

「それで、この病院の特別棟、遺伝子治療施設がある場所に、その研究機関の部署が設立される事になりました」

「ええ、その話は知佳から聞いてます」

「そうですか。では、ここから本題ですが…」

矢沢の言葉に、耕介と愛がじっとその先の言葉を待っていると、突然、扉が開き、
眼鏡を掛け、ピアスをした一人の女性が姿を見せる。

「そこからは、わたしがお話しましょう」

人の良さそうな笑みを見せる女性の白衣の胸元には、佐波田と書かれたプレート、そのポケットには、
知佳が持っているのと同じようなコントローラーが入っていた。
その女性──佐波田が部屋に入ってくるなり、知佳の表情が微かに強張り、佐波田から微妙に顔を背ける。
それに一瞬だけ違疑問めいたものを感じた耕介だったが、佐波田が話し掛けてきた事により、すぐさまそれを頭の隅へと追いやる。

「東京のセンターから来ました、佐波田と申します」

そう名乗った佐波田に、耕介と愛も挨拶を返す。
それが終るかどうかという時点で、佐波田は扉へと顔を向けると、向こう側にいる誰かを呼ぶ。

「エルシー、入ってらっしゃい」

その声に答えるように、銀髪にスミレ色の瞳を持った一人の少女が部屋へと入って来る。
耕介たちの視線が、エルシーと呼ばれたその少女へと向かう中、佐波田は話を続ける。

「この子、先日アメリカから日本に来たんですけれど、日本の空気に馴染めないと言うか…。
 無口なままなんですよ」

そこまで言うと、佐波田はエルシーと目線を合わせ、優しい笑みを見せながら、両手をそっとエルシーの肩へと置く。

「それで、そちらの環境を伺ったところ、山あいの静かな所という事でしたので、真っ白な壁に囲まれた病院よりも、
 そういった自然の中での環境で生活したら、少しは元気になるんじゃないかと思いまして。
 こう言っては何ですけれど、同じ種類の能力者である知佳ちゃんもいらっしゃる事ですし、仲良く出来るのではないかと…」

佐波田の話を聞き、愛はどうしようかといった視線で、耕介と真雪へと視線を向ける。
それを受け、真雪はかったるいとばかりに肩を竦め、耕介は少し考えると、エルシーに話し掛ける。

「どうする? エルシーは、うちに来るかい?」

話し掛けてくる耕介に対し、エルシーはただ無言のまま、ただその場に佇んでいる。
それをどう捉えたのか、佐波田は慌てたようにエルシーの目を覗き込み、言い聞かせるように話す。

「エルシー、嬉しいわよね? 暫らくは、ここへは通いっていう形になるけれど、いい子にしてるのよ。
 それと、皆と仲良くね」

「…………Yes」

少しの間、無言だったエルシーは、ようやくそれだけを口にする。
それを聞くと、佐波田は満足そうに頷き、愛と耕介にお願いしますと軽く頭を下げると、部屋から出て行く。
それを見送った後、知佳の検査の時間となり、それが終るのを待ってから、全員で寮へと帰るのだった。



  ◆ ◆ ◆



空き部屋の一つを大急ぎで内装を整えて行く耕介と愛を、エルシーはただ黙って見詰めていた。
そんなエルシーに、一通りの作業を終えた愛が話し掛ける。

「着替えとか、インテリアとかは、今度、エルシーが忙しくない時にでも一緒に買いに行きましょうね」

そんな愛の言葉に無言でいるエルシーへと、耕介が言葉を掛ける。

「エルシー、聞いてる?」

それに対しても無言でいるエルシーに、ゆうひが耕介たちへと言う。

「ひょっとして、日本語が通じてへんとか…」

「…そ、そうなのかな。えっと、ゆうひ、英語は?」

「あかん。うちは、生まれてからこの方、ずっと大阪弁オンリーの女や」

「恭也くん……は、今日はもう帰った後だし」

耕介はそう言うと、知佳へと視線を向ける。

「よし! 現役の学生さん、頼むぞ!」

「え、ええっ! わ、私!?」

耕介の言葉に驚きつつも、知佳はおっかなびっくり、耕介たちが見守る中、エルシーへと話し掛ける。

「え、えーっと、エルシー」

「This is a pen !」

「……ゆ〜う〜ひ〜。お前はどうして〜」

「か、堪忍してや、耕介くん。これはもう、病気みたいなもんやねん。
 こ、ここは、やっぱり、このお約束をいれとかなあかんと思うたら、もう止められへんかってん」

必死で弁解するゆうひの頭をぐしゃぐやと撫で回す耕介と、それを呆れ顔で見ている真雪。
よく分かっていない愛という面々を眺めつつ、知佳は少しだけ苦笑を浮かべると、再度、エルシーへと話し掛ける。

「は、How do you do ?」

「Lhissty」

知佳の言葉に、エルシーがやっと口を開くが、その意味が分からず、揃ってクエスチョンマークを浮かべる面々を眺めつつ、
エルシーはもう一度、今度は日本語で言い直す。

「リスティだ。リスティ・C(シンクレア)・クロフォード。
 エルシーじゃない」

その流暢な日本語に、耕介は安堵しながら、ふと洩らす。

「なんだ、日本語できるんだ…。えっと……、エルシーってのは、あだ名?」

「ほっといてくれていい」

耕介の言葉を無視するように、抑揚のない声で答えるリスティに、知佳が少し困ったような顔で話し掛ける。

「で、でも、一緒に暮らすんなら、仲良くしたいなぁ、って」

「僕は別にしたくない」

にべもないリスティの態度に、耕介は困ったような顔を見せるが、今はまだ馴染んでいないからだろうと思い直し、
必要な事だけを端的に教える。
それに頷いたのを確認すると、耕介はその場にいた者たちと一緒に部屋から出て行くのだった。



  ◆ ◆ ◆



その日の夜、今日は薫が仕事のため、恭也は一人で深夜の鍛練を行うためにいつもの場所へと向かう途中の事。
軽いランニングも兼ねて、さざなみ寮の近くの林道を走っていると、目の前から不思議な音が聞こえてきた。
何となしに、そちらへと足を向けた恭也は、そこに一人の女性の姿を見つける。

(こんな時間に、こんな所に。連れがいるようには見えないけれど…)

そこまで考えて、恭也は目の前の女性の背中に、羽が生えている事に気付いた。

(知佳さんと形が違うけれど、あの人もHGS? …透明な六枚の羽根。
 とっても、綺麗だな…。星に照らされた銀髪と相俟って、まるで、妖精のようだ)

思わず見惚れる恭也の前で、少女は目の前に浮かべた小石を二つ、念動力によって、物凄い勢いで回転させている。
何をしているのかと、じっと息を潜めて見守る中、バキンと音を立て、二つの小石が消える。

(……石を頭上へと飛ばしたのか)

辛うじて捉えることの出来た残像を追うように、恭也は夜空を見上げる。
しかし、夜目の利く恭也の目を持ってしても、石の影を見つけることは出来なかった。

(かなり上空へと飛ばされたという事か)

恭也がそう考えている前で、少女は新しい小石を取り出して、地面へとそっと置く。
それから、少し離れて、じっとその小石を見詰める。
恭也もつられるように、その小石をじっと見詰める。
と、不意に少女の口から言葉が洩れる。
それは小さいが、はっきりと恭也の耳に届き、とても可愛い声だと感じた。

「近づくと、危ない」

恭也がその言葉に疑問を持つ前に、甲高い音が届き、そして、大きな地鳴り音を立てる。
目の前で起こった小さな爆発に、恭也は目を凝らし、その音の元へと視線を飛ばす。
同時に、何か起きた時のために、いつでも飛び退けるように体を準備しながら。
どうやら、音の発信源は、先程少女が地面へと置いた小石のあたりらしく、その付近の地面には穴があき、
その中心には、真っ赤に焼けた石が音を立てていた。

「これは、さっき投げた石…」

茫然と呟いた恭也に、目の前の少女が話し掛けてくる。

「この辺りに、湖か池はある?」

「ええ、池がこの先にありますけど。良かったら、案内しますよ」

恭也がそう言った途端、少女は物凄く不思議なものを見るような目付きで恭也をじっと見る。

「……君は可笑しな奴だ」

「たまに言われます。しかし、何か可笑しかったですか?」

「普通の人間なら、今のを見て、怖がるはずだ。
 それに、羽根のことも聞いてこないし。それに、何よりも、何で、君みたいな子供がこんな時間にこんな所に?」

「えっと、まず、今のはそんなに怖がる事ではないですから。
 それと、羽根に関しては、知り合いにも同じような人が何人かいますから。
 こんな時間に、こんな所と言いますけれど、それを言うのなら、貴女の方も、同じかと。
 いえ、俺よりも、女の子一人というほうが、危ないですよ」

「危ない? 女の子? この力を見たのに、こんな羽根を生やしているのに、まだそんな事を言えるの?」

「確かに、凄い力ではありますけれど、万が一という事はありますから。
 それに、羽根が生えていようと、なかろうと、何処からどう見ても女の子ですが…」

「やっぱり、君は可笑しな奴だ。この羽根を見て、綺麗だなんて思ったのは、君が初めてだ」

そう言うと、少女が微かに笑ったような気がして、同時に、自分が思っていた事を知られ、
恭也は恥ずかしさから、思わず顔を赤くする。
しかし、心を読まれたという事に関しては、別に気にも掛けていなかった。
それがまた、少女にとっては不思議だったのだろうが、敢えて口には出さなかった。
代わりに別の事を口に出す。

「で、池へはどう行けば良い」

何処か人を寄せ付けないように語る少女に気付き、恭也は行き方だけを説明する。

「…わかった」

短くそう答えると、少女はくるりと背を向け、教えられた方へと歩き出す。
と、途中で足を止めると、僅かだけ振り返って、少女は素っ気無く言葉を投げる。

「リスティだ。僕は、リスティ・C・クロフォード」

「恭也。高町恭也です」

それに対して、名乗り返した恭也に、リスティは既に背を向けた歩き出した足を止める事無く、
ほんの少し、本当に微かだけ手を上げて返す。
それは、よっぽど注意していなければ分からないぐらいに、微かな動きだったが、恭也はしっかりとその動きを捉えていた。
その背中が見えなくなるまで見送った後、恭也は再び鍛練場へと向かうために、ランニングを再開させるのだった。
こうして、一人の剣士と一人の妖精の出会いは、誰にも知られることなく、ただ静かにその幕を降ろしたのだった。





  つづく




<あとがき>

やっとリスティが登場〜。
美姫 「時期的には、本編よりも早い登場ね」
ああ、色々とあるからね。
美姫 「まあ、私としては、どんどん更新してくれれば問題ないんだけれどね」
あははははははははははは〜。
さて、次の話は、ああして、ああなって……。
美姫 「口で言わなくても良いし、頭の中で考えなくても良いわよ。
    さっさと、書いてくれれば、それで良いの♪」
いやいやいや、考えないと書けないだろう、流石に。
美姫 「どうでも良いわよ。だから、さっさと書いてくれれば」
どうでも良いって……。
美姫 「一層の事、極限状態に追い込んで書かせるという手もあるんだけれど?」
……因みに、どんな状態かな〜。
美姫 「私がこうして剣を持ってて、一定の時間ごとに、一歩ずつアンタに近づくの」
ふんふん。
美姫 「で、勿論、アンタはぐるぐる巻きにされてて逃げれない状況ね」
ほうほう。
美姫 「それで、アンタがある程度、文章を書くと、私の動きが止まる、もしくは、アンタから遠ざかる」
……つまり、全く書けなかったら……。
美姫 「いつか、アンタに剣が突き刺さるっていう事よ。
    何てスリリングな展開♪」
って、嫌に決まってるだろうが!
美姫 「そうだわ、試しにやってみましょう♪」
お願いだから、話を聞いて〜(泣)
って、既にぐるぐる巻きですか!
美姫 「準備OK〜.で、そうね、一分で一歩かな。
    で、文章の量に応じて、止まるか後退するから、頑張ってね♪」
俺に拒否権はないんですね……。
美姫 「ううん、あるわよ。ただ、優先順位が低いだけ。そうね、下から一番ぐらい?」
それって、ないのと変わりませんよね!
美姫 「ほらほら、喋っている余裕あるの〜?」
って、もう始まってるのかよ!
こうしちゃいられない! 急いで書かないと……。書かないと……。
書かないと…、って!
美姫、美姫、ちょっとストップ! 重大な事に気付いた。
ちょっと待って!
美姫 「5……、4……」
だから、俺の話を聞け!
美姫 「3……、何よ、一体って、1……、ゼロ!」
ダンッ!
美姫 「離空・紅流、地爪風牙(ちそうふうが)!」
がぁっ! い、色々と突っ込みたいんだが……、グハァ。
美姫 「どうぞ?」
一歩目から、トップスピードで相手の懐に飛び込む、その刺突系の技はどうかと…。
美姫 「でも、一歩は一歩よ。二歩と動いてないわよ」
ぐぅぅぅぅ。い、意識が……。
あ、後……、5メートルしか離れてないのは、ちょっと狭いんじゃないかな……。
普通でも、たった五歩の距離だし…。ましてや、お前の場合、今みたいに、たった一歩で詰めて来るし……。
ああ〜、綺麗なお花畑が……。
美姫 「だって、部屋が狭いんだもん」
…………後、物凄く大事な事……、というか、一番、肝心な事なんだが……。
美姫 「何々?」
ぐ、ぐるぐる巻きにされてて、腕も動かせない状態では、何も書けません(涙)
美姫 「あ、あははは〜。それは気付かなかったわ。いや〜、盲点だったわ」
ああ〜、綺麗な天使がメイド服で俺を呼んでるよ〜。待って〜。…………ガクッ。
美姫 「って、生意気にも天使に迎いに来て貰ってるんじゃないわよ。行き先が違うでしょう!」
    離空・紅流、紅蓮蓮脚(ぐれんれんきゃく)!」
ドガガガガッ!
ゴババババァァァァ!
は、ははは〜。待ってよ〜。ほら、捕まえた! って、悪魔かよ!
美姫 「うんうん、それでこそ、正しいわよ」
……い、嫌じゃー! 地獄は嫌じゃー! って言うか、死んでたまるかー!
って、えっ? メイドが一杯いる? じゃあ、ちょっと行ってみようかな。
そっか、そっか。メイドの土産っていう位だもんな。
美姫 「……それは、冥土の土産よ。意味が違いすぎるわよ、この馬鹿。
    って、本当に拙いかも。徐々に脈拍が小さく弱くなってるわ。
    おーい、浩〜。そのまま行ったら、本当に拙いわよ〜。もしもし〜、聞こえてる〜?」
うーん、でも、わざわざ行かなくても、君がメイド服を着てるんだから、OKじゃないかー!
何で、気付かなかったんだ。
あはははー。って、逃がさないよ〜! 待て待て待て!
美姫 「……何か、止めを刺したくなってきたわ。どうせ、すぐに復活してくるだろうし…」
わはははは〜。メイドじゃ、メイドじゃ〜。
美姫 「……ああ〜、簡単に想像できる所が、ちょっと悲しいわ」
…って、止めて下さい、ごめんなさい、ごめんなさい。
美姫 「よわっ! っていうか、向こうでも変わらないのね。はぁ〜」
って、嘘じゃー! ぐははは。捕まえたぞ〜。さーって、どうしてくれようか。
美姫 「…………はあ〜」
って、うぎゃぁぁぁ! や、止めろー! 俺を追い出すなー!
……………………
………………
…………
……って、あれ? あれ? 美姫? メイドさんは?
美姫 「……いきなり目を覚ますな! びっくりするでしょうが!」
がぁっ! んな、理不尽な……。
美姫 「ふん。って言うか、あっちからも邪魔者扱いされたアンタって、アンタって……」
う、うぅ、何の事かは分からないが、どうしてお前が俺の見ていた夢を知っているんだ?
美姫 「馬鹿は死ななきゃ治らないって言うけれど、真性の馬鹿は死ぬ事さえ出来ないのね」
何故、そんな哀れんだ目で俺を見る!?
美姫 「ううん、何でもないのよ、ええ、本当に」
ったく、冗談も通じんとは…。
美姫 「冗談?」
……あ、あはははは〜。
えっと、それじゃあ、また次回で〜。
美姫 「うふふふふふ♪ 次回があると良いわね。…ううん、明日の朝日が拝めたら、良いわね」
あ、アハハハハハハハハハハハ……。
美姫 「うふふふうふふふ♪」





ご意見、ご感想は掲示板こちらまでお願いします。



二次創作の部屋へ戻る

SSのトップへ